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「ウクライナの次は北海道を狙っている」日本の安全保障を揺るがす"悪の枢軸"の巨大リスク

プレジデントオンライン / 2022年6月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kanzilyou

ウクライナ戦争は日本にどのような影響を与えるのか。評論家の石平さんは「不凍港を失ったロシアが北海道北端の宗谷海峡や津軽海峡に侵攻する恐れがある」という。政治学者のロバート・D・エルドリッヂさんとの共著『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス)より、2人の対談を紹介する――。(第1回)

■日本の危機感のなさは異常を通り越して異様

【石平】ウクライナ戦争以後も、日本政府の対応は相変わらず鈍い。“平和ボケ”していると散々言われ続けてきた日本国民ですら、“プーチンの核”、中国の“台湾侵攻”への脅威と向き合おうとしているのに対し、政府は百年一日のごとき対応です。

核武装の議論をしないばかりか、“核シェアリング”の有無について、議論を呼びかけた安倍晋三元首相の発言を政府みずからが否定したのです。

日本は「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則ならぬ「言わず・言わせず」を加えた“非核五原則”だという元首相の批判もむべなるかなです。

国土の周囲を世界有数の核保有国、ロシア・中国・北朝鮮に包囲された比類のない危険地域にある国の政府の対応とは思えません。繰り返しますが、あまりに鈍すぎます。

今は帰化して日本人になった私ですが、生を享けた中国では文化大革命や天安門事件といった独裁政権が自国民を殺すことに何の躊躇もみせない国で育ってきました。

また、対談相手のロバート・D・エルドリッヂさんは、言うまでもなく世界一の軍事大国であり、第二次世界大戦後も紛争・戦争を繰り返してきたアメリカの国民です。そうした“外国人”だからこそわかるのですが、日本の危機感のなさは異常を通り越して異様でさえあります。

■いつ第三次世界大戦が勃発するか分からない状況

【エルドリッヂ(以下エル)】都内の老舗ホテルに宿泊したのですが、そこでは政治家の政治資金パーティーで盛況でした(笑)。議員たちは7月(2022年)の参議院選挙に向けて余念のない様子ですが、その選挙が終わり内閣改造をし、8月になると夏休みがくる。9月からは国連総会が始まり、してもしなくてもいいような議論が行われる。この対談を行っているのは晩春ですが、貴重な時間があっという間に過ぎ去っていきます。

ウクライナ戦争を皮切りに、中国の台湾侵攻の危険性が日増しに高まり、どのタイミングで第三次世界大戦が勃発するかわからない状況に日本と世界は置かれているというのに、政府もメディアもまるで自覚がない。ウクライナも台湾もしょせんは“対岸の火事”だと思っているのでしょう。

■ロシア軍がウクライナの次に向かうのは北海道

【石平】そこで私は、少し刺激を与えるような予測を言いたいと思います。

2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻から2カ月が過ぎたわけですが、当初プーチン大統領が目論んでいた“電撃作戦”は失敗に終わった。欧米諸国の武器支援に支えられているとはいえウクライナ国民の超人的な抵抗は続き、長期戦の様相を呈し始めている。少なくともウクライナを超えてNATOを正面から突破する力はロシアにはないし、する気もない。

しかしプーチンは国民に向けてどこかでこの劣勢を挽回する姿をみせる必要がある。そこで西側に向いていたロシア軍を急転回させて手薄な極東を攻める可能性があるのではないか……。

つまり狙われているのは日本の北海道です。

実際、ロシアの政党「公正なロシア」の党首であり、10年近く上院議員長を務めた大物政治家のセルゲイ・ミロノフは「ロシアは北海道の権利を有している」と党のホームページで表明したといいます。

もしプーチン大統領が習近平と本当に手を結んでいるとしたら、手負いのロシアがいま中国にできることは何か? 経済力がないので、あとはエネルギーと軍事協力しかない。台湾併合への野望を隠さない習近平主席にとって、ロシアの北海道侵攻は、北方と南方に自衛隊と米軍を分散させ、二正面に追い込むという意味でまたとない格好のアシストになりえます。

札幌で、マップピン付きのアジア
写真=iStock.com/dk_photos
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dk_photos

■サハリンから稚内までは目と鼻の先の距離

【エル】今のお話は十分想定できることです。プーチン大統領にとって極東政策は積年の課題であり、ウクライナ戦争の戦況を問いません。大陸国家ロシアにとって極東は“太平洋の玄関口”といって過言ではない。ロシアがアジア太平洋に進出するためには、この地域の開発と統合が必要ですが、実際はほとんど進んでおらず、日本と同様少子高齢化と人口流出により過疎化が進んでいます。サハリン南東のコルサコフの沖合から稚内までは40キロと目と鼻の先の距離にあり、ロシア軍による北海道侵攻は今日まで日本にとって脅威であり続けています。

4月14日にロシア国防省は黒海艦隊の旗艦「モスクワ」の沈没を発表しましたが、これによりその脅威がますます高まりました。

■ウクライナ戦争でロシアは不凍港を失った

というのも、「モスクワ」が就役したのは1983年で、ソビエト崩壊後の1999年にウクライナ南部クリミアにある軍港セバストポリを拠点とする「ロシア黒海艦隊」の旗艦となって以降は、2008年の「ジョージア(グルジア)侵攻」、2015年の「シリア内戦」にも派遣されたロシア海軍の主力です。つまり、「モスクワ」を失うということは黒海の制海権を失うことを意味します。

加えて、黒海とエーゲ海・地中海を結ぶボスポラス海峡をトルコが「有事」であると宣言し閉鎖しているため、ロシア・ウクライナ両軍は外洋に出られなくなっています。また、本来“中立の海”だったはずのバルト海も、スウェーデンとフィンランドがこれまで保っていた中立国の立場を捨て、NATO入りに動き出したため、不凍港のバルト海も使い勝手が悪い状況にあります。

こうした状況を打開するために、ロシアは不凍港を求め、北海道北端の宗谷海峡や津軽海峡、北海道に侵攻するという話が実際にあるそうです。

また別の人は、「北海道を爆買いしている中国人も北部の土地にはあまり手を出していない。なぜならロシア軍が北海道を侵攻するリスクがあるからだ」と、まことしやかに話していました。真偽のほどはさだかではありませんが、非常に興味深い話です。

■ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮の存在感

“日本の脅威”で忘れてはならないのが、北朝鮮の存在です。中ロにとってタイミングの悪いときにミサイル発射実験を繰り返し、核保有国であることを主張する北朝鮮は迷惑な存在でした。少なくとも中ロにとっては負担となる時期のほうが長かった。

東アジアのマップ
写真=iStock.com/Goldcastle7
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Goldcastle7

しかし、最近はむしろ両国の軍事作戦上必要な国になったのではないでしょうか。つまり日本及び韓国、そしてアメリカが北朝鮮の動向に気をとられていれば、中国への警戒が手薄になり南シナ海や東シナ海での活動がしやすくなる。ロシアにとっては北海道での活動がしやすくなるのです。

北朝鮮は、国連のロシア非難決議でも中国の棄権という玉虫色の判断に対し、「否決」とはっきり態度を示しました。トランプ政権で米朝関係の改善が進みそうになりましたが、バイデン政権でご破算となったことも中国、ロシアにとっては都合がよかった。欧米の強烈な制裁によって世界地図がはっきりと二分される事態になれば、間違いなく北朝鮮は東側につく。そして、北朝鮮はイランとも関係が深い。

北朝鮮のような国に核の威力を再確認させたのは非常にまずいと言わなければなりません。

もう一点、日本ではあまり議論されていませんが、韓国の存在です。

■韓国も反日に明け暮れているヒマはない

実は韓国にとっても台湾侵攻は深刻な事態を招きます。台湾侵攻の間隙を突いて北朝鮮が“ソウルを火の海”にしないとも限らないのです。地政学的には海がない分だけ日本以上に危険なのに、不思議なのは韓国でそのことが真剣に議論されている様子がないことです。

新しい大統領になりましたが、これまでの歴代政権のように反日に明け暮れているヒマはありません。一刻も早く両国は関係改善をはかり、台湾との連携もはかるべきです。

中国、ロシア、北朝鮮の3国が連携して、台湾侵攻、北海道侵攻、韓国侵攻が行われたら日本も韓国も、もうお手上げです。米軍とて手の施しようがなくなります。

■「悪の枢軸」は台湾、北海道、韓国の同時侵攻も可能

【石平】確かにそうですね、北朝鮮のミサイル実験に日本人は不感症になっていますが、2006年を最初にこれまで累計6度の核実験を行い、2017年には核武力の完成を公言してはばからない国です。日本はいつ核を落とされてもおかしくないほどの脅威にさらされています。

石平、ロバート・D・エルドリッヂ『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス)
石平、ロバート・D・エルドリッヂ『これはもう第三次世界大戦どうする日本』(ワニブックス)

中・ロ・北とまさに「悪の枢軸」の復活です。

これは絵空事でも何でもなく、現に70年前の朝鮮戦争で起きたことの再来です。あの戦争では中国とロシアが北朝鮮の金日成<キムイルソン>の後ろ盾になって韓国を侵略し、当時の国連軍や米軍を苦しめました。今の悪の枢軸の力をもってすれば、台湾、北海道、韓国への同時侵攻も十分可能です。そうなったら日米同盟では対応できない。ましてや軍事同盟でもない日米豪印4カ国の「クワッド」では対応できない。

日本は対岸の火事どころか、世界で最も危険地域の最前線に立たされていることになる。まさに悪夢です。尖閣諸島や沖縄を守るというようなレベルではなく、日本全体の安全保障は戦後最大の危機にさらされるのです。

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石 平(せき・へい)
評論家
1962年中国四川省成都市生まれ。80年北京大学哲学部入学。84年同大学を卒業後、四川大学講師を経て、88年に来日。95年神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)の刊行以来、日中・中国問題を中心とした評論活動に入る。07年に日本国籍に帰化。14年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。近著に、『なぜ日本だけが中国の呪縛から逃れられたのか』(PHP新書)、『習近平敗北前夜』『私たちは中国が一番幸せな国だと思っていた』(ビジネス社)などがある。

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ロバート・D・エルドリッヂ 政治学者
1968年、米ニュージャージー州生まれ。90年に米国バージニア州リンチバーグ大学国際関係学部卒業後、文部省JETプログラムで来日。99年に神戸大学法学研究科博士課程後期課程修了。政治学博士。大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授、在沖米海兵隊政務外交部次長などを歴任。日本戦略フォーラム上席研究員。エルドリッヂ研究所代表。著書に『沖縄問題の起源』『尖閣問題の起源』(ともに名古屋大学出版会)など多数。

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(評論家 石 平、政治学者 ロバート・D・エルドリッヂ)

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