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自然に相手の話を引き出せる…コミュニケーション上手な人がやっている"さりげない動き"

プレジデントオンライン / 2022年7月8日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

会話の相手から自然に話を引き出すには、どうすればいいか。ラジオDJの秀島史香さんは「自分が話し終えた後には、相手の目を見たり小さくうなずいたりして“パス”を出す。『あなたの話も聞かせてほしい』とサインを出すことが重要だ」という――。

※本稿は、秀島史香『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■相手に自分の話を聞かせるだけの会話になっていないか

話したいことがいろいろあったり、感情が高ぶっていたりすると、次々と言葉があふれ出して、相手が話している途中なのに、「わかる、私もね、この間!」と勢いよく自分の話にすり替えてしまう……。つい無意識にやってしまってませんか?

相手にしてみれば、「私が話していたのに」とモヤモヤが募り、気持ちがフッと遠くに離れてしまいます。何を言っても、自分の話にすり替えられてしまうと、会話の「聞く」と「話す」のバランスがいびつになり、結果、楽しいはずだったおしゃべりが疲れるものに。ただひたすら相手の話を聞き続けるのもフラストレーションが溜まるものです。

ラジオの場合、「聞いているだけ」なのに不思議と疲れません。リスナーと双方向的な会話をする番組もありますが、ほとんどは出演者だけが一方的に話をしているのに、です。

私自身リスナーとして日々ラジオを愛聴していますが、DJが一方的に話すのを聞いていても、疲れるどころか、むしろリラックスしながら楽しんでいます。

日常生活ではあまりないこの状況、DJの話し方がキモになっています。

■ラジオはなぜ「聞いているだけ」なのに疲れないか

ラジオDJの多くは、聞いてくれている人の状況に合わせた声や話し方、話題の順番などを意識しています。もちろん、番組の制作スタッフも、それを綿密に考えて内容を構成しています。

長時間心地よく聞いていられるのは、聞き手に向けて、徹底的なおもてなし、つまり「聞きやすさ」を心がけているから。言い換えれば、ラジオ番組ならではのメリハリ、「聞き流せる」余白が意図的につくられているからです。

ゆったりしたトークが中心の番組、音楽番組、芸人さんがしゃべりまくる番組、ニュース番組や社会問題に切り込む番組などさまざまありますが、程度の差こそあれ、どのように「余白」を作るかは、しっかり工夫されています。

■話には“集中しやすいサイズ”がある

「聞き流される前提でしゃべるって……いいの?」と思う方もいるかもしれませんが、常に集中して聞いていないと、たちまち内容がわからなくなるのは聞き手にやさしくありません。

加えて、聞いて疲れない番組は、「中途参加さん」に向けても、しっかりとケアしています。DJが番組内いたるところで「今日のテーマは○○で、先ほどこんなメールをご紹介したのですが、こんな反響があって」と、これまで話した情報や話題の交通整理をさりげなく徹底しているんですね。

途中から聞き始めた人が楽しめないものは、最初から最後まで聞いてくれている方にもやさしくありません。なぜならオンエア中ずっと、集中することを求めてしまうから。1秒たりとも聞き逃せない……そんな番組はそもそも毎日気軽には聞けませんよね。

ラジオの生ワイド番組の多くは、だいたい3時間を目安に構成されています。その中に、ひとつの話題を深く掘り下げるコーナーがあれば、気楽なフリートークの時間があったり、メール紹介や交通情報、天気予報があったり。聞いている側が意識しなくても、ふっと気を抜いて休憩できる時間と、「ここは大好きなコーナーだ」と、ぐぐっと身(耳?)を乗り出して聞き逃すまいとする時間が両方用意されています。

集中力のスイッチがオンになったりオフになったりすることで、「長時間耳を傾けている」という意識が薄れ、聞きやすい一口サイズの話が代わる代わるやってくる感覚になります。

番組中、DJがずっとしゃべっているようで、実は、一人で話す部分は、ひとつのテーマで3分程度。なので、途中、聞き流しても話を理解しやすいし、話題もリズムよく変わっていくので、飽きずに楽しめます。

■「会話の余白」を意識的につくってパスを出す

実際の会話でも、相手に心地よく聞いて話してもらうために意識したいのが「余白」です。相手があいづちや質問、コメントができるような数秒の「息継ぎタイム」=「会話の余白」を作るのです。

ひとつの文章を話し終えたら、相手の目をチラッと、でも、よーく見てください。それは「あなたの番よ?」という小さな“パス”となります。こうすることで、相手は「ほんとに⁉」「なるほど」といった小さな言葉をはさみやすくなります。そこで「あなたは?」と話を振ってみる。それは、一本のマイクを相手に「はい、どうぞ」と渡すようなイメージです。

「余白か……。自分にできるかな、難しそうだな」と心配になるかもしれませんが、まずは意識していつもより相手の表情を捉えつつ、「間」を作りながら話すだけでいいのです。

机の上で手を組む男性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

■数秒間の沈黙を恐れないことが心の余裕につながる

例えば、自分が話し終えたあと相手に向かって小さくうなずいたり、数秒間の「シーン」を恐れずに、相手が言葉を発するのを笑顔で待ってもいい。そうして作った余白のあとに、「○○さんにも、こういう体験あります?」「○○さんならどうする?」などと話を向けてみる。わかりやすくバトンを受け取った相手は「私の番だ!」と、話を始めてくれます。

会話を盛り上げようと一生懸命あれもこれもとしゃべったつもりが、会話のすべてを自分の言葉で埋めてしまっていませんか? 相手のための余白は残せていますか? 「あなたの話も聞かせて」というサインを出せていますか? 長い時間一緒にいて疲れない人、むしろ、一緒にいたくなる人は、相手のために心地よい「会話の余白」を作れる名人なのです。

ちなみに、しゃかりきに力が入ることも減るので、日ごろの心の余裕にもつながってきますよ。結果、ちょっとやそっとの想定外や、クセのある人にも臨機応変に対応できるようになります。

つい頑張りすぎてしまう人は、相手のために、そして自分のために、まずは「会話の余白」から作ってみてくださいね。

■「会えてうれしいです」はストレートに伝えたほうがいい

“Nice to meet you!”(お会いできてうれしいです)は、英語のテキストで最初に出てくる「はじめまして」のあいさつです。英語圏の人たちは、初めて会ったとき「あなたと出会えたこと」への喜びを伝えるのが習慣になっています。

一方、日本では初対面のあいさつの「定型文」は「はじめまして」。ただ、この一言では「会えてうれしい」ということは、なかなか伝わりません。

会っていきなり「うれしいです!」と伝えるのもくだけすぎかな……なんて奥ゆかしい気持ちになるかもしれませんが、思い切って最初からストレートに伝えてみてください。

言われたほうは、サプライズで贈りものを受け取ったようで、くすぐったいけれど悪い気はしません。

伝えたほうも、相手のそんな表情にホッとして、互いの緊張も和らぎます。

■好意の“先出し”は自己開示となって警戒心をほぐす

私自身が雑誌などの取材を受ける際、終わったあとに、「実は(私の番組を)ずっと聞いていました」と伝えてくれるライターさんもいてうれしくなります。ただ本音としては「わあ、だったら、あの番組についても掘り下げてお話しすればよかった!」と思うのも正直なところ。

照れくさい気持ちもあるかもしれませんが、やはり好意は後出しではなく、先に伝えておく。

先に自己開示しておくことで、30分なり、1時間なり同じ時間を一緒に過ごすにしても、ゼロからスタートしてひとつずつギアを入れていくステップを踏まずに、三段飛ばしでよい印象を持ってもらえることもあります。

仕事柄、初めてお会いした方にお話をうかがう機会が多いのですが、やはり時間が限られています。普段人間関係をゆっくり築いていくのとは違って、会ったばかりで相手のパーソナルな扉をノックすることになるんですね。

そこで、相手に「えっ⁉ 初対面なのに、そこまで聞く?」と身構えさせてしまったり、嫌な気持ちにさせてしまっては、インタビュアーとして失格。

自分だって会ってすぐの人に個人的な質問を重ねられても、そりゃ警戒してしまいます。「この人には、あまり大切な話はできないな」と、表面的な話に留めておきたくなるもの。

ゲストをこういった心理状態にしてしまうと、お互いつらいですし、リスナーにその人のよさを届けられず終わってしまうことになります。

そこで、なるべく早くかつ失礼にならない方法で関係性をあたためるのに“いい仕事”をしてくれるのが、「先出しの好意あいさつ」です。

■好意を示されれば「期待を裏切ってはいけない」と思う

ゲストにとっては、ラジオのスタジオはアウェイな場ですし、「今日話すのは、どんな人なんだろう……」と身構えているもの。そのモヤモヤとした不安を先出しの好意で少しでも和らげるのが、お招きした側の礼儀です。

以前、母校の学生新聞の取材を受けたとき、学生記者さんが言ってくれた言葉を今でも覚えています。

「中学受験時代に通っていた塾の行き帰り、母が運転する車の中でいつも秀島さんのラジオを聞いていました。飾らないざっくばらんなお話に『どんな人なんだろうねえ』と、母と声を上げて大笑いしていました。憂鬱(ゆううつ)なストレスも吹き飛びましたよ!」

これはうれしかったですね。社交辞令ではなく具体的なエピソードと一緒に、「あなたに好意や関心を持っています」と伝えられたら、こちらもその気持ちに応えたい。「期待を裏切ってはいけない」、という思いも湧いて、いつも以上に丁寧に話していました。

「お会いできてうれしいです」でも十分ですが、この記者さんのように具体的なエピソードと思いを伝えられると、初めから会話に弾みがつきますし、話題も広がります。

「先出しの好意あいさつ」が“あなた”と“私”の距離を一気に縮めてくれることもあるのです。だからこそ、初対面の人はもちろん、久しぶりに再会した人、なかなか会えない人にも、会ったらすぐさま気持ちを伝えましょう。

こういうことに遠慮は無用。照れくさいし、恥ずかしいし、と理由はどうあれ好意の言葉を出し惜しむ人が、人に好かれることはありません。

■“会ったら話したいことメモ”をつくっておく

ただ、普段あまり自分の気持ちをストレートに口にしていないと、いざ相手と対面したとき、どぎまぎして、なかなか伝えられないもの。

秀島史香『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)
秀島史香『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)

約束をしているなど、あらかじめ会うことがわかっている相手については、これまで相手に対してどんな感情の動きがあったのか、個人的にどんなエピソードがあったか、今回会うことで何が一番楽しみなのか、まず何を話したいのかなど、思いを巡らせてみてください。

頭がごちゃごちゃになってしまって、「結局もう出たとこ勝負でいいや!」と思っていても、現場でうまくいくことはまずありません。事前に頭の中を整理するために、手帳にでもスマホにでも、簡単にメモしておくのもよいでしょう。もちろん現場では見られませんが、緊張もプレッシャーも軽くなります。

憧れの人、初対面の人を相手にすると、なかなか普段の自分ではいられません。デートでも、プレゼンでも、会食でも、面接でも、「どうしよう、頭の中が真っ白で何から話せば……」となる前に、どこにいても気軽にできる下準備です。

「なぜかこの人は話しやすいな」という人、あなたのまわりにもいませんか。次回会うときに、よーく観察してみてください。会えてうれしい! という気持ちを言葉や表情などで伝えてくれていることに気づくはずですよ。

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秀島 史香(ひでしま・ふみか)
ラジオDJ
1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ「SHONAN by the Sea」、NHKラジオ「ニュースで学ぶ『現代英語』」、NHK Eテレ「高校講座 現代の国語」などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。

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(ラジオDJ 秀島 史香 構成=小川由希子)

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