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体内時計が壊れて、一日中ぼーっとしてしまう…起床の目覚ましで絶対やってはいけない"NG行動"

プレジデントオンライン / 2022年7月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

睡眠の質を高めるためにはどうすればいいか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授と睡眠改善コーチの三輪田理恵さんの共著『なぜ、あの人はよく眠れるのか』(主婦と生活社)より「目覚ましのコツ」をお届けしよう――。(第1回)

■睡眠の質を高めるためには「睡眠圧」が必要

【小林弘幸(順天堂大学教授)】仕事帰りの電車の中、椅子に腰掛けて、疲労とほどよい揺れでウトウトしてしまう。または、お家に帰って夕食を済ませ、そのままソファでウトウト……。

気持ちのいい時間ではありますが、寝床に入る「本睡眠」の前、夕方以降に仮眠をとってしまうのは、夜の睡眠の質を下げてしまいます。睡眠は数回に分けてとり「合計で7~8時間眠れているから大丈夫」という考え方ではなく、「まとまった睡眠を夜にとる」というのが大事になります。

睡眠のメカニズムのひとつとして「疲れたから眠くなる」ということがあります。起きている時間が長ければ長いほど、眠る力が溜まっていきます。これを「睡眠圧」といい、本睡眠で深い睡眠に入るためには、この睡眠圧をしっかりと溜めることが大切になります。

眠りを促す睡眠物質のひとつに「アデノシン」というものがあります。人が起きて活動を始めるとアデノシンが溜まっていき、これが睡眠圧につながります。仮眠をとりすぎると、この「圧」を逃がすことになります。眠りに入ってからの90分が、睡眠の質を上げるために大切な時間。当然、睡眠圧をしっかり溜めた状態で眠ったほうが、深い睡眠に入りやすくなります

そのため、夕方以降に仮眠をとってしまうと、布団に入ってすぐのタイミング、一番深い睡眠に入りたいときに眠るための睡眠圧を、ムダづかいすることになるのです。なお、昼間に1時間以上の長い昼寝をすることも、睡眠圧を使ってしまうため、夜の睡眠の質を下げてしまう避けたい行動といえるでしょう。

■帰りの電車で寝るのはNG

【三輪田理恵(睡眠改善コーチ)】快眠のためにも、帰りの電車で眠るというのは避けたい行動。その瞬間は気持ちよくても、家に帰っていざ布団に入ったときに寝つきにくくなってしまいます。

理想は、睡眠圧を溜めた状態で布団に入り、ぐっすり眠ること。たとえば、7時間眠りたいのであれば、寝る7時間前はしっかり起きている、というのが目安です。23時に寝て、6時に起きるなら、23時の7時間前、16時以降の仮眠は避けるのがベターです。どうしても夕方眠くなってしまう場合は、昼に30分以内の仮眠をとることでカバーするといいでしょう。

また、午前中の仮眠であれば夜の睡眠に影響が出にくいため、朝の電車で眠るのは睡眠不足解消の助けになります。

■夕方以降にチョコレートを食べると睡眠の質が下がる

【小林】眠気覚ましや脳の活性化に、またひとときのリラックスのためにコーヒーやお茶を飲む方も多いと思いますが、それらに含まれるカフェインは、想像以上に睡眠に影響を与えます。

カフェインは小腸で吸収されて血液に運ばれます。血中カフェイン濃度は30~40分後に最高になり、2.5~4.5時間で半減します。つまり、覚醒作用は4時間を超え、自覚している以上にその効果は長時間続くということを押さえておきましょう。快眠するなら、夕方以降はコーヒーやお茶は控えたほうがベターです。

飲み物に含まれるカフェインの含有量の目安は以下になります(抽出液100ml中/日本食品標準成分表2015年版より)。

コーヒー 60mg
紅茶 30mg
煎茶・烏龍茶 20mg

また、チョコレートにもカフェインが含まれるので注意が必要です。ミルクチョコレート100gあたりのカフェイン量は30mg前後、ハイカカオチョコレートだと120mgになるものもあります。夕方以降のおやつや夕食後のデザートには、チョコレートやチョコレート菓子は避けたほうがカフェインの影響を受けにくくなります。

生のカカオ豆とココアパウダーとチョコレート
写真=iStock.com/gustavomellossa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gustavomellossa

■カフェイン入りの栄養ドリンクには効果があるが…

なお、眠気を覚ますためにカフェイン入りの栄養ドリンクを飲む方もいると思いますが、カフェインで一時は目が覚めたとしても、それで不足している睡眠が補われるわけではありません。人は、脳内で眠気をつくり出す「アデノシン」という物質が溜まると眠気を感じるようになります。カフェインはそのアデノシンが脳内で働く過程をブロックしてしまうため、眠気が覚めるといわれています。

ただし、睡眠物質そのものが消えるわけではないので、カフェインによる覚醒は、いわば眠たい人の頰を思いっきり叩いて無理やり目を覚まさせているようなもの。どうしても眠気を覚ましたいのであれば、「寝ること」が一番の解決策であることを忘れないでください。

【三輪田】カフェインの摂取は、15時以降は控えたほうがいいでしょう。ただし、カフェインの覚醒作用・覚醒時間は、年齢や体質、空腹かどうかによっても効き具合は変わってくるので、夕方以降にコーヒーなどカフェインを摂取する習慣がある人は、いったんそれをやめてみて、睡眠に影響が出るかどうか確認してみるとよいでしょう。

■喫煙者の不眠症は非喫煙者の4~5倍にのぼる

【小林】喫煙習慣のある人は、眠れないときにタバコを吸うとリラックスできる、と思っている方も多いかもしれません。しかし、タバコには鎮静作用があるのと同時に、覚醒作用もあります。

喫煙にはさまざまな弊害が指摘されていますが、睡眠にとっても然りです。タバコを吸うと、寝つきにかかる時間が長くなり、中途覚醒の回数が増え、総睡眠時間も短くなってしまうということがわかっています。タバコは睡眠の大敵と心得てください。ちなみに、喫煙者の不眠症は、非喫煙者の4~5倍ともいわれています。

灰皿とタバコを持つ手
写真=iStock.com/Altayb
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Altayb

タバコに含まれるニコチンは、アドレナリンの分泌を促します。血管が収縮して血圧が上がり、心拍数が上昇、その結果、交感神経を高めることになるのです。寝タバコの習慣のある人は、タバコが原因で不眠になっている可能性もあります。

さらに喫煙は、「睡眠時無呼吸症候群」のリスクを高めることも指摘されています。アメリカのある研究によると、喫煙者のいびきは非喫煙者の2.3倍、睡眠時の中等・重度の呼吸障害は4.4倍になることがわかっています。

さらに、受動喫煙者、つまり喫煙者の近くで煙を吸っている人にも、いびきの出現率が高くなるという研究結果があります。これは一緒に暮らす家族、子どもに対しても悪影響があるということ。タバコの煙により⿐やのどの粘膜が慢性的な炎症を起こし、空気の通り道である上気道がむくんでいびきをかきやすくなることが原因と考えられています。

■「禁煙すると眠れなくなる」は勘違い

【三輪田】自分のためにも、家族のためにも、そして快眠のためにも、喫煙はやめるのが理想です。しかしその一方で、タバコをやめたときに起きる“ニコチンの離脱症状”のなかに、「夜間の中途覚醒」があるのも事実。そのため、禁煙すると眠れない、吸っているほうがよく眠れると勘違いをしてしまう人もいます。

禁煙は、意志の力だけでは難しい部分もあるため、禁煙外来など専門機関を頼ることもひとつの方法です。それでも、どうしてもやめられないというなら、せめて就寝2時間前はタバコを控えるようにしましょう。また、家族や同居人に影響が及ばないよう、喫煙環境にも細心の注意を払ってください。

■飲酒は寝つきを助けるが、睡眠の質を下げてしまう

【小林】お酒を飲んだら、気持ちよい眠気がやってきて、そのままウトウト……そんな経験をされた方や、実際にお酒の力を借りて寝ている人もいるのではないでしょうか。しかし、お酒は寝つきを助けてはくれるものの、実は「睡眠の質」に関してはマイナスに作用してしまうのです。

お酒を飲んだあとに眠くなるのは、吸収されたアルコールが胃腸から血液に渡り、それが脳に到達した際に、覚醒作用をもつ神経細胞の活動を抑え込み、眠気を誘うためです。また、体の深部体温を下げることでも、眠気を誘います。

ベッドの上でグラスを持ったまま酔いつぶれて寝ている人
写真=iStock.com/yipengge
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yipengge

それならば、寝る前にお酒を飲めばぐっすり眠れるのでは? と思うかもしれませんが、問題はそのあとです。飲酒をして3時間ほどすると、アルコールが分解される時に出る「アセトアルデヒド」という物質が交感神経を刺激します。

他にも、睡眠物質である「アデノシン」にも影響を与えることがわかっています。さらに、アルコールによる利尿作用で、トイレに目を覚ましやすくなります。つまり、眠りを浅くしてしまい、睡眠の質を下げてしまうのです。

■1週間禁酒で体の変化を感じることが重要

【三輪田】酒量はほどほどに、そして、飲む際には必ず「水」を一緒にとるようにします。まず、お酒を飲む前に1杯の水を飲み、そして飲んでいる合間にも、お酒1杯につきお水1杯の割合で、同量の水をこまめに飲むこと。

そうすることで、お酒による脱水症状も防げて、自律神経が乱れることによる悪酔いや二日酔いも緩和することができます。また、寝る3時間前には飲み終えて、そのあとはノンカフェインの飲み物に切り替えるようにすれば、睡眠に影響は出にくくなるでしょう。

ただし、やはり快眠のためにはお酒は飲まないことが理想です。私は、「お酒だけは絶対にやめられない!」というクライアントさんには「ダマされたと思って1週間の禁酒実験を試してみてください」とお伝えしています。

頑張ってお酒を我慢していただいた方の中には、寝起きがスッキリするようになり、日中も頭がクリアに働いて、「こんなに違うなんて、もうお酒は飲めない……」と目を輝かせながら報告してくれた事例が、数多くあります。コロナ禍を経て、家で飲酒される方が増えているということですが、思い当たる人は、人体実験だと思ってとにかく1週間禁酒してみてください。まずは体の変化を感じてみることをおすすめします。

■アラームの「スヌーズ機能」は体内時計のリズムを崩す

【小林】朝起きられないと困るから……そんな理由で、目覚ましのスヌーズ機能(いったん目覚ましを止めても、そのあと一定時間ごとに何度もアラームが鳴る機能)を活用している方、もしくは、目覚まし時計を時間差で複数セットして起きているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

小林弘幸、三輪田理恵『なぜ、あの人はよく眠れるのか』(主婦と生活社)
小林弘幸、三輪田理恵『なぜ、あの人はよく眠れるのか』(主婦と生活社)

寝起きのボーッとした頭でスヌーズボタンを押し、あと5分、あと5分……と二度寝してしまうのは、体内時計のリズムを崩し、その日1日を台なしにしてしまう恐れがあります。

睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠の2種類があります。レム睡眠は、体は休んでいますが脳は起きている状態。健康な睡眠では、朝方にはレム睡眠の割合が多くなり、目覚める準備が整ってきます。そのため、スッキリ目覚めるためには、レム睡眠時、もしくはその前後で起きるのが理想です。

仮に最初のアラーム音でレム睡眠のステージから脱したとして、そこでスヌーズボタンを押して二度寝をしてしまうと、今度は脳がノンレム睡眠に入ることになります。スヌーズボタンを押して、起きてまた寝て……を繰り返してしまうと、せっかく脳が起きる準備をしていたところで再びお休みモードになるなど、朝から脳が混乱して頭がボーッとしてしまいます。

自律神経の視点から考えても、最初のアラーム音で目が覚めて、交感神経が高まってきたところで、再び寝ることで副交感神経が優位になり、そこへ再びスヌーズで起きて交感神経が高まり……ということを何度も繰り返すことで、疲労を招くことにつながってしまいます。

■「1回のアラームで確実に起きる」を心掛けたほうがいい

【三輪田】一番の理想は、目覚ましに頼らず自然の力で起きることです。決まった時間に寝て、決まった時間に起きる生活を1週間程度続けていると、体内時計が整い、自然と同じ時間に目を覚ますことができるようになります。

そうは言っても、毎朝同じ時間に起きるのは難しいもの。ならばせめて「1回のアラームで確実に起きること」を徹底しましょう。1回のアラームでスッキリ起きて、1日を気持ちよくスタートできるようになれば、自律神経も体内時計も整いやすくなり、よい睡眠・よい生活リズムをつくることができます。

便利でありがたいスヌーズ機能ですが、慣れてしまうと、ますます起きることが辛くなってしまうということを覚えておいてください。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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三輪田 理恵(みわた・りえ)
睡眠改善コーチ・メンタルトレーナー
日本睡眠学会正会員、上級睡眠健康指導士。全米NLP協会公認NLPトレーナー/NLPプロフェッショナルコーチ。同志社大学卒業後、大手証券会社、大手広告会社を経て、ITベンチャーヘ入社。400万人の会員が利用する健康管理メディアの企画・運営・制作・営業に携わる。幸せに生きるための方法を提供したいと強く思い、講師・コーチ・ライターとして独立。2016年より企業・学校・行政などで睡眠やメンタル講座、個別コンサルティングをおこない、1万人以上を快眠にいざなう。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸、睡眠改善コーチ・メンタルトレーナー 三輪田 理恵)

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