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「部下の愚痴を聞く時間なんてムダでしかない」仕事のデキない残念な人に共通する5つの勘違い

プレジデントオンライン / 2022年7月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

仕事のできる人は職場でどんなコミュニケーションをしているのか。プロコーチの林健太郎さんは「黙って話を聞けない人は大損している。仕事でなによりも大切な事は、相手の話を丁寧に受け取ることだ」という――。

※本稿は、林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「部下の愚痴なんて、聞いている時間はない」と思っている

「林さん、どうして部下の本音なんて聞かなくちゃいけないんですか? 部下の愚痴なんて聞いている時間はありませんよ!」

これ、上司の方たちからよく聞く言葉です。

こういう方たちは、ご自身が会社や職場に対して不平不満が多いのでしょうか。

なぜか、「部下の本音」イコール「部下の愚痴」だと思い込んでおられる。

たしかに、愚痴だと決めつけてしまったら、聞いても意味がないと思ってしまうかもしれません。でも、考えてみてください。

百歩譲って、部下の本音がただの愚痴だったとしても、その愚痴を上司がしっかり受け止めてくれたら、なんだかスッキリとしてパフォーマンスが上がると思いませんか?

例えば家庭内のゴタゴタとか、会社とまったく関係のない心配事があるだけでも、仕事のパフォーマンスはガタ落ちになるのが人間だったりします。

だからこそ、上司は部下の「一見、愚痴に聞こえる言葉」にも耳を傾けて、部下のプライベート……例えば、家族構成や通勤経路のようなことまで知っておくに越したことはないのです。

知っていれば、「彼が今、元気がないのは息子さんの受験の件で悩んでいるのかな」とか、「彼女の出社が遅れているのは、○○線の事故の影響かな」などということもわかるようになって、適切な声がけが可能になります。それが、信頼関係につながるのです。

それに、いっさい上司から話を聞いてもらえなかった部下が、昇進してリーダーになったら、いっさい部下の話を聞かないリーダーになると考えたら、少し怖いと思いませんか?

■過干渉で、部下に任せられない

上司が過干渉だと、部下は「本音なんて伝えなくても、最後はなんでも上司がやってくれる」と思って、業務報告だけをして、課題は上司に丸投げし、自分では何も考えなくなります。この過干渉の上司の方に話を聞くと、だいたい、こんなことをおっしゃいます。

「心配で、部下に仕事を任せられない」
「部下に任せていたら目標が達成できない」
「自分でやった方が早い」

こういうことをおっしゃる上司は、部下との関係を「指示・命令」と「管理」という点からしかとらえられない傾向があります。

「あの案件、どこまで進んでる? うん、よし問題ないな」

そんな言葉少ないやり取りで、部下とコミュニケーションを取った気になっているわけです。

「あっちの件は? 何、遅れてる? 貸してみろ、あとは俺がやっとくから」

こんな調子で部下の仕事に干渉して、自分でトラブルシュートしてしまう方もいます。これでは、部下が育ちません。仕事を奪わないまでも、「あーしろ、こーしろ」と指示・命令ばかりでも同じこと。部下が自主性を持つわけがありません。

「いや、自分は部下から話を聞いて、部下が育つように指導している」

中には、そんなふうにおっしゃる方もいます。

でも、その中身を聞いてみると、部下に「どうして言った通りにできないんだ」「この前も同じミスをしたじゃないか」と、まるで問い詰めるような言い方をしている。そして、アドバイスという名の指示をしてしまっている……。

部下の成長欲求に火がつかないのも当然と言わざるを得ません。

■夏休みに「宿題はやったか」と子供に言い続ける親は最悪

ある広告会社のリーダーの実例です。

その方、部長になっても、事業部長になっても、本部長になっても、大きな案件や重要な案件は部下に任せることができず、ずっと現場に出向いていました。

私が「部下に任せたのなら、上司が現場に行く必要はないでしょう」と言ってもなかなか思い切れない。「私が行かないと、収まりがつかないんですよ」「それって、本当ですか?」「本当だと思います」「でも、部下に任せたんですよね」「任せてはいるんですが、任せるとちゃんとならないんですよ」「それじゃ、ずっと、ちゃんとならないままですよね」「それはそうですが……」「一度、『現場に行かない』というのをやってみませんか?」「それだと収まりが……」「現場に行かなくても収まりがつく方法を考えませんか」「現場に行かなくても収まる方法ですか……そうですね、任せたんですもんね」

そんな会話をして、最後は、「自分は現場に行かないけれど、任せっきりでは怖いので、進捗状況はこまめに聞く」という形で落ち着きました。

部下に育ってはもらいたいけれど、任せきりは怖いのであれば、この方のような方法もひとつの手だと思います。過干渉で一番よくないのは、まるでヘリコプターペアレント(子どもの学校の上を常にヘリコプターで飛んでいて、子どもに何かあるとすぐに降りてくるモンスターペアレント)のように、常に干渉し続けてしまうことです。

子どもの夏休みの宿題にたとえれば、毎日毎日、「宿題はやったか」と言い続けて、子どもの自主的なやる気をそいでおいて、最終日に手伝ってしまうという最悪のパターン。

放任はするけど押さえるところはちゃんと押さえるという意味では、「宿題をやりなさい」とはひと言も言わないけれど、子どもから見える場所で家事をする……と、そんなイメージがよいのかもしれません。

■計画がなく、行き当たりばったりで聞いている

何度も言うように、部下の話を聞くときには、話をどの方向へ向かわせるかを考えて聞くことが必要です。その計画がなければ、部下の話はさまざまな方向へと流れていってしまいます。

にもかかわらず、上司の方たちに「部下の話を聞くときに計画性を持って聞いていますか?」と聞くと、十中八九、「計画? 持っていません。必要なんですか?」と、そんな答えが返ってくるのが現状です。

そういう方たちに「どうして計画を持って聞かないのか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきます。「だって、部下が何を話すかわからないのに、計画なんて立てようがないじゃありませんか!」

たしかに、部下に自由に話させるときには、何を言ってくるかわからないと思います。でも、私が言う計画とは、過程ではなく、言葉を変えれば「ゴールを決めてください」ということなのです。

目指すゴールを決めることなく、部下に自由に話してもらったら、「息子が最近、自転車の練習を始めた」などという、プライベートな話題や雑談だけで面談が終わってしまう可能性だってあります。

これ、笑いごとではなく、実際に、貴重な面談時間が、「部下の家族旅行の話を1時間聞いて終わってしまった」という話を聞いたこともあります。

言い換えれば、「業務で聞くときは、無策で聞かない」ということです。部下との面談におけるゴールとは、例えば、次のようなものです。「部下の自己成長を促す」「倫理観のない行動を是正する」「心身の健康状態を確認する」「いくつかの行動パターンを特定する」「業務の再現性を高める」部下によって、これらのゴールのうちどれか(あるいは複数)を設定して面談に臨むのです。

カフェのテーブルに置かれたコーヒー
写真=iStock.com/Tolimir
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tolimir

自己成長ができているし、倫理観もある部下なら、今回の面談では業務の再現性を高めることをゴールにするか……と、そんなイメージ。

これらのゴールを部下によって設定していれば……。

「そう、息子さんが自転車の練習を始めたんだ。成長しているね、じゃあ、今日は○○さんの成長について話そうか」

と、雑談から本題への方向性を示したり、より直接的に

「この前の商談がうまくいったのは、何がよかったのかについて話そうか」

など、ゴールへ向けて水を向けることができるようになるはずです。

■せっかちで、話を最後まで聞かない

上司にとっては、部下がする「仕事に関する話」というのは、だいたいどんな話になるかわかるものです。

部下が話し始めた時点で、「こんなことを言ってくるんだろうな」なんて想定して、「言うぞ、言うぞ……ほら、やっぱり言った!」などと考えてしまいます。

そうすると、部下が話し終わるのを待てずに、結論を先取りしてしまいがちです。

特に、部下が言葉に詰まって沈黙しようものなら、1秒も待つことができずに、言葉を引き継いでしまう。

でも、実は、そうやって上司が話の続きを先取りしなければ、部下の話はまるで予想していなかった展開をしていたかもしれないのです。

その展開が部下の本音であることが多いのですが、それを聞く前に話の腰を折ってしまうので、上司は部下の本音を聞けないままで終わってしまう。

部下の本音を聞き出したいと思ったら、ぜひ、「待つことの大切さ」を認識してください。

部下が自分から話し始めるまで待つ。

部下が話し終えるまで待つ。

いや、もう「待つ」というよりは、部下が話すままに見守る、あるいは観察するというイメージの方が適切かもしれません。要点がわかりづらく、曖昧な話をする部下も、話がゆっくりな部下も、その部下なりに100パーセントの力で精一杯に語っている、訴えているのだと考えてみましょう。

そういう意味では、合いの手を入れるのはよいとしても、相手が言葉に詰まったとき、ヘタな助け舟は出さない方がいい。「それは、こういうことかな」なんて言うと、過干渉な状態になってしまいます。優秀な上司ほど、部下が何を話すか予想できてしまいます。

しかし、部下は人間ですし、AIとは違って、個性的なアイデアを秘めているかもしれないのです。

部下の言葉を先取りするのをグッとこらえて、部下が自分の予想したことと違う発言をするのを楽しむくらいの気持ちで話を聞けば、関係性が大きく変化します。

■早合点が悲劇のもと

先ほどの「上司がせっかちで、部下の話が終わるのを待てない」ということに連動していますが、部下の話を聞いている上司が、早合点してしまうというのも悲劇のもとです。

医者にたとえるなら、往診にきた患者さんの話を聞き始めてすぐに「風邪ですね」と診断してしまうようなものです。

患者さんにしてみたら、まだ話の途中で、「えっ? いや、まだこんな自覚症状もあるんだけど……」と思います。でもまあ、医者がそう言うのだから風邪なのかなと思って、続きを話さないままにしてしまう。

それが実は別の大きな病気の前兆で、手当てが遅れたために悪化してしまったら悲劇ですよね。

私がよく知る会社員の方の体験です。

その方、海外の支店に異動したくて、ことあるごとに上司に「海外の支店に異動したい」という話をしていました。そんなある日、海外の輸入品で不良品が出たことを上司に相談しようと思って、「あの部長、海外の……」と切り出したら、聞いた瞬間、部長はその方の言葉をさえぎって「ああ、もうわかってるって! 今、いろいろと調整してるから!」と言って話を聞いてくれなかったのだとか。

その方にしたら「いや、輸入品の相談なんですけど……」です。結局、その件は部長に相談せずに進めてしまったそうです。

この例でわかるのは、毎回毎回、「海外に異動したい」という話をしてくる部下でも、翌日には「海外からの輸入品について」の話をしてくるかもしれないということです。

前フリが同じでも、同じ話かどうかは、聞いてみないとわかりません。

「部下が何を考えているかなんて、だいたいわかるから」と言う方の多くは、この「いつもと同じ話だろ」「あっ、その件はもうわかっているから」という早合点をしてしまっているのです。

「わかってるから、皆まで言うな」と早合点して勝手に進めて、あとから実は違ったなどという悲劇も起こります。

仕事ができる人ほど、部下の話を先取りして、話を全部、奪ってしまいがち。

「わかった気になる」がキーワードです。

■「本当に自分は正しいだろうか?」と常に考える

もうひとつ、「わかった気になっていた」ことによって起こった悲劇の実例です。

あるIT企業の副社長が、「経験が豊富でCOO(最高執行責任者)のキャリアもあるという触れ込み」の候補者を事業推進の責任者として採用しました。

それで、その人に新事業の準備を任せていたのですが、社内から「あの人はなんなんですか? ぜんぜんダメですよ」みたいな声があがってくるようになった。

その副社長としては、「いや、彼は経験豊かなデキる人だから大丈夫。多少、荒っぽいところがあるかもしれないけれど、やることに間違いはないはず。そのうち現場の人間にも理解されるだろう」と思い込んでいて、社内の声に耳を貸さなかったのです。

ところが、悪評は収まるどころかひどくなるばかり。とうとうコーチの私に実態をヒアリングしてほしいという依頼がきました。

私が現場の人たちから実際に話を聞くと、その人、本当にあらゆることがちゃんとできていなくて、現場はもう手遅れのような状態になっていました。

最終的にその事実は副社長に報告しましたが、これなども、わかったつもりで任せていて、自分の思い込みで現場からの声を一蹴していたことによる悲劇だと思います。「正しいのは自分」だと思い込まないこと。「本当に自分は正しいだろうか?」と考え、「自分の正しい」を相手に押しつけないことが大切です。この「わかった気になる」は、プロのコーチでさえ、たまに陥ることがあるくらいですから、よほど気をつけた方がよいと思います。

部下の話を聞き始めて、「また、この話か」と思ったときは要注意です。

■相手の言葉を丁寧に受け取らないのはコスト高

日本企業の多くの上司は、「話の受け取り方」が下手だと言ったら、言いすぎでしょうか。

話している部下としては、一生懸命に話しているのに、聞き終わった上司のリアクションが今ひとつだと、「あれっ? 伝わったのかな?」と不安になってしまいます。

上司の反応が毎回そんな薄いリアクションだと、「話をしても、どうせ意味がないかな……」と思って、だんだん話してくれなくなってしまうでしょう。

この「聞いたときのリアクションの大切さ」について、私は門下生に「首が折れるくらいにうなずけ」と伝えているくらいです。それから、部下から投げられた「言葉のボール」をしっかりと受け取る前に、もう別のボールを投げ返すようなコミュニケーションの取り方をする上司もいます。まるで、ボールを2つ使ったキャッチボールのような状態です。

この「相手の言葉を丁寧に受け取らない」という会話の仕方は、もしかしたらテレビの影響もあるのかもしれません。テレビ番組内での会話って、テンポ重視でポンポンポンと会話が流れます。それに慣れてしまうと、相手が言い終わる前にツッコむのが普通になってしまう。部下から言葉を受け取るときに、リアクションをはしょったり、ぞんざいな受け取り方をしていたりすると、意思疎通で齟齬(そご)が発生して、「言った、言わない」みたいなことが起き、あとでコスト高になることだってあり得ます。

■部下の言葉を復唱しているか

ある会社での実例です。

その会社はビジネス系の某イベントにブースを出展することになり、若手社員のAさんをその出展責任者にしました。

Aさんは、ブースの話題づくりのひとつとして、女性コンパニオンのコスチュームをちょっと派手にしたんです。

その企業の社風からすると、少し派手すぎるデザインでしたが、Aさんは、ちゃんと、部長、課長、課長代理と、事前に上司たちの承認を得て、業者にコスチュームを発注しました。

ところが、もう後戻りできない段階になって、突然、部長から「なんだこのコスチュームは!」と待ったがかかったのです。Aさんがいくら「事前にオーケーをいただきました」と言っても、部長は「聞いていない」の一点張り。

そうなると課長も課長代理も手のひらを返して「○○君、なんだね、このコスチュームは」と。

まるで、安物のビジネスドラマのような展開ですが本当の話です。結局、頭にきたAさん。上司たちには「わかりました! 変更すればいいんですね!」と言い放ち、当日まで黙っていて、最初にオーケーをもらった派手なコスチュームのまま出展してしまったそうです。

林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)
林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)

結果、良かったのか悪かったのかは別にして、イベントに関するメディアのニュースでは、そのコスチュームがおおいに話題になったのだとか……。

この事例で言いたいことは、最初にAさんからコスチュームの提案があったとき、上司たちがしっかりと受け止めていなかったために、こんな結末になってしまったということです。

Aさんはこの事件のあと、上司が信用できなくなり、上司に黙って内緒で仕事を進めることが多くなり、その後、その会社を辞めてしまったそうです。こうして考えると、部下が「○○で、○○なんです」と言ってきたら、「○○で、○○なんだね」という、復唱が大切になります。

ぜひ、部下からの話は丁寧に受け取るように心がけてください。

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林 健太郎(はやし・けんたろう)
リーダー育成家
合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、日本におけるエグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。リーダーのための対話術を磨くスクール「DELIC」を主宰。2020年、オンラインでの新しいコーチングの形態「10分コーチング」(商標出願中)を開発。

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(リーダー育成家 林 健太郎)

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