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「ダークな好奇心」で話を聞けているか…仕事のデキる人が絶対に口にしない"ある相槌"

プレジデントオンライン / 2022年7月30日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CHBD

相手の信頼を勝ち取るには、どのような対話を心がければいいか。プロコーチの林健太郎さんは「聞かれてもいないのに提案したり、アドバイスしたりするのは余計なお世話。お客様の困り事や本当のニーズをつかむには『聞く姿勢』を見せることだ」という――。

※本稿は、林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「話を聞く技術」は自分自身やパートナーにも使える

本稿では、ずっと学んできた「部下の話を聞く技術」を、あなたの周りの部下以外の人たちの話を聞くときにも、ぜひ活かしてくださいというお話をしたいと思います。

「部下の話を聞く技術」は、なにも部下だけにしか使えないものではありません。

本書では「自分の心の声」への応用について触れましたが、それ以外にも、上役、同僚、チームメンバー、お客様、社会の人たち、友人、パートナーなど、幅広い人たちに対して、オールマイティーで使うことができる技術です。

あなたが普段、関わっている人たちを一覧表にしてみたとしたら、どんな人がリストにいますか?

そして、その人たちについて、「自分がどれくらい話を聞いているか」振り返ってみてください。

いかがですか?

ほとんど話を聞けていない人も、たくさんいるのではないでしょうか?

あるいは、話を聞いていたとしても、いったいどんな聞き方をしているのか思い出せない人もいるかもしれませんね。

あなたの「人の話」の聞き方は、満足のいくものになっていますでしょうか?

では、ここから、あなたの周りのさまざまな人たちに対する「話の聞き方」についてお話をしていきましょう。

■多くの経営者は社員に話を聞いてもらいたい

まず、経営者や自分の上役に対する話の聞き方について。

コーチングをしていると、よく、「社長の話なんて聞いたって意味ありませんよ、同じことしか言わないんだから」という声を聞くことがあります。

社長の話といえば、企業理念の話だったり、若い頃の苦労話や自慢だったり、経営状況や指示だったりと、たしかに朝礼や会議での「その手」の話というのは、ある程度、パターンが決まっているかもしれませんので、そう言いたくなる気持ちもわからないではありません。

一方、コーチングで経営者の方に話を聞くと、こんなことをおっしゃいます。

「社員が話を聞いてくれないんですよ」

どうも、多くの経営者の方たちは社員に話をしたがっている。それに対して、社員たちは聞きたくないと思っている。

それが、多くの会社の実情のようです。

私に言わせると、この状況は、社員にとって実にもったいないものだと思います。

なぜなら、経営者の話を聞くと、次のようなメリットが見込めるからです。

・メリット① 経営者との距離が縮まる。親密になれる。
・メリット② 経営者の意図が理解しやすくなる。
・メリット③ 経営者に信頼してもらえる。
・メリット④ 出世につながる(かもしれない)。

多くの社員が話を聞いてくれないことに悩む経営者や上司にとって「お話をぜひ伺いたい!」と言ってくれて、口を挟まずに聞いてくれる人がいたら、やはりうれしいし、印象に残りますよね。

メリット④については、今どきは社長の鶴の一声で人事は決まらないようですが、少なくとも、メリット③、経営者からの信頼は得られるはずです。

■絶対に言ってはいけない“ある相槌”

私は、自分よりも上の立場の人の話を聞くときは、「ダークな好奇心」が大切だと思っています。

ダークな好奇心とは、「社長はいつも同じ話をする」という批判的な気持ちを疑問形に変えて、「社長はなぜ、いつも同じ話をするのだろう?」と考えることで生じる小さな好奇心のこと。

この人は何を言おうとしているのかな……ということを紐解きながら聞く姿勢を持つことで、相手への理解が深まりますし、施策や行動の意図も理解しやすくなるので、ぜひ、ダークな好奇心を持って聞くようにしてみてください。

ここで、会社のエライ人たちが、なぜ、同じ話を繰り返すのかについて触れておきます。

例えば、飲みに行ったときに、なぜ上役は、毎度毎度、同じ自慢話を始めるのか?

結論から言うと、「最後まで話をさせてもらえないから」です。

話の途中で、聞いている相手があきらかに興味をなくしている顔をしていたりして、いつも、心ゆくまで話をさせてもらえないのが最大の原因なのです。

つまり「話を終えること」できなかったから、また次のときも「伝えなきゃ」と考える傾向があるのです。

もし、上役との関係を良好なものにしたいなら、話を最後まで聞き切ることを意識してください。

たとえ、2回や3回、同じ話を聞いたって、それで相手にポジティブな感情が生まれるなら、それもよいではありませんか。ちょっとした「関係性への投資」だと思えば楽なものですね。

最後に、上役の話を聞いているときのNGワードについて。

「また、その話ですか」「あっ、その話はこの前も聞きました」などは、たとえ、飲み会の席でもNGだと心得ましょう。それと、「はいはい」という相づち。これをやられた相手はとても不快に感じるので絶対にやめましょう。

逆に、上役が気持ちよく話を終えられるひと言は、「勉強になりました!」でしょうか。

ひと昔前なら、「おまえ、どこでそんな社交術を覚えた」なんて言われたかもしれませんが、今どき、そんな可愛いことを言う部下はまれなので、「コイツ、できるな」なんて思ってもらえるかもしれません。

■「同僚」と雑談ではなく話ができているか

実は、日々のオフィスワークの中で、ものすごく近い存在でありながら、もっとも話を聞けていないのは、この「同僚」かもしれません。

「いやいや、しょっちゅう話しているよ」と、そんな声が聞こえてきそうです。

でも、その話って、ただの雑談ではありませんか?

あるいは、お互いに、「話を聞き合う」のではなく、「話を伝え合う」だけになっていませんか?

以前私が、中華料理屋さんでランチをしていたときに、たまたま目撃した、同僚らしきサラリーマン2人の会話です。

「あいつ、ヤバいよな」
「だよな」
「よくあれで仕事ができてるよな」
「でもさ、あいつ、係長のお気に入りらしいぜ」
「えっ、マジで?」
「信じられないよな」

そんな感じで、ずっと、そこにいない第三者の話を続けていました。

おしゃべりをする人のシルエット
写真=iStock.com/PrathanChorruangsak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PrathanChorruangsak

いったい、そんなことを「伝え合って」なんの得があるのだろうって私には思えます。

どうせなら、目の前にいる相手のことを聞いて、関係性を深めればいいのに……。

同僚だと、似たような環境で働いていて、仕事や上司が一緒だったりして、何も聞かなくても相手の状況がある程度わかります。

しかし、相手の仕事がよくわかる分、話をすると、つい、アドバイスをしたくなってしまいがち。

それって本当に必要でしょうか?

■ただの“同僚”から“友達”になるための会話のあり方

コーチングの世界ではよく、「相手は1人の成熟した大人の人間である」ということを言います。相手には相手の考えがあるのですから、相手から求めてこない限り、ヘタにアドバイスをするのは余計なお世話なのかもしれません。

では、どんな会話をするのがよいのか?

基本はやはり、「ちょっと教えて」という「聞く姿勢」を見せることです。

普段の雑談の中で例えば、「○○さんは、5年後にはこうなっていたいとかいうビジョンはあるの?」などと聞いてみると、会話の内容自体も変化するし、一気に距離が縮まって人間関係が変わるかもしれません。

お互いにプライベートなことを知ると、共通の興味や趣味がわかって、「ただの同僚」から「信頼できる友だち」になれるかもしれません。

そこまでいかなくても、話を聞くことで、同僚の性格や、強み弱み、得意なこと不得意なことなどがわかって、その後の仕事がやりやすくなるでしょう。

「○○について詳しいのは○○さんだから聞いてみよう」などと、困ったときに頼れるようになるかもしれません。

こういう話をすると、「会社の人とは友だちになりたくない」という方がいます。

そういう方には、こうお伝えしたい。

「その判断、早くありませんか?」

なぜって、多くの人は、会社で見せる顔とプライベートの顔は別人です。

例えば自分が嫌いなタレントの顔を思い浮かべてみてください。あなたが嫌いなそのタレントは、プライベートでは周りの人たちから好かれる好人物かもしれない。

そんなことを考えれば、「その人と友だちになるかどうかの判断は、その人のことを知ってからでも遅くない」と思いませんか?

もしかしたら、会社で友だちになった相手が退職し、フリーランスとして成功。今の会社に嫌気がさしていたあなたに、「一緒に事業を興さない?」なんて声がかかる……と、そんな未来が待っているかもしれないのです。

会社の同僚とは友だちになりたくないと言っていたら、そんな未来を逃がしてしまうかもしれません。

■リーダーはメンバーとの「意識合わせ」をやるべき

ここでいうチームメンバーとは、町内会とか業界団体とかサークルとか、仕事ではない集まりのこと。仕事ではないので、金銭的なインセンティブがあるわけではありませんし、明確な目標も納期も持たない集まりです。

オフィスなら、上司と部下という約束ごとの関係があって、上司が部下に「面談をする」と言えば、部下はそれを受けざるを得ません。面談が、路線から大きく外れることもないとお伝えしましたよね。

それに対してこちらは、肩書による権威づけが使えないし、言ってしまえばなんの約束ごともない関係なのです。

もし、その集まりでリーダー役に任命され、運営を任されたとしたら、どうでしょう。

あなたが、いくら旗を振っても、皆、それを冷ややかに見ているだけという状況もあり得ます。そんな場合は、個々のメンバーとの対話の中で、各人の思いや願いを聞いて、意識合わせをしていかなければなりません。

私は国際コーチ連盟(当時)の代表理事として活動していた時期がありますが、これだって、メンバー全員が「コーチングを普及させていく」という認識を同じ方向性とモチベーションで持っていると思うと大間違い。

話を聞いてみて、初めて「えっ? 違うの?」と驚く経験をしたことがあります。

だとすると、「そもそも、なんで参加しているの?」というところから聞いて、「ここで何をしたいのか?」「願いはどんなことか?」という意識合わせが必要なのです。

PTAの集まりで、共通認識として掲げられている言葉が、「学校をよくしたい」だとしても、偏差値を高くしたいのか、文武両道の子どもを育てたいのか、登校拒否の生徒をゼロにしたいのか、「よい学校」の概念は、各自で違うはず。

チームメンバーへの傾聴は、そんな共通認識をすり合わせるものだと考えてもよいと思います。

■仕事のデキるオペレーターは「お客様の声」を聞く

かつての営業は、「お客様、耳よりの情報がございます」という提案型でモノが売れました。

商品やサービスの特長を前面に出せば、それなりに売れた時代がありました。

しかし、現代は、「お客様の話を聞いて、何を求めているのかといった情報をゲット」して、その目的に適うモノやサービスを提案しなければ売れない時代。

お客様のニーズが出発点で、逆引きで営業が展開されていくのがトレンドです。

表現は適切ではないかもしれませんが、昔の「御用聞き」のような、痒い所に手が届く営業が望まれるようになっているのかもしれません。

しかしながら、お客様の話を聞かない営業担当者がいまだ多いのが現状です。

例えばアパレルショップでも、「これ、今年の流行で、私も1着持っています」とグイグイくる店員さんに出会うたび、「いや、それを言うなら、こっちが『今年の流行はなんですか?』って質問してからでしょ」などと思ってしまいます。

お客様との会話というと、ついセールストークを思い浮かべがちです。しかし、相手がお客様であっても、基本は一緒。話を聞くことが前提なのです。

私は、車は大好きなのですが、車の修理や点検に行くのが嫌いです。

なぜなら、先方が私にしゃべらせてくれないから。

ランプに不具合が出て、修理にいったときも、ランプを見るや否や、「あー、交換ですね、見積り出します。今日、車は置いていかれますか?」と……。

私としては、「このランプが壊れたときの波乱万丈な物語を話させてくれよ」って思ってしまうのです。

でも店員さんは、こっちが話す気満々なことにまったく気がつかず、紋切型で「交換代は○円です。○日かかります。お支払いはカードですか? 現金ですか?」と言ってくるのみ。

そんな現場が多くある中、お客様相談センターのデキるオペレーターの場合は少し異なり、「お客様の声は財産」ということがわかっていて、お客が満足するまで話をさせてくれます。

ヘッドセットを着けて応対する女性
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

話すことによって、お客様の主体性も上がります。

話すことで、自分の内面にあるニーズを確認できて、「営業に買わされた」のではなくて、「自分でよいものを選んで買った」と思っていただける。

「聞くこと」によって、そんな効果も創出することができるのです。

■「いかがでしたか?」では取りたい答えは返ってこない

社会の人たちに対する聞き方とは、例えば、ネット上の調査とか、グループインタビューとか、感想アンケートとか、そんな、その他大勢や複数の参加者、出席者などの声を聞くときの聞き方という意味です。

ここで重要な概念は、「フィードバックを取りにいきましょう!」ということ。

「いかがでしたか?」なんて漠然とした聞き方をしても、取りたい答えはなかなか返ってきません。

不特定多数の人の声を聞くときは、具体的に聞かなければならないのです。

例えば、研修を実施して、その感想を参加者に聞きたいとき。

昔は、「研修はどうでしたか?」とか「講師はよかったですか?」などと聞くのが王道でした。しかし、いくらアンケートで、「研修はどうでしたか? よかった・普通・よくなかった」などと聞いても、多くの参加者が、リップサービスで「よかった」に丸をつけてくれるだけ……ということがわかって、最近はあまり聞かなくなりました。

では、どんな聞き方をすればよいのか?

次のように聞いてみてください。

「研修で学んだことで、印象に残り、これから現場で使いたいと思ったことは何ですか?」

ある意味、研修の内容がよかったことはもう前提で、どこがよかったのかを聞くのです。

ときには、現場でもう使ったイメージで、「何がうまくいきましたか?」と聞くこともあります。

■よりよくするための4つの切り口

また、今後の研修内容に活かすという観点の質問では、次のように聞きます。

「研修をよりよくするためには、どんなことができると思いますか?」

昔は「研修で、よくなかったことは何かありましたか?」などと聞いていましたが、そう聞くと、粗さがしのような回答がきてしまうので、「よりよくするためには?」と、建設的に聞くのが最近の傾向です。

「よりよくするため」の切り口として、「KISS」という概念があります。

これは、図表1のような言葉の頭文字を並べたものです。

「KISS」という概念
出典=『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』

つまり、よりよくするために、「継続すべきこと」「改善すべきこと」「着手すべきこと」「やめるべきこと」は何? という4つの切り口に注目すればわかりやすいということです。

これは、そのまま、「研修をよりよくするために、続けた方がよいと思うことはなんですか?」などと、アンケートの質問項目にできますね。

不特定多数の人たちに聞くときは、漠然とした質問で答えが返ってこないようなことがないよう、具体的に聞いて、積極的にフィードバックを取りにいく! お忘れなく。

KISS分析シート
出典=『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』

■相手が話している理由に好奇心を持つ

この関係の相手への聞き方は、すでにお話をした、ハイコンテクストな(事前に共有している情報が多い)部下の話を聞くときの考え方とほぼ同じです。

もっとも注意しなければならないのは、「またこの話か」という落とし穴に落ちないようにすること。そして、「今日の話は昨日までの話と違うかもしれない」と、おまじないのように唱えながら「新しい気持ち」で聞くということ。

また、相手はアドバイスを求めているわけではないので、聞かれない限りアドバイスについて考えをめぐらせないでください。

林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)
林健太郎『優れたリーダーは、なぜ「傾聴力」を磨くのか? 職場の心理的安全性が高まる本』(三笠書房)

その代わりに、「相手は、どうして、今、自分にそのことを話しているのか?」という、その理由に好奇心を持つことが大切です。

わかりやすい例で言えば、「お隣の家、海外旅行ですって」と言ってきたのは、「たまには旅行ぐらい連れて行ってよ」という意味だったりするのかもしれません。耳の痛い話ですが……。

近い関係だと、そのような、いわゆる行間を読む会話が成り立つのです。

また、もしも相手が話をしてきたときに、自分が聞けない状態だったら、「ごめん、ちょっと今、聞けないかもしれないので、あとで聞くから改めてもらっていいかな」とリセット宣言をする、というのもトラブルを未然に防ぐ知恵だったりします。

聞いているフリをして生返事をしていて、あとから痛い目をみるよりも、「聞けていないよ宣言」をすることで、末永く続く最高の関係を自ら手にしてくださいね。

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林 健太郎(はやし・けんたろう)
リーダー育成家
合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、日本におけるエグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。リーダーのための対話術を磨くスクール「DELIC」を主宰。2020年、オンラインでの新しいコーチングの形態「10分コーチング」(商標出願中)を開発。

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(リーダー育成家 林 健太郎)

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