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「立憲民主党は末期的」無所属・福島伸享氏が昔の仲間に手厳しい言葉を浴びせるワケ

プレジデントオンライン / 2022年7月20日 15時15分

衆院予算委員会で質問する衆院会派「有志の会」の福島伸享氏=2022年2月2日、国会内 - 写真=時事通信フォト

2009年の第45回衆議院議員総選挙にて、茨城1区で初当選を果たした福島伸享氏。長らく非自民の入る隙などなかった茨城1区を制することができたのはなぜなのか。政治記者である蔵前勝久氏は「福島氏は政治刷新のために、体を張って与党を批判し、命がけで戦う覚悟があるのだ」という――。

※本稿は、蔵前勝久『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
※役職名は当時のものです。

■無所属を貫き当選した福島氏の戦略

茨城1区で、自民党前職を破り、3選を果たした福島伸享(のぶゆき)氏は支持者らを前にこう語った。「政治の歴史に新たな1ページをひらく選挙だ」「国民が既存政党に不満を持っている。政治刷新のために、命がけで行動する」。

17年衆院選では希望の党から立候補したが、比例復活もかなわず、4年間の浪人を経験した。その間、「野党が一つになって自公と戦う状況になっていない」として、あえて無所属を貫き、「党より人物」をキャッチフレーズに自民党支持層の切り崩しに努めた。朝日新聞の出口調査によれば、1区での投票者の半数弱を占めた自民党支持層から3割近くを獲得した。福島氏の戦略が的中したといえる。

■「立憲民主党は末期的」福島氏の手厳しい言葉

福島氏は「政権に対抗する大きなまとまりを作る起爆剤、接着剤の役割を果たしたい」として、当選後も無所属のままだ。いずれも小選挙区から当選した旧民主党議員の経験がある無所属5人で、会派「有志の会」を立ち上げた。

福島氏の言葉はかなり強烈だ。特に「批判ばかり」との批判を恐れて腰が定まらない立憲民主党に手厳しい。22年2月15日のブログにこう記した。

「今の野党の国会対応の状況はバカバカしくて見ていられない」
「与党側は、あまりにもチョロくて笑いが止まらないだろう。とりわけ、ちょっとした報道と、それに対するネットの反応で右往左往する立憲民主党は、末期的な状態であると言わざるを得ない。国会対応に対する腰の据わった戦略がないから、こうなるのだろう。国会での闘争に向いていないのではないか。野党第一党としての議席を持っているのだから、もっとしっかりと与党と対峙(たいじ)してほしい」

■森友問題を追及し、送られてきた7通の生命保険加入書類

福島氏はかつて民主党に所属。立憲民主には昔の仲間も多いが、「末期的」などと厳しい言葉を浴びせるのは、身を削るようにしながら政権追及に臨んできた経験と、それに裏打ちされる自負があるからだろう。福島氏が安倍晋三首相から引き出した言葉を覚えている人は多いと思う。

2017年2月17日、衆院予算委員会で、民進党議員だった福島氏は森友学園の土地取引問題をめぐり、安倍首相を追及した。この中で、安倍氏は同学園が新設予定の小学校の名誉校長に妻の昭恵氏が就いていることを「承知している」と説明した上で、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と述べた。森友学園をめぐる公文書改ざん問題の報告書によると、この答弁を受けて、財務省内で昭恵氏の名前が入った書類の確認が行われ、その後の公文書改ざんにつながった。起点を作った福島氏は「私や妻が……」発言後も、この問題を追及した。

すると異変が起こった。地元・水戸の事務所に頼んでもいない健康サプリメントが届くようになった。自分が申し込んだ覚えのない生命保険の加入書類も7通届いた。誰かが福島氏の名をかたり、生保会社に請求したものとみられ、福島氏は「『命に気をつけろ』という暗示だと思った」と語る。そうした経験をしてもなお、いや、そうした経験をしたからなおさらか、福島氏は「野党は批判ばかり」との指摘を恐れる立憲民主党が歯がゆい。

生命保険申請フォーム
写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/courtneyk

■体を張って政治闘争に挑めない政治家はやめるべき

22年2月22日に朝日新聞デジタルで配信されたインタビュー「提案型野党なんてクソ食らえ」の中でこう語っている。

「政策を提案したいならシンクタンクで働けばいい」
「与党になって自ら掲げる政策を実現するため、政治闘争を挑むのが本筋」
「政権を倒すことを目的にした批判、権力構造の本質を突く批判は体を張ってやらなければならない。野党時代の自民党は、そうだった。『批判ばかり』と言われておじけ付くなら、政治家をやるべきではない。民主政治の危機になる」

■候補者の横顔に書かれた福島氏のプロフィール

強烈なパンチを古巣に繰り出す福島氏の初出馬は2003年衆院選、33歳のときだった。

水戸市の中心街
写真=iStock.com/stevegeer
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stevegeer

菅直人氏が率いる民主党と小沢一郎氏が党首を務める自由党による「民由合併」で生まれた新しい民主党の候補だった。選挙区は水戸市を中心とする茨城1区。03年10月30日の朝日新聞茨城版に載った候補者の横顔にはこう書かれている。

理念持ち方向決定 福島伸享氏 民新
7月に官僚を辞めて立候補した。「霞が関を脱藩した」と表現する。/経済産業省と内閣官房で仕事をした。強く感じたのは「課題に対する決断を、政治家が官僚に丸投げしている」ということだった。「名前が出ない官僚が国を動かしている」という違和感が残った。/「国の方向性を決められるのは、選挙で選ばれた政治家だけ。だから、政治家は理念を持ち、国の方向性を打ち出すべきだ」と考える。尊敬するのは中曽根康弘元首相、小沢一郎旧自由党首ら「理念ある薫りのする政治家」だ。/立候補を決めてから、中学や高校時代の友人から「いつかはこの日が来ると思っていた」と言われた。高校時代、生徒の校歌反対運動に、逆に反対するチラシをまいていたこともあった。/大学時代はヨットに没頭し、年間200日近くを海で過ごした。趣味はアジア放浪。タイやベトナム、韓国料理などは自ら作る。ラーメンの食べ歩きも好きだという。

■党員サポーターがたった6人からのスタート

福島氏が候補予定者になった時点で、選挙区である茨城1区の民主党の地方議員は、その年の統一地方選で初当選したばかりの水戸市議1人だけ、そして党から渡された党員サポーター名簿に載るのも11人だけだった。水戸に到着した初日に「11人全員にあいさつに行こう」と訪ねたが、書かれた住所に住んでいたのは6人。福島氏は言う。「野党なんて、いない選挙区だったんですよ」。

■「選挙区はサファリパーク」有権者は遠くから政治家をじーっと見ている

福島氏は選挙区回りを「サファリパーク」にたとえる。通産官僚時代にケニアに出張した際、草原地帯を車で移動している時の感覚に似ているからだという。「サバンナを車で移動しても、動物は見えない。草原が広がっているだけ。でも、何か視線を感じるので、車で通り過ぎた後を振り返ってみると、茂みの中から動物が出てくる。地元の有権者も同じ。政治家が回っている姿をじーっと見ているんです。例えば、貧しそうな家を回らなかったとか、瓦屋根が落ちそうな家やゴミ屋敷は飛ばしたとか。そういうのを全部見られている」。だから、福島氏は、一つの集落に行けば、必ず全戸を回るようにしている。「例えば200軒あれば、200軒。回っていない家があれば、その人を敵に回す」。

■選挙区は「しらみつぶし」に回る

しらみつぶしでなければ選挙区回りの効果が少ないどころか、逆効果になることに気づいたのは03年、05年と衆院選で2回続けて落選した後のことだ。その2回の選挙では、つてを頼りに必死になって作り上げた支援者名簿や高校の同窓会名簿をもとに選挙区を回っていたが、「3回目は最後の挑戦。一軒一軒全てを回ろう」と開き直った。使ったのは、住宅地図と四色ボールペン。一軒一軒ごとに訪問日を記す際、ポスターを貼ってくれるなど強く応援を約束してくれた世帯は赤色の文字で、「一票、入れるよ」と言ってくれたら緑色、「頑張って下さい」という一般的な反応の場合は青色、不在の場合は黒色といった具合だ。パンフレットを受け取ってくれなかった世帯には「×」をつけた。

蔵前勝久『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』(朝日新書)
蔵前勝久『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』(朝日新書)

「あなたは、これまで支持者の家ばかり回っていたよね」と言われたことがあるわけではない。ただ、しらみつぶしに回ることによって、有権者たちは、その政治家が本気かどうかを見ている、ということに何となく気付いた。福島氏は言う。「言葉にすれば安っぽいが、『この人は、全てを捨てて人生をなげうっている』『この政治家は、人生をかけて、国のため、地元のため、私たちのために議員になろうとしている』という風に相手に信じさせないと、他人は自分にはついてきてくれない」。

高校の同窓生や党の支持者に頼ってばかりでは、有権者は「福島という政治家は本気だ」とは見なしてくれない、というわけだ。「多くの政治家は、全てを捨てたつもりになっても捨てられていないものがある。人間としてのプライドだったり、学歴の誇りだったり、家族の幸せだったり」。徹底的なローラー活動に取り組む福島氏から全てを捨てている必死さが感じられるためか、有権者から「なんで、こんなことをやっているのか」と尋ねられることがある。福島氏は笑って、こう答える。「悪い霊が私についているんです。自分の幸せや家族の幸せを追い求めても全然面白くないんです」。

(朝日新聞論説委員 蔵前 勝久)

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