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「5億円タワマンも完売」お金に目がない富裕層が熱視線を注ぐ"基幹産業のないラーメンの街"

プレジデントオンライン / 2022年7月27日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prasit Rodphan

2022年3月に国土交通省が発表した公示地価で住宅地の上昇率全国トップ10を独占した地方都市がある。札幌だ。金融アナリストの高橋克英さんは「数年内に札幌初の外資系最高級ホテルが誕生予定で、札幌とニセコが同一経済圏になると、札幌はブランド化していく。そうした影響で今、富裕層の中には札幌に建設ラッシュのタワマンを購入しようという気運が高まっている」という――。

■不動産の目利きである富裕層が目をつけた地方都市

医師や自営業者、投資家といった富裕層が不動産購入や投資の対象とする都市、といえば、国内ではやはり東京になるだろう。それも湾岸地区や山手線内など限られた地区が人気だ。一戸あたりの価格が億超のタワマンであっても飛ぶように売れる。それはコロナ前もコロナ禍も同じだ。

そうした将来的にリターンをもたらしてくれる可能性の高い物件の目利きである富裕層たちが今、熱視線を注ぐ地方の都市がある。

それは、札幌だ。

人口約200万人の北海道の中心都市。市内には札幌市時計台、大通公園とさっぽろTV塔、クラーク博士像など観光地も多数あり、ススキノなど繁華街も有名であり、ジンギスカンや札幌ラーメンに海産物など食の豊富さも言うまでもない。

スキーリゾートとしても有数であり、札幌国際スキー場やサッポロテイネスキー場などがあり、札幌藻岩山スキー場やさっぽろばんけいスキー場は市中心部から車で約20分という近さだ。

なぜ、この地方中核都市に富裕層の目が、これまで以上に集まっているのか。

ポイントとなるのは、インフラだ。まず、2030年度完成の北海道新幹線の札幌延伸、2030年の札幌冬季オリンピック誘致に加え、高齢化や少子化が進むなかで札幌の利便性が評価され、道内一極集中が加速している。

そのため、札幌中心部では再開発が続きタワマンや商業ビルの建設ラッシュが続いているのである。

さらに、札幌市周辺の北広島市、恵庭市、石狩市、江別市などいわゆる札幌圏でも、札幌市と比べた割安感からベッドタウンとして住宅地・商業地ともに、地価が上昇している。特に、北広島市は、プロ野球の北海道日本ハムファイターズの新本拠地として2023年春に開業を予定しているボールパークエリア「北海道ボールパークFビレッジ」による効果も大きい。

実際、国土交通省が2022年3月に発表した札幌市の2022年の公示地価(2022年1月1日時点)では、住宅地が9.3%上昇(前年度4.3%上昇)、商業地は5.8%上昇(同2.9%上昇)と非常に高い伸び率となった。タワマンの新設が相次ぐなど住宅地需要は堅調であり、住宅地の上昇率全国トップ10を札幌圏で独占した。商業地では、オフィス需要が堅調であり、2031年春の札幌への北海道新幹線延伸と2030年冬季五輪招致を見据えた相次ぐ再開発計画の進展とともに地価が上昇しているのだ。

■2031年春、新幹線~東京から直通4時間半

現在、東京駅から新函館北斗駅までつながっている北海道新幹線が、札幌駅まで延伸される。新函館北斗と札幌間の線路延長約211kmとなり、総工費は約1兆2400億円の大プロジェクトだ。新函館北斗(開業済み)に加え、新八雲(仮称)、長万部、倶知安(ニセコ)、新小樽(仮称)に途中駅が設置されることになり、2030年度の完成を目指している。

JR北海道では東京―札幌間の所要時間4時間半を目指すとしている。現在は航空機(羽田―新千歳)で約1時間45分かかり、羽田までの移動や新千歳からの移動、手続きや乗り継ぎを勘案すれば、新幹線にも十二分に勝機がありそうだ。

JR東日本で導入されているファーストクラスである「グランクラス」やグリーン車の利用で、より快適な旅とすることもできよう。羽田―新千歳間は、1日当たりの定期運航数が世界最大級の航路である。年末年始などを除けば、航空会社や時間帯を選ばなければ、直前でも飛行機が取れないということはまずないはずだ。これは実は、大変大きなアドバンテージだ。しかし、雪など自然災害には弱い。雪にも強く、定時制と安全性の高い北海道新幹線の札幌延伸は、JR北海道の採算性の問題はあるものの、積雪量が多い北海道にとっては、交流人口の増大、交通利便性の向上、年間を通じた観光振興などに大きな効果をもたらすことになる。

JR札幌駅
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

■5億円のタワマンも登場

建設ラッシュが続くタワマンにはどんなものがあるのか。

札幌駅直結の超高層マンション「ONE札幌ステーションタワー」は、2023年12月竣工、24年春に入居開始を予定だ。地上48階建て高さ175メートル、全624戸は道内最大規模だ。オーナーズラウンジをはじめ、和洋室など6種類のゲストルームを完備。29階には札幌の街並みを一望できるスカイラウンジやパーティールームもある。札幌駅直結のため大雪の日の移動に悩まされることもない。価格は5000万円台から5億円であり、大和ハウス工業によると、第1期・第2期1次とも完売したという。

2023年度に開業する複合施設「moyuk SAPPORO(モユクサッポロ)」。地上28階建て高さ117メートルの建物は、商業施設や水族館が入居し、9〜28階を大京の「ライオンズタワー札幌」(全133戸)が占めることになる。地下街と直結し、最高価格は上層階の2部屋(約150平方メートル)の約3億3000万円。最も安い部屋でも7800万円台だ。

これら2つのタワマンは、札幌や道内だけでなく、日本経済新聞の首都圏版でも全面カラー広告が掲載されたため、見覚えのある読者も多いかもしれない。

購入者層は、50歳以上の開業医や自営業などいわゆる富裕層が多く、札幌市内4割、道内3割、東京など道外3割といった割合だ。購入目的は、セカンドハウス・投資用と自宅用が半々のイメージだ。

■再開発や商業ビルもラッシュ

タワマンだけでなく、ビルの建て替えや再開発も活発化している。

札幌駅南口では、ヨドバシホールディングスなどが、地上35階建て高さ約200メートルの商業施設、オフィス、ホテルなどからなる新複合ビルを2028年度に完成させる計画だ。

また、平和不動産などは、札幌市中心部の大通公園に面した北海道銀行本店が入居する道銀ビルディングと、新大通ビルディングの2つのビルを一体で建て替える。地上34階建て高さ185メートルの新複合ビルは、高級ホテルに加え、オフィスや商業施設が入る予定であり、2028年の完成を目指している。

札幌駅からJR快速エアポートで約9分の「新さっぽろ」でも現在、総事業費約500億円という商業施設や病院、ホテルなどからなる大規模な再開発プロジェクト「新さっぽろG・I街区開発」が大和ハウス工業などによって進行している。I街区にできる地上30階建て高さ約100メートルの分譲マンション「プレミストタワー新さっぽろ」(入居開始2023年7月ごろ)は既に全220戸完売済だ。

ススキノ
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/winhorse

■札幌初の外資系最高級ホテルが誕生へ

国内外で抜群の知名度のある札幌だが、実は唯一ないものがある。それは、ラグジュアリーな外資系の最高級ホテルだ。宿泊施設は数多くあれど、実は、国内外の富裕層向けの最高級ホテルがなかったのだ。

ミシュランガイド北海道(2017年度)でも札幌に5つ星ホテルはなく、北海道内にはヒルトンニセコビレッジを含め7軒ある4つ星ホテルも、札幌市内にはJRタワーホテル日航札幌の1軒しかない。

日本国内の他の主要都市やリゾート地と比べても、札幌のホテルグレードは正直見劣りする。リッツ・カールトンやパークハイアット、シェラトンやヒルトンもない。かつて新札幌にあったシェラトン札幌は、2014年10月に撤退し、スマイルホテルグループに売却され、現在はエミシア札幌となっている。

しかし、こうした寂しい状況も近々解消される予定だ。

例えば、北海道新幹線の終着駅となる札幌駅。JR北海道が建設中の地上43階建て高さ約245メートルの複合ビルに、米ホテル大手のマリオット・インターナショナルと提携して最高級ホテルを開業させる方針を発表した。客室は約200室、2029年秋の開業予定だ。「ザ・リッツ・カールトン」「セントレジス」「JWマリオット」などマリオットの最高級ブランドのいずれかが進出することになる。

また、NTT都市開発が建設する北海道放送(HBC)旧本社跡地の地上26階の複合ビルは、米ホテル大手のハイアット・ホテルズの高級ブランド「ハイアットセントリック札幌」が全216室で2024年春に開業予定である。

いずれも、最低でも1室1泊5万円前後の宿泊料がかかる、外資系ラグジュアリーブランドホテル(外資系最高級ホテル)が初めて札幌に誕生することになる。

■札幌のブランド化が加速するか

北海道新幹線の札幌延伸や札幌冬季オリンピック誘致を背景に、①官民による中心地の再開発、②外資系高級ホテルの誘致、③周辺市町への波及、という3つの特徴をもった札幌は、いま日本で最も元気な都市となっているのだ。

北海道の中核都市であり、交通が便利で、自然や食が豊か、住宅など生活コストも東京など「三大都市圏」と比べれば安く、地元の人々だけでなく、転勤者や観光客の満足度も高い街だ。

一方で、札幌には、大きな基幹産業があるわけでもなく、大企業の支店や官公庁の出先機関が拠点を構える典型的な支店経済でもある。このため暮らしやすい街であり、元気な街ではあるが、消費の街であり、例えば、国内外の富裕層を惹きつけるような投資の街、ブランドの街ではないともいわれてきた。

しかし、マリオットとハイアットという外資系最高級ホテルの進出も決まった。こうしたグローバルブランドの進出は、札幌のブランド価値をもう一段高めることになる。

外資系最高級ホテルがある都市は、この先も魅力を放ち生き残る可能性が高い。なぜなら、こうしたホテルは、自社投資かフランチャイズ契約かにかかわらず、しがらみや先入観なく、単純にビジネスとして採算がとれるのか、成長性はあるのか、自社ブランドに貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資が選ばれているからだ。

外資系ラグジュアリーブランドホテルの開業が、コロナ禍でも、継続していることを一つの判断材料として、特に、海外の富裕層や投資家は、安心して、中長期的視点で事業開発や不動産投資を行うことができるのだ。

もちろん、外資系最高級ホテルの存在は、インバウンドや国際会議などの誘致や、札幌冬季オリンピック誘致にもプラスに働くことになる。

札幌では、官民による再開発や外資系最高級ホテルにより都市が再生されブランド力が高まることで、資産価値の上昇により、さらなる開発や投資が行われる、という、投資が投資を呼ぶ好循環が生まれてきているのだ。特に、市中心部や高級住宅地などは、オフィスビルや高級マンションの供給量が限定され、希少価値も増すことでさらなる地価上昇も期待できよう。

■ニセコと札幌が同一経済圏となる

なお、北海道新幹線の札幌延伸により、在来線を利用して最短でも約2時間かかる札幌―倶知安(ニセコ)間の所要時間は25分に縮まる見込みだ。東京―新横浜間の東海道新幹線の所要時間17分と大差ない感覚だ。北海道新幹線の札幌延伸で、道内最大都市の札幌と世界的なスキーリゾートのニセコが、同一経済圏になるといっていいだろう。

例えば、東京から札幌まで北海道新幹線で移動し、最初の数日は札幌の外資系高級ホテルに宿泊し、札幌国際スキー場などでスキーを楽しみながら、ススキノで北海道の幸を楽しみ、札幌市内観光にショッピング。後半は、新幹線で25分のニセコに移動、「パークハイアットニセコHANAZONO」に宿泊し、スキーと温泉三昧で、帰りも新幹線で札幌に戻り、帰路は新千歳空港からといった滞在が可能になるわけだ。世界的なスキーリゾートであり外資系最高級ホテルもあるニセコと札幌は競合関係となる面もあるが、連携も可能な関係を構築することもできよう。

北海道の冬
写真=iStock.com/Sward85
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sward85

海外スキーリゾート都市でいうと、ニセコと札幌は、カナダにおけるウィスラーとバンクーバー、米国におけるベイルとデンバーといった関係であろうか。

新幹線と五輪を控え、外資系最高級ホテルの進出も決まった札幌。北の地方都市としての歴史はあったものの、街としての存在感や輝きに欠いた面があったのは否めない。だが、ニセコとも一体化することで、この先、海外の富裕層や投資家も参戦し、投資が投資を呼ぶ世界が続くのは必至で、東京や大阪にもひけをとらないようなキラキラとした街の魅力が何倍にも増していきそうだ。

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高橋 克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン 代表取締役
三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にてクレジット・アナリスト、富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『いまさら始める?個人不動産投資』、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』など。

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(株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英)

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