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先回りして気持ちが暗くなるのは損…「予期不安」から自由になるための3つのアプローチ

プレジデントオンライン / 2022年7月13日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

無用な心配をして気持ちが暗くなるのを避けるにはどうすればいいか。精神科医の和田秀樹さんは「先回りして気持ちが暗くなるのは損だ。『予期不安』から自由になるための3つのアプローチを教えよう」という――。

※本稿は、和田秀樹『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■世の中には考え始めたらキリがないほどの不安材料がある

気持ちが暗くなる要因には個人差がありますが、多くの人に共通しているのが、「予期不安」や「ストレス」によるものです。

予期不安とは、何かよくない出来事があると、「また同じことが起こるのではないか」と考えて、不安や恐怖に悩まされる感情のことです。

和田秀樹『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)
和田秀樹『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』(クロスメディア・パブリッシング)

本稿では、このふたつの要因を中心として、「どうすればネガティブにならずにいられるのか?」をお伝えしていきます。

私たち日本人には、物ごとをつい悪い方向に考えてしまう傾向があります。

先々のことを心配して不安になり、気分が落ち込み、暗くなってしまうのです。

何ごとにも楽天的なラテン系の人たちとは対象的な国民性といえますが、その原因のひとつが、「予期不安が強い」という日本人の特徴にあります。

「がんになったらどうしよう?」
「この仕事は失敗するのではないか?」
「このままずっと独身かもしれない」

老若男女を問わず、世の中には考え始めたらキリがないほどの不安材料があります。

日ごろから「どうして暗くなってしまうのだろう」と自分の性格に悩んでいる人は、予期不安に振り回されて、先回りして暗くなっている可能性があります。

■先回りして気持ちが暗くなるのは損

私たちは社会の中に身を置いて生活していますから、つねにこれから先のことが心配になります。

人間関係にまつわる悩みも、日常茶飯事のようにあります。

予期不安というのは、これから先のことについての「過剰」な不安ですから、悩み始めたらキリがないし、実際には起こらないことがほとんどです。

実際には起こらないことに対して、あれこれ考えて不安になり、落ち込んでしまうのですから、完全に「取り越し苦労」です。

実際に起こってから悩むようにするだけでも、不安の9割はなくなります。

でも、なぜか多くの人が予期不安に悩まされてしまうのです。

一番の原因は、「情報不足」にあります。

自分がよく知らないことや、これまでに経験したことがないことに出会うと、人は不安になるものです。

予期不安というのは、よくわからないことをあれこれと思い浮かべて悩むことですから、当然、自分勝手な妄想が広がります。

勝手な妄想に振り回されるから、不安はますます増幅することになり、結果として暗くなってしまうのです。

不安のリアリティを見極めることができれば、実際に起こる可能性を予測することができます。

ある程度の予測ができれば、不安に振り回される必要はなくなるのです。

■告白しないとつき合えない

予期不安を軽減する方法には、3つのアプローチがあると考えています。

そのひとつは、何ごとも「やる前から答えを出さない」ということです。

世の中は、「やってみなければわからない」ことばかりですから、実際にやってみて、その後に答えを出せばいいのです。

例えば、パニック障害の発作が心配で電車に乗れないという人には、こんな経験をしてもらうこともあります。

「各駅停車でいいから乗ってみましょう。もし心臓が止まっても、すぐに蘇生できます。安心して乗ってください」

まずは電車に乗ってみて、「やってみたらできた」という経験をすることが大事です。

その経験を通して、「案ずるより産むが易し」を実感として理解できれば、漠然とした不安は解消できます。

不安が解消できれば、列車の旅を楽しむこともできるのです。

「恋人ができない」と悩んでいる人にも同じことがいえます。

断られることばかり心配して相手に告白できなければ、ルックスが飛び抜けていいとか、大金持ちでもない限り恋人はできません。

女性にプロポーズをする男性
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

断られる可能性があっても、こちらから告白しない限り、相手に受け入れられることはないのです。

ひとり目がダメでも、ふたり目はOKかもしれません。

「何ごとも試してみなければわからない」というのは、「人生がうまくいく明るい人」の考え方と同じです。

「やってみなければわからない」とか、「試してみないとわからない」という発想を持つことは、予期不安の解消にも役立ちます。

■「最悪でもこの程度で済みそうだ」と想定しておく

ふたつ目は、深刻に悩むくらいなら、あらかじめ「ソリューション」(解決策)を用意しておくということです。

がん検診を頻繁に受けている人はたくさんいますが、自分ががんになったら、どこの病院で治療を受けるのか、その先のことを考えている人はほとんどいません。

レントゲン写真を見ている医師
写真=iStock.com/megaflopp
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/megaflopp

認知症が不安なら、心配ばかりしていないで、介護保険を受給するための準備を今から整えておけばいいのです。

もしこうなったら、どうするか……を先に考えておくということです。

心配ごとが起こった後の善後策を事前に用意しておけば、不安は軽減されます。

前もって準備しておくことで、「安心材料」が増えるのです。

最近では、老後の資金が足りなくなることを心配する人が多くなっています。

「このままでは老後に貧乏する」と悩んでいる人も少なくありません。

こういう人に限って、年金制度については何も知識がなく、具体的な老後のプランもありません。

極端なケースでいえば、すべてのお金を遣い切ったとしても、生活保護という救済制度がありますから、「このくらいの老後は送れるな」という計算だけは成り立ちます。

年金制度や生活保護の勉強をしないで、先々の貧乏の心配ばかりしていても、不安が消えることはありません。

最悪の結果を想定して、ソリューションを用意しておけば、モヤモヤとした不安を冷静に見つめ直すことができます。

「最悪でも、この程度で済みそうだな」

こうした「読み」ができれば、漠然とした不安に悩む必要はなくなるのです。

■不安が的中する「確率」を計算する

3つ目は、不安に思うことが実際に起こる「確率」を冷静に検討してみることです。

予期不安が強い人というのは、確率の計算ができないというか、そもそも確率を考えていません。

起こる確率が極端に低いことを、深刻になって心配している人が多いのです。

例えば、墜落事故が怖くて飛行機に乗れないという人がいますが、飛行機の事故は交通事故とは比べものにならないくらい少ないわけです。

文部科学省が発表した国内事故統計に基づく推計(1983~2002年)によれば、ひとりの人が今後30年以内に航空機事故に遭遇して死亡する確率は「0.002%」です。

交通事故で死亡する確率は「0.2%」ですから、100分の1以下となります。

精神科医としては、あまりにも起こる確率が低いことを心配しすぎる人には、何らかの病気を疑います。

人には「無視できる確率」があるからです。

無視しなければ生活が成り立たなくなるような確率のことは、心配したところで、どうにもなりません。

それを「万が一」と考えていたのでは、何もできなくなってしまうのです。

■誰にでも起こることは、ニュースにはならない

確率に関して、もうひとつお伝えしておくことがあります。

テレビのニュース番組で事故の様子などを目にすると、「自分も被害者になるのではないか」と不安を募らせる人がいますが、そういう人は、「確率が低いことだからニュースになっている」という現実を見逃しています。

誰にでも起こるような普通のことは、ニュースにはなりません。

ニュースを見る時も、すべてが自分にも起こると考えるのではなく、その確率を考えてみる必要があります。

例えば、多くの人が高齢者の運転による交通事故が増えていると思っていますが、じつは高齢者による事故は減少傾向にあります。

日本社会の高齢化によって、交通事故に占める高齢者の割合が増えているだけで、実情はまったく逆の方向に向かっています。

高齢者の事故が珍しいから、大きなニュースになるだけで、それを見て「どうやら、増えているらしい」と錯覚しているのです。

たったひとりの高齢者が交通事故を起こすと、高齢者全員に「運転免許を返上しろ」と騒ぎ出すのは、確率の計算ができていないとしか思えません。

■空振りがある代わりに、ヒットも出る

世界中で高齢者に免許を返納しろと騒いでいるのは、日本だけです。

高齢者が1万人にひとり死亡事故を起こすからといって、全員に免許を返納させたら、要介護率は現在の2.2倍に増えると予想されていますから、こちらの問題の方がむしろ心配になります。

同じことは、すでにコロナ禍でも始まっています。

高齢者が自宅から外に出なくなり、人と話をする機会が減ったことで、「歩行機能」と「認知機能」が低下して、5年後くらいには要介護者の数が200万人は増えると見られているのです。

高齢者に限っていえば、コロナで亡くなる確率より、要介護になる確率の方が高いわけですから、マスクをするなどの安全対策をしっかりして、屋外を散歩する……という選択があってもいいのではないかと考えています。

予期不安から自由になって、やりたいことをやる人は、起業ができたり、恋人ができたり、楽しいことに出会える確率が上がります。

空振りがある代わりに、ヒットも出るのです。

まずは、「案ずるより産むが易し」と思って、何でも試してみることです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院・浴風会病院の精神科医師を経て、現在、国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

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(精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授 和田 秀樹)

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