大事なのはネタではない…「雑談をうまく盛り上げられない」と悩む人が根本的に勘違いしていること
プレジデントオンライン / 2022年7月3日 12時15分
※本稿は、芝山大補『おもろい話し方 芸人だけが知っているウケる会話の法則』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■あなたの会話が盛り上がらない意外な理由
・仕事先の人と会話が盛り上がらない
・先輩にかわいがってもらえない
・友人との雑談がはずまない
・意中のあの人との距離が縮まらない
『おもろい話し方 芸人だけが知っているウケる会話の法則』を手に取った人の多くは、そんな悩みを抱えているかもしれません。つまり、会話が続かない、盛り上がらないという悩みです。
とくに、特定の相手やシチュエーションで会話が盛り上がらないと悩む人は多いものです。「なぜかあの人とだけ会話が盛り上がらない」「職場でだけ会話がはずまない」「初対面の人が苦手」といったケースです。
そんなとき、多くの本で教えてくれる解決策は「話をしっかり聞こう」「共通点を探そう」「リアクションを大きく取ろう」といった内容ですよね。もちろん、これらの聞き方やリアクションは大切です。
しかし、それ以前にもっともっと、もーーーーっと大切なことがあります。それは、会話のハードルを下げることです。
特定の相手やシチュエーションで会話が盛り上がらない。じつはその理由は単純明快です。その人、そのコミュニティ、そのシチュエーションにおいて、あなたが「中身のある話しかしてはいけない」と思い込んでいるからです。
■中身のある話題を探すほど会話のハードルが上がる
多くの人は、会話においてキャッチボールが生まれる話題を探そうとします。「最近どう?」「なにかおもしろいことありました?」「最近、なにかあった?」と、会話がはずむテーマを探そうと試みるのです。
しかしこうすると、会話のハードルが上がり、話しづらい空気をつくってしまいます。中身のある話題を探してコミュニケーションを取ろうとすればするほど、相手も「中身のある話をしないといけない」と考え、話す内容を選ぶようになるからです。お互いが肩肘を張った緊張状態となり、高い「会話のハードル」が出来上がってしまうのです。
「この人話しやすい」「話していて楽しい」と思ってもらえるような会話上手な人は、めちゃくちゃしょうもない、どうでもいい話を積極的に織り交ぜます。
・ちょっと見てくださいよ! ここ電波1本ですよ
・あっ見て、猫いる
こうした中身のない発言をすると、会話の心理的ハードルがグッと下がり、相手も発言しやすくなります。よくよく考えると、自然と会話がはずむような仲の良い友だちや、話しやすい先輩、一緒にいて落ち着く恋人との会話では、中身のない話が飛び交っていないでしょうか? じつはこれこそ、会話のハードルが下がりきった理想の状態です。
中身のない発言を織り交ぜているかどうか。このシンプルな差が「話しやすい人」と「話しづらい人」を分ける境界線だったのです。
■ノブコブ吉村が「どうでもいい言葉」を叫ぶワケ
じつは芸人たちも、会話のハードルを下げるために、中身のない話を意図的に会話に織り交ぜています。たとえば、平成ノブシコブシの吉村さんは、他の芸人から「吉村が一緒だとやりやすい」と高い評価を受けています。この理由のひとつも、吉村さんが会話のハードルを下げてくれるからだと思います。
吉村さんは、よく番組の冒頭でどうでもいい言葉を大声で叫んだりしますが、それによって、話のハードルがグンと下がり、まわりが発言しやすくなるのです。反対に、冒頭からおもしろいこと、すごいことを言ってしまうと、良い発言をしないといけない空気になってしまい、ハードルが上がって発言しづらくなってしまいます。
■「完成度が100点満点中10点」くらいの発言も大事
僕の知り合いのテレビのディレクターさんも、会議や番組には「おもしろくないことを言う人が必要だ」と言っていました。そういう「完成度10点」くらいの発言をしてくれる人がいると、まわりも「20点、30点」くらいの発言をどんどんしてくれるようになり、話し合いが活性化するようです。
このように、会話は「中身のない話」で一気に盛り上がりやすくなります。とくに会話の冒頭で意図的に中身のない話をしていけば、心理的な壁がくずれ、これまでうまく話せなかった人とでも会話がはずむようになるはずです。また、LINEやチャット、会議などの場でも同様に、話が盛り上がりやすくなるでしょう。まずは、しょうもない、くだらない話を、積極的に会話に織り交ぜる。そこから始めてみてください。
■「キーワード」でつなげると会話はうまくいく
会話を盛り上げるためには、キーワード、テーマでつないで話す意識も大切です。
基本的に会話とは、流れのなかで行われるものです。誰かが「趣味」の話をしたから自分も趣味の話をする。「学生時代」の話が出たならその話題でつなぐ。それが会話の基本形です。多くのバラエティ番組、トーク番組もテーマが決まっていて、流れのなかで順番に話をする構成になっています。
『踊る!さんま御殿‼』はその典型だといえるでしょう。テーマに当てはまる人が集められて、順番にトークをしていく。それを明石家さんまさんがイジッたり、ツッコんだり、ボケたりしながらつないでいきます。テーマが決まっていることで、いわゆる「話のプロ」でない人たちでも話しやすく、会話が盛り上がりやすくなっているのです。
その正反対にある番組が『人志松本のすべらない話』です。「すべらない話」という番組名だけでハードル爆上がりですが、「次は○○!」と毎回仕切り直してから話し始めるため、さらにハードルが上がった状態で話さなければなりません。それだけに出演者たちは完成されたトークをしなければならず、一つひとつの話がまるで漫談のようなおもしろさがあるわけです。
■『さんま御殿』に学ぶ“話をつなげる意識”
しかし、一般の人がそんな「高いハードル」で話す必要はありません。参考にすべきは『さんま御殿』のように話をつなげる意識です。
「それは、しんどかったな~。失敗といえば、この前、スクランブル交差点で盛大にこけたんだよね」
「なるほど、データといえば、こちらのデータではこんな傾向が見られまして……」
このように前の人が話した内容からキーワードを拾って自分のトークにつなげます。相手が話したキーワードからつなぐことで、自然な流れで、無駄にハードルを上げることなく話し始めることができるでしょう。
■意識の半分を相手の話、残り半分をキーワード探しに向ける
話をテーマ・キーワードでつなげる意識をもつことは、「話が続かない」「なかなか話に入っていけない」という人にも効果テキメンです。そんな人は、キーワード・テーマ拾いを意識して話を聞くようにしてください。
イメージとしては、自分の意識を相手の話に半分、残りの半分を「キーワード探し」にあてます。自分が次に話せるキーワード、話題が見つかったあとは、相手の話を100%の姿勢で聞きましょう。相手が話し終わったらしっかりリアクションを取り、その後に「○○と言えばさぁ」と言って、自分の話を始めるのです。
もし良いキーワードが見つからない場合は「より大きなテーマに広げて探す」こともひとつの手です。たとえば、誰かが「電車で怖い人を見た話」をしているとき、「電車」のエピソードが思い浮かばないときには、「乗り物といえば、この前バスに乗ってたときに……」と、「電車」を「乗り物」というテーマにまで広げるのです。
ほかにもたとえば、「電車で怖い人を見かけた」という話なら、より広く「怖い話」「あり得ない体験」ととらえて、「怖い話といえば、この前さ……」とつなぐこともできるでしょう。
■自分起点ではなく「誰かの話のつながり」で話す
大切なのは、「自分から話し始めた」のではなく、あくまでも「誰かの話のつながり」で話すことです。その演出ができるキーワード、テーマを探すことが肝心なのです。
ちなみに、『すべらない話』の常連でもある千原ジュニアさんはトークをつなげる天才です。ジュニアさんが出演するトーク番組『にけつッ‼』では、まさにこのトークをキーワードでつなげる技がよく使われています。
この番組では、冒頭でケンドーコバヤシさんが最近の出来事を話し、ジュニアさんがそれに関連した話でつなげていくのがお決まりです。
たとえば、ケンコバさんが「マッサージ中に寝言で『先生!』と言ってしまって恥ずか しかった」と話したときには、それを受けたジュニアさんが、「ふとしたときに出る一言」 というテーマで話をつなぎ、「大物俳優に急に出会ったときに出た一言」というエピソー ドを披露して爆笑を取っていました。
こうやってキーワードで話をつなぐのはなんといっても簡単ですし、まわりの人たちも違和感なく、こちらの話に耳を傾けてくれます。
ただし、相手の話を適当に聞き流して自分の話にもっていくと「こいつ、自分の話ばかりするな」と思われてしまいます。まずは相手の話を聞き、しっかりリアクションを取ったうえで話をつなぐようにしてください。
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ネタ作家
1986年兵庫県生まれ。2007年、NSC大阪校に入学。2009年、2011年には、それぞれ別のコンビでキングオブコント準決勝進出。2015年にはフワちゃんと「SF世紀宇宙の子」を結成。同コンビを解散後は、ネタ作家に転身。賞レースのファイナリスト、セミファイナリストなど、芸人300組以上のネタ制作に携わる。2019年からは、「笑いの力で人間関係に悩む人を救いたい」という想いから、お笑いの技術を言語化して伝える「笑わせ学」に取り組む。
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(ネタ作家 芝山 大補)
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