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仕事に行き詰まったときに歴然とする「人事評価トップ5%社員」とそれ以外の決定的な差

プレジデントオンライン / 2022年6月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LeoPatrizi

各企業の人事評価で高い評価を受ける「トップ5%社員」は何が違うのか。AIを駆使した調査・分析を主導したクロスリバー代表の越川慎司さんは「効率重視かと思いましたが、彼らが大切にするのは“目的”と“効果”であり、また、行動に際しては常に“仕組み化”“自動化”を考える傾向がはっきり浮かび上がりました」という──。(第1回/全4回)

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■仕事が終わらないのは「やり方」のせい

仕事が終わるのは、いつも夜遅い時間。サボっているわけでは全然なく、一生懸命に働いているのに、気がつくと時間が足りない。目先の業務に追われるばかりで、周りに評価されることもない。上司には「残業しないように」と言われているが、定時に終わることなどめったにない。

「頑張らなきゃ」とぼんやり思いはするけれど、そこでモチベーションを高める余裕はない。そもそも、バリバリのキャリアを目指しているわけでもないし、それに、家に帰ったら好きなことをしたい──。

こんな読者の方は多いのではないでしょうか。私もかつては、その一人でした。

夜遅くまで仕事が終わらない最大の理由は、能力が低いのではなく、「もっと簡単なやり方」を見つけていないからです。いつも仕事に追われるのは、やる気がないからではなく、リソース(時間・集中力・エネルギー)が限られているからです。

■目の前の仕事を「こなす」ことが目的になっていないか

「ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える(If all you have is a hammer, Everything looks like a nail.)」という英語のことわざがあります。

限られた手段しか持たない、もしくは、固定概念や過去の成功体験から限られた手段に固執するあまり、問題の本質を正しく捉えられなくなることへの戒めです。

目の前の仕事をただこなすことが目的になってしまうと、本来目指すべきことが達成できなくなります。

手段が目的化され、結論ありきの行動をすることを「確証バイアス」と呼びます。あらかじめ決めつけた結果に向けて行動をすることが目的となってしまう現象です。

いつまでも仕事に追い回されることを無意識のうちに「よし」としてしまい、本来の目標から離れて仕事をこなすことが目的となり、作業充実感を持ってしまうのです。

■最小努力で“残業沼”から脱け出す方法

こうした“残業沼”のサイクルから抜け出し、「最小の努力で現状から脱出できる方法」があります。それは「人事評価トップ5%社員」(以下、5%社員)が実践している時間術です。この時間術は一般的な95%社員(以下、95%社員)でも実践可能です。

事実、私たちが明らかにした「5%社員の時間術」をマネてもらったビジネスパーソン2万2000人のうち、89%の人が「より短い時間でより成果を残すことができた」と答えています

私はかつてマイクロソフトに勤めていましたが、独立して業務効率アップと学び方改革を支援する会社、クロスリバーを創業しました。それから800社以上の企業・団体の生産性向上プロジェクトに関わり、のべ17万人のビジネスパーソンの業務効率アップを支援してきました。

クロスリバーのメンバーは、私も含めて、「週休3日」でこうした支援を提供しています。なにより私たち自身が時短の実践者なのです。

■多くの人が「効率」を上げようとしている

今回、クロスリバーが支援している企業・団体の中で、突出した成果を出している人を見つけ、各社の経営陣の協力を得て、人事評価でトップ5%社員の言動を分析。そこから、再現性が高く、実践的な「残業沼から脱け出す最良の方法」を探りました。

調査で判明した興味深い事実があります。それは、「仕事をするうえで効果と効率のどちらを優先させますか」という質問に対し、95%社員の53%が「効率を重視する」と回答したことです。

つまり、半分以上の人が、「仕事を効率的にこなす」ことを目指しているのです。

■5%社員は「効率」より「効果」を重視

たしかに、働き方改革の影響で「早く仕事を終わらせなくてはいけない!」というプレッシャーが高まっています。

夜遅くまで働いて苦労していることをアピールしても評価されないので、残業時間を少なくして仕事をこなすことに価値を見出している人が増えている現状もあります。

しかし、極端なことを言えば、効率だけを目指すのは本末転倒です。やらなくてもいい仕事を効率的にこなしても、成果につながらないからです。

さらに、重要度の高い仕事にエネルギーを注がず、軽くこなしていては、本来の目的が達成されず、「成果」からは遠のきます。

そのためか、5%社員は、そもそも「効率」という言葉に疑問を抱いており、「何でもかんでも短い時間でやればいいわけではない」と指摘しています。5%社員は、完璧な効率主義者かと思ったら、実は「効果優先主義」だったのです。

■効率優先で目的があいまいでは本末転倒…

その一方で、「効率を重視する」と答えた5%社員は21%しかいませんでした。その理由について尋ねたところ、最も多い発言が「目的」「達成」「無駄」でした。

越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

AI分析(テキストマイニング)によると、「目的」と「達成」の出現度はほぼ同じで、「無駄」の前には否定の言葉がつくパターンが多くありました。

つまり、「達成すべき目標・目的が明確でなかったら、効率重視で仕事に取り組んでも無駄だ」という回答が最も多かったのです。

たとえば、早く登ることだけを考えて、頂上を見定めずに山道へ駆け出したところで、スムーズに山頂にたどり着くことはできませんよね。

5%社員は、効率ばかり重視することをリスクとして捉えているようです。

■効率を高めるのはあくまで「手段」

5%社員は初動が早く、業務遂行能力も高いのですが、最初のステップである「明確な目標を持つこと」を重視すると同時に、「明確な目標がないことの危険性」についても深く理解しています。

最短距離の仕事術を実践するのは、あくまで成果を出すためであり、それ自体が目的とは考えません。

仕事効率を高めることを目的にしてしまうと、達成すべき「本来の目標」を見失い、効率が高いのにいつまでも頂上にはたどり着かないという悪循環に陥りかねません。効率を高めることは、「あくまで手段だ」と考えるのが5%社員なのです。

■45%の人がハマる落とし穴「努力で何とかなる」

努力は美徳とされ、努力しないで何かを成し遂げる人はずるい、と考えるビジネスパーソンがいまだに多くいます。17万人のビジネスパーソンを対象にした別のアンケートでは、「努力が報われない」「努力をしていない人がいる」などの回答が多くありました。

頑張っているのに評価されない、という思いを抱え、自社の人事評価制度に賛同しない社員は実に4割以上

長期トレンドとして成果主義が続いており、また欧米企業が採用するジョブ型評価も徐々に浸透しつつあります。「プロセスよりも結果」「能力よりも成果」が評価される企業環境では、「努力」が過去よりも評価されにくくなっているのは事実でしょう。

また、目標に向かってひたむきに努力することは正しいことですし、目標を達成していないのに努力をしないのは言語道断です。

しかし、努力もプロセスの一部です。厳しい見方をすれば、それが「間違った努力」なのであれば、マイナス評価になってしかるべきです。

■95%社員はプロセスの努力をアピールする

成果が出ていないと、プロセスの努力をアピールする95%社員が多いことも事実です。

3万2000人の95%社員に仕事が行き詰まったときの打開策についてアンケートをとったところ、約半分の人が「自身の努力」と回答しました。

高度経済成長期には、何度も徹夜して、その努力をアピールすれば、それが会社への忠誠心の証明となり、また周囲の同僚から同情されることで、相対的に社内評価を得られることもあったでしょう。

しかし現在は、限られた時間の中でスマートに成果を出す人が評価されるのであって、「努力アピール」は成果が出ていないことを意味します。

そもそも、「うまくいかなかったら努力で解決する」という根性や体力に委ねる働き方ができるのは、若いうちだけです。時間と同じで、若さも有限であり、努力や体力を解決手段にしていては、継続自体が困難です。

■努力しなくても仕事がこなせればOK

私自身、スキルに乏しかった若い頃は、睡眠時間を削り、体力勝負でなんとか仕事を終えようと努力したことがありました。その結果、精神疾患を患(わずら)うことになってしまいました。

そうした実体験があることから、今回の調査で、とある5%社員が発した「努力は一見ポジティブな行動に見えるが、美化されすぎているのではないか」との言葉に、強い衝撃を受けました。

仮に、そのときは頑張って努力で乗りきったとしても、「これがずっと続く」と思うと、「耐えられない」と感じたり、心身が限界に達してしまったりすることがあるはずです。

逆に、努力しなくてもしっかり業務がこなせるのであれば、“仕事”としてはそれでいいわけです。

■「仕組み化」「自動化」を実現する

5%社員の行動をAI分析してわかったことは、たとえ体力がなくても、努力する気持ちになれなかったとしても、“業務そのもの”とは無関係の要因に左右されずに「仕事が勝手に終わる」ように“仕組み化”や“自動化”を確立させている、という事実です。

反対に、努力で無理やり解決しようと考えると、一見手間に思える仕組み化や自動化になかなか手をつけられなくなります。

今回、各企業のトップ5%人材を分析し、彼らが実践する仕組み化や自動化のコツをつまびらかにしました。ぜひ本書『AI分析でわかった トップ5%社員の仕事術』も参考にしていただきつつ、体力勝負の辛い努力を卒業し、最小の努力で仕事が終わる、あなただけの「仕組み化」を完成させてください。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約2万人が受講し満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)がある。

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(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員 越川 慎司)

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