東京23区は8000万円超が前提…普通の人には絶対に買えない「新築マンション」の値上がりが続くワケ
プレジデントオンライン / 2022年7月7日 11時15分
■新築マンションは「8000万超え」が当たり前
悪い円安と物価上昇、賃金の下落と、庶民がどんどん苦しくなっていますが、不動産価格も高騰が続いています。
![新築マンション価格の推移(首都圏・近畿圏)2019年4月~2022年4月](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/a/1200wm/img_1a1b24db9d0b5c7a348be328c13a4394461432.jpg)
図表1は、首都圏と近畿圏における新築マンション価格の推移を表しています。
2022年4月の首都圏新築マンション価格は平均6291万円と、コロナ前の2020年1月の8386万円には及ばないものの、依然として高値圏にあります。
また、このグラフにはありませんが、東京23区に限れば、新築マンション価格は8000万円を超えています。
まさに新築マンションは「高嶺の花」となっているのです。
ちなみに、3月、4月に首都圏新築マンション価格が下落しているように見えますが、これは、「晴海フラッグ」の売り出しによるものだと思われます。
東京オリンピックの選手村跡地である「晴海フラッグ」は、比較的割安な価格で販売され、しかも戸数が多かったため、平均価格が押し下げられたのです。
■歴史的低金利が「富裕層」の背中を押す
不動産価格を押し上げている最大の要因は、「政策」です。
まず、何といっても、歴史的な「低金利」が、「多少高くても購入できる」環境をもたらしています。
いわゆる「アベノミクス」、つまり黒田総裁就任後の日銀による金融緩和政策が続く中、住宅ローンは圧倒的な低金利が続いています。
変動金利の場合、年率0.4%以下ということも珍しくありません。
そのため、月10万円程度の返済額でも、4000万円くらい借り入れることができます。
そのため、家賃と比べても住宅ローン返済額がかなりお得に見えると思います。
また、「住宅ローン控除」の影響も見逃せません。
住宅ローンを使って不動産を購入した場合、「年末における住宅ローン残高の0.7%」を、入居時から13年間、所得から控除することができます。
つまり、3000万円の住宅ローン残高がある場合、10年間で273万円が戻ってくるイメージです。
もちろん、実際には所得や課税額により控除額が変わるので、上記の単純計算よりも少なくなるケースがほとんどです。
ただ、それでも住宅ローン借入による利子の大部分が、この住宅ローン控除で相殺されるので、かなりお得な制度であるのは間違いありません。
■不動産市場に起きている「2つの異変」
もっとも、それはあくまで新築マンションを購入できる人に限った話です。
いま日本の不動産市場に、そうした状況がもたらす「2つの異変」が起きています。
その異変とは、「中古住宅需要の高まり」と、「買い替え需要の減少」です。
これまで、日本の不動産市場では、圧倒的に新築が好まれていました。
中古住宅は、築年数が浅くても、大きく値下がりしてしまうのが当たり前でした。
しかし、昨今では、中古住宅の人気が高まってきています。
その背景には、消費者の嗜好が変わり、「何が何でも新築」ではなくなって、クオリティーの高い中古住宅に人気が集まりやすくなっている、という事情があります。
また、リフォームやリノベーションを扱う業者が増えたことや、2018年4月に宅地建物取引業法(宅建業法)が改正され、不動産インスペクションの説明が義務化されたことも影響しています。
ただ、それら以上に大きな影響を与える要素として、新築マンション価格が高騰し、中古住宅に割安感が出ていることも見逃せないでしょう。
その新築マンション価格の高騰は、「買い替え需要」にも大きな影響を与えています。
日本の不動産市場では、これまで、新築マンション需要の一定程度は「買い替え需要」が占めていました。
高齢に達し、子供も自立した夫婦が、メンテナンスに手がかかる一戸建てを売却し、より利便性の高いマンションに住み替える、というケースがかなりあったわけです。
しかし、昨今は「買い替え需要」が非常に弱くなっています。
コロナの影響もあって、狭いマンションより、広い持ち家のほうが好まれている、という問題もあると思います。
が、やはりここにも新築マンション価格高騰の影響が見て取れます。
「買い替え」では、築年数の経過した持ち家を手放し、その売却代金を充当することになりますが、新築マンション価格が高騰しているため、持ち家を売っても、欲しい物件が買えない、というケースが増えているのです。
とりわけシニア層は、その差額のためにローンを組むのも大変です。
そのため、「買い替え需要」が大きく低下しているものと考えられます。
■世界中で加熱する「不動産バブル」
このように、不動産価格が上昇し、新築マンションは庶民にとって「高嶺の花」となっているわけですが、それでも東京の不動産はまだまだ「割安」です。
日本全国の不動産の価値の総額は、バブル期には約2000兆円もありました。
それがいまや、約1000兆円に届くかどうか、という水準まで低下しています。
2012年に政権が民主党から自民党へ交代して以降、日経平均株価が上昇するに従って、不動産価格も上昇するようになりました。
ただ、世界の不動産価格に比べれば、その上昇度合はまだまだ控え目なのです。
![マンション(ハイエンドクラス)の価格水準](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/1200wm/img_73e41352a5e2780a8ed51182342795ef175951.jpg)
図表2は、世界の大都市におけるハイエンドマンション価格を比較したものです。
香港やロンドンでは、2015年から2019年にかけて、ハイエンドマンション価格が大きく上昇しているのが分かります。
一方、東京のハイエンドマンション価格は、2015年と2019年を比較しても、ほぼ同じです。
また、その価格水準も、世界の大都市と比べると割安感があります。
一方で、気になるデータもあります。
都心部の中古マンション在庫が、ここに来て増加傾向を見せているのです。
![都心3区中古マンションの「在庫数」と「成約平米単価」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/4/1200wm/img_74e06267a466130f4f74e137223eb90b491445.jpg)
図表3の通り、中古マンションの在庫数は、2021年の秋ぐらいから増加傾向にあります。
ただ、過去の水準と比べれば、まだそれほど高い水準というわけではありません。
実際、新築マンション価格が上昇を続けているわけですから、市場全体としては、まだまだ供給過剰ではないと考えられます。
市場が飽和状態となり、「バブル崩壊」が起こるのは、ずっと先だと見ていいでしょう。
■「円安」と「脱コロナ」で「爆買い」が復活する
しかも、今後マンション価格を押し上げる、別の要因も目立ってきています。
それは、「脱コロナ」と「円安」です。
「爆買い」という言葉もあったように、特に2013年ごろから、東京の不動産市場では、外国人の動きが目立っていました。
ただ、2020年に始まったコロナの影響で、そうしたインバウンド需要は冷え込んでしまっているのが現状です。
しかし、世界的に脱コロナの動きが進み、インバウンド需要も徐々に回復していくでしょう。
しかも、足元では歴史的な円安が進んでいます。
数年前に「1ドル=115円」くらいだった円相場が、「1ドル=136円」(2022年6月22日現在)まで下落しているわけです。
そうなると、特にドルを持っている外国人から見れば、東京の不動産は2割ほど安く見えるわけです。
しかも、歴史的に見れば、日本の不動産はまだまだ「安値圏」にあります。
いわば、伸びしろがある状態です。
そのため、特に都心の一等地の物件などは、価値が落ちないどころか、何かのきっかけで、今後、東京の不動産市場に投機マネーが流入するようになれば、都心の不動産価格はさらに暴騰する可能性すら否定できません。
■地方の不動産は「持っていることがマイナス」の時代に
ただ、こうした動きは、あくまで「東京23区など一部の地域」に限った話です。
郊外や地方都市の不動産は、今後も値下がりが予想されますし、過疎化した地方においては、不動産がほぼ無価値化することも考えられます。
![ますます三極化が進行する](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/d/1200wm/img_ad4dd7ca1b77af85a563683bada59d02252817.jpg)
かつては「東京一極集中」と「過疎化する地方」という「二極化」が指摘されていましたが、
いま、「三極化」の時代に入っていると思います。
東京都心部のように、価格が上昇するか、高値圏を維持する地域がある一方、大半の地域では、不動産価格はなだらかに下落していくでしょう。
また、「限界集落」化した地方など、一部の地域の不動産は、「限りなく無価値」あるいは持っていることが「負債」に近い「マイナス価値」となっていくのではないでしょうか。
今後、不動産の購入を考えるうえで、損をしないためにも、こうしたマクロの市場環境を頭に入れておくべきでしょう。
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不動産コンサルタント
さくら事務所会長。1967年生まれ。業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」を設立し、現在に至る。著書・メディア出演多数。YouTubeでも情報発信中。
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(不動産コンサルタント 長嶋 修)
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