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初対面のころは優しかったのに…職場やママ友にいる「女子ボス」が最初だけ"面倒見の良い人"を演じるワケ

プレジデントオンライン / 2022年7月22日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

女性コミュニティにおけるハラスメントにはどのような特徴があるのか。産業カウンセラーの川村佳子さんは「『女子ボス』と呼ばれる人が、自己存在の実感を求めるあまりいじめや嫌がらせに走ってしまう。彼女らの中には、最初は優しく接して服従関係に持ち込もうとするタイプもいる」という――。(第1回)

※本稿は、川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■「女子ボス」による悪質なハラスメントとは

近年、私のカウンセリングルームでも、パワーハラスメント(Power Harassment)の相談が増加傾向にあり、非常に深刻な問題だと受け止めています。

パワーハラスメントは、厚生労働省の定義によれば、

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」

とされています。

しかし、ハラスメント(Harassment)自体の定義は、いろいろな場面での「いじめ・嫌がらせ」を意味します。

その種類はさまざまですが、他者に対する発言、行動などが本人の意図には関係なく、「相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えること」を指します。

ハラスメントは、職場に限ったことではなく、学校やママ友同士、趣味のサークルや地域社会など、いろいろな場面で根強く存在し、大きな社会問題となっています。

特にここ数年、女性から悪質なハラスメントを受けているという相談が続いたことは、私の心のアンテナに長く引っかかっていたことでした。

■自己存在を実感するためにいじめや嫌がらせを繰り返す「女子ボス」

私は、自己存在の実感を求めるあまり、ハラスメント(いじめ・嫌がらせ)をしてしまう女子を、「女子ボス」と名付けました。

これは、少し強い言葉かもしれません。皆さんはこの言葉から、どんな人物をイメージするでしょうか?

◎いつも攻撃的な態度で、マウントをとる女子。
◎新人が入ってくるたびに、いじめ続ける女子。
◎同僚なのに、上司面する女子。

3人以上の女子が集まると、リーダー格の女性が生まれます。つまり、その集団の方向性を決める立場の人です。

そのリーダー格の存在が悪いわけではありません。男女を問わず、その集団をより良い方向に導くべく、集団を引っ張っていくうえでは欠かせない存在です。

ただ、リーダーという枠を超え、リーダー自身の考えや望みを最優先にしてしまい、それに逆らう者を追い詰めたり、排除するようなケースが生じる場合があります。そのようなケースは、男性の集団以上に女性の集団に起こりやすい傾向にあります。

「女子の人間関係」のカギを握るキーパーソン。それが「女子ボス」です。

「女子ボス」が誕生した集団には、おおむね「ハラスメント」が蔓延しています。目には見えないですが、女子の人間関係を左右する強力な圧力です。

■自分の周囲に人を集めるために最初だけ優しくしてくる

自分の存在価値を高め、周囲に人を集めるために、最初は優しくしてくるタイプの女子ボスもいます。

例えば、親身になって仕事を教えてくれたり、お土産をくれたり、おいしいお店を教えてくれたり、何かと親切です。

しかし、その中で媚びてくる人間や、コントロールしやすい人間、自分の言うことを聞きそうな人間が見つかると、ターゲットを絞り、本来の攻撃性を表してくるのが特徴の1つです。

取り巻きを見つけるまでは非常に親切なので、最初は「親切な人」「面倒見の良い人」という印象を持つかもしれません。

しかし、女子ボスの「褒められたい」という強い欲求は、内に秘められたままです。

「最初は、新入社員の○○さんと仲良しだったけれど、今はもう○○さんとは仲良くないわね」

という話や、

「また仲良しの人が替わったわね」

といった話が、周囲から聞こえてくるのも、女子ボスがいる環境の特徴の1つです。

いろいろなところで餌をまき、自分を慕ってくれる取り巻きを集めているのです。

こうした人の動きや空気に敏感で、女子ボスの「餌のまき方」に気づいている人もいるかもしれません。

■金銭を介した関係性は罪悪感を持ちやすい

どんな関係性にも言えることですが、女子ボスとのかかわりで特に注意をしなければならないことがあります。

それは、金銭を介したかかわりです。

女子ボスと金銭を介すかかわりが増えてきているとしたら、少し注意が必要です。

レストランの請求書
写真=iStock.com/Chadchai Krisadapong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chadchai Krisadapong

例えば、「食事を頻繁に奢ってくれるようになる」「時にはプレゼントなどをしてくる」といった関係になってくると、してもらった側は恩を受け、相手に借りができます。借りができると、潜在的に罪悪感を持ちやすくなります。そして、恩を与えた側は、「親切にしてあげたでしょ」という優越感を持ちやすくなります。

いわゆる、心理テクニック「返報性の法則」を巧妙に使った手口です。

これは、恩を与えた側はコントロールしやすい状態となり、恩を与えられた側もコントロールされやすい状態となる、非常に「不健康な関係」に陥りやすくなります。

本来の対等な関係性から、服従するような関係性、支配的な関係性に陥りやすいのです。

優しく近づき餌をまき、あなたの心を買収しようとしているのかもしれません。

■自分の考えを持たない人は共依存関係に持ち込まれやすい

女子ボスは、強い攻撃性を使い、「何を言ったら、どの程度相手の感情が乱れるのか」を知る鋭い感覚を持っています。

例えば、自分に媚びる人間や言うことを聞く人間、すぐに謝ってくる人間などを見つけ、自分の子分や手下にしていきます。自分にとって都合の良い相手を見つけ、一緒にいてもらうことによって、偽物の自己肯定感や存在価値を高めていくのです。

取り巻きになる人たちも、心の中や現実生活に何かしらの「弱さ」を抱えています。

私たち人間は皆、常に何かを怖れていますし、何かを守ろうとしています。「退屈が嫌い」と言いながら変化を怖れ、自分の社会的な立場や家族との安定した生活を侵されたくないため、危険だと感じた人や強く出てくる人の意見に、従ったほうが楽だと思うときもあるでしょう。普段から相手の意見に従ったほうが楽だと感じている人は、身の危険を感じたら仲間になるほうがいいと考え、“自分の考え”を持たないようにします。

そうすると、コントロールする側は、鋭い感覚を研ぎ澄ませ、そういった人の弱みに上手に付け込んでいきます。

従ってくれる人が欲しい人間と、意見を持たない人間。

ここに、共依存関係が生まれていくのです。

一度巻き込まれると、簡単に抜け出していくことが難しいケースもあるでしょう。

“自分の考えをしっかり持つ”ことは、ハラスメントに巻き込まれないためにも、大切なことなのです。

■「女子ボス」はあらゆるコミュニティに存在する

あなたのまわりに、陰でこのようなニックネームで呼ばれている人はいませんか?

「お局様」「女帝」「裏ボス」「ドン」「教祖」などなど。

また、この人を敵に回したら怖いなど、いつもまわりが気を使っている特定の人物はいませんか?

会社、学校、ママ友、趣味の世界や地域社会など、あらゆるコミュニティに「女子ボス」は存在します。

人望があり、優れたリーダーシップが取れていることから、このようなニックネームがつけられている人たちもいますが、そのほとんどが、あまりいい意味をもたないニックネームではないでしょうか?

私たちは、いろいろなコミュニティに属して生きています。

職場では職場での、ママ友ではママ友の世界での人間関係があり、時には非常に複雑で、面倒な人間関係の中に身を置かなければならず、苦労している人も多いと思います。

あまり神経質になる必要はありませんが、もしあなたがいつも気を遣わなければならない特定の人物や、攻撃的でまわりを支配しているような人物がいたら、一度意識してみましょう。

あなたの身近にも、女子ボスがいるかもしれません。

■家の大きさやおもちゃでマウントを取る「子どもボス」

子どもにも子どもなりの人間関係があり、女子ボスは存在しています。

例えば、友達のテストの点数をクラスメイトの前で大きな声で話し、恥ずかしい思いをさせる。

「あんたはバカだから仕方ない」とひどい言葉を投げつけ、自信を喪失させる。

そして、休み時間も下校時間も、自分が独りぼっちにならないように、三角コミュニケーションでうまく人間関係をコントロールするなど、ハラスメントに近いことをしている子どもがいます。

驚くのは、家の大きさや持っているおもちゃなどで相手をマウンティングし、すでに子分を従えている「子どもボス」がいることです。

楽しく平和的な人間関係が続けば安心なのですが、大人が知らない間に、子ども同士の嫌がらせやいじめも存在します。

■子どもの攻撃性は「愛してほしい」という不安の表れ

承認欲求は、子どもにとっても、大人にとっても、本能的な欲求です。認められたい、愛されたいと思うことは自然です。

しかし、親からの愛情をあまり受けていない子どもや、家庭環境のストレスなどを抱えている子どもは、日常的に大きな不安感を抱えています。そして、自分の思いどおりにならないことや、強い嫉妬心を抱いたときなど、それらを解消するために攻撃行動に出ることは、子どもも一緒です。

また、子どもの場合はもっと直接的ですので、目の前で平気で相手を無視するなど、残酷な行動を取る場合があります。

川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)
川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)

攻撃性は、不安の表れです。

子どもボスも、自分の不安を悟られることや1人になることが怖いのです。

そして、不安が高まると、攻撃的になるだけでなく、愛情を確かめるための「お試し行動」が表れます。

やってはいけないことをあえて実行し、怒られ、かまってもらうことを期待しているのです。

子どもの世界にも存在する理不尽な攻撃行動を、大人は注意深く観察し、見守っていく必要があります。

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川村 佳子(かわむら・けいこ)
産業カウンセラー
北海道生まれ。一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定「産業カウンセラー」。日本人間性心理学会所属。上智大学グリーフケア研究所所属。防衛省、国土交通省、財務省をはじめ、国立機関や一般企業にて産業カウンセラーとして臨床経験を積み、現在航空自衛隊外部カウンセラー。死別の苦しみや痛みをケアする「グリーフケア」の普及啓発にも積極的に取り組む。心理臨床オフィス「サクラメント函館東京カウンセリングオフィス」代表。著書に『嫉妬のお作法』(フォレスト出版)がある。

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(産業カウンセラー 川村 佳子)

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