年齢や職歴はまったく関係ない…「転職して成功する人」と「転職に失敗する人」の決定的な違い
プレジデントオンライン / 2022年7月29日 12時15分
転職を成功させるのは、なにが重要なのか。人材コンサルタントの井上和幸さんは「転職をする前に、今の職場での仕事や問題に対し、自分が満足するまでやり切らなければいけない。どっちつかずなら、転職しても同じ課題と直面するだけだろう」という――。
■転職して「こんなはずではなかった」となる人の特徴
長引くコロナ禍でも活発な転職市場。求人ニーズは全世代に渡って旺盛で、複数の内定が提示される転職者も少なくありません。
ところが、そのような状況の中で、数カ月から1年以内で再転職する短期離職者や、転職を繰り返してしまうジョブホッパーが増えているのです。
彼らの多くは好んで転職をしているのではありません。いざ入社してみたら「しまった。こんなはずではなかった……」となってしまい、仕方なく転職をしているのです。
なぜそのような事態に陥ってしまうのか。そこには転職時の視点と行動に根本的な間違いがあるのです。転職に失敗する人に共通する4つのケースとその解決法をご紹介していきます。
■①「多少のことは我慢できるだろう」は間違い
一つ目は、企業や組織の風土と肌が合わなかったというミスマッチのケースです。
入社してみたら、物事の進め方のスタイルが前職までと全く異なり、ストレスを感じる。
価値観が合わず、体質的に受け入れられない。直属の上長や同僚との相性が悪くてギクシャクしてしまう……。
こうしたミスマッチを起こす人には、前職での年収や肩書への不満から、目先の年収やポジションにこだわって転職先を選択するタイプが多いです。条件にひかれて、「それであれば、多少のことは我慢できるだろう」と判断したケースです。
よくよく振り返ってもらうと、大概の場合、採用選考中に実は「何か肌が合わないな」「コミュニケーションが必ずしもスムーズとはいえない」というようなことが起きているものです。それを見て見ないふりをしてしまった格好です。
こうしたミスマッチは、もちろん採用企業側にも大きな責任があると、私は思います。
必ずしもしっくりきていないのに、スキルは満たしているからとか、会社事情でそのポジションを早く充足させたいからということで、妥協して採用してしまう。
こうした判断は転職者にも、自社にも大きな不利益をもたらします。
不満要素を解消することは大事ですが、それを解消しても満足には至らないのです。
「仕事にやりがいをもてる」「成長できそう、達成できそう」「承認を得られそう」「責任を果たせそう」といったことも考えて選択しましょう。
■②給与が通知されていた額と違う
次のケースは、給与額や賞与支給が入社前の約束と異なるなど、条件の相違に起因するものです。
正式に発行された採用内定通知書などのオファーレターが、本人の思い違い、あるいは本人と企業とのすり合わせ不足で、事前に約束したという内容と異なる。こうした事態に遭遇したという転職者は少なくないです。
そもそも正式なレターをもらっておらず、口頭のみで説明されたという方もいました。
これは転職者側が気楽にオファーを受けてしまった、あるいは焦って転職先を決めてしまったケースに多く起こります。それがゆえにあいまいなままで採用条件を聞いていたり、解釈の違いを生んでしまっていたのでしょう。
雇用条件は冷静に、かつしっかり確認することに尽きます。
採用してもらう側ということで遠慮してしまう人もいると思いますが、こうしたことは入社後にもめ事になるほうがむしろ大問題です。
条件の相違は100%採用した企業側の責となる事態であり、書面に残っていれば企業側に約束通りの支払いをする義務があります。直接確認しにくい場合は、エージェントの担当者に代理で聞いてもらいましょう。
■③「転職をすべき人」と「現職に残るべき人」の違い
今の職場での役割・ミッションに納得するだけ取り組めた、十分にやり切った。今、任されている職務を完了し、ここから先にはこれ以上のチャレンジがない。自分の持てる力を最大限に発揮し貢献できる場を求めたい。
こういった「やり切った感」を十分に認識できている人であれば、「ここではないどこか」でさらなる大きな職務を求める準備は万端です。
あるいは、やり切った上で、自分には今の職務でパフォーマンスを上げることは限界だと認識できたのなら、現職とは別の道へ踏み出す。
いずれにしても、方向性は明確です。こうした人は、転職活動も迫力ある踏み出しができるでしょう。その指針に合致した次の職場のご縁は、遅かれ早かれ見つかるはず。
しかし、そのいずれでもない「どっちつかず」の転職になるなら、もう少し現職で踏ん張ってみたほうがよいでしょう。
ゲームのステージクリアをして次に進まない限り、また同じ局面がやってくるのです。
職場の人間関係が問題で、それを解決せずに逃げて次の会社に行けば、その会社で必ずまた同じ人間関係の問題が起きる。
任された役割に対して十分に試行錯誤し結果を出すところまで踏ん張れず、逃げて次の会社に行けば、そこでまた同じような評価にほぼ確実に至ります。
転職活動が「敵前逃亡」か否かかは、私が長らく転職支援をしてきて、転職者の方々が次の会社以降でよいキャリア展開をしていただけるか否かの分かれ道になることを痛感しています。
理想の転職とは、現在の役割・ミッションを満了したうえで次の役割・ミッションへと向かう、その際によりチャレンジングな役割・ミッションを自ら求める形です。
■④自己PRを盛りすぎた男の悲劇
最後のケースは、転職者側の能力・スキル不足です。好条件のポジションに、内心では「できるかな」と不安を感じつつも、背伸びして入社してしまったケースです。
転職早々に能力不足からお互いがギクシャクし、最悪の場合、上長や社長に、どうなっているんだと問われ、辞めざるをえなくなることがあります。
40代のAさんは、年収1000万円台前半、事業部長候補としての営業部長などの諸条件を約束され転職しました。ですが、入社後すぐに、事業部長としての能力がないことが露見。会社側としては辞めさせるわけにもいかず、課長職位に変えられ、年収も職位に合わせてダウン(800万円)しました。その後、ご本人はその職位には満足できず、1年未満で退職しました。
このようなケースは実は非常に多いです。
採用側の見極め不足が最大の要因ですが、転職者側としても選考中に誇大なプレゼンテーションをしていたことも考えられます。
無理せず、等身大の自分を確認し、それを応募先企業に素直に見せることが大事です。
それで選ばれなかったとすれば、仕切り直しの転職を早々に行う事態を回避できたと思えばよいのです。改めて自己PRを見つめなおしましょう。
■転職活動で絶対にやってはいけないこと
ちなみに、仕切り直し転職を繰り返してしまっている人が、次の転職活動で不利になるということを嫌って、短期間で入社・退職をした企業の履歴について、自身の職歴から消去してしまう人がいるようです。
あろうことか、ヘッドハンターや人材エージェントがこうした短期離職をした登録者に対して、その経歴を削除するようアドバイスしているケースもあると聞きますが、こうしたことは絶対にしてはなりません。
明らかな経歴詐称となり、採用内定の取り消しや入社した企業の解雇要件に該当します。後々、取り返しのつかないことになりますから、重々留意してください。
■転職が人生の無駄にならないために
転職活動中の人たちは、無用に応募先企業をキラキラに見過ぎる傾向があります。
次の会社に期待するのはとても良いことですが、しっかり「事実ベース」で確認・評価する。また、次の会社のキラキラ部分が本当に自分に合っているのか(ex.任される、裁量権大きく主体的にどんどん仕事できる=それだけの高いレベルの企画力や実行力、結果を出すことが求められる、など)、冷静に判断したいところです。
どんな会社にも良いところと悪いところが共存しているもの。不満な部分があっても、「でも、これをやりたい。これを成し遂げたいからここで頑張る」そう思える転職先をしっかり選んでいただきたいと願っております。
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株式会社 経営者JP、人材コンサルタント
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。著書は『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)など。
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(株式会社 経営者JP、人材コンサルタント 井上 和幸)
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