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それをやったらSNSではバズらない…インフルエンサーとのコラボ案件で「やってはいけないこと」

プレジデントオンライン / 2022年7月28日 11時15分

メイベリン ニューヨーク デジタルトランスフォーメーション統括の高瀬絵理さん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

日本ロレアルが展開する「メイベリン ニューヨーク」は2021年7月、ファンデーション「Fit me」で、TikTokのインフルエンサーとのコラボ案件を展開した。自社製品の魅力をSNSで広めるにはどうすればいいのか。プロジェクトリーダーの高瀬絵理さんに聞いた――。

■ターゲットのZ世代に刺さる広告はやはりデジタル

――「Fit me」とはどういった商品でしょうか。

メイベリン ニューヨークの製品、特にリキッドファンデーション「Fit me」(2018年発売、2019年刷新)は若者に支持されています。全16色展開で、コロナ禍でマスクを着けていてもファンデーションが崩れにくいのが特徴の商品です。

全16色を展開するリキッドファンデーション「Fit me」
撮影=プレジデントオンライン編集部
全16色を展開するリキッドファンデーション「Fit me」 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

Z世代といわれる若い世代は、デジタル上で全ての情報をつかみ、購買の決断をする人が多いと認識しています。コロナ禍前は「CM×デジタル」という形で投資をしていましたが、「Fit me」を皮切りに大半をデジタルに振り切っていくというチャレンジをしました。

――化粧品の広告というとCMや雑誌のイメージがあります。

もちろん、それぞれにいいところがありますが、やはり一番のターゲットであるZ世代に刺さる施策を考えた結果、デジタルにかじを切ることにしました。これは競合他社がなかなか踏み切っていなかったところで、われわれが先陣を切っていこうと考えたのです。

■ソーシャルメディアそれぞれの「強み」

――具体的にはどのようなことをしたのですか。

Instagram、YouTube、Twitter、TikTok、それぞれの強みを生かす形でプロモーションを実施しました。例えば、Instagramの場合は、投稿される画像をきっかけにユーザーが検索をして製品を知るという購買行動があるので、いかに製品の魅力を画像内に盛り込むかというところに重きを置きました。

YouTubeに関しては、音楽との親和性が高いので、「Fit me」のグローバルアンバサダーを務めているK-POPグループの「ITZY」の広告を発信しました。「ITZY」が先に登場し、最後に製品を紹介する動画構成にしたところ、「ITZY」のファンに製品について語ってもらう機会が増えたので、認知の面で大きな成果を得ました。

Twitterは、フォロワーを中心にある程度グループができ上がっているので、「ITZY」のファンコミュニティから「Fit me」を話題にしていただく取り組みをしました。

TikTokのユーザーは、何か面白いことを探しにいくというモチベーションがあるので、ブランドの思いを大きく伝えるというよりも、インフルエンサーと一緒に伝えていく形をとりました。

■TikTokは新規顧客を開拓するうってつけの場

――TikTokもYouTubeも動画のプラットフォームですが、違いはあるのでしょうか。

YouTubeのほうが検索ベースで、見たいものを決め込んでいる人が多いように思います。ですから、もともとメイクに興味がある方に深く伝わっていく。それに対してTikTokは、コンテンツベース。「何か新しいもの」を発見しにいく方々が多いので、メイクに興味がない方にも広く届く。そのため、TikTokはまだ獲得していない層の、潜在的なニーズを掘り起こす可能性があると感じています。

――最初から「これは絶対やろう」と決めていたことはありますか?

絶対に必要だと思ったのは若者に刺さる、インフルエンサーを起用したコンテンツ作りです。そのうえで、プラットフォームをどこにしようかと考えたときにTikTokを選びました。

当時、化粧品業界でTikTokを使っている企業はほとんどなく、他社がラーニングできていないからこそ、新たな成果を作れるのではないかと考えたのです。

■「台本はNG」インフルエンサーの生の声を伝えてもらう

――インフルエンサーとのコラボはどういったものだったのでしょうか。

もともとメイベリン ニューヨークのファンと言ってくださっていた方や、男女問わずメイクが好きなインフルエンサーにコラボをお願いしました。TikTokのユーザーに刺さる方法を一番よく知っている方たちなので、動画の構成はお任せしました。ブランドが伝えたいことは2割以下に抑えて、インフルエンサーが私たちの製品を使って感じたことを率直に伝えてもらいました。

――ブランドの狙いを一方通行で伝えてはダメなのですね。

やはり製品に対して熱量を持って開発しているので、伝えたいことはたくさんあります。ですが、Z世代の方々って、本当にリアルに使った人の声をすごく尊重されているんですよね。ですから、インフルエンサーとコラボといっても、伝え方はインフルエンサーの自由で台本はありません。すべて、ご自身の言葉で語っていただきました。

もちろん、われわれが伝えたい2割のこと、今回で言えば「崩れにくさ」「色展開の豊富さ」がありますが、ご本人たちが納得しなければ無理にお願いすることはしませんでした。

■「発見」した消費者が動画をどんどん上げていく

――TikTokという媒体の特徴はなんでしょうか。

「発見プラットフォーム」だなと思っています。私自身もユーザーなのですが、新しい概念を自分に持ってきてくれます。また、コンテンツ重視のプラットフォームなので、もともとフォロワー数が少なくても、コンテンツが良ければ一気に話題を集められるのが特徴だと思います。

インフルエンサーの動画をきっかけに、一般消費者の方々も製品にまつわる動画をたくさん上げてくださいました。実は、これが一番のゴールです。

インフルエンサーに伝えていただくのがゴールではなく、その先にいる消費者の方々に見ていただいて、シェアしたいと思っていただける仕掛けをしていくというのが、われわれが目指しているところです。

TikTokのメイベリン ニューヨーク公式アカウントの投稿
画像提供=日本ロレアル
TikTokのメイベリン ニューヨーク公式アカウントの投稿。製品の「売り」をシンプルに伝えている - 画像提供=日本ロレアル

■デジタルプロモーションのおかげで過去最高の売り上げを記録

――デジタルプロモーションで特に大変だったことは何ですか。

機敏さというところに尽きると思います。各プラットフォームに言えますけど、みなさんスクロールをしながらどんどん興味関心が動いているので、その中でどうやって手を止めてもらえるか。そして、新鮮なものを見に来ているからこそ、われわれとしても常に新しいものを提供していく。スピード感が求められるというのは、面白くもありタフなところでもありますね。

今回のプロモーションは2021年の4月ごろにデジタルでいきたいという提言をして、実施したのは7月です。4月以降は、毎日ソーシャルメディアを見ながら、「あ、消費者の方はこんな風につぶやいているな」というのをチェックして、じゃあこれをやっていこう、あれもやってみようという形で目まぐるしく動きながらローンチまでたどり着きました。

――成果はどうだったのでしょうか。

大成功だったと思います。プロモーションを実施した2021年7月には製品の売り上げが大きく伸び、2018年の発売以来、過去最高を記録しました。また、インフルエンサーとのコラボ以外に、TikTok内で「ITZY」を起用した認知拡大広告も流したのですが「広告なのにスキップしなかった!」「この広告、神」と言っていただけて。それはとても嬉しかったです。

■スマホの中で「知る→調べる→買う」が完結

――いわゆるバズった状態だったと思いますが、「バズる=購入」につながるものなのでしょうか。

そこは製品次第だと思います。われわれとしては開発力に自信がありますので、まずは認知を拡大することを大事にしています。ただ、コメント欄を見ると、一般の方が「使ってみたよ」「こうだったよ」とつぶやいているんですね。ユーザーさん同士で会話がなされていて、疑問や不安が解消されていく。

つまり、スマホの中で「知る→調べる→買う」がなされる。見ず知らずだけど、同じ製品に興味を持った方同士が会話を醸成してくれるんです。そこは今までにはなかった特性ではないでしょうか。

リキッドファンデーション「Fit me」
撮影=プレジデントオンライン編集部
コロナ禍でも過去最高の売り上げを記録したリキッドファンデーション「Fit me」 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

――今回の成功を受けて、今後はどんな展開を目指していますか。

製品ごと、キャンペーンごとにそれぞれターゲットが異なりますので、どの世代の方をメインにするかによってまた別の戦略を考える必要があります。

ただZ世代、いわゆるデジタルネイティブの年齢もどんどん上がっていきますので、今ここで、デジタルネイティブの世代をタックルすることによって、そのラーニングが中長期的に会社の資産になるとは思っています。

デジタルプロモーションで大切なのは、いかに一般の消費者の方々の会話を醸成できるかというところです。そのきっかけをブランドとしてどのようにつくっていけるか。もちろん消費者の方も変わっていくので、その変化をしっかり捉えて、私たちも変わり続けていく必要があると思っています。

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森本 裕美(もりもと・ひろみ)
ライター/編集者
明治大学卒業後、美容がメインの編集プロダクションに入社。5年後にフリーとなり、雑誌やWebで美容・健康に関する記事の執筆や人物取材を行うほか、書籍の制作にも携わっている。

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(ライター/編集者 森本 裕美)

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