成績が最も良かったのは「運用を忘れていた人」…資産運用でお金を減らす人が陥る"3つの落とし穴"
プレジデントオンライン / 2022年7月15日 8時15分
※本稿は、タザキ『お金の名著200冊を読破してわかった!投資の正解』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■アマチュアのゲームで重要なのはミスを減らすこと
インデックス運用が良いと言われても、それは想像以上に退屈な投資なので、アクティブな投資への誘惑に負けてしまいます。
負けないインデックス運用をするにあたり、示唆に富んだ分析が豊富なのがチャールズ・エリス氏の『敗者のゲーム』です。第8版まで出ているベストセラーです。長年読み継がれているだけあって、時代を超える法則を教えてくれます。この本の特徴として、『敗者のゲーム』という個性的なタイトルが挙げられます。
これは、アマチュアのテニスの試合のようなものです。素人のテニスの試合は、目の覚めるようなショットで点が入るというよりは、相手のミスで点が入ることが多いですよね。
一方プロの試合は、ミスはほとんどありません。素晴らしいショットにより点を獲得することが多くなります。プロの試合は「勝者のゲーム」ですが、アマチュアの試合は「敗者のゲーム」です。
■資金移動で「3つのミス」の確率が高まる
この2つのうち、投資は「敗者のゲーム」に近いと言われます。攻撃的になり大成功を目指すよりも「ミスを少なくするほうが、結果的に勝ちやすい」ということなんですよね。ミスを少なくする方法は、とにかく「余計な資金移動をしない」ということに尽きます。資金を移動するほど、ミスが発生する確率が高まります。
1つ目のミスは「タイミングのミス」です。個人投資家が、市場のタイミングを測って出入りするのは簡単ではありません。予測が「できない」と割り切れる人はまだマシで、できると思い込み「間違える」ほうが悪い結果を招きます。
■「高値買い、安値売り」してしまうのが人間心理
仮に成績の良いアクティブファンドを見極めることができたとしても、その売買をする際に、「高値買い、安値売り」をしてしまうのが人間心理というものです。『ウォール街のランダムウォーカー』(バートン・マルキール著)では、いかに個人投資家が高値で購入し、安値で手放しているかを指摘しています。
多くの投資家は、相場のピークもしくはそれに近いところで大量に投資信託を購入し、大底が近づいてくると資金を引き上げています。そのせいで、ただインデックスファンドを持っているだけの投資家よりも、低いリターンしか手にできていません。「タイミング・ペナルティ」を課されているのです。
■良い成績につられた「余計な動き」がリターンを潰す
余計な資金移動をすることによる2つ目のミスは、「移動先のミス」です。スーパーやコンビニのレジに並んでいて、となりの列のほうが早そうだと思って移動したことはありませんか? 列を移動した途端に、移動先の列はなかなか進まず、移動前にいた場所にとどまっていたほうが結局早かった……なんて経験もあるのではないでしょうか。
実はこの現象は「エトーレの法則」という名前がついています。そして、これは投資にも当てはまるのです。
『敗者のゲーム』では機関投資家向け運用をおこなっているマネージャー数社の35年間の調査結果について調べています。これによれば、直近の成績が良好なマネージャーには新規顧客が集まり、直近の成績が悪いマネージャーは解約が相次いでいます。つまり多くの人は「最近成績が良いマネージャー」のほうへ資金移動をしていることになります。
しかし皮肉なことに、新規に採用されたマネージャーのその後3年間の成績を見ると、解約されたマネージャーを下回る結果になっていました。投資家側から見れば、せっかく成績の良さそうなマネージャーに変更したのに、変更して以降の成績は元のマネージャーのほうが良かったのです。スーパーのレジの現象とまったく同じです。
何もしなければ、雨の日の次には晴れの日があるように、悪い成績の次に良い成績が来ていたはずなのですが、「余計な動き」をしたことにより、そのリターンを潰してしまいました。ここでも結局「買ったら持ちっぱなし」にしておいたほうが良いという学びを得ることになりました。
■長期投資は「参加者全員が勝つ」可能性がある
3つ目のミスは、「投資期間のミス」です。
投資というのは、短期的に見れば「マイナスサムゲーム」です。全員の賭け金から、手数料を取る証券会社や運用会社が持ち分を取り、その残りを参加者が取り合うからです。勝つ者もいて負ける者もいますが、全体では手数料分がマイナスになります。
これは、FXやカジノと同じ原理です。株の「デイトレード」も同じです。短期投資は完全にマイナスサムゲームで、誰かの勝ちは誰かの負けです。唯一絶対に勝つのが、手数料を取る証券会社です。
しかし、同じ株でも「長期投資」になれば話は変わってきます。長期投資になれば、「参加者全員が勝つ」ということがあり得ます。つまり、「プラスサムゲーム」になるのです。それは、投資先の企業が「新たな価値」を生み出してくれているからです。
これらのことからも、余計な資金移動はせず、持ちっぱなしにするほうが良いとわかります。
■投資に参加できるのに、なぜかしない日本人
短期的な値動きは、「本質的な価値」を理由に動いていません。単なる心理戦で値段が動いているのです。その世界で利益を得るには、誰かから奪わなければなりません。
長期的なリターンには「本質的な価値」の上昇分も含まれています。この本質的な価値によるリターンが増えるので、これは、誰かから奪わなくても得ることができるリターンです。そのため、参加者全員がプラスになるということもあるというわけです。
「そうしたら、相対的には誰も金持ちになれないのでは?」と思うかもしれません。そうですね、「参加者の中では」相対的にお金持ちにはなれないかもしれません。でも、長い歴史の中でこれだけ株のメリットを多くの人が語ってきたにもかかわらず、まだ参加しない人が日本には大勢いるのです。
世界に目を向ければ、「できない(できる環境がない)」という人も大勢います。しかし日本人なら、環境はすべて整っています。それでも、やらない人が大勢います。なぜやらないのか、本当に不思議です。動かずに、じっとし続けるだけでいいのに……。
■運用成績が最も良かったのは「何もしなかった人」
さて、まとめに入りましょう。とにかく下手な動きをしないこと。これに尽きます。フィデリティという運用会社がおこなった2003年から2013年の顧客の運用パフォーマンスの調査では、「運用を忘れていた人」のパフォーマンスが最も良かったそうです。
つまり、何もしなかった人です。余計な売買をすると、タイミングも間違えるし、移動先も間違えます。じっと動かずいるだけで良いのです。下手に動けば、金銭的コストが上がります。
ポイントは、「大成功」よりも「失敗しないこと」です。集中投資で大成功を目指すのは、ある程度の経験を積んでからでも遅くはありません。経験を積んだとしても、それで成功できる人はわずかです。どうしてもアクティブな投資がしたいなら、年単位で、相場を見ることに慣れる「練習」期間を設けてからでも遅くないでしょう。
ベンジャミン・グレアム氏も、まずは練習するように投資家にアドバイスしています。練習期間はどれだけ取っても構いません。練習期間のインデックス運用のまま、投資人生を終えてしまっても悪くはないくらいですから。
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投資本の要約を発信するYouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」は月間50万PV。国立大学卒業後、IT企業に勤務。大学時代に投資のゼミに出合い、卒業後も余剰資金で投資を続ける。本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超える。現在も週4日勤務の正社員を続けながら、YouTubeやVoicyで投資初心者から中級者までをターゲットに投資情報を発信。2人の子を持つ父。著書に『お金の名著200冊を読破してわかった!投資の正解』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
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(サラリーマン投資家YouTuber タザキ)
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