そんな言葉を職場で使うことは絶対ないはず…「毒親になりがちな親」が無意識に使っているNGワード
プレジデントオンライン / 2022年7月12日 11時15分
※本稿は、井上智介『子育てで毒親になりそうなときに読んで欲しい本』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
■イヤイヤ期と反抗期がないのは危険
イヤイヤ期と反抗期、子どもの成長過程において、この2つがないのは、かなり危険です。
イヤイヤ期というのは、子どもが2、3歳のころに、あれもイヤ、これもイヤ、とダダをこねる時期。なぜイヤイヤ言うのかというと、いくらイヤイヤ言っても、親がなんとかしてくれるとわかっているからです。これは子どもの安全基地ができている証拠。
子どもがイヤイヤ言わないとしたら、イヤイヤ言うと、どこかにほうり出されるかもしれないし、ごはんを与えてもらえないかもしれない、と子どもなりに命の危機を感じているのです。
実際、0歳や1歳の段階から、親から愛情を与えられていない子は、親の顔色をうかがうのに必死で、イヤイヤという自分の欲求に蓋をしています。たまに「うちはイヤイヤ期もなくて、手がかからなくていい子だった」と喜んでいる親御さんがいますが、そういう話を聞くとドキッとします。
一方、小学校高学年から高校生までの思春期と、ほぼ同時期に起きる反抗期は、子どもが親から精神的に独り立ちするために必要な期間です。乳幼児期は心も体も親と一体化していますが、3、4歳くらいになると、だんだんと体の自由は手に入る一方、心はまだ親と一体化している状態です。
子どもからすると、親の経済力や生活力にはかなわないので、どうしても精神的な上下関係というのがあります。その状態が反抗期までつづきます。
■反抗期がなければ精神的に自立することは難しい
そして反抗期を迎えて初めて、精神的な独り立ちが起きて、いままでの上下関係が壊されてフラットになります。子どもが小学校低学年のころは、親と過ごす時間が多かったけれど、高学年になると友達や自分一人で過ごす時間が増えていきます。それは親のコントロールから抜け出して、精神的な自立に向かっていく過程だからです。
ですから反抗期がなければ、親と精神的につながったまま。独り立ちもできない状態なので、けっしてよくありません。反抗期がないのはほかでもなく、家庭内の緊張が高くて、とても反抗できない状態だからです。反抗したらこわい目にあうという恐怖感にしばられています。
たとえば、ふだんから100点満点ではなく90点だと怒られるような完璧主義の親だと、こわくて反抗なんてできないわけです。
■過剰な勉強も反抗期の表現方法のひとつ
コロナ禍によって「子どもが学校に行きたがらない」と悩む親御さんの声を多く聞くようになりました。なかには親を困らせるために学校に行かない子もいるようです。
不登校は、反抗期と同様に思春期に起きることも多いですが、反抗期とは似て非なるものです。不登校の原因は学校で友達にいじめられて、というのもあるかもしれないし、学校の先生とうまくいかないという可能性もあります。いじめられてはいないけれど、友達とうまくいっていないときもあるでしょう。
しかし、そのあたりから精神的にどんどんくずれていき、うつ症状が出る子どももいます。そこまで症状が出ていなくても純粋に学校が嫌だから行かないという選択肢をとる子もいます。
ここで初めて、少し反抗期とからんでくるところですが、そもそも思春期の子どもは、親と精神的なつながりを切るために親の言いなりにならない行動をしようとします。つまり親の期待と違うことをする。家の中で暴れてみるのもそうですし、学校に行かなくなるのもその一つです。そういった表現方法をとることで、親とのつながりを切る子がいることは知っておいてください。
反抗期の表現方法はいろいろですから、必ずしも反抗期だから不登校になるというわけではありません。逆に親の言いなりにならないという意味で、親の期待のはるか上をいってやろうと、反抗期で過剰に勉強をする子もいます。このように、子どもは反抗期に親との精神的なつながりを切っていきます。不登校は、その表現方法の一つということです。
■「ちゃんとしなさい」はNGワード
子どもが親から離れて精神的に自立していくには、やはり子ども自身が自分で決めていくことが大切です。
親はその機会をしっかりと与えること。親が先に立って、この学校がいいよ、服や髪形はこうしたほうがいいよとやると、子どもは自分で決めることがどんどんできなくなり、親の指示がないと動けなくなってしまいます。これこそ精神的に自立できていない状態です。これでは、いつまでたっても、子離れも親離れもできません。
子育てするうえで、子どもの意志や気持ち、欲求をすべて尊重すればいいというものでもありません。しつけは必要ですし、親として世間のルールを伝えることは重要です。特に教えなくてはいけないのは、自分の命や健康を大切にすること。そして人に危害を加えないこと。これらに関することは優先度が高いので、そのルールを破ったときには、しっかりとしからなければいけません。
ただ、しかるときは、子どもの心を傷つけないようにしましょう。しかることがダメなのではなく、子どもの心を傷つけないようにしかることが大事であり、何がダメなのか、その理由を伝えて、どうすればいいのかを教えるようにしましょう。
親は子どもをしかるときに、つい「ちゃんとしなさい」と言いがちですが、「ちゃんとしなさい」では、あいまいすぎて、子どもはどうふるまえばいいかわかりません。よくわからないので結局、親の顔色をうかがう子になってしまいます。
■職場で部下に「ちゃんとしなさい」と言わないのと同じ
たとえば、子どもがスーパーで走り回っていたら「ちゃんとしなさい」ではなく、「人がたくさん買い物しているから、走り回ったら危ないよ。ゆっくり歩こうね」と、何がダメで、どこを直せばいいのか教えてあげる必要があります。
大人は職場で部下に向かって「ちゃんとしなさい」とは、絶対に言いませんよね。「この書類をちゃんとしなさい」と言われたら、もう少しくわしく教えてよ、となるのではないでしょうか。これが子ども相手になると、親は意外にも言ってしまうので、気をつけていきましょう。
しかるときは“どうすればいいのか”まで教えて
自分の命や健康を大切にすること、他人に危害を加えないこと、子どもがこれらのルールをおかしたときはしかりましょう。ただししかるときは、理由をつけてどうすればいいかを教えます。「ちゃんとしなさい」はNG。日常の生活習慣は、朝起きる時間と食事の時間を固定すると、ととのいます。
■しかるときは理由と基準がポイント
もちろん子どもは未熟なので、まちがっていることもたくさんあります。なんでもかんでも子どもの言うとおりにすることが正しいわけではありません。ときには親が正しく教え、傷つけないようにしかることも必要になります。
先ほどもお伝えしたように、しかるときは頭から否定せず、なぜそうするべきか理由を伝え、明確な基準を示すことがポイントです。そうしなければ子どもとしても、次にどうすればいいのかわからなくなります。
まず、こういう理由があるからダメなんだよと伝え、そのときに子どもが100%理解できなくても、その失敗経験を重ねることで、あとで子どもはあのときに親が言っていたのは、こういうことだったのかと納得できるようになるのです。
またしかるときも、親として私はこう思うけど、あなたはどう思うの? というコミュニケーションを大事にしてほしいです。親が自分の願望を伝えるのは悪いことではありません。親の願望を出したうえで、子どもがどう判断して、どうしたいのか、それを表現できる場所や機会を与えてあげてください。それが子どもからすれば、自分の意見を述べる練習にもなります。
反対に感情的にしかるだけだと、子どもは自分の意見が出せなくなるので、十分に気をつけてください。それこそ親が自分の思いどおりにしようとして、「ああしなさい! こうしなさい!」と一方的な命令口調でしかっていると、子どもは恐怖心でコントロールされるので、いつまでも人を信用することができなくなることもあります。しかるときこそ、十分に注意しないと、子どもの心を支配してしまいます。
■まずは自分の精神的なコンディションを見直したほうがいい
しかるときは、つい感情的になってしまうので、そうならないように気をつけたいものです。そもそも感情的になるのは、精神的なコンディションがよくないから。ですから前段階として、親の精神的なコンディションをととのえておくことも大事なことです。
人間は何かに追われていたり、疲れていたりすると、マイナスの感情が出やすいもの。その頻度を減らすには、自分がある程度、満たされて精神的な余裕のもてるような、幸せだな、ハッピーだなと思えるような時間が多いほうがいいのです。子どもをしかりたくなったら、まずはそこから見直してください。
毒親化を防ぐには、ぜひ子どもへの伝え方を学びましょう。最終的に子ども自身が決定できるような方法がポイントになります。そのポイントは2つ。
■まずは子供の気持ちを言語化して共感してあげる
一つ目は「子どもの気持ちを言語化して共感、承認する」ことです。そのうえで親は、「親としてはこう思うけれど、あなたはどう思うの?」と自分の気持ちを伝えて子どもに決めさせる言い方をします。
世間体を気にする親御さんによくあるのが、子どもが選んだ服に対して「なんでそんな服を着るの?」と言ってしまうこと。しかし子どもは子どもなりに、それがいいと思って着ているわけですから「その服が着たかったんだね」と、まず共感して、承認してあげる。
子どもが成長して、面接など何かオフィシャルな場所に行くときに、親としてふさわしくないと感じる服装をしていたら「面接なら、こっちのほうがいいと思うけれど、どうかな」と自分の気持ちを伝えて問いかけます。
それでも本人が自分で選んだものがいいと思えば、それでかまわないのです。親がこれを着ていきなさいと決めるのではなく、子どもが自分で選ぶ、親は子どもにそういう機会を与えてあげることが大切なのです。
■否定するのではなく具体的な指示を出したほうがいい
2つ目のポイントは「否定語を使わない」ことです。以前、駅で見かけた光景に感動したことがあります。5歳くらいの男の子が電車を好きなのか、テンションが上がって、駅のホームをバーッと走りだしたんです。私ですら、線路に落ちたら危ないなと思うようなシーンでした。
そうしたら、お父さんらしき男性が、その子を追いかけて手をつかんで「ここは危ないから歩こう!」って言ったんです。この状況なら「こら! 走るな!」と大声を出してしまいそうなのに、「歩こう!」と表現されたのには驚きました。おそらくこの人は、ふだんから子どもを否定しないようにしているんだろうなと思いました。
そういう家庭なら、子どもは自分が否定されない安心感から、心もすこやかに育っていくでしょうね。
まず子どもの気持ちに共感してあげよう
子どもをしかるときは、理由を示して明確な基準を示しましょう。親の考えを
伝えながら、対話することも重要です。精神的に余裕がないと感情的にしかっ
てしまうおそれがあるので十分に注意。伝えるときは、子どもの気持ちに共感、
承認すること、否定語を使わないことを大切にしてください。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務。
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(産業医・精神科医 井上 智介)
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