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「10時間かかる仕事を8時間で終わらせようとする」二流社員がいつまでも二流である根本原因

プレジデントオンライン / 2022年7月1日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

「10時間かかる作業を8時間で終わらせるために効率化しよう」、一見正しそうなこの考え方に「落とし穴がある」と指摘するのは、2万2000人におよぶビジネスパーソンの調査・分析を主導したクロスリバー代表の越川慎司さんだ。人事評価トップ5%社員は、成果を考えてそもそも「無駄なこと」は「しない」と決める。ところが95%社員は、作業それ自体に充足感を覚えて、いつまでも延々とやり続けてしまう傾向があると指摘する――。(第2回/全4回)

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■「時短」を目指す95%、「成果」を目指すトップ5%

「仕事の効率が高い」という言葉の捉え方は、人によって違うことがわかりました。

多くのビジネスパーソンは、説明資料や報告書の作成時間を「より短く」しようとします。定量的に見れば、10時間かかる仕事を8時間で終わらせることができれば、効率が高いといえるでしょう。

ところが5%社員は、「これは本質的な時短ではない」と捉えていました。

5%社員は、作業充実感に浸ると目的を見失う危険があると心得ているので、目的なき時短には価値を見出しません。

彼らは、「作業効率」という言葉自体の定義を明確にすることにこだわります。さもないと、成果につながらない作業をすることそれ自体に充実感を覚え、結果的に長時間労働から抜け出せなくなると考えているのです。

■5%社員は「必要のない作業をやめる」ことを最優先

5%社員は、「作業は必ず目的を明確にしてから」を鉄則にしています。その作業の必要性を確認し、必要最低限のプロセスを描いてから、作業を開始します。

5%社員にインタビューしたところ、「最も効率が高いと感じるのは、成果につながらない作業、目標達成にインパクトを与えない作業を『やめた』ときだ」と答えていました。

そもそもその業務が不要なものなら、効率を上げて仮に8の地点からスタートしたとしても、どこまで行っても「成果」はゼロにしかなりません。

5%社員はローリスク・ローリターン戦術をとるので、成果をコツコツと積み上げます。効率化の観点では、必要のない作業にかける時間をゼロにしようと注力します。そのうえで、目標達成にインパクトを与える作業にエネルギーを集中しているのです。

■成果を上げて処理時間を短くするのは「やり方」の問題

では、「インパクトを残せる作業を見抜く力」と「必要な作業の処理時間を短くする力」、この2つはどうしたら身につくのでしょうか。

その方法について、95%社員の67%が「センス=先天的な才能」と答えていて、この結果に愕然としました。つまり、この2つの力は「後天的には獲得できない」と95%社員の7割が考えているのです。

センスや感覚なら、たしかに再現は難しく、誰でもできるものではありません。しかし、成果につながる仕事の見極めができないのは、能力がないからではなく、「やり方」を知らないからです。

■5%社員は週1回15分の「内省」を大事にする

5%社員の習慣を見てみましょう。

彼らは、定期的な「内省(振り返り)」を通じて、成果につながったかどうかを必ず確認しています。具体的には、週に1回15分の内省を習慣にしているのです。

そして、この確認作業で「重要ではない」と判断した仕事には時間とエネルギーを費やしません。

重要でないものの、チームワークを維持するためにどうしても出席すべき会議のようなものがあれば、重要な仕事を進めながら、支障のない範囲で参加していました。つまり、生産性の低い会議は「副」、重要度の高い仕事は「主」と区分して、マルチタスクを実践していたのです。

5%社員は、内省を習慣にすることで、常に成果につながらない仕事の見極め力を磨き、仕事にメリハリを持たせていました。

この方法は、5%社員でなくても再現できる“ちょっとしたコツ”ではないでしょうか。「見えない不安」のために、ムダな仕事、ムダな作業時間が増える結果になっていないか、毎週1回、ぜひ振り返ってみてください。

■情報収集のポイントは「何のために」「何を」「いつまでに」

続いて、95%社員にありがちな、正しそうで実際には効果の低い、「効率化の勘違い」を3つ紹介します。

【勘違い①】「重要そうな情報を集めたほうがいい」と思っている

不安を取り除くために行動をしていたら時間が足りません。

「勉強しておいたほうがいいだろう」と思って、図書館へ行ってパソコンを立ち上げたものの、SNSでやりとりしていたら閉館時間になった。「仕事に関係ありそうだな」と思ってネット記事をたくさんストックしておいたけれど、結局読まない……。

勉強や情報収集は手段です。「何のために」「何を」「いつまでに」が決まっていないと、プロセス自体に満足してしまい、目標を達成することはできません。

■5%社員は情報取集を「重視しない」

意識が高く、情報収集に明け暮れる人は、数多くいます。285社、約1万2000人を対象にした調査では、67%の人が「成果を上げるための情報収集は『重要』もしくは『とても重要』」と答えています。

越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

5%社員に限定して同じ質問をしたところ、「成果を上げるための情報収集は『重要』もしくは『とても重要』」と答えたのは23%でした。

5%社員の多くが、情報収集を「重要でない」と答えたのは、常に新しい情報を追おうとすると、そのたびに「検索」という作業が発生し、時間を奪われるからです。

またググっても(Googleで検索しても)、その検索結果は誰でもアクセスできる情報なので、希少性はありません。

誰かの代わりに検索して、存在をアピールすることもできますが、それは労務を提供しているだけであって、なんら付加価値を生みませんし、残業ループから抜け出すことにもつながりません。

情報収集はあくまで手段です。「スマートに仕事をこなす」というゴールに向けて、必要最低限の労力で有用な情報だけを収集し、そこから得た「学び(インサイト)」を自身の行動に活かしていくことが求められます。

■ショートカットキーを必死に覚えるのは「ムダ」

【勘違い②】「とりあえずショートカットキー」と思っている

ショートカットキーは、パソコン操作を簡単に行うための機能です。これを活用すれば、マウスで操作するより1~2ほど工程をカットできるので、効率よく仕事を行うことができます。読者の方も、コピー(Ctrl+C)や、貼り付け(Ctrl+V)のショートカットキーは、よく使っているのではないでしょうか。

しかし、ショートカットキーを覚えることも「手段」です。

たとえば、本稿執筆にはWordを使っていますが、実に200種以上のショートカットがあります。Outlookには約150、PowerPointには約140ものショートカットがあります。

使わなくていい機能も多々あるので、全部を覚えようとするのは時間の浪費以外のなにものでもありません。

「ショートカットキーを覚えて、年間30時間の作業を減らした」といった趣旨のWeb記事をよく目にしますが、それは書いた人の個人的な実績であって、誰もが同じように効果が得られるものかは定かではありません。

ショートカットキーも、あくまで「手段」として活用するべきものであって、習得が目的になっては本末転倒です。自分の作業に役立ちそうなショートカットキーに絞り込み、いくつか試したうえで、効果があったもののみ継続して活用することが大事です。

■ショートカットキーより辞書登録機能を

私たちが4万5494人を対象に行った行動実験では、ショートカットキーを数多く覚えるより、辞書登録機能を使いこなしたほうが時短につながることが明らかになりました。

日本語の場合は、「ひらがな入力→漢字変換」という工程があるため、変換プロセスがスムーズになるだけでかなりの効果を得られます。

Windowsのパソコンであれば、指定した文字をコピーし、IMEの辞書登録に読み仮名を入れて登録。スマートフォンなら、設定で「ユーザー辞書」を開き、そこに「漢字」と「よみ」を登録します。これだけで、いくつかのステップを1つに縮小できます。

変換されにくい漢字や、忘れてしまいがちな情報を辞書登録するのを習慣にすれば、ショートカットキーを必死に覚えるよりも高い時短効果が得られます。

■「バイアス」には要注意

【勘違い③】「自分の経験と知識で考えよう」と思っている

根拠がない思い込みで行動を抑止する人がいます。最近では、そういう状況を「バイアスがかかっている」と言うことが増えてきました。

「バイアス」は、先入観や偏りという意味で、考え方や判断を偏らせる原因となるものです。

コロナ禍で多くのビジネスパーソンがテレワークを初めて経験しましたが、戸惑いの連続だったと思います。自宅での仕事環境が整いにくかったり、仕事とプライベートのオンオフが切り替えづらかったり……。

とくに困難に直面したのが、企業の管理職と経営幹部でした。目の前にいない部下たちを管理する経験はなく、さらに、オンライン会議やビジネスチャットなども駆使しなければならなくなりました。ITを使うことが苦手な中高年には、すっかり参ってしまった人がいたはずです。

また、「努力」と「忍耐」が評価されて管理職になった世代の人には、私服を着てリラックスしながら家で仕事をするスタイルに心から同意できない人も多くいました。

パズルのピースからの脳と碑文バイアス
写真=iStock.com/designer491
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/designer491

■上司も部下もバイアスで粗探しを始める

そうした管理職は「観察者バイアス」「確証バイアス」がはたらき、結果として、部下たちの粗探しをするようになってしまいました。

テレワーク中に連絡をとれないことが1~2回あっただけで、「テレワークでサボっている」とその部分にフォーカスし、部下に出社を促す管理職がかなりいたと耳にします。

そもそも、オフィスにいてもすぐに連絡がつかないことがあったり、ビジネススーツを着ていてもリラックスした状態で仕事をしたりすることはいくらでもあるのですが、“そこ”には意識が及ばないのです。

バイアスで正しい判断ができないのは、管理職だけではありません。

「真面目に努力していれば評価してもらえる」「苦労する姿を見せれば、いつか上司は同情してくれる」「あの人はプレゼン下手なのに、なんで評価されているんだ。納得できない」……。部下の立場の人たちにありがちなこうした考えにも、「確証バイアス」と「観察者バイアス」がかかっています。

■5%社員は「当たり前」を疑う

一方、5%社員は、「当たり前」を疑うことを原則とし、バイアスの影響で間違った判断をしないようにしています

自分で当然だと思っていた勉強法や、社内で当たり前のように行っていた議事録作成といったタスクに対しても疑問を抱きます。

さらに、「社内の常識は世間の非常識」という考えで、社内業務の改善プロジェクトに関わる5%社員がたいへん多く存在していたことは特筆に値します。

■バイアスの影響を回避する「5%社員の習慣」

5%社員がみずから実践する「バイアスの影響を抑えるための習慣」には、次の3つの特徴があります。

①社外の接点を増やそうとする

たとえばメンター(相談相手)を社外に持つ比率は、95%社員の6倍以上。また、NPO(非営利団体)の慈善活動や読書会への定期参加、ランニングクラブへの加入など、社外のコミュニティに参加する比率は、95%社員の4倍以上です。

②内省タイムを活用する

先ほど紹介したように、5%社員には週に1回、15分の内省を行う習慣があります。

内省では、1週間に費やしたタスク時間とそれによって生じた成果を振り返ります。これにより、成果につながらない非生産的な作業を見つけ出すだけでなく、なぜその作業をする判断に至ったのかを考えます。

判断理由を追跡することにより、作業前に抱いていた「勝手な思い込み=バイアス」を抽出していたのです。

③批判的思考(クリティカルシンキング)を実行する

「クリティカルシンキング」は、経験や直感に頼らず、客観的なデータや第三者の視点を取り入れることで、“思い込み”を排除する思考法です。誰かに何かを伝えるとき、客観的な視点で考え抜いたインサイト(洞察)を説明に加えることで、相手の納得感が増し、巻き込みやすくなる効果もあります。

ある5%社員は、「自分の考えを疑う姿勢(クリティカルマインド)を持つことで、正しい問いを立てられる」と発言していました。「この説明で相手を説得することができるのか?」「この資料は自分の思い込みでつくっていないだろうか?」といった問いを立て、その答えを用意するようにしているそうです。

5%社員が会議や説明会での質問応答がうまいのは、普段から、こうしたクリティカルシンキングを元に想定問答しているからです。

■内省習慣で「業務の無駄取り」ができる

5%社員が実践している「バイアスの影響を抑える習慣」を95%社員に適用させるために効果的な方法があります。それこそ、5%社員たちが実践している「週に1回15分の内省タイム」にほかなりません。

95%社員の協力を得て、毎週金曜に15分の内省タイムを確保してもらいました。そして、直近1週間で行った業務内容と、それぞれの業務に費やした時間、生み出した成果を振り返ってもらいました。すると、それまで「よかれ」と思って行っていた業務が成果につながらないと自覚する参加者が続出しました。

自分自身で「無駄だ」と認識できた業務が、週稼働の平均11%ほどあることがわかり、彼らはそうした業務をやめる決断をすることができました

過去の経験から偏った見方をしてしまうことはゼロにはできません。しかし、バイアスの影響を抑える行動を習慣にすれば、間違った判断をする確率を下げられるのです。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約2万人が受講し満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『「普通」に見えるあの人がなぜすごい成果をあげるのか 17万人のAI分析でわかった新しい成功法則』(KADOKAWA)がある。

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(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員 越川 慎司)

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