SNSでクチコミを狙うなら大前提…広告業界で「Z世代にウケるか」が超重要になっている根本原因
プレジデントオンライン / 2022年8月4日 15時15分
■なぜ企業はZ世代を学ばないといけないのか
「てっとり早くSNSでバズらせたい。会社の好感度を高めたい」
「商品の存在を多くの人に知ってもらいたい」
「でも、インスタもTikTokも、何をすればウケるのか、わけわからん!」
そう思ったとき、企業は広告や広報をどう考えればよいのでしょう。もちろん、答えは企業によってさまざまです。しかし「誰の」心をつかめばバズるのか、その答えなら決まっています。「Z世代」の若者たちです。
Z世代とは、1996年から2015年に生まれ、スマートフォンやSNSを当たり前のように使いこなすデジタルネイティブです。インターネットを介して自分の考えを発信したり、人脈を広げたりすることに積極的で、私を含めた上の世代にはないネットの使い方をするのが特徴です。
私を含め、ネットよりテレビが強かった時代に生まれ育った「おじさん」たちのなかにはまだ、Z世代の存在感にピンときていない人もいるかもしれません。
しかしSNSの世界では、すでにZ世代は「圧倒的な主役」のポジションにいます。そのため、SNSでバズらせようと思ったら、Z世代に「いいね」と評価され、拡散してもらわないことには、話が始まらないのです。
■フェイスブック以外のSNSは若年層が“圧倒的な主役”
Z世代がSNSをどれだけ使いこなしているのか、データから紐解いてみましょう。Z世代がSNS上で「圧倒的な主役」であることが、これではっきりとわかるはずです。
たとえばツイッターの利用率を若年層とミドル(30代~50代)で比較すると、高校生66.8%、大学生73.6%に対し、ミドルは34.5%。後述するインスタグラムも若年層の半数以上が利用しています。ミドルが若年層を利用率で上回っているのは、フェイスブックのみです。
![【図表1】若年層のツイッターの利用率](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/3/1200wm/img_931dbea013be7d17bcf62923a267eeb1149723.jpg)
「とはいえ、Z世代は人口そのものが少ないのでは?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。確かに、少子高齢社会の日本においてZ世代は総人口の14~15%程度にすぎません。しかし、その程度の差なら次にあげるデータで帳消しです。
若年層とミドルでは、SNSの平均利用時間に大きな差があります。ツイッターで比較すると、若年層のなかでも最も利用時間が長いのは大学生女子で、平日も休日も1時間以上SNSに触れています。さらにはいえば、若者は1つのSNS内に複数のアカウントを持っており、情報の収集力、発信力がミドルとはケタ違いです。当然、SNS上の滞在時間も長くなります。
■20代社会人女性をつかんでいるのはインスタグラム
次に、女性人気の高いインスタグラムに注目してみましょう。
インスタグラムの利用率は、ミドルが29.8%です。これにたいし、高校生女子は74%、大学生女子は80.6%、20代社会人女子が69.2%。全女性クラスタがミドル層にダブルスコアをつけています。
![【図表2】若年層のインスタグラムの利用率](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/5/1200wm/img_c5b1349cf294dc8d2b82efbef226c92e94857.jpg)
またインスタグラムの利用時間は、もっとも長い大学生女子で平日55.3分、休日62.7分にのぼります。ツイッターとインスタを行き来するようにして使う女性もいることを考えると、1日あたりのSNS滞在時間は2時間以上に達するはずです。
なかでも20代女性といえば、マーケティングの世界で最重要といわれる「F1層」にあたります。収入自体は高くないかもしれませんが、多くが独身女性であり、消費行動が活発です。特に、美容やファッションなどには、お金を惜しみません。そのため、企業の広告・広報においてもターゲットになることが多い層です。
その、F1層を完全につかんでいるのがインスタグラムであり、ツイッターなのです。そう考えるだけでも、SNSがいかに優良な広告媒体か、おわかりいただけると思います。この層に「刺さる」SNS広告が打てれば、バズが生じ、商品が売れやすいのも当然のなりゆきです。
■明暗をわけるのは“若者に任せられるかどうか”
ところが現実には、Z世代に「刺さる」SNS広告を打てる企業と打てない企業とで、明暗がわかれています。原因はどこにあるのでしょうか。
一言でいえば、それは若者自身にSNS広告を任せられるかどうか、です。
自分の失敗談も交えてお話しようと思います。2021年、私は芝浦工業大学(以下、芝浦工大)と広報アドバイザー契約を結び、理工系分野のイメージ向上や、“リケジョ”(理系女子)増加などの、お手伝いをしました(2022年4月からは教授に就任)。
広報課の職員らとともに多くのSNS広告・SNS広報を研究したり、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』に書いてあるメソッドを使って職員自ら発信していただいた結果、わずか数カ月でTwitterフォロワーが3000人も増えました。7月上旬時点で1万人に迫る勢いです。
そこで改めてわかったことがあります。
バズの法則を学び、過去にバズったSNS広告・SNS広報の真似をすれば、私たち「おじさん」たちも、ある程度までは結果を出すことができます。しかし、SNSの経験不足は否めず、マネをするネタが切れると伸び悩むのです。
■女子大生中心の広報組織を立ち上げた理由
その反省から、2022年は、女子学生中心の「学生広報アンバサダー」という組織を立ち上げました。つまり今度は、若者自身の手に情報発信を委ねることにしたのです。
![オフィスで仕事をする女性たち](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/f/1200wm/img_bf4a7b0b86ec80a4f6f2c0ad9efb922e134007.jpg)
私が何を言いたいかというと、Z世代の若者をターゲットにSNS広告・SNS広報を継続的に成功させるなら、若者自身に任せるのに越したことはない、最も効果的だということです。前述の通り、複数のSNSをそれぞれ毎日1時間以上見ている彼らの経験値に、付け焼き刃のおじさんたちがかなうはずがありません。
マーケッターである私自身、それは日々痛感していることです。Z世代の若者と情報交換し、若者研究を進めているものの、「彼ら彼女らの意見のほうが正しい」と、思うことばかりです。
もちろん、「炎上」騒ぎを防ぐためにも、大人の目によるチェックは必要だと思います。また、若者をSNSのいちユーザーから広告・広報の作り手へ育てるには勉強も欠かせません。私がこれからお手伝いをするのも、その部分だと思っています。
■「意見は聞くだけ」では失敗する
確かに、「今なにがバズっているか」をキャッチする早さでは、学生広報アンバサダーのほうがはるかに上。しかし、企業広報をする上でのイロハや、バズの背景に潜んでいるインサイト(=最近の若者がぐっとくるツボ)を教えたり、バズった広告や広報の事例をもとに皆で研究したりと、まわりの大人たちがサポートするべき部分もたくさんあります。
![原田曜平『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/5/1200wm/img_f564b7a9e0f627115a4a8c3e49a09ed7133931.jpg)
企業においても、このような体制が望ましいと思います。大切なのは、SNSの運用はSNSが得意な若者に任せること。まわりの大人たちの役回りは、若者がSNS担当者としてスキルアップするのを見守り、応援すること。インスタグラムやTikTokの“おじさんモデル”を頼まれたら、快く応じましょう。逆に一番よくないのは、「若者から意見を聞くだけ聞いて、実際に情報発信するのはおじさんたち」というパターンです。
なお、芝浦工大の「学生広報アンバサダー」による情報発信は、2022年8月頃からスタートします。若者自身によるSNS広告・SNS広報の例として、チェックしてみてください。
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マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。
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(マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授 原田 曜平)
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