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炭水化物が大好きなメタボだった…胃腸の弱い胃腸科医が2カ月で10キロやせて、胃痛も消えた"長生き食事術"

プレジデントオンライン / 2022年8月4日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

胃腸が弱いのに炭水化物が大好きでメタボだった胃腸科医の福島正嗣医師は、糖質制限を始めて2カ月で10キロやせ、それまでの体調不良がなくなったという。患者さんたちも胃もたれや下痢、逆流感、片頭痛などの不調が改善したという、健康寿命を延ばすための食事術とは――。

※本稿は、福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■医師のくせに炭水化物中毒に気づかなかった

私は胃腸科の専門医を30年近く続けているのですが、恥ずかしながら10年前までは、軽度の肥満と脂質異常症を抱えていました。

その頃は、空腹を感じるときには1日4食だった時期もあり、身長172センチで体重は72キロと、メタボリックシンドロームの状態でした。

それ以外にも、胸焼けや偏頭痛、年に数回ある激しい胃痛も抱えていて、胃酸を抑える薬を常備して、それを服薬することで紛(まぎ)らわしていました。

それらは若い頃からの症状だったので、「人生そんなものだ」という認識だったのです。肥満になってからは、階段を降りるときに膝に痛みが出るようになったのですが、それも40代という年齢のせいにしていました。

当時の私は、朝の仕事が忙しくなければパンを食べ、昼はご飯てんこ盛りの定食かうどん、パスタ。夕食は一人でも食べられるラーメンか、お酒を飲みながらつまみという生活でした。

当然、小麦を摂取しない日はありません。糖分が足りなくなったと自覚したときは清涼飲料水を飲んだり、せんべいを食べたりしていました。

世間一般で考えると、それほど非常識な食生活ではありませんが、今考えると朝からパンを食べることにより、炭水化物を食べ続ける無限ループにはまっていたのです。

■メタボの胃腸科医が糖質制限で目からウロコ

そんな折、傷の湿潤(しつじゅん)治療で有名で、友人でもある夏井睦(まこと)医師が、糖質制限と呼ばれる糖尿病治療食を始めたと知りました。それを機に、私自身も糖質制限食と出合い、人生が大きく変わることになります。

糖質制限というのは、炭水化物のうちエネルギー源となる糖質の摂取を制限することで、糖尿病をコントロールする食事療法です。京都・高雄病院の江部(えべ)康二医師が提唱している新しい概念の糖尿病治療食として、近年注目が高まっています。

当時の医療では、食事による摂取カロリーが消費カロリーを上回った場合に肥満とされ、その先に糖尿病があるという考え方でした。そのため、私も最初は、糖質だけを制限して糖尿病がコントロールできるのかは、疑わしいと感じていました。

「薬なしの食事療法だけで糖尿病が改善したら、そもそも医療や製薬会社なんていらないだろう」と。

とはいえ、「そういう意見があるのなら、とりあえずやってみよう」というのが私の主義です。手始めに、夜の炭水化物をやめてみることにました。夕食は豚のソテーとキャベツというメニューに決めて、継続しました。

ほんの軽い気持ちで始めた炭水化物制限でしたが、毎日、脂が多い豚肉(脂身も残さず食べていました)を食べた私の体に、急激な変化が現れたのです。

前述したように、当時の私は軽度の肥満と脂質異常症を抱えていました。ところが、糖質制限に取り組んで2カ月で、体重が10キロと、中性脂肪が160mg/dlから26mg/dlまで減少したのです。

本当に驚きました。

それまでカロリー制限をしてもよくならなかった肥満と脂質異常が改善しただけでなく、胃腸の調子までよくなるというおまけまで付いてきたのです。

■小麦をやめたら胃痛と逆流感がなくなった!

夜の炭水化物をやめてからまず感じたのは、肉と野菜だけの食事だと異常なぐらいお腹が空くということでした。今まで胃がはち切れるぐらい満腹になるまで食べていたので、パンやご飯を食べずに、おかずだけにすると、いくら食べても胃の中が満たされないような感覚があります。

それでも炭水化物制限を続けた結果、今まであった食後の胃もたれや胃痛、逆流感が消え、胃酸を抑える薬に頼ることも、いっさいなくなりました。さらに、それまで炭水化物によりもたらされていた異常な満腹感ではなく、胃本来の満足感を知ることができたのです。

この体験は自分にとっては、まさに目からウロコでした。今まで胃痛といえば胃酸を抑える薬や粘膜保護剤を出すことしか頭になかった診療を、恥ずかしく思いました。

そして、胃痛の症状の4~6割ともいわれる「機能性ディスペプシア」という病態は、小麦を含む炭水化物に原因があるのではないかと考えるようになったのです。

■胃腸科の受診理由トップ3

胃腸科を受診する理由の大半は、「胃もたれ」「胃液が上がってくる」「胸や喉が詰まる感じがする」という症状です。

こうした胃の不調の場合、胃酸を抑える薬や胃粘膜保護剤による治療が一般的です。

軽快しない場合は内視鏡検査をすすめられ、胃潰瘍やひどい胃炎、もしくはピロリ菌が見つかる場合もあります。治療によってこれらの症状が治まればよいのですが、治まらないケースも少なくありません。

そのため、何度も通院したり、胃痛だけでなく喉の違和感があれば耳鼻科を紹介され、耳鼻科で問題がなくてまた内科へ戻るといった「たらい回し」を繰り返すケースもあるでしょう。

もちろん、通院して症状が軽快すればいいのですが、長年通っても薬をもらうだけで一向によくならないと感じている人もいると思います。

■通院してもよくならない原因不明の胃痛

私自身も、糖質制限を始めるまでは、胃もたれの治療については、上司に教わった通りに胃酸を抑える薬や粘膜保護剤を処方していました。患者さんによくならないと相談されても、「胃潰瘍でも治るお薬を出しているから、きっとよくなると思いますよ! これ以上の薬はないですから」と説明していました。

しかし、処方を続けても、あまり改善していないなという印象を持つことはありました。

ただ、医師としては胃がんや胃潰瘍を否定できれば、患者さんの命に関わる病気はそうそうありません。私自身が外科医だったため、「胃もたれは内科の仕事」と割り切って、本気で胃もたれに向き合うことはありませんでした。

■パンも米もダメなら何を食べればいい?

しかし、身をもって糖質制限の効果を実感した私は、胃痛で通院する患者さんの診療を、胃酸を抑える薬中心の診療から食事指導中心へ転換しました。もちろん、患者さんにとって利益があることだと考えたからです。

ところが、一人5~10分程度の外来診療では、患者さんの食事に対する考え方を変えるには、あまりにも時間が足りません。「炭水化物を減らしましょう」というだけだと、かえって反発を招くこともありました。

炭水化物制限をすすめると、決まって次のように返されます。

「小麦や米を減らしたら、主食に何を食べたらいいのですか?」

その際には、肉や魚をメインに野菜や海藻類もしっかり食べて、それでもお腹が空くなら、パンやご飯を少しだけ食べる方法を提案します。

しかし、子どもの頃から慣れ親しんできた炭水化物を控えるというインパクトは想像以上に大きいようで、なかには「この医者、何をいってるの?」といった顔をする患者さんもいました。

よかれと思ってすすめたことが、逆に反感を買うという事態になっていきました。

■反発していた患者さんたちを変えた「魔法の言葉」

「炭水化物を減らしましょう」と提案するだけでは、患者さんにどんな食事に変えたらいいのか具体的なイメージを持ってもらえず、なかなか成果が上げられずに悩む日々が続きました。

保険診療では食事指導に十分な時間はかけられないため、患者さんが理解するまでじっくり説明することができません。

自分のクリニックの経営的なことを考えたら、よけいな提案をせずに薬を処方したほうが診療時間も短く済みます。何より、薬を出してほしいと望んでいる患者さんを否定する必要もありません。

昔のような診療に戻そうかと真剣に迷っていたときに、ある患者さんの一言で、パッと視界が広がりました。

「要は、朝のパンをやめればいい、ということですよね。でも、できるかなあ」

いきなり1日3食の食事をコントロールすることをすすめるのは、患者さんにとってハードルが高すぎだったのです。「まずは朝食の習慣だけを変えましょう」と提案したほうが、患者さんが理解しやすい上に、取り組みやすいことに、この一言で気づくことができました。

自分自身は夜の炭水化物を控えたのを機に、朝食も昼食も炭水化物を制限するようになりましたが、多くの人にとっては朝の炭水化物を制限するほうが、最初の一歩として受け入れやすかったのです。

朝食テーブルの上のスライスパン
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■朝のパンをやめただけで

「○○さん、まずは朝のパンをやめてみませんか?」

これなら患者さんも次の日から実践できるので、1日に摂る炭水化物をコントロールする説明を延々とするよりも、ずっと効果的でした。

実際に朝のパンをやめた患者さんからは「胃もたれや逆流感、下痢がなくなった」「喘息の発作がなくなった」など、胃腸の不調だけでなく、体の不調が改善されたという声が聞かれました。

食事改革に積極的に取り組んでもらえるきっかけになっただけでも嬉しいのですが、患者さん本人に体調改善を実感してもらえると、次のステップにも進みやすくなります。

「じゃあ、夕食でも炭水化物を控えてみましょうか」という提案をすると、さらに効果が上がるという好循環が生まれていきます。

現代人の食事は、炭水化物中心に構成されています。

福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)
福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)

丼ものや寿司、ピザ、パスタ、お好み焼き……。肉や魚は食べなくても炭水化物だけは欠かさない、という食習慣の人も少なくないでしょう。

しかも、その食習慣により自分が過食になっている事実にすら気づいていません。

胃腸の専門家から言わせてもらえば、食パン1枚やご飯1杯、うどん1杯、パスタ1皿という標準的に食べている量でも、胃にとっては過食なのです。

なぜなら、人間の消化管は炭水化物を大量に処理できる仕様には、なっていないからです。

そのため、パンやお米をはじめとする炭水化物を食べないようにすると、慢性的な胃腸や体の不調のみならず、生活習慣病やがんの予防、そしてアンチエイジングといった効果も得られるのです。

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福島 正嗣(ふくしま・まさつぐ)
医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長
1993年、聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター外科に入局後、主に消化管および肝胆膵の悪性疾患の手術を担当。2017年に内視鏡検査専門のみらい胃・大腸内視鏡クリニックを設立、現在に至る。これまでに消化器外科手術2000件、胃内視鏡検査6万件、大腸内視鏡検査3万件の実績を誇る。40歳から糖質制限を始めて肥満や脂質異常症を克服し、自身の体験もベースに多くの患者さんに薬以外の治療として食事指導を行なって成果を上げている。

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(医療法人社団正令会みらい胃・大腸内視鏡クリニック理事長兼院長 福島 正嗣)

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