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ひろゆき「暴力ではなく言論で」はきれいごと…社会に絶望して他殺を選ぶ"無敵の人"を減らす方法

プレジデントオンライン / 2022年7月16日 12時15分

2022年1月、パリにて撮影。 - 撮影=松永学

安倍元首相の銃撃事件後、何も失うものがない「無敵の人」という言葉がメディアやネットで再び注目されている。この言葉の生みの親でもあるひろゆき氏は事件後に、「今の日本は社会的弱者や不幸な人を見なかったことにしている」と指摘。ひろゆき氏が考える、無敵の人を減らすための正解とは――。

※本稿は、西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)の一部に、安倍元首相の事件を受けて加筆したものです。

■少数派の声は政治にも社会にも届かない

安倍晋三・元首相の銃撃事件があって、メディアやネットでは「暴力はよくない、言論でなんとかすべき」といった発言が出ていました。でも、そんな当たり前のことを言っていても、今回のような問題は何も解決しないでしょう。

今回の参院選で山際大志郎・経済再生担当大臣が街頭演説で、「野党の人から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない」と言っていました。それが現実の政治なんです。それを与党の政治家が言っても、少し注意されただけで撤回すらしていません。

そうすると少数派の人は、「何を言っても自分たちの声は届かない」となってしまいますよね。

少数派がいくら声を上げても、政権中枢の人が聞かないといっているので、「それなら言論では変えられないよね」と考える人が一部で出てきても不思議ではありません。「暴力はよくない、言論でなんとかすべき」というのは単なるきれいごとで、言いたければ言えばいいんですが、それで社会は変わらないですよね。

それよりもむしろ、「この社会を潰してやる」「この社会はつらいから、もう死んだほうがラクだ」という人たちをどれだけ減らしていけるかを考えるほうが重要だと、僕は思っています。

なぜなら、これは言論の問題ではなく、生存権の問題なんです。

なぜ日本で社会に対して絶望して、自殺ではなく他殺を選んでしまう人たちが後を絶たないのか、なぜそういう人たちを防げないかを考えないと、状況は変わらないでしょう。

■自分ではなく他人を殺す「無敵の人」

いま日本では、年間に2万人ぐらい自殺をする人がいます。「この社会で生きていてもツラいから、死んだほうがラクだよね」と、自分で死を選ぶ人がいるわけです。

その中に、自分を殺すのではなく、他人を殺すことで社会を卒業しようとする人たちがいます。「社会からこれだけ疎外されてるんだから、別に一発やり返してもいいよね」「どうせ死ぬんだから、死刑や刑罰も怖くないし」といった考えの人が起こす事件が、ここ数年いくつも起きました。

僕は15年前ぐらいに、死刑や警察に逮捕されることを怖がらないで罪を犯してしまう人のことを「無敵の人」という呼び方をしました。社会的な信用を失うことを恐れない、財産も職も失わない、犯罪を起こして他人を巻き込むことを躊躇(ちゅうちょ)しない、「失うものが何もない人間」という意味です。

著書『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』でも書いたのですが、社会に対して絶望して、「どうせ死ぬなら他人も殺してしまおう」という方向に向かってしまう事件は、欧米では珍しくありません。ほかの先進国に比べたら、日本ではまだ多くはないのですが、それでもここ10年は1~2年に1度くらいの頻度で起きるようになってきました。

西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)
西村博之『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)

2016年の神奈川の障害者施設殺傷事件や、2019年の京都アニメーション放火殺人事件、2021年に大阪の心療内科に火をつけた北新地ビル放火殺人事件、小田急線や京王線で起きた刺傷事件、だいぶ前になりますが2008年の秋葉原通り魔事件など、それまではふつうに暮らしてきた人が、一転して重大事件の加害者になる事件がいくつも起こりました。

こうした「無敵の人」に対しては、既存の刑事罰を強化しても、犯罪を抑止する効果はあまりありません。逮捕されて刑務所に入ることをイヤだと考えるのは、社会に属すことに居心地のよさを感じる人たちだけです。社会を敵対視している人にとっては、刑務所や死刑ですら苦痛からの解放のように考えてしまう場合もあるからです。

■排除された人は社会に牙をむく

無敵の人には、安定した職に就いていない就職氷河期世代(1970~1984年生まれ)ぐらいの人が多いんです。

バブル崩壊後の就職難で正社員になれずに、非正規雇用で20年働いていて、恋人も家族もいなくて、なかには「オレ、なんのために生きているんだろ」となっている人もいると思うんです。

それより上の60代以上の世代は、年金を払えていたからそれなりに人生をまっとうできるんですが、40代ぐらいの世代は世間からは「お前ら働けるじゃん」と言われます。それなのに、企業は20代や30代を雇って40代は雇わない。

でも、彼らが不遇なのは、たまたま大学を卒業する頃が就職氷河期だったからです。おまけに、その頃に派遣社員というシステムができたせいで、真面目に働いてきたのに利益やスキルを得られなかった。努力ができて結果を出せても報われていない人もいる、運が悪かった世代なんです。

なので、彼らが社会に対して「知ったこっちゃねえよ」となるのは、自己責任の言葉だけでは片づけられない部分もあります。社会は彼らに対して優しくしていないのだから、彼らが社会に対して優しくすべきだというのは説得力を持たないですよね。

社会から人を排除すると、排除された人は社会に牙をむくよねということは、さすがに皆さんも理解されるような状況になってきたのではないでしょうか。

■「ホームレスは野垂れ死ねばいい」というメッセージ

2020年に40代の引きこもりの男性が、渋谷区のバス停でホームレスの女性を殴り殺したという事件がありましたが、いまの日本では「ホームレスはいないほうが社会にとっていいよね」という考えが多数派になっている気がします。

実際、公園や駅にいるホームレスが、警備員や駅員、警察官に追い出されているのを見ても、多くの人はおかしなことが起こっていると思わず、止めたりもしないですよね。

でも、追い出されたホームレスは別の公園や駅に行くだけで、排除しても何も変わりません。それをまったく問題ないと思っている人は、単に自分の目の前からいなくなってくれて、「どこかで野垂れ死ねばいいよね」と思っているのと同然です。おそらく、それが日本人の多数派になってしまっているので、そうなってしまうと社会に対して希望が持てなくなってしまっても仕方ないですよね。

これって弱者に対して、「あわよくば自分の見えないところに行って、勝手に野垂れ死んでくれたほうがいいよね」というメッセージになっていると思うんです。そういうメッセージを社会が出し続けていると、自分は排除されたと思う人たちが「社会の秩序を守らなければいけない」と思わないのは当然ですよね。

なので、人を排除するという考え方自体を変えていったほうがいいと、今回の事件であらためて思いました。

これは簡単に解決する問題ではないのですが、皆さんがホームレスや社会的弱者を「見なくてもいいよね」「あの人たち、いなくなったほうがいいよね」とうっすらと思っていることが、実際に結果になってしまうことが今後もあるかもしれません。

僕はこの問題の正解は、不幸な人を減らすことだと思うのですが、今の日本は不幸な人を見なかったことにして無視している気がします。

でも、無敵の人の事件を防ごうとするなら、社会から疎外されている人や社会を敵対視している人をできるだけ減らしていくほうが重要でしょう。

■キモくてお金のないおっさん問題

社会的弱者といったときに、障害者や外国人はよく知られている存在ですよね。

でも、世の中には名前がついていない弱者もたくさんいます。

たとえば、キモくてお金のないおっさんのように、誰にも見られなかったり、そうなったのは自業自得だろうという見られ方をしている人たちは多いです。

そういった苦しんでいる人たちが社会に牙をむかないようにするためには、どうしたらいいのか。

僕は、彼らを普通に暮らせるようにすることが正解だと考えています。

たとえばベーシックインカムのような形で、働いているかどうかにかかわらず毎月お金を配って、せめてホームレスでなくて食と住は確保できるようにする。不幸な人をできるだけ減らすという形にしたほうが、まだいいと考えています。

■仕事以外で居場所がつくれない社会

今の日本で思い込みや思想に染まって事件を起こす人って、友だちや話し相手が少ないケースが多いんですよね。孤独な人が自分の妄想を凝り固めていって、「きっとこういうことなんだ」と決めつけて、それを何とか変えなければと思い込んでしまう。相模原の事件や京都アニメーションの事件の犯人も、自分の妄想が真実だと思い込んでしまった。

でも、もし社会との接点があって、誰かに「こう考えているんだけど」と話したら、「いやいや、それ違うよ」と言ってくれた人がいたはずなんです。

会社に勤めている人でも、じつは職場以外で話し相手がいなくて、土日はずっと家にいるという人は少なくありません。そういう人は仕事があるから、かろうじて居場所があるんですけど、今の社会って仕事ぐらいでしか居場所がつくれないんですよね。なので、できるだけ社会の中で、仕事以外の形の居場所をつくるべきなんです。

たとえば、部活動の指導って今は学校の先生がしていますが、別に近所のおじさんが野球やバスケを教えてもいいですよね。塾をNPOのような形にして、無料で小学生に算数を教えるとか。お金をとるとなると高いスキルが要求されますが、無料なら高いスキルはいらないので、手伝ってくれてありがとうとなるでしょう。

ベーシックインカムのような形でお金を配れば、月謝を取らなくてもスタッフは食べていけますし、子どもに勉強を教えていれば親や社会との接点もできます。そういう形で、ちゃんと社会に役割をつくるべきだと思うんです。

■社会に牙をむく人を減らす方法

今の社会って、お金とスキルを持っている人はコミュニティに所属できるけれど、お金を生み出せない人っていらないよねという考えなんですよね。でも、排除された人たちにも役割がある、もう一つのコミュニティをつくれば、それも居場所になります。

昔はその居場所が、家庭や宗教だったんですよね。大家族の中で全然働かないおじさんがいたり、お金は生み出さないけれど毎週集まってお寺の周りを掃除したり。

お金を生み出さないコミュニティが、昔は成立していたんです。それをもう一度つくり直したほうがいい。

社会に牙をむく人を減らそうとするなら、赤の他人でもいいので、社会の人とのつながりを持つようにすること。そして、お金を配って食えない状態をなくしたほうが早いと思います。

今回の事件も、社会が手を差し伸べていたら、違う結果になっていたかもしれません。

誤解がないように言っておくと、排除された人たちの罪を見逃すべきとか、無敵の人に殺されても仕方がないと言っているのではありません。

同じような境遇の人が今も社会にいて、同じ考えに至るのを防ぐべきだと思っているから情報発信をしているのです。

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ひろゆき(ひろゆき)
2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は150万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)など。

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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)

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