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死ぬ前にめちゃくちゃに壊してやる…「自分は社会の被害者」という思い込みがもたらす恐るべき結末

プレジデントオンライン / 2022年8月9日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tero Vesalainen

昨今、不遇な環境に自暴自棄になった人物の凶悪犯罪が増えているように感じられる。その原因として貧困、孤独、高年齢化などが指摘される。だが大多数の人は、それでも犯罪など起こさず自分の人生を懸命に生きている。何が両者を分けるのか。近著『できないのはあなたのせいじゃない』が話題の経済評論家・勝間和代さんは「自分で人生をコントロールできている実感があるかないかが大きいのではないか」という──。(第2回/全2回)

■「自分は社会の被害者」という危険な思い込み

昨今、氷河期世代による凶悪犯罪の報道が目立ってきたことは、皆さんも感じているところと思います。

犯人の多くは無職、もしくは不安定な働き方をしており、困窮していて人間関係は希薄。孤独の中で思い込みを強固にしている人たちです。

「誰でもよかった」「幸せそうな人を狙った」「たくさん殺せば死刑になれると思った」といった犯人たちの言葉からは、「自分を受け入れてくれない社会ならば、死ぬ前にめちゃくちゃに壊してやる」といった、増幅された恨みを感じます。

就職難、非正規雇用の拡大という厳しい社会的、経済的状況の中で、自己効力感を失い、自尊心を大きく破損し、「自分は恵まれない社会の被害者だ」という意識を極限まで膨らませた結果といえるでしょう。

■「社会を恨む人」「突破する人」何が違うのか

しかし、凶悪犯罪を起こす人物はきわめて少数です。大多数は、苦闘しながらもこの社会で懸命に生きています。

最初から正社員になれないまま社会人としてスタートしたものの、非正規雇用の形で働きながらスキルや資格を身に付け、実績を積んで希望する会社へ中途入社した人。

また、一流企業には入ることができず、比較的不遇な待遇で働きながらも、経験を積んで自ら起業した人。

このような人々も、現実にたくさん存在しています。

「社会を恨む人」「突破する人」──同じ時代を生きてくる中で、二者の違いはどこにあるのでしょうか?

■自分のコントロール範囲に意識を向ける

名著『7つの習慣』で、著者のスティーブン・コヴィー博士は、私たちが持つ多くの関心ごとの範囲を「関心の輪」、そのうち自分がコントロールできる範囲を「影響の輪」と分類しました。

つまり、関心の輪の中に影響の輪が内包されているわけです。

自分でコントロールできる影響の輪の大きさに対して、コントロールできない関心の輪が大きくなりすぎると、人は不幸になります。なぜなら、自分が影響を与えられる範囲、コントロールできる範囲がきわめて小さく感じられて、無力感に陥ったり、自尊心が損なわれて怒りを抱いたりするからです。

逆に、関心の輪に対して影響の輪が大きくなるほど、幸福度は高くなります。「影響の輪が大きい」というのは、そこに自分の意識が集中できている状態を指します。常に自分ができることを発見し、そこに働きかけていると、人生をコントロールしている実感が得られるようになるのです。

■「自分でコントロールできている実感」はあるか

この「自分でコントロールできている実感」は、仕事の満足度に最も影響するといわれています。「影響の輪」に意識を集中することは、人生を大きく変える重要なポイントなのです。

つまり、「社会を恨む人」になるか「突破する人」になるかは、「影響の輪」へ集中できるかどうか、ブレインロックが外せるかどうかがカギを握ると私は考えています。

「影響の輪」の外で、なにかしらデメリットになる出来事にさらされたとき、「自分はどうすれば少しでも有利な状況になれるのか」「ほかにどんな方法があるか」「何か抜け道はないか」といったことを考え続けることができるかどうか。これが、大きな分かれ道になります。

そして、新たな道を見つけることができたならば、次に「自分には難しいことはできない」「新しい場所、新しい業界は危険」「上司が年下なんてかっこ悪い」などといった無意識に持っているブレインロックを外し、前向きに飛び込んでいけるかどうかが大事なポイントとなります。

■「影響の輪」の外側にあるのは愚痴、不平、不満、恨み…

実際に、「影響の輪」に意識を向けるとはどういうことなのか。

たとえば、月100時間の残業で心身ともにボロボロになっているとします。解決をしようとしても、「会社が持つ価値観」「会社の体質」は、一会社員にとっては「影響の輪」の外側にあるものです。

そのため、そこに意識を向けたところで、無力感から会社への不満や恨みが増幅され、愚痴や不平ばかりを口にするようになったり、仕事のモチベーションを落としたり、ストレスが増すばかりです。

雨が降りつける窓に紙に描いた太陽を付けている手元
写真=iStock.com/Ildar Abulkhanov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ildar Abulkhanov

■「自己効力感を高めるアクション」を実行しよう

一方、自分でなんとかコントロールできる範囲である「影響の輪」の内側に意識を向けるとどうでしょう。すると、たとえば「まずはいつもよりも10分早く終業すること」などといった行動を思いつくことができます。

そのためには、ルーティンを変更したり、メールをいつもよりも短文にしたりする必要があるかもしれません。また、手で打ち込んでいた長文のリポートを音声入力にしたり、リアル会議をオンライン会議にしたりするなど、新たなテクノロジーを導入することで効率化につながるでしょう。

次の週には、担当している案件を少しだけほかの人にサポートしてもらう。その次の週には、3回行っていた打ち合わせを2回にしてみる……といった工夫を重ねることで、少しずつでも残業時間を減らしていくことができます。

こうした実行可能なアクションを重ねることで、徐々に30分、1時間と残業時間は減っていきます。それに伴い、「自分で労働時間をコントロールできている」という自己効力感が高まっていくのです。

■そこに「主体性」はあるか

また、長時間労働をしている氷河期世代の中には、「上司の依頼は断ってはいけない」「自分がやらないと仕事が回らない」という強固なブレインロックを持っている人がよくいます。そうしたブレインロックを一気に外すのは難しいでしょうから、少しずつ外していくことをおすすめします。

上司から時間的に無理な仕事を振られた際は、「今、進めている案件があるため、ご指示通りの時間に仕上げるのは難しい状況です。進行中の案件を後回しにして、この新しい案件を優先させる、ということでよろしいでしょうか?」と交渉してみてください。これなら、「できません!」と断るよりだいぶハードルは下がるでしょう。

上司と仕事の優先順位を話し合ったり、交渉したりすることは、決してマイナスの行為ではありません。むしろ、主体性をもって仕事に取り組むことにつながります。

昨今は少なくなったと思いますが、優先順位を調整することもなく、「根性で仕上げろ」「休日出勤すればなんとかなるだろう」といった理不尽な要求をしてくる“パワハラ上司”であれば、配属転換を希望するか、転職を検討するのも一案です。

■「自分じゃないと仕事は回らない」という思い込み

また、社内外のスタッフに振れるタスクはないか、常に念頭に入れておくことも忘れずに。

基本的に、人間は能力的にはさほど差はなく、同じ企業内に勤めているならほぼ同レベルでしょう。「自分じゃないとできない仕事」は存在しない、という考えをデフォルトにしてください。

あなただけが持つ特殊能力があるとしたら、おそらく一会社員には収まっていないでしょう。

「自分じゃないと仕事が回らなくなる」もまた、自分の首を絞める、よくあるブレインロックの1つです。

■「恨む人」を捨て、「改善する人」へ

こうした小さな小さな改善を、私は「0.2%改善」と呼んでいます。ほんのわずかでも、改善を繰り返しているうちに、徐々に変わらないと思っていた現実を変えていくことができるでしょう。

そして、残業時間削減であれば、あるときふと、「なんだ……働く時間を減らしてもたいしたことは起こらないじゃないか」と気がつくようになります。それどころか、新しいテクノロジーを導入したことでスキルは上がり、業務は効率化されて、より高次な仕事にリソースが使えるようになっているでしょう。

そのころには、「長時間労働こそ善」というブレインロックも、すっかり外れているはずです。会社への不平不満、愚痴をただただ言い続けるだけの「恨む人」にもならずにすむでしょう。

■「新しいもの」に便乗して突破する

新しいテクノロジー、新しい仕組み、新しい世代の邪魔をしないこともたいへん重要です。

勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)
勝間和代『できないのはあなたのせいじゃない』(プレジデント社)

日本の総人口のうち、約15%を占めるといわれる氷河期世代は、会社ではマネジメント層、家庭では子育てをしている人も多く、ある意味、社会に与える影響が強い人々だといえます。

そして今、世界は歴史上類を見ないほどの早いスピードで変化しています。氷河期世代よりも下の「デジタルネイティブ」たちが、今後は思いもよらない発想で新しい世界を生み出していくことは間違いありません。新しい技術、新しいお金儲けの仕組みもどんどん生まれていくことでしょう。

そのときに「前例がない」「やったことがないからリスクが高い」といったブレインロックで、妨害をしないことです。共に手をとって可能性を探ることが大切です。小さい規模で期間限定で始めて様子をみる……といった「影響の輪」の範囲内で、自分も便乗していきましょう。

その小さな繰り返しが、たとえば積立投資の複利のようにどんどん膨らんで、「時代に合わせて自分をアップデートさせる」という大きな自己投資につながります。それは、時代の波に便乗して「突破していく人」になるための投資にもなるはずです。

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勝間 和代(かつま・かずよ)
経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授
1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶應義塾大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー・アンド・カンパニー、JPモルガンを経て独立。少子化問題、若者の雇用問題、ワーク・ライフ・バランス、ITを活用した個人の生産性向上など、幅広い分野で発言を行う。著書に『勝間式食事ハック』(宝島社)、『勝間式超ロジカル家事』、『勝間式超コントロール思考』『ラクして おいしく、太らない! 勝間式超ロジカル料理』(以上、アチーブメント出版)などがある。

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(経済評論家/株式会社監査と分析取締役/中央大学ビジネススクール客員教授 勝間 和代)

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