仕事ができる人が重大ミス発覚直後の"おわびメール"に書く5つの要素
プレジデントオンライン / 2022年8月3日 11時15分
※本稿は、飯間浩明執筆・監修、古賀及子執筆『語彙力がなくても「伝わる」ビジネスメール術』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
■コミュニケーションを円滑にするおわび
過去のことについて、お礼とともにおわびの気持ちを示す文例です。「謝り度」は1。ここでもまだ、感謝のほうが強く前面に出ている状況です。
いつもお世話になっております。○○社の○○です。
昨日のミーティングでは失礼いたしました。
お忙しいなか、早速お約束のデータをご手配いただき、まことにありがとうございます。
それでは、こちらを基に作業を進めてまいります。
意外に使える「失礼いたしました」
●昨日のミーティングでは失礼いたしました
会話ではよく使う「失礼いたしました」ですが、実はメール文でもきわめて有効です。
特に、文例のように直近のコミュニケーションについて軽く言及する際など書き添えておくと、関係を築く上で感じがよくなります。
誰しも、どれだけ気をつけていても、避けようもなく失礼をしてしまうものです。迷惑をかけあって、許しあって生きているのが人間です。ここでは、自分が気づいていないかもしれない失礼をわびているのです。
こんな表現も
●ご心配をおかけしました
●お騒がせいたしました
より具体的なおわびの文言です。「失礼いたしました」はさしたる失礼がなくても使いますが、上記の2つは実際のできごとに言及する場合に使います。
●恐縮いたします(恐れ入ります)
「失礼いたしました」は、相手と何か接触があったあとでそれをフォローする、つまり過去についてのおわびとして使います。
一方、「恐縮いたします」「恐れ入ります」は未来のできごとについてのおわびにも使えます。
たとえば次のような使い方です。
「明日はミーティングのお時間をいただき、まことに恐縮いたします。予定どおり11時に貴社へお伺いいたします」
お互い仕事ですから、ミーティングに時間をもらえるのは普通のことです。でも、「してもらって当たり前」という態度では、コミュニケーションはうまくいきません。そこで活躍するのが「恐縮」というわけです。
■期待に応えられないことをわびる
ここでは、断る際のおわびのことばである「ご容赦ください」を取り上げます。「謝り度」は1です。
いつもお世話になっております。○○社の○○です。
○月○日の意見交換会の件、ご返事が遅くなりまして、失礼いたしました。
スケジュールを検討いたしましたが、当日はどうしても都合がつきません。
恐れ入りますが、今回は欠席とさせていただきたいと存じます。
どうかご容赦ください。
ご迷惑をおかけしますが、何とぞよろしくお願いいたします。
「ご期待に沿えません」+「申し訳ありません」
●どうかご容赦ください
「ご容赦ください」は「ご期待に沿えません」と「申し訳ありません」の意味が含まれる断りのことばです。
ご要望に沿いたいのはやまやまだけれど、どうしても状況が許さない。そんな気持ちで謝るときに使います。
こんな表現も
●お力になれず(ご期待に沿えず)申し訳ありません
おわびではありますが、感謝の意味合いも強く含んでいる表現です。相手がこちらに相談してくれた、こちらを頼りにしてくれたという場合、そのことに感謝を込めながらおわびする表現です。
避けたい表現
×ご勘弁ください
「ご勘弁ください」も「ご容赦ください」と似た意味のことばですが、少し軽いニュアンスがあります。
親しい間柄で、何か無邪気に頼まれたりして、「そんな仕事勘弁してくれよー」などと使うことはあるかもしれません。でも、「勘弁して」と言う場合、意味合いとしては「やめてくれ」に近く、一般的なビジネスでは使いにくいと言えるでしょう。
■自分のミスをわびる
こちらになにがしかの落ち度があったときに使うフレーズです。「謝り度」は2に上がります。
いつもお世話になっております。○○社の○○です。
昨日のミーティングはお疲れさまでした。おかげさまでいいアイデアが多く出たと存じます。
モニター不調の件では、私の不手際でご迷惑をおかけいたしました。まことに申し訳ございません。
出力した資料をご用意いただきましたので、とても助かりました。
改めてお礼申し上げます。
引き続きご協力いただけますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
してしまったこと+「申し訳ございません」
●モニター不調の件では、私の不手際でご迷惑をおかけいたしました。まことに申し訳ございません
感謝のニュアンスがある謝罪として、カジュアルにも使える「申し訳ございません」ですが、ここでの「申し訳ございません」はいよいよ本気です。
こちらがミスをしてしまったことを示し、何について謝っているのかを明らかにします。その上で謝ると、謝罪の意図が伝わります。
■「ご迷惑」は便利なワード
こんな表現も
●おわび申し上げます
●何とぞお許しください(どうかお許しください)
「お許しください」は、そのままで使うとややぶっきらぼうな印象が出てしまいます。そこで「何とぞ」(「何卒」とも表記)をつけるのがポイントです。より柔らかい表現の「どうかお許しください」も使えます。
●ご迷惑をおかけしております
文例では「ご迷惑をおかけいたしました」と過去形にしましたが、「~おかけしております」と現在形にすれば、まさに渦中にある件をわびることができます。
「ご迷惑」は便利なワードです。もしかしたら、こちらは悪くないかもしれない、でも悪いかもしれない、今のところはまだ分からない――。そんなシーンでも、相手が疑っている時点で迷惑をかけています。その迷惑はちゃんと認識しています、と伝えることで関係がスムーズになります。
使い慣れておくと、役立つ機会が多いはずです。
■反省していることを伝える
自分がミスをして相手に迷惑をかけたとき、反省して同じ失敗は二度としない、という意志を伝えることがあります。実際にそこそこの迷惑をかけ、こちらに改める必要がある場合の文例です。「謝り度」はさらに進んで3になりました。
いつもお世話になっております。○○社の○○です。
お送りした資料につき、ご連絡をいただきまして、まことに恐れ入ります。
資料の数字について再度確認しましたところ、ご指摘のとおり、こちらの誤記だったことが判明いたしました。あってはならない誤りであり、深く反省しております。ご迷惑をおかけし、まことに申し訳ございません。
早急に訂正版を用意し、明日の朝までにお送りいたします。何とぞお待ちいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
おわびするべき事実を伝える
●こちらの誤記だったことが判明いたしました
こちら側の失策を記すのは気が進まないものですが、あいまいにしてはいけないところです。相手の指摘以外にも失策が見つかれば、それも具体的に述べます。
反省の気持ちを示し、相手にかけた負担を書く
●あってはならない誤りであり、深く反省しております
●ご迷惑をおかけし、まことに申し訳ございません
こちら側がこの誤りをどう受け止めたかを述べた上で、相手にどんな負担をかけたかを短く記します。ここでは「ご迷惑をおかけし」という表現でいいでしょう。
こんな表現も
●恥じ入るばかりです
何らかのミスをしたときに感じる気持ちは「申し訳ない!」とともに「恥ずかしい!」ではないでしょうか。素直な気持ちの表現として使えます。
●ご指摘の点、深く肝に銘じます
●今回のことを今後に生かしてまいります
どちらも反省の意味で使えることばです。
注意したいのは、相手のアドバイスの種類を強調しないこと。
たとえば「お叱りは肝に銘じます」などと、つい書きたくなります。でも、「自分は叱っていないぞ」と相手は不愉快に思うかもしれません。むしろ、自分が今後どうするのかを中心に述べましょう。
■重大なミスへのおわび
ついに「謝り度」が4です。こちらが渡した資料に、相手とのプロジェクトに不都合を来きたしかねない不備があったが、すでに相手の社内で社長にまで回覧されてしまっていた! という状況を考えてみます。このことを謝るとなると、謝罪のポイントをさまざまな「角度」から盛り込んでいくしかありません。
いつもお世話になっております。○○社の○○です。
先日の資料の不備の件では、大変ご迷惑をおかけいたしました。
改めて深くおわび申し上げます。
貴社内ですでに広くご回覧いただいていたとのこと、まことに申し訳ございません。チェック体制が甘かったことを反省いたしております。何とぞお許しください。
今回のことを踏まえ、目下業務の進め方を見直しております。
今後再びこのようなことがないよう、十分注意してまいります。
何とぞ今後ともご指導いただけますよう、お願い申し上げます。
特別なことばは使わず、謝罪の「角度」を増やす
深く謝罪をするための新しいことばが出てくるかというと、ご覧のとおりそうではありません。その代わり、ありったけの謝罪のことばを使います。文例では5つの「角度」からおわびをしています。
(1)相手に何をしてしまったのかの認識を伝える
●先日の資料の不備の件では、大変ご迷惑をおかけいたしました
(2)おわびする
●改めて深くおわび申し上げます
●まことに申し訳ございません
(3)今の自分の様子を伝える
●反省いたしております
(4)相手に許しを乞う
●何とぞお許しください
(5)再発防止策を提示する
●今回のことを踏まえ、目下業務の進め方を見直しております
●今後再びこのようなことがないよう、十分注意してまいります
難しいことばで煙に巻くよりも、ずっと真摯(しんし)なメールになります。
もはや状況は取り返しのつかないところまでいってしまっているかもしれません。それでも救いはあるはずです。謝れるところは全部謝ってしまい、さらに今後も見据えた内容にします。
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日本語学者 国語辞典編纂者
『三省堂国語辞典』編集委員。1967年生まれ、香川県高松市出身。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院博士課程単位取得。国語辞典の改訂のために日本語を観察し、説明の原稿を書く毎日。一方で、分かりやすい論理的な文章を書くための方法を追究している。著書に『日本語はこわくない』(PHP研究所)『日本語をつかまえろ!』『日本語をもっとつかまえろ!』(毎日新聞出版)『知っておくと役立つ街の変な日本語』(朝日新聞出版)『伝わるシンプル文章術』(ディスカヴァー)ほか。
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(日本語学者 国語辞典編纂者 飯間 浩明、ライター 古賀 及子)
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