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鈴木宗男「参議院議員にふさわしい候補者なら答えられる"ある質問"」

プレジデントオンライン / 2022年6月17日 9時15分

鈴木宗男氏(撮影=原貴彦)

今年の最大の政治イベント、参議院議員選挙が近づいている。今回も芸能界・スポーツ界をはじめ、さまざまなジャンルから多くのタレント候補も名乗りを上げ、まさに乱戦状態だ。候補者を選ぶポイントは何か。参議院議員の鈴木宗男氏に聞いた――。(連載第4回)

■その候補者は、本当に汗をかいてくれるのか

第26回参議院選挙は6月22日に公示され、7月10日が投開票と決まりました。参院選には、いわゆるタレント候補がたくさん出ます。参院選の比例代表では候補者名を書いても、その政党の得票となるからです。なかには政治的なスタンスが見えにくい人や、政策について具体的に語れない人もいますが、知名度を武器に票を集めていく。いかがなものだろうかと、私は考えます。

最近は、候補者の公募も増えました。確かに、埋もれていた立派な人材が見つかる場合もあるでしょう。反対に、前の選挙で落選した人、定職をもたず一旗揚げたいだけの人、「この政党は人気があるから、自分でも当選できるんじゃないか」という計算が先に立つ人など、甘い考えの持ち主も応じてくるのが現実です。

「出たい人より出したい人」という選挙用語があります。聞こえがいいが無責任です。まず何よりも「国民の暮らしをよくしたい。日本の国をもっとよくしたい。そのために自分は、絶対に政治家になるんだ」という高い志の持ち主でなければいけません。そのような強い思いをもつ人を探し出し、育てていくのが、政党の役目であり機能です。

選挙の前は、候補者の多くが耳当たりのいい政策を口にします。しかし、そのプランは当選したら実現できるのか。本当に働いてくれるのは誰なのか。有権者は、見抜く目をもたなければなりません。

■参議院は「国の長期プランを練る」場所、だから「こんな人」がいい

では、どんな候補者が信頼に足るのでしょうか。

衆議院は政権選択選挙です。その時々の最大の課題に、議論の時間を多く割きます。結論が出なければ、総理は解散権を行使します。国論が二分されるような大事が生じれば国民の意思を確かめ、また政権に対する信を問うために総選挙があるわけです。

参議院には解散がなく、任期満了による改選が6年に1回です。したがって日本のあるべき姿、国家の方向性をつけるような腰を据えた議論は、参議院に向いています。国の長期的なプランを考えることこそ、参議院の役割です。

ともすれば、参議院は衆議院の下請けにすぎないと揶揄(やゆ)され、不要だという極論さえ出てきます。それを避けるためにも、国家の中長期的な方向づけは参議院で練り、それを衆議院に送って、国民に選択を委ねる議論を託す。そうした役割を明確にすべきなのです。

選挙演説を行う候補者
写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro

国のさまざまな分野に関する時間をかけた議論に向く参議院の議員は、一芸に秀でた人です。たとえば、地方議員を20年以上やったり知事や市町村長を3期以上務めたりして、地方の過疎化の実情や活性化策に精通している人。学校の教壇に30年以上立って、日本の教育が抱える問題や最近の子どもたちの姿を知悉している人。長く医者をやってきて、老人医療や介護現場の現状を身をもって経験した人。

ひとつの道に精通し、豊富な経験があり、その分野に関する確かな知見をもっている人が、参議院の議員にふさわしいと考えます。つまり、参院選の候補者を見るひとつの基準は、その人の軸は何か。「あなたがライフワークにしていることは何ですか」、これを見ればいいと思うのです。

これは新人候補に限りません。現職や元職なら、議員時代はどんな委員会に所属し、どんな質問や提案を行ってきたか、ネット上の国会の議事録などで、簡単に調べられます。選挙前に口にする公約だけに捉われず、ぜひ目を通しておくべきです。

■今回の参院選の論点はこの4つ

争点が見えないと言われてきた今回の参院選ですが、物価の高騰が大きな問題になってきました。ロシアがウクライナへ侵攻した影響も響いて、ガソリンや食品の値上がりが止まりません。生活を直撃する品目ばかりですから、早急な対策が必要です。

安全保障に対する懸念もあります。憲法9条を改正して、自衛隊を明記せよという議論も高まっています。地震や豪雨などの災害が突発したとき、いの一番に駆けつけるのは自衛隊です。その活動は国民の9割の理解を得られていて、もはや国に欠かせない組織です。

しかし緊急出動では、負傷したり命を落としたりする隊員がいます。自らの身体を張って頑張っている組織の人たちが、いまでも憲法違反だと言われる。このことは実に申し訳ないと思います。隊員の子どもたちが学校で、偏った考えの先生から「君のお父さんが働いている自衛隊は、憲法違反なんだ」と言われたら、そのお子さんは、どんな思いをするでしょうか。

時代に即した位置づけが、必要な時です。世界の国々が、自衛隊を軍隊だと認めている現実もあります。こうした理解に基づき、憲法9条の戦争放棄は絶対に残した上で、国民の生命、財産、安心と安全を守るために自衛隊は必要な組織だと、明記すべきです。これは、私が所属する日本維新の会の考え方です。戦後77年たって、憲法を一言一句変えていない国は日本だけです。自由闊達に議論を重ねて、ふさわしい方向へ改めるべきです。

ウクライナ危機を鑑み、防衛費を増額しようという声もあります。日本維新の会も、「積極防衛能力」の構築に向けて、GDP比2%に増額すべきだと主張しています。その必要性は私も認めますが、火事場泥棒的な議論は禁物です。なぜなら防衛費を増やすだけでは、武力紛争の発生は防げず、発生した紛争を収めることもできないからです。兵士や武器を増やせば、戦争は長期化し激化するのです。逆に、紛争を起こさせない雰囲気づくりこそ肝心です。そのためにODAや経済協力を積み重ねる力が、日本にはあります。

■憲法改正で歯止めをかけておくべきこと

憲法改正で言えば、基本的人権やプライバシー保護について、さらに書き加えるべきだと私は思っています。憲法ができた時代には存在しなかったインターネットやSNSを舞台にした誹謗(ひぼう)や中傷で、人権を侵害され、自ら命を絶つ人までいます。

現在の憲法にも人権の尊重はうたわれていますが、守られているとは言えません。そうした細かい点は法律に任せて、憲法は現行のままでいいとする意見もあります。しかしこれから先、ますます被害が複雑化し、広がるであろうことを鑑みると、憲法で歯止めをしておいたほうがいいのではないか。そのための議論をすべきではないかと、私は思っています。20世紀半ばに作られた憲法を、21世紀の現代に合った内容へ、さまざまな点においてアップグレードすべきです。

有権者の皆さまには、日本の行く末を託すべき政党、候補者をしっかり見極めて、一票を投じていただきたいと思います。

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鈴木 宗男(すずき・むねお)
参議院議員/新党大地代表
1948年、北海道足寄町生まれ。拓殖大学政経学部卒業。1983年、衆議院議員に初当選(以後8選)。北海道・沖縄開発庁長官、内閣官房副長官、衆議院外務委員長などを歴任。2002年、斡旋収賄などの疑惑で逮捕。起訴事実を全面的に否認し、衆議院議員としては戦後最長の437日間にわたり勾留される。2003年に保釈。2005年の衆議院選挙で新党大地を旗揚げし、国政に復帰。2010年、最高裁が上告を棄却し、収監。2019年の参議院選挙で9年ぶりに国政に復帰。北方領土問題の解決をライフワークとしており、プーチン大統領が就任後、最初に会った外国の政治家である。

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(参議院議員/新党大地代表 鈴木 宗男 構成=石井謙一郎)

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