株を買うならエクセルで「目標株価」を計算せよ…3年で元手を10倍にした投資系YouTuberが注目の5銘柄
プレジデントオンライン / 2022年6月30日 11時15分
※本稿は、森口亮『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「これぐらい上がってもおかしくない」という株価を出す
私が株を買う前に知りたいのは、「目標株価」です。私が作ったExcel分析シート(『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』からダウンロード可能)は、指定されたセルに業績や株価指標の数字を打ち込むと、自動的に目標株価が計算される設定になっています。
目標株価というのは、その銘柄の業績から見て「株価がこれぐらい上がってもおかしくない」という目安になります。株式投資というのは、買った株が買値より上がれば儲かります。
しかし、多くの個人投資家はその株を買うとき、いったいどれぐらいまで株価が上昇するか、目標を設定しているわけではありません。「業績がいい」「株価が上昇トレンド」「新製品が人気」「ビジネスモデルが斬新」「経営者が信頼できる」など、買う理由はさまざまです。
■「ただ、何となく上がる」で買ってはいけない
しかし、多くの場合、ただ何となく上がるのではないか、と思って株を買う人が大半ではないでしょうか? そんな、ある意味、いい加減な期待や思い込み、直感だけを頼りに、大切なお金をつぎ込んでしまっていいものでしょうか?
「この銘柄は現状の業績予想から見るとこのぐらいまで上がる」という確かな目標があったほうが、より精度の高い株式投資ができるのではないでしょうか?
プロの機関投資家やファンダメンタル分析を重要視する中上級者クラスの個人投資家の多くは、目標株価を設定して株を買っています。「ただ、何となく上がる」ではなく「このぐらいまで上がる」という具体的な目標株価をきちんと設定することで、「買う理由」を明確化することが大切だと考えます。
■目標株価を決めるのに「PER」を使う理由
「この企業の株価はいくら?」という“難問”にヒントをくれるのがPER(株価収益率)です。PERは、1株益(EPS)の何倍まで株価が買われているかを示した株価指標です。
現状の日本株ではPER15倍が基準で、15倍よりも高ければ割高、低ければ割安。言い換えれば、PER15倍以上の銘柄は、その企業の利益成長に対する投資家の期待値が高いと考えられます。つまり、PERは「今後、その企業の業績がこれぐらい伸びれば、投資家はその何倍まで株を買うだろう」という“ものさし”に使えるのです。
例えば、その企業の1株益が今期100円で株価が1000円だったらPERは10倍。もしその企業の来期1株益が150円に成長するとしたら、現状のPER10倍という投資家の評価値が一定なら、来期の株価は「1株益150円×PER10倍=1500円」まで値上がりしてもおかしくない、というわけです。これがPERを使った目標株価の計算方法になります。
PERの計算式は「PER=株価÷1株益」です。
この式の「÷1株益」の部分を左辺に移動すると「PER×1株益=株価」になります。
そう、PERと1株益がわかれば、今後の株価は「株価=PER×1株益」という計算式で計算できるんです!
株価がPERと1株益の掛け算で決まるということは、業績が株価の構成要素の半分を占めるということ。そして、残り半分は、投資家の期待値を示したPERによって決まる、ということです。
ただし、私たちが知りたいのは、すでに誰もが知っている現在の株価ではありません。将来の株価の目安になる目標株価です。式に表すと「目標株価=目標PER×1株益」となります。
■1株益は『会社四季報』に書いてある
株価は現在の業績ではなく、未来の業績予想を織り込んで値動きします。株価が「景気の先行指標」といわれるのはそのためです。目標1株益の設定にも当然、すでに終わった決算期の業績ではなく、まだ終わっていない“近い未来”の業績予想の数字を使うべきです。
そんなときに役立つのが『会社四季報』の2期予想。『会社四季報』が独自に予想した、その企業の今期と来期の業績予想です。今期予想については企業自体も決算発表の際に今期の業績見通しを「会社予想」として発表します。しかし、保守的な数字である場合も多く、来期の予想までは発表しません。
「目標株価=1株益×目標PER」ですから、あとは目標PERを設定すれば、目標株価を計算できます。株価は需給や全体相場の状況でいかようにも動くので、目標株価といっても「必ずそこまで上がるもの」ではないですが、業績に基づいた上昇目安を付けるのはとても重要だと考えています。
■簡単に成長株を探せる3つのステップ
①Excel(筆者作成)を使って3期平均の増益率を求める
②PER対応票(筆者作成)で目標PERを調べる
③目標株価を計算する(自動計算)
ここからはちょっと“アナログ”な判断が必要です。
私が作成したExcelの中のPER対応表から目標PERを独自で判断していきます。
①Excel(筆者作成)を使って3期平均の増益率を求める
『会社四季報』の業績欄から前期→今期予想→来期予想の営業利益を入力して「3期の平均増益率」を計算します。
ここでは3期平均の増益率が15%という企業があったとしましょう!
②PER対応票(筆者作成)で目標PERを決める
PER対応表の縦列の増益率5%〜70%の中から、最も近い「%」を選択します。
対応表の横軸には1年目から5年目までの枠があり、増益率ごとに2段表示になっています。PER対応表が何を計算しているかというと、例えば増益率15%の利益成長が今後1年~5年続いた場合、営業利益が0年目の何倍まで増えるかを複利計算した数字が上段に表示されています。
現在1に対して、1年後に15%成長したら営業利益は現在の1.15倍になります。さらに1年後に15%成長すると、「1.15×1.15=1.3225」となり、小数点第2位以下を四捨五入すると、約1.32倍になります。3年目は1.52倍、4年目は1.75倍、5年目は2.01倍と増えていきます。つまり15%増益をずっと続けていけば、5年後にその企業の営業利益は現在の2倍以上になる、ということです。
PER対応表の各増益率の下段に表示されているのは、毎年増える営業利益を株価が織り込むとしたら、PER何倍まで許容されてもいいかを計算したものです。PERの基準値は15倍に設定しています。その15倍に上段で計算した営業利益の伸び(倍率)を単純に掛け算したものが下段の「目標PER」の欄に表示されます。
■何年後の成長を見越して株を買うべきか
③目標株価を計算する(自動計算)
最後に、Excelに目標PERを入力すると、目標株価を計算することができます。ただ、何年目の目標PERを採用するかは悩むところです。
仮に15%の増益率が1年続けば営業利益は1.15倍になります。もし株価が、1年後に1.15倍となる利益の成長を織り込んだ水準まで買われるなら、「PERの基準値15倍×増益倍率1.15倍=17.3倍」。PER17.3倍まで買われてもおかしくない、ということになります。
相場が好調だったり、企業の利益成長に対してさらなる上ブレ期待があれば、2年〜5年後の利益水準を織り込んで上昇することもあります。増益率15%を5年連続で続けると、5年後の利益は現在の2倍まで増えます。
「その程度の成長は達成できる、もっと成長してもおかしくない」と投資家が考えているなら、「15倍×2倍=30倍」となりPER30倍という水準まで株価が買われても、計算上はおかしくないのです。
株式投資は未来の成長に対して投資をしていきます。
中長期の投資家は常に数年先(3〜5年程度)を見て投資しているといわれています。その目安の数字を一目で探せるのが、先述の目標PER対応表です!
ただし、高い利益成長を継続するのは難しく、不確実性が高まります。「他の投資家が、何年先の利益まで見て、その銘柄に投資しているか?」は、過去の実績値からある程度推測できますが、正確にはわかりません。
加えて、PER倍率が高くなれば、株価の割高感を意識する投資家が増えるので、ちょっとした悪材料や、好材料が出尽くしたりするだけで株価が大きく下落するリスクも高くなります。
対応表では利益成長が「1〜5年間続いた場合の妥当なPER倍率」という形でかなり幅を持たせています。より精度や安定性を高めたいと思うなら、1年目や2年目ぐらいの目標PERで目標株価を計算したほうが無難です。なるべく無難に設定しても、目標株価が高い場合は株価上昇の確率は高まってくるでしょう!
■今期の『会社四季報』でわかった5つの注目銘柄
さて、ここまで聞いて「いや、ちょっと待て。そのExcel分析シートとやらを前提で話されても困る」と思った方もいるでしょう。なので、今回は『会社四季報 2022年3集夏号』(2022年6月17日発売)からExcel分析をベースに、私が注目している5つの会社をあげましょう。
銘柄 3期平均増益率 目標PER 目標株価
①ヤーマン(6630) 10.2%【27.7%】 20倍【25倍】 1831円【2988円】
②チェンジ(3962) 47.80% 30倍 2358円
③デクセリアルズ(4985) 13% 20倍 7005円
④ファブリカコミュニケーション(4193) 18.70% 30倍 4818円
⑤ウォンテッドリー(3991) 111.60% 33倍 2917円
①ヤーマン(6630)
美容・健康機器メーカー。2022年6月14日に本決算発表をしていています。【】はそれを反映した数値ですが、内容が素晴らしく、上振れました。四季報の発売日以降の株価も堅調に動いています。
②チェンジ(3962)
地方自治体のDX支援やふるさと納税サイト「ふるなび」を運営する同社。業績の成長率がかなり目立っていました。さらに中期経営計画に関するコメントも。ただし、FRBの金融引締めへの警戒により株価は安値圏に低迷していて、目標PERも超保守的に設定。それでも目標株価はプラスになるので、そろそろ上昇に転じてもおかしくはないかとみています。
③デクセリアルズ(4980)
スマートフォンや自動運転車に欠かせない反射防止フィルムをはじめとする、ニッチな電子部品を手がける同社。商品の付加価値は高く、営業利益率は27%を超えています。数年前から大きく業績を伸ばしており、市場の注目度も高まってきています。成長が継続すれば高値更新も。
④ファブリカコミュニケーションズ(4193)
SMSの通知サービスと中古車販売支援で業績を伸ばしている同社。2021年4月に上場してまだ日は浅いのですが、株価はすでに一度底打ちを確認できます。またコロナ禍を挟んだ業績が四季報に載っていますが、安定的に成長を続けていることから、業績の持続性は高いかも。そう考えると強みを感じました。
⑤ウォンテッドリー(3991)
ビジネスSNSを運営する同社の業績が急拡大しています。3期平均ではなく来期増益率をみてかなり無難に目標PERを設定しています。ただし、新市場区分における流通株式比率への抵触懸念があるとのこと。その点に留意して、検討するべきでしょう。
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個人投資家、投資系YouTuber
1983年、埼玉県生まれ。2002年、高校卒業後、美容師になるも、8年間で辞め、職を転々とする。チャイナショックで資産がゼロになり、試行錯誤の末、現在の「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という独自手法を編み出し、約3年で資産を10倍(元手315万円→3270万円)にし、以降も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資 超効率的な「ファンダメンタル分析」入門』(KADOKAWA)。
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(個人投資家、投資系YouTuber 森口 亮)
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