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有名ホテルを顔パスで使えたのに…41歳で親の借金と介護を背負った元セレブ女性はどこで人生を間違えたか

プレジデントオンライン / 2022年7月27日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

親に財産のことは聞きづらい。そう思って、後回しにしている人は多いだろう。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「相談を受けた40代の女性は父親が亡くなるまで“実家は裕福”と思っていたのですが、実際は正反対。年老いた母親の面倒と父親の借金を一人で背負うことになりました」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

■自分の家は“裕福”と信じて疑わなかった41歳女性

親の資産状況は永遠に謎――。自分が中年になっても、そんな方は少なくないと思います。親世代も「子どもに面倒をかけたくない」という方が多く、互いに情報共有をしないまま見送ることになってしまい、良くも悪くも驚いてしまうパターンがあとを絶ちません。

今回は、親の死で発覚した「負の遺産」についてお伝えしていきたいと思います。

谷川菜穂さん(仮名/41歳)が私の元にやってきたのは、お父さまが脳梗塞で倒れた直後でした。彼女は私の友人の幼なじみで、「谷川さんちはセレブなのよ〜」と噂には聞いていましたが、お父さまが高名な弁護士だったそうです。谷川さん自身もメーカー勤務の独身、悠々自適の生活を送っているようで、お金に困る要素はなにひとつないように見えました。

「恥ずかしながら私自身、物心ついたときから、自分の家は他より裕福だとずっと思っていたんです。でも……わが家にはいま、借金しかありません」

谷川さんが語りだしたのは、知られざる実家の懐事情でした。

■有名ホテルを顔パスで使えた実家の知られざる懐事情

彼女のお父さんは20代のうちに弁護士になり、起業。以来50年の間、病気で倒れる直前まで現役バリバリで活躍していました。お母さんは専業主婦で、谷川さんは小さいときからさまざまな習い事をかけもちし、小学校から名門私立の一貫校に入学。大学までエスカレーターで進学し、箱入り娘として何不自由ない暮らしを送ってきました。

実際、ご家族は都内の有名ホテルを顔パスで使えるほど恵まれた環境だったそうで、谷川さんが自分の家庭を「裕福」と感じるのも当然でしょう。塾・家庭教師もびっしりつけてくれていたこともあり、成績も優秀。就職氷河期世代で第一希望はかないませんでしたが、中堅メーカーに新卒で入社した谷川さんは、一人暮らしを満喫していました。そんな円満な一家にほころびが見えたのが、お父さんの病気です。

■腕利きの弁護士だった父親は銀座のクラブやギャンブルで散財

「父が倒れた直後、母は開口一番、『入院代どうしよう』と言ったのです」

40年間、谷川さんはお金で困った経験が一度もなく、まして自分の家でそのようなことが起こるなど想像したこともありません。しかし、お母さんからはじめて聞く谷川家の家計は自転車操業状態で、貯金も資産もありませんでした。これまでの豊かな生活とのギャップに、「自分の家の話とは思えなかった」と言うのもうなずけます。

77歳まで現役を続けていたお父さんは腕のいい弁護士だったこともあり、「稼ぐ力」に絶対的な自信があったそうです。それゆえか、貯蓄や資産形成といったことに一切興味がなく、銀座のクラブやゴルフ、ギャンブルなど、好きなだけ散財。「何があっても俺は稼いでいける」自信からリスクヘッジに甘く、医療保険、死亡保険にも一切加入していませんでした。

雷が鳴る中ゴルフする男性
写真=iStock.com/okanmetin
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/okanmetin

家に貯金がないことも、保険に入っていないこともお母さんはずっと知っていましたが、養ってもらっている引け目から、夫に意見することができなかったそうです。お母さんは大黒柱の入院後、ビジネスの才覚に長け、70代まで元気でこられてしまったお父さんに頼り切っていたことを深く後悔していたと言います。

■年老いた母親の面倒を見ながら父親の借金を肩代わり

結局2カ月ほど入院したあと、お父さんは他界。個室を利用したこともあり、高額療養費制度を使っても多額の請求がやってきました。医療保険には加入しておらず、貯金もなかったので交渉したところ、良心的な病院だったおかげで約200万円の支払いを分割払いでお願いすることができたそう。とはいえこの支払いはすべて、一人娘の谷川さんにのしかかってしまったのです。

年収600万円の谷川さんは都内の家賃15万円のマンションで一人暮らしをしていましたが、実家が裕福という意識もあって貯蓄はほとんどしてこず、資産は現金150万円ほどのみ。お父さんの荒い金遣いが判明したときには、「自分にもそのDNAが流れている」と感じたということですから、彼女もそれなりに使うタイプだったようです。大黒柱を失ったいま、谷川さんは年老いた母の面倒と借金返済に追われ、実家に戻って生活をしています。

■既婚の子どもが親の財産の話をするときは要注意

長らく日本でお金の話はタブー視され、親も子に心配をかけさせないよう、家の資産状況を詳らかにしてこなかったと思います。しかし、今では金融業界の中でも「親の財産の見える化」は課題事項。なぜなら、谷川さんのようなケースで損害を被るのは私たち現役世代だからです。

親の資産を早くから把握できていれば、自分で貯蓄をするなり、親に保険に加入してもらう、生前贈与について話し合うなど、何らかの対策が可能です。いまは「親と子のための相続セミナー」といったイベントが開催されているので、カジュアルに参加できる機会を利用し、会話のきっかけづくりに役立ててほしいと思います。

ただ、既婚者の方が親と財産について話そうとすると、「婿(嫁)がうちの財産を狙っているんだろ!」と警戒されてしまう場合も。私のお客さまにも、シングルマザーになって突然親のガードがゆるくなり、親から財産分与について話をされた、という人もいます。

ちなみに私は、父を早くに亡くして母子家庭で育ってきていることもあり、お金に関しても昔からフルオープン。母の財産は私がすべて管理し、年金も保険もすべてコントロールしています。いまは自分の小学生の子どもにも、お金の話を積極的にするようにしています。

■詐欺被害に遭わないためにもお金のリテラシーは欠かせない

高校の授業で金融教育が始まったように、現代の子どもたちは早くからお金の仕組みを学びだしています。そもそも、未就学児からデジタルツールでアプリなどに触れているいま、課金に引っかからない、投資詐欺を防ぐといったお金のリテラシーの醸成は急務でしょう。また、税金などを知ることは、社会の仕組みを考えることにもなります。

そうして小さいときからお金の話ができる関係性が築ければ、老後のお金についても親子で言いやすいでしょうし、それがお互いにとってのリスクヘッジにもなります。

谷川さんのように、「うちは裕福だから」と皮算用した結果、自分の人生が大きく変わってしまうこともあります。独り善がりの「希望的観測」でなく「対話」を大切にして、親子で資産状況を確認していきたいですね。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵)

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