1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

藤野英人「運用歴32年のプロ投資家の私が重視する『株式市場で絶対に勝てるたった1つの法則』」

プレジデントオンライン / 2022年7月14日 9時15分

藤野英人『プロ投資家の先の先を読む思考法』(クロスメディア・パブリッシング)

投資で成功する秘訣は何か。プロ投資家として32年を超える運用歴を持つ藤野英人さんは「多くの人は株価が上がると『もっと上がるのではないか」と思って買いたくなり、自分が買った株が値下がりすると、「もっと下がるのではないか」と不安になって売りたくなる。この人間の心理を逆手にとればいい」という――。

※本稿は、藤野英人『プロ投資家の先の先を読む思考法』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■「先の先を読む」のは、トランプの神経衰弱のようなもの

「先の先を読む思考力を鍛えたり身につけたりすることができれば、投資で成功する確率が高まるに違いない」――そんなふうに期待してこの本を手にとってくださった方も多いでしょう。

その期待にできるだけ誠実に応えるため、まず最初に大前提をお伝えしたいと思います。

それは、「未来を予測するのは、非常に困難である」ということです。

もしかすると、ちょっとがっかりした方もいるかもしれません。

しかし、「未来が完全にわかる」という人がいたら、それは嘘つきの類ではないかと思います。

もちろん、簡単なことではないとはいえ、未来をある程度予測することは可能です。

私自身がいつもイメージしているのは、トランプの「神経衰弱」です。

未来を「めくられていないトランプのカードがたくさん並んでいる状態」だとすると、私たちが日々、さまざまな情報を見たり聞いたりすることは、カードの1枚がめくられて「それがなんのカードか」を知ることと似ています。

トランプがすべてめくられていなくても、私たちは何枚かのめくられたカードを確認することによって、「全体の中でまだめくられていない札はなんなのか」を予測することができます。

先の先を読んで未来を予測することは、トランプや麻雀のようなものだと言ってもいいかもしれません。

「場に出ているもの」と「手元の札」を見ながら、自分の周囲や対峙(たいじ)している相手にこれからなにが起きるのかを考えるのです。

もちろん、未来予測にはゲームとは異なる不確定要因もあります。ひとたび大きな事故や自然災害、パンデミックなどが起きれば、前提を変えて予測を修正していくことが重要になります。

トランプや麻雀にたとえていることからもわかるように、私は自分の「先の先を読む思考力」が完全なものだとは思っていません。未来を予測しようとするときは、ほとんど真っ暗な闇の中にいるようなものです。

しかし暗闇の中でも幾筋か、光の筋を見つけることはできます。

その光の筋を束ね合わせ、「ほぼ確実な未来」や「起きるかもしれない未来」を見出していくのです。

これは、一筋の光もない真っ暗闇にいるより、はるかにマシなやり方だと思います。いくつかの光の筋を追っていけば、これから進もうとする道の先になにがあるのか、自分の予測を日々修正していけるからです。

そしてそのように日々を重ねていけば、結果的に正しい道を選んで歩んでいけるのではないかと思うのです。

未来予測というのは不完全なものであり、なにか不測の事態が起きれば修正していくことも不可欠です。

しかし「先の先を読む思考力」を鍛えて未来を予測しようとし続ける人は、そのような努力をしない人やあてずっぽうで生きている人よりも、ビジネスや投資で成功しやすいでしょう。

もちろん趣味の世界を満喫するなど人生を楽しむという意味でも、そのような思考力を持っている方が、世界が広がりやすいに違いありません。

■「短期」は読めないが、「中長期」は予測できる

プロの投資家の立場から、株価の「先読み」について言えば、短期的な株価の動きを正確に予測するのはとても難しいと言えます。

日々の株価は、政治家の発言や自然災害などの外部要因によって大きく動くもの。「明日の株価が上がるか、下がるか」はプロにもわからないのです。同様に、3カ月後、半年後の株価というのもほとんど予測がつきません。

しかし2年後、3年後の株価となると、話は変わってきます。ぼんやりとではありますが、長期であれば株価がどれくらいになるのか予測できるのです。

株式投資をしている方はご存じだと思いますが、株価は「株価=EPS(1株あたり利益)×PER(株価収益率)」という式で表すことができます。

PERは金利や為替、市況などの外部要因やその銘柄の人気によって大きく変わります。

一方、EPSは企業の情熱や工夫、頑張りによって決まるもの。そして、株価というのは短期的には外部要因や人気などに左右されるものの、中長期で見ればEPSにほとんど連動するのです(図表1、2参照)。

【図表1】株価は何で決まる?
出典=『プロ投資家の先の先を読む思考法』
【図表2】株価と企業業績の関係
出典=『プロ投資家の先の先を読む思考法』

つまり、株価は半年くらいのスパンで見れば、「たまたま3割上がる」ことも「なぜか半値になる」こともありえますが、2、3年経てば、利益が2倍になった会社の株価はおおむね2倍になり、利益が3分の1になった会社の株価はおおむね3分の1になるわけです。

これは、有名な会社であろうが、無名な会社であろうが関係ありません。都心の会社か地方の会社か、東大卒の社員がたくさんいるか高卒社員が多いか、イケメン揃いかブサメンが多いかといったこともまったく無関係です。

株式市場というのは、冷徹なまでに企業業績にコミットしています。

このことを知っていると、株価の「先の先を読む」方法がじつは非常にシンプルであることがわかります。

企業の利益がどんどん増えるのはどのような場合かというと、多くの場合、お客さまの数が増えたり、値上げが成功したりしたケースです。

もちろん、コストを下げてできるだけ多く利益を残すという方法もありますが、昨年より今年、今年よりも来年、より多くの人がより多くのお金を払ってくれるようになれば、企業業績は右肩上がりに伸び、その結果として株価も右肩上がりになります。

「お客さまから評価を受けて利益を伸ばす会社は、短期的な株価については上がるか下がるかわからないけれど、中長期では利益に応じて株価が上がる」のです。

株式投資において「長期で投資することが大事」と言われるのは、このためです。

■投資の成功に学歴や容姿は関係ない

ちょっと乱暴かもしれませんが、私は株式市場というものはつねに「未来」にだけ開いていると思っています。

株価の「先の先」を読む場合、過去がどうであったかはほとんど関係がなく、これからの頑張りが重要だからです。

これまではまったくパッとしない会社であったとしても、利益が3倍に増えれば株価もほぼ3倍になります。

そして過去にどれだけ高い成長を遂げてきた会社でも、利益が3分の1になれば株価はほぼ3分の1になります。

株価は、「その企業が未来に対してどのように付加価値を提示するのか」によって決まると言っていいでしょう。

もう一つ付け加えると、株式市場には「差別」というものがありません。

みなさんが株式投資に挑戦した場合、どんなに学歴が高くても、どれほど素晴らしい家に生まれたとしても、どんなに美しい容姿を持っていたとしても、投資の成功にはなにも関係ありません。

結果は「どのような会社に投資したか」だけで決まります。

そして、株式市場では原則として、誰でもいつでも株を売買することができ、買った株が3割値上がりすれば、買った人の属性などは一切関係なく3割のリターンを得ることができるのです。

未来に向かってのみ開いていて、差別がない。だから私は、株式市場が好きなのです。

■「株式市場で絶対に勝つ」ためのたった1つの法則

投資で成功する秘訣(ひけつ)を知りたいという皆さんのために、ここでとっておきの話をしましょう。

「株式市場で絶対に勝つ法則」が、たった1つだけあるのです。プロ投資家として32年を超える運用歴を持つ私が考える、非常に大事な法則です。

それは、「安く買って、高く売ること」です。

そう、安く買って高く売ることができれば、誰でも必ず儲けることができます。

「当たり前じゃないか」と思ったでしょうか?

ところが人間の心理というのは面白いもので、株式投資をしていると、多くの人は「高く買って、安く売る」ことをしてしまいがちなのです。

勝つためには「安く買って、高く売る」ことが必要だとわかっているなら、株価が下がったときほど強気になって株を買うべきであり、株価が上がったときほど弱気になって売るべきだということになります。

しかし株価が上がると「もっと上がるのではないか」と思って買いたくなり、自分が買った株が値下がりすればするほど、「もっと下がるのではないか」と不安になって売りたくなるのが人間というものなのです。

■本屋さんに並ぶ本で「株の買い時」がわかる

この人間の心理を逆手にとるなら、おすすめなのは、本屋さんに毎日通って並んでいる本をチェックすることです。

「主婦の私でもできた100万円を1億円にする株式投資」「自動投資でラクラク稼ぐ」といったタイトルの本がズラッと並んでいるときは、株を買わない方がよいでしょう。

そのような本が姿を消し、「ヒーリングのすすめ」「自分を許す生き方」といったテーマの本が並び始めたら、それはだいたい「株の買い時」です。

書店の本棚
写真=iStock.com/Jumoobo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jumoobo

このルールで株式投資をすれば、日経平均株価や経済の動向などを知らなくても、そこそこ成功できるのではないかと思います。(※)

しかし実際には、これがなかなかできません。

かつてアメリカで、「私は親や学校の先生、友人などの言うことをよく聞き、学校では優秀な成績を収めてきた。ところが株式投資では失敗してばかり。これはどうしてだろう」と問う本が出版されたことがあるのですが、この問いへの答えは「だからです」ということになります。

株式投資というのは、誰も投資をしたくなくなったときに買い、みんながこぞって株を買うときに売ることが長期的に大事なポイントです。

みんなが言うことを素直に信じて行動する人、「みんなが買っているから買う、売っているから売る」という人は、株式市場では儲けられないのです。

※当コメントは個人の見解であり、市場動向や将来の結果をお約束するものではありません。

----------

藤野 英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス 会長兼社長・最高投資責任者
1966年富山県生まれ。1990年早稲田大学法学部卒業。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネージャーとして豊富なキャリアを持つ。投資信託「ひふみ」シリーズ最高投資責任者。投資啓発活動にも注力する。東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授。一般社団法人投資信託協会理事。

----------

(レオス・キャピタルワークス 会長兼社長・最高投資責任者 藤野 英人)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください