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積立投資で経済的自由は得られない…26歳で「早期リタイア」した元会社員が1億円を貯めた手法

プレジデントオンライン / 2022年7月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

お金持ちになるにはどうすればいいのか。『投資をしながら自由に生きる』(ダイヤモンド社)を書いた投資家の遠藤洋さんは「積立投資を続けるだけでは経済的な自由は得られない。FIREを達成するには、もっとリスクを取る必要がある」という――。(構成=フリーライター・有井太郎)

■積立投資で「FIRE」は実現できるのか

FIRE(Financial Independence, Retire Early)は海外で生まれた考え方で、日本でも目指す人が増えていますね。経済的自立や早期リタイアを意味する言葉で、その特徴は定年を待たずに早期リタイアし、その後は資産運用を活用して運用益で暮らしていくというものです。

象徴的なのは「4%ルール」。年間生活費の25倍の資産を貯めて、その資産を毎年運用し、4%の運用益を出していく。そして、年間生活費を4%の運用益に納める。すると、資産を切り崩さず運用益だけで生活していけるという理論です。

4%の数字にも根拠があり、アメリカの一般的な株価成長率(7%)から物価上昇率(3%)を差し引いたもの。つまり、米国企業約4000社に分散投資できるVTIのような金融商品(ETF:上場投資信託)をはじめ、アメリカ経済の指数に連動するインデックス投資をしていけば、年間4%の利益を平均的に得られるのでは、という計算に基づいているのです。

たとえば年間の生活費が200万円の人なら25倍の5000万円を貯めて、4%の運用益を出し続ければ資産を減らさず生活できる。年間生活費400万円の人なら資産1億円です。

確かに理論としてはわかりますが、果たして本当に可能なのでしょうか。私は机上の空論だと思っています。FIREに憧れる若い世代が増えているようですが、現実的に考えれば、インデックスへの積立投資だけでFIREは達成できません。

■年間生活費25倍の資産を用意できるか

FIREの実現を考える上で、2つのポイントがあります。「①どうやって年間生活費25倍の資産を用意するか」と、その後に「②年間4%の運用益をきちんと出し続けられるか」です。

まずは②から説明させてください。確かに4%という数字は、過去のアメリカ経済の成長から出した“平均”ですが、平均はあくまで平均です。年ごとに差はあり、毎年安定して4%の数字が出るわけではありません。

今年のように、10%やそれ以上の大きさで、アメリカ市場が下落する年も出てきます。仮に1億円の資産を確保した人が、FIREをして2、3年後に10%の下落相場に当たったらどうなるでしょうか。おそらくパニックに陥るでしょう。

投資の知識がなければ焦って売ってしまったり、他の株を買ったりするかもしれません。そうしてさらに資産を減らす可能性があります。相当な知識と下落相場にも動じない精神がなければ、②を行うのは簡単ではないでしょう。

それ以上に難しいのが「①どうやって年間生活費25倍の資産を用意するか」です。

街中の階段に一人で座っている男性
写真=iStock.com/tuaindeed
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tuaindeed

■積立投資で会社員は辞められない

FIREを目指す人の話を聞いていると、②の部分と混同しているのか、インデックス投資によって25倍の資産を築こうと考える人がいます。すでに相当な資産を持っていて、わずかに額面を増やせば25倍に届くならそれでもいいでしょう。

しかし、いまの資産の桁を1つ増やす、あるいはもっと膨らませないと生活費25倍の資産に届かない場合、インデックス投資で実現するのは厳しいでしょう。インデックス投資の成長は緩やかだからです。早期リタイアどころか定年まで会社員として働くことになります。それは過去の値動きを見れば明らかで、VTIも2013年から今年初めの最高値までで約3倍しか上がっていません。

投資は目的を定めて、それに合う手法をとることが大事です。資産を10倍近く膨らませるのが目的なら、手法としてインデックス投資を選択するのは間違いだと言わざるを得ません。

■「小型株集中投資」で会社員を早期リタイア

では資産を大きく増やすためにどうすれば良いか。個々で考えるべきですが、参考として私が行った手法を紹介します。それは「小型株集中投資」です。

投資を始めたのは大学生の時でした。家庭教師のバイトで貯めた30万円でFX(外国為替証拠金取引)でした。これが全財産でしたが、2週間ほどで溶かしてしまいました。その失敗を踏まえ独学で勉強し、アルバイトで貯めたお金を投資に回してきました。

新卒でスタートアップに入りました。初任給20万円台前半で、取り立てて資産があったわけではありません。本格的にやり始めたのは社会人になってからです。小型株への集中投資を通じて26歳には資産が数千万となり、会社を退職。投資家となりました。20代後半で資産額は1億円に達しました。

この資産拡大の手法となったのが「小型株集中投資」です。時価総額の低い小型株を数銘柄、多くても5銘柄選び、資産を集中させる投資方法でした。

この手法を選んだ理由はシンプルです。私は自由になりたくて投資を始めたので、資産の桁を増やすことが目標でした。つまり10倍以上にしたい。ただ、大型株は株価が10倍になることはきわめて稀(まれ)です。すでに事業が成熟しているためです。その中で、株価が10倍以上に成長するケースを分析し、小型株に行きつきました。

これは自分で調査したデータですが、2019年版の『会社四季報』に「時価総額増加ランキング」が出ています。株価10倍以上になった企業は68社、そのうち93%は時価総額300億円以下、70%が100億円以下でした。

■成長が期待できる企業の共通点

そのほかにも、株価10倍になる銘柄の共通点がありました。75%が創業社長の企業ということです。こういった分析を行い、株価10倍の可能性がある銘柄の条件を確立。当てはまる企業に投資していきました。

詳しくは過去の著書にも書きましたが、その条件をいくつかあげると、先述した創業社長に加えて、その社長が現役かつ筆頭株主であること。また、役員クラスが自社株を持っていることも大切です。経営陣が株価の上昇を意識した経営を行うからです。投資家と利害関係が一致すると言えます。

また、優秀な人材の集まる会社は間違いなく伸びます。優秀の定義は難しいですが、ひとつの判断基準として、高学歴の社員が集まる会社を重視します。人材難のこの時代では非常に重要です。

手に芽吹いた植物を持つ人たち
写真=iStock.com/katleho Seisa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/katleho Seisa

そして何より、その企業の商品・サービスが世の中に価値を提供していること。また、市場に伸びしろがあることです。

これらの要素をもとに、私が実際に投資して株価10倍以上になった銘柄に「北の達人コーポレーション」「ペッパーフードサービス」「ミクシィ」「ユーグレナ」「ファンコミュニケーション」などがあります。

どのように銘柄に注目したのかそれぞれ違いますが、ひとつ例を挙げるなら「北の達人コーポレーション」はわかりやすいでしょう。同社の事業は健康食品などのネット販売で、それ自体はよくあるのですが、利益率とリピート率の伸長に目を引くものがありました。何より、成長の“再現性”があったのです。

■ポイントは売上規模、市場規模、店舗数…

というのも、先行事例として青汁のネット販売で売上が数百億に伸びたメディアハーツという会社がありました。北の達人は、きわめて近いビジネスモデルで展開しており、売上規模もまだ10億に満たないほどの時期。メディアハーツの例から、2~3年で売上10倍になると考えて投資したのです。

買いのタイミングも重要で、その企業のサービスや商品が“認知され始め”の瞬間を狙うことです。認知度が全くない状態は早過ぎますし、一方で十分に認知が行き渡った飽和状態になると遅い。逆に投資していたなら“売りどき”となります。

ビジネスが成長するイメージ
写真=iStock.com/Khanchit Khirisutchalual
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Khanchit Khirisutchalual

ではどうタイミングを見極めるのか。北の達人の場合は、メディアハーツの売上規模を参考に、成長率と市場の伸びしろから認知され始めであることを予測できました。

そのほか、実店舗を持つ企業なら、店舗数を目安にするのも一つの手です。たとえば、かつて成長中のライザップグループに投資していましたが、ここは競合他社のジム店舗数を基準に、市場全体の伸びしろやパイを測ることができました。他社の店舗数が400店舗などで止まっていれば、その付近が飽和点の目安です。

そのほか、ペッパーフードサービスも投資して10倍以上の株価になった銘柄です。ご存じの通り、急成長の後、店舗数拡大によって業績悪化していきました。これについても、他の外食産業の店舗数、ステーキ店はもちろん、飽和点を見る意味では国内でも多店舗展開で成功しているジャンル、たとえば松屋や吉野家の国内店舗数で測ることができます。

■リスクを取らずにFIRE達成は不可能だ

繰り返しますが、投資は目的によって手段が変わります。目的は「求めるリターン」と言い換えることもできるでしょう。加えて、投資では「許容できるリスク」も重要。これも手段を決める上でポイントになります。

私は自由になるのが目的、そのために資産の桁を増やすのが「求めるリターン」でしたから、インデックス投資は選択肢にありませんでした。FIREを目指す人も同じではないでしょうか。

『金持ち父さんの投資ガイド 上級編』(筑摩書房)にこんなデータが紹介されています。アメリカの上場株のうち、時価総額0.25億ドル以下の会社に毎年投資すると40年で約800倍になっています。

一方、時価総額10億ドル以上の企業だと同じ投資で1.6倍にしかなりません。S&P500でも1.7倍です。小型株の方が圧倒的に資産が跳ねやすいのです。

もちろん、その分のリスクもあります。小型株は大型株に比べて経営が不安定で、一気に下落する可能性もあるでしょう。

ただし、仮に100万円、200万円を失うリスクを許容できるなら、つまり失っても生活に影響を及ぼさない資金であれば、その資金で小型株に集中投資した方が大きく資産は跳ねる可能性があります。10倍になるかもしれません。

■FIREブームの厳しい現実

毎月10万円ずつインデックス投資に積立するとして、求めるリターンが「貯金よりも少し運用益を出したい」という程度で、リスクもなるべく取りたくないなら問題ありません。

しかし、もし資産を大きく増やそうとしているならこの手段はぴったり合致していないでしょう。

遠藤洋『投資をしながら自由に生きる』(ダイヤモンド社)
遠藤洋『投資をしながら自由に生きる』(ダイヤモンド社)

むしろ、毎月10万円ずつさまざまな銘柄の小型株に投資する方が目的に近いかもしれません。下落する銘柄も多いですが、ひとつでも大きく成長すると数倍の伸びを見せるはずです。もちろん企業の将来性を調べ、自分の頭で投資先を考えなければなりません。

決してこのやり方を推奨するわけではありません。あくまで求めるリターンと許容できるリスクを考えたとき、最善の方法が何かを探ることが大切です。

もしFIREを目指して今の手元資金を大きく膨らませたいなら、少なくとも私はインデックス投資を選択しません。100万円でも200万円でも、失うリスクを許容できる資産を作って、その資産で小型株に集中投資する手段を選びます。

FIREにはそれだけのリスクが伴い、覚悟が必要です。リスクを避けたいインデックス投資や高配当株投資という選択になるでしょうが、経済的自由や早期リタイアの夢は遠のきます。これがFIREの現実なのです。

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遠藤 洋(えんどう・ひろし)
投資家・自由人
1987年埼玉県生まれ。東京理科大学理工学部電気電子情報工学科在学中、家庭教師のアルバイトで貯めたお金を元手に投資をはじめる。大学卒業後、ベンチャー企業に入社し、新規事業の企画・広告・採用等を経験。その約4年後、26歳のときに投資で得た資金を元手に独立。投資コミュニティixi(イクシィ)主宰。著書に『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』『投資をしながら自由に生きる』(いずれもダイヤモンド社)などがある。

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(投資家・自由人 遠藤 洋 構成=フリーライター・有井太郎)

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