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「たった1日でも高い抗うつ効果が期待できる」夏休みが取れたら真っ先にやるべき3つのこと

プレジデントオンライン / 2022年8月8日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

たった1日の夏休みでも仕事で溜めたストレスを発散し、リフレッシュすることは可能なのか。外資系企業で産業医を務める武神健之さんは「時間を区切り、空間を区切り、さらに五感を区切ることにより、気分転換や抗うつ効果が期待できる」という――。

■たった1日の夏休みに真っ先にやるべき「抑うつ対策」とは

皆様はどのような夏休みをお過ごしですか。

私のクライアントでは、多くの社員さんたちは、3年ぶりの夏休み旅行や帰省を計画していたようです。しかし、新型コロナウイルス感染症の第7波を受けて計画を続行する人、取りやめる人さまざまです。

私は最近の産業医面談で、人々の働き方だけでなく、休みの時間(=仕事以外のプライベート時間)においても、以前にも増した多様性の気配を感じています。

このような中、たった1日でも夏休みを取れたら、気分転換になり抗うつ効果が高い1日となるように、真っ先にやるべきことについて、今回は3つ書かせていただきます。少しでもお役に立てば光栄です。

それは、時間を区切り、空間を区切り、さらに五感を区切ることにより、緊張という日々の感情を上手に断ち切ることです。

■人は無意識でも日々緊張している

働く人の多くは、職場の人間関係や仕事の質や量など特定のストレス原因がなくても、無意識ながらも日々緊張を感じながら過ごしています。この緊張感を上手に緩めることができないと自律神経のバランスを壊したり、メンタルヘルス不調になってしまうのです。

このような緊張感に上手に対処するためには、自分の緊張した気持ちを弛緩(しかん)(リラックス)させる必要があります。そのために有効なのが、上記の3つの区切り方です。以下、区切る方法を順番に見ていきましょう。

■方法1:時間を区切る

時間を区切るという習慣は、実は誰もが日常的にやっていることでもあります。意識するしないにかかわらず、日中働いている人であれば、昼食時にはランチタイムと称して時間を区切っていますし、コーヒーやお茶を飲むなど、休憩を挟むケースもあるでしょう。このように時間を区切ることで、仕事の緊張感を一時的に解きほぐすことをすでに多くの人は無意識にできているのです。

時間を区切ることは、緊張の原因に直接対処するのではなく、休憩時間や休暇を積極的に取り入れることを意味しています。緊張の持続期間を区切る効果があります。

せっかくの休みの日を、翌日以降の仕事に備えて資料をまとめたり、復習したりして過ごすことが悪いとは言いません。確かに、翌日からしばらくの間、仕事に余裕が生まれることもあります。しかし、そのような過ごし方では、日々の緊張感は身体から抜けません。

1日しか休みが取れないのだからこそ、仕事のメールは見ない、仕事のために使わない1日として過ごしたほうが、日々の緊張感は断ち切れます。しっかりと休みの1日としましょう。

目覚まし時計とコイン
写真=iStock.com/fotolgahan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fotolgahan

■疲れて「から」でなく、疲れる「前」に休憩を

たった1日の休みでも、その効果を最大数週間発揮させることが可能です。

それは、疲れてから時間を区切る(休む)のではなく、疲れる前にあらかじめ休憩や休暇を入れることです。マラソン選手は42.195kmを全力で駆けぬけるために、喉が乾いてから水を飲むのではありません。あらかじめ、給水ポイントを決めているのです。忙しいビジネスマンも、疲れてから休むのではなく、1年ごと、四半期ごとに、自分の疲労がたまりそうな時期に、ぜひ、お休みの計画を入れてみてください。緊張感のある日常生活を送りながらも、区切り可能な日が明確になり、そこまで頑張るモチベーション(動機づけ)にもつながります。

アメリカの研究で、事前に長期休暇の予定を入れて計画しておくことで、2カ月前から人の幸福度は上がるというものがあります。皆さんも、休日のことを思うと、その休日が近づくにつれ少しずつ気分がウキウキする経験をお持ちではないでしょうか。たった1日の休みでも、あらかじめ楽しい予定を計画することで、その効果を最大限お使いください。

■方法2:空間を区切る

2つめは、仕事や日常生活のストレスや緊張がある場所(会社や自宅)から空間的な距離をとることで、連続する緊張した感情を区切る手法です。空間の区切り方には水平方向と垂直方向の2通りの方法があります。

いずれも誰もがすでにやった経験があると思います。

たとえば、社員食堂でお昼を食べるよりも、社外ランチのほうが気分転換になります。仕事が終わってオフィスビルを出るとちょっと気が緩みます。電車通勤の人は、会社から距離が離れてくるにつれ、リラックスしてくる感覚があるのではないでしょうか。休日も、自宅にこもっているだけよりも、外で遊んだ方が気分転換になりますよね。

簡単に空間を区切るには、電車で遠くに行き日常生活から距離をおくことです。遠くに行くのが億劫な人は、ぜひ、近くの高いところに登ってみてください。日常的にみている世界を別の角度から、また、小さく見ることができて、きっといい気分転換になるはずです。次第に自分の状況を冷静かつ客観的・俯瞰的に考えることができ、緊張感からの解放以上の効果を得られます。

■方法3:五感を区切る

3つめは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感に変化を与えることで、緊張した気持ちを区切る方法です。人間の感情は、五感に大きく影響を受けています。だからこそ、気分転換によって五感を区切り、それを通じて緊張感を和らげることはとても重要になってきます。

五感のイラスト
写真=iStock.com/Sudowoodo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sudowoodo

これも私たちは自然に日常生活に取り入れています。たとえば、壁にかかった絵画や観葉植物を眺める(視覚)、音楽を聴く(聴覚)、アロマをたく(嗅覚)、甘いものやエスニック料理を食べる(味覚)、温泉につかる(触覚)などの行為を通じて、緊張を和らげたり、気分を変えたりというのは、多くの人が無意識にやっていることです。

このように普段無意識にやっていることですが、せっかくの1日だけの休みであれば、ぜひ、意識してご自分の五感を刺激してみてください。1つのイベントで複数の感覚を刺激できるものもたくさんあります。

例えば、ドライブに行くときは、車内をお気に入りのアロマでみたし、お気に入りの音楽を聴く。電車で目的地に行く場合も、音楽を聴きながら、日常とは異なる景色に目を向ける。外出先で、普段は食べない郷土料理やエスニック料理などで、視覚、嗅覚、味覚を刺激する(きっとその国の音楽もかかっているので聴覚も刺激されますね)。温泉や流行のサ活(※編集部註:サウナ活動)は、視覚、嗅覚、聴覚、触覚を刺激してくれます。

五感を通じて緊張感を区切ることは、多くの方が少なからず、やっているのではないでしょうか。ここで紹介した習慣をすでにお持ちであれば、今後はよりいっそう意識的に、自分の緊張を区切り和らげ、自分のコンディションをいい状態に保つために、日常生活の中でも、緊張感で体がこわばってしまう前にやってみてください。

以上、たった1日の夏休みでも、抗うつ効果が高い過ごし方、それは、日常生活の緊張感を区切ることでした。そのための3つのポイントについて述べました。

■私なら「ハイキング」か「サ活」で1日の夏休みを満喫する

産業医の私がたった1日の夏休みしかなかったら、私なら、山に軽いハイキングに行くか、サ活に行くでしょう。

山に行けば、長い時間仕事から離れることになります。日常生活からの距離をとり、緑に囲まれ、いい景色を見て、森の音を聞き、土や植物の匂いをかぎ、太陽の光を肌で感じ、そして、下山後に山の幸をいただけば、五感全てを通じて、非日常を味わうことができます。もし、雨が降ったときは、サウナに行きます。外界から閉ざされたサウナで特有の匂いを嗅ぎ、熱くて汗をかき、水風呂で体を冷やし、身体を整え、最後はサウナ飯でしめれば、これも五感全てで緊張から解放されます。いかがでしょうか。

新緑に囲まれた沼地の遊歩道
写真=iStock.com/Korekore
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Korekore

3月に新型コロナウイルス感染症に対するまん延防止等重点措置が終了し、新型コロナ感染症によるさまざまな制限から解放された夏休みを迎えようとした日本の夏。オミクロン株BA.5の急速な流行により、日本では1日の新型コロナ感染症患者発生数が日々最多を更新しています。

私のクライアントでは、引き続き週5日の出社を求める会社、当面在宅勤務可能とした会社、週数日の出社をゆるく求める会社などさまざまです。ワーケーションという言葉も出てきているように、働き方も、休み方も、今後はますます多様性が出てくると思われます。

在宅勤務を、息が詰まると表現する人もいます。出勤や出社という環境の変化がない中で、1日ずっと同じ空間にいるため、オンとオフの区別、メリハリや気分転換ができないと緊張感が上手に抜けず、疲労が溜まってしまいます。

しかし、そのような中、自分の心と体の健康は、自分で整えなければなりません。今回のお話が、皆様のお役に立てば幸いです。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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