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なぜ駅前商店街はシャッター街に変わったのか…東大生が考える「本当に正しい回答」の求め方

プレジデントオンライン / 2022年7月15日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

日常的な疑問に東大生はどのような思考を巡らせているのか。現役東大生の永田耕作さんは「東大生は物事の変化や背景をとても意識している。表面的な知識だけでなく、物事の背景まで知ってはじめて『理解している』と言える」という――。

※本稿は、永田耕作『東大生の考え型』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

■理解することとは、「わけを知る」こと

物事を「理解」するとは、一体どのようなことなのでしょうか? 理解という言葉は、「物事がわかるようになること」という意味でしばしば使われていますよね。実際に、理解の「解」の字の訓読みの読み方の中に「解る(わかる)」があることからも、物の理(ことわり)を知る、さとるという意味が重要視されていることが明らかだと思います。

しかし、理解するという言葉にはもう1つ大事な意味があるのです。そして、多くの東大生は「理解」のこちらの意味を常に意識して用いています。それは、物事の「わけを知る」こと。つまり、原因・理由を知ることなのです。

どんな物事、出来事、事象にも必ずその背景となる理由が存在します。僕たちがいろいろな物事を見る際に、単純にその物自体を見るだけでなく、その背景にどのような出来事があったのか、なぜその事象が生じたのか、を意識することで、より深く物事を理解することにつながるのです。

太陽は東から昇り、西に沈みます。これはこの本を読んでくださっている多くの人が知っている事実だと思います。では、「なぜ太陽は東から昇り、西に沈むのですか?」と聞かれたら、みなさんはどう答えますか?

「教科書でそう習ったから」「先生がそう言っていたから」という答えでは、その物事の「わけを知っている」、つまり「理解している」とは言えないのです。「太陽は動いておらず、地球が自転していて、地球から見える太陽の方角が変わっていくことで、東から昇って西に沈んでいくように見える」と説明することで、初めて「理解している」と言える、ということです。

このような例はわりと日常生活に多く存在します。日頃何気なく経験している出来事や見ている風景などにも、「なぜ? どうしてだろう?」という視点を持つことで、物事をただ「知る」ことに留まらず深く「理解」できるようになると思います。

■深い理解のための3種類のフレームワーク

本稿では、深い「理解」のためのフレームワークを3種類紹介します。

●変化前・変化理由・変化後フォーマット
物事の変化前と変化後を見て、そのギャップから理解を深める
●背景/原因フォーマット
事象のストレートな原因だけでなく、その背景には何があるのかを考える
●新しい問いフォーマット
1つの問いを、違う問いに昇華させることで次の問いへとつなげる

大切なのは、短絡的に「わかった」と考えないことです。しっかりとその裏側・別の要因などを考えていくようにしましょう。それでは、早速「理解力」の型を見ていきましょう。

■砂漠化の原因を「森林伐採」では変化を追えていない

変化前・変化理由・変化後フォーマット

何かを理解するために一番必要なのは、「変化前・変化理由・変化後」の3つを考えることです。例えば「なぜここに新しいお店ができたんだろう?」と聞かれて、「大工さんが頑張ったからだよ!」と答えられたら「それが聞きたかったわけじゃないんだよなぁ」ってなりますよね。

「元々あったお店が老朽化して閉じてしまったんだけど、立地自体はとても良いから、新しいオーナーさんが若者向けの商品も取り入れてお店をやることにしたらしいよ」のように、そのお店の前の状態と、そのお店が変わった要因と、変わった後、この3つを答えることで理解してもらえるわけです。これを意識するだけで、物事の理由が格段に説明しやすくなります。

このように変化前・変化理由・変化後で考えるのがこちらのフレームワークです。

変化前・変化理由・変化後フォーマット
出典=『東大生の考え型』より

何かを理解するとき、変化に着目するととてもわかりやすくなる場合があります。「売り上げが落ちている理由を分析したい」のであれば、「前は好調だった売り上げが、なんらかの要因で下がってしまっている」という事象だと解釈できます。そうすれば、「じゃあどんな要因なんだろうか?」と考えやすくなります。

逆に、変化に着目しなければ見落としてしまうこともあります。例えば「近年、なぜ世界では砂漠化が起こっているのか」と聞かれて、「人間が過度に森林や草原を伐採しているから」と答えるのは砂漠化のことがわかっていないと言えます。なぜなら、前から人間は森林や草原を伐採していたからです。それがなぜ近年起こっているのかがわからなければ表面しか理解していないことになります。「世界の人口が昔より増えて、食糧不足に喘ぐ人が増えたから伐採が増えている」と、変化を意図した答えを作る必要があるのです。

森林破壊
写真=iStock.com/luoman
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/luoman

■変化の理由は複数考えた方が理想的

変化前と変化後を考え、その間にある原因を考える。この3段階で物事を解釈する癖をつけましょう。

変化理由は1つで満足せずに、複数考えた方が理想的です。1つの理由だけで変化はしません。複数の理由が重なり合って変化をもたらします。だから、2つ以上の理由をしっかり探すような習慣をつければいいと思います。またそのときに、「背景」と「原因」を分けて考えるのも重要でしょう。それは次のフレームワークでご紹介しています。

■シャッター商店街が増えた背景を「買い物客の減少」では浅い

背景/原因フォーマット

ある物事の理解を深めるためには、背景と原因の両方を理解する必要があります。

「なぜ最近、駅前の商店街に活気がなくて、シャッターを閉めたままの商店街が増えているのか」という質問に対して、「多くの人が商店街で買い物をしなくなったから」というのは正しい回答だと言えます。ですが、不十分ですよね。なぜ買い物しなくなったのかの原因も知りたいと思いませんか?

シャッター通り
写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yue_

背景には「車で移動して一括で買い物ができる大型ショッピングモールが増えたから」という原因も、「地方部で駅を利用する人が減って車を利用する人が増えたから」という原因もあります。背景まで理解できなければ真に理解したことにはならないのです。

原因だけでなくその背景にあるものまで考えるためのフォーマットがこちらになります。

背景/原因フォーマット
出典=『東大生の考え型』より

物事の裏側を理解しなければ、本当の意味で理解したことにはなりません。かの豊臣秀吉公は刀狩りの際に「大仏に使うための金属として使うから刀や鉄製の農具を献上するように」と農民に言い、事実として金属は大仏の建立に使われました。しかし、それは建前の理由。農民が反乱などを起こせないようにするために刀や鉄製農具を奪いたかったわけです。

こう考えると背景にあるのは、農民の一揆などが多く発生していたという事情だと言えます。1つの要因で満足していると真の答えにはたどり着けません。いろんな目線で見る必要があります。だから、「なぜ」という問いを深掘りしてみるようにしましょう。

■間接的、背景的な事象を考える

僕らはつい、事象を直接の原因で考えがちですが、社会的な背景や裏側の事情などもあるはずです。売り上げが少ないからといって商品の単価を高くすればいいってものではありません。商品そのものを変えたりとか、お店の場所を変えたりとか、もっと間接的・背景的なところから変えていくことが必要なこともある、ということですね。

背景とは、その事象を招いている根本的・本質的な原因のことです。それを知るために、「なぜ」を繰り返していきましょう。「なぜお客が減ったのか」「なぜ車移動が増えたのか」、どんどんなぜを繰り返していけば、どんどん本質的な原因に近づけるはずです。

■■1つの問いから別の問いを導き出す

新しい問いフォーマット

問いを考えていくと、「それって実はこういう問いだったんじゃないか?」と考えることができる場合があります。

永田耕作『東大生の考え型』(日本能率協会マネジメントセンター)
永田耕作『東大生の考え型』(日本能率協会マネジメントセンター)

例えば、「なぜ若者はSNSにのめり込むようになったのか?」という問いを考えていたら、いろいろ分解して考えていった先で「なぜ若者の人間関係はオフラインからオンラインの方に移行しているのか?」という問いだったと気づく、なんてこともあるのです。

SNSのことを考えたらわからないけれど、人間関係の話だったら考えやすいかもしれません。またその逆の場合もあるでしょう。

1つの問いで終わってしまうよりも複数の問いを移動していく方が答えを導きやすいわけです。そして、頭の良い人は、問いから問いに移動するのが上手いから、問題解決が上手いのです。

新しい問いフォーマット
出典=『東大生の考え型』より

1つの問いを深掘りしてもいいし、分解した問いをつなげてもいいと思います。例えば「2010年代にディズニーランドの観光客が増えたのはなぜか」という問いがあったときに、観光客を分解して考えた結果、中国や台湾の観光客が多いことがわかったとします。ここでただ「なぜ、中国や台湾の観光客がディズニーランドに多いのか?」と考えてもいいのですが、これを「2010年代」とつなげて「2010年代になぜ、中国や台湾の観光客が増えたのか?」という問いに形を変えてもいいと思います。

■頭の良い人は問いから問いへの移動がうまい

問いに答えはありますが、問いの作り方に答えはありません。いろいろな質問があっていいですし、いろいろなアプローチがあっていいと思います。何度も言いますが、頭の良い人は問いから問いへの移動が上手です。要するにいろいろな問いを考えることができるわけです。みなさんも、いろいろな新しい問いを作って、質問に対する回答を考えていきましょう。

身の回りの些細なことでも問いにするようにしましょう。「なぜ、カボチャはニュージーランドから輸入されているのか」「牛乳はなぜ、北海道じゃなくて都心の近くで作られている場合が多いのか」とか……。実はこういう身の回りの問いというのが、東大の入試問題で出題されています。いろいろな問いを考えることによって思考が整理されていく、これぞまさに東大流だということですね。

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永田 耕作(ながた・こうさく)
現役東大生
2001年生まれ。愛知県名古屋市出身。公立高校から学習塾に入らずに現役で東京大学理科一類に合格。東京大学の進学振り分けシステムにおいて文系へと転向し、現在は東京大学教育学部に所属。2021年2月から株式会社カルペ・ディエムに所属し、現在はさまざまな学校の高校生に「勉強との向き合い方」や「努力の大切さ」を伝える講演活動を実施している。自分自身のこれまでの経験や、大学で学んでいる教育論を整理しつつ、中学生高校生とも触れ合いながら自分自身の考えを洗練させている。

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(現役東大生 永田 耕作)

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