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身体の内部からキンキンに冷える…たった2つの材料で作れる「熱中症予防に一番効く飲み物」

プレジデントオンライン / 2022年8月9日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mizina

熱中症にならないよう、効率的に身体を冷やす方法はあるのか。暑熱対策に詳しいスポーツ医学博士の中村大輔さんは「額や首よりも腕と手を冷水につけると良い。さらに、アイススラリーという細かい氷の粒子が混ざった飲み物を摂取すると、より早く深部体温を下げることができる」という――。

※本稿は、中村大輔『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■体温を下げるには「腕と手を冷水で冷やす」

スポーツ活動中の暑さ対策は水分補給・身体冷却・暑熱順化・コンディション把握の4つが重要なポイントです。ここでは身体冷却を紹介したいと思います。

みなさんは、スポーツ活動中に体温を下げようと思ったら身体のどの部位を冷やしますか? 多くの方が額や首と回答されると思います。

実際に、私が日本のトップアスリートを対象に行った調査でも、これらの部位を練習や試合で冷やすという回答が多いのです(※1)

その一方で、熱放散の観点からすると、体幹部と比較して上肢(腕)は、熱放散に適した形態的特徴を持つことがわかっています(図表1)。

露出部位が異なる衣服が運動時に直腸温に与える影響
出所=『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』

上肢は、体幹部と比較して、容積(その場所にある血流量)に対する表面積が大きいという形態的な特徴があります。容積に対する表面積が大きいと、外気の影響を受けやすいことを意味し、外(身体の外)のほうが身体の中よりも温度が高ければ、温度(熱)が外に向かって移動していくことになります。人の体幹部の表面積:容積比を1とした場合、腕は5倍、手は10倍、手指は22倍にもなります。

体温を上昇させたあとに冷却する部位によって体温の低下に差があるかを調べた実験でも、腕や手を冷やした場合の深部体温の低下は、何もしないときや体幹部を冷やすベストを着用しているときよりも、腕と手を冷水につけて冷やしたほうが大きいことがわかります(図表2)。

温度が上昇した後に4つの冷却条件で体温の低下を検討
出所=『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』

■運動前に身体を冷やすと熱中症リスクが低下

身体冷却は運動中に行うことももちろんですが、運動前に身体の冷却を行う「プレクーリング」が長時間にわたり暑熱環境下で運動を行う際には有効です。

プレクーリングの目的は、運動前に体温を下げておくことになります。同じ運動であれば、体温の上昇度合いは同じですので、運動前に下げた分だけ、その差が維持されることになります。図表3は、運動前に深部体温を冷水浴で低下させた状態と、何もしなかった場合でのその後の運動中における深部体温の上昇を示したものです。

「プレクーリング」の効果
出所=『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』

運動を行うことによって深部体温は上昇しますが、運動開始時の体温差は運動が継続しても維持されていることがわかります。

つまり、熱中症の発症要因が過度な体温上昇だとしたら、運動前の身体冷却はそのリスクを軽減することになります。

そうなってくると、どのようなタイミングで、どの冷却方法を利用するかということが問題となります。

そこで、図表4に、身体冷却の種類と具体的な手法、運動時における各身体冷却手段の実行性および深部体温への効果を表にしてまとめておきました。

身体冷却の種類および方法と効果
出所=『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』

身体冷却の方法はスポーツの種類によって実践できる選択肢が異なります。自身の活動に合った、より効果的な身体冷却を実践してください。

■深部対応を効果的に下げる「アイススラリー」

身体冷却には外部冷却と内部冷却の2種類があります。冷水に浸けたり、アイスパックを当てる冷却は、身体の外から冷却しますので、外部冷却に分類されます。一方、内部冷却は、身体の内部からの冷却、つまり冷たい水を飲んだり(冷水摂取)、クラッシュアイス(細かい氷)入りの飲料を飲んだりすることで身体の中から冷却することを指します。

近年、「アイススラリー」という細かい氷の粒子と液体が混ざった飲料を摂取することが、深部体温の低下に効果的であるというデータが出ています。このアイススラリーが深部体温の低下に有効である理由として、モノが解けるときに生じる融解熱が関係しています。

アイススラリーは細かい氷の粒子を含んでいますので、飲んだ氷が体内で解け、その融解熱が深部体温の低下につながるという論理です。

研究では体重1kg当たり7.5gのアイススラリーを6回に分けて摂取すると、10分程度経過してから深部体温が低下し始めます(※2)。その後、30分で0.5~0.7℃程度深部体温が低下します(個人差があります)。

■一気には飲めないので腕の冷却と「二刀流」で

ただ、実際に飲んでみるとわかるのですが、これだけの量のアイススラリーを飲むことは結構苦痛です。そのため、さきほど紹介した腕の冷却と少量のアイススラリー摂取を組み合わせるとをお勧めします。何もしない場合やそれぞれを単独で行った場合と比較して、より早い段階で深部体温を低下させることができるのです(図表5)。

38.5℃まで深部体温を上昇させた後4つの冷却条件で体温の低下を比較
出所=『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』

アイススラリーは、商品として販売されていたり、「グラニータマシーン」という専用の機器で作ることができます。しかし、家庭用のかき氷製造機やミキサーを用いて作ることもできます(この場合は氷の粒子が大きくなってしまうので、厳密にはクラッシュアイスと言ったほうがいいかもしれませんが、氷の粒子の大きさによる定義は実際にはありません)。

作った後は魔法瓶で保存することで、氷の粒子が飲む前に融解してしまうことを防ぐことができます。

■スポーツドリンクと氷があれば簡単に作れる

家庭用機材で自作した場合、専用の機器を用いて作った場合より氷の粒子が大きいことから、融解熱による冷却効果は低くなりがちです。しかし、それでもただの冷水をそのまま摂るよりは体温の低下効果が期待できます。

中村大輔『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』(扶桑社)
中村大輔『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』(扶桑社)

最近では、市販のアイススラリーもコンビニエンスストアなどで購入できるようになりました。

前述のように深部体温の低下には多くの量を摂取する必要がありますが、アイススラリーは主観的に強い冷涼感が得られるといった利点もあります。また、前述したように前腕冷却などの外部冷却と組み合わせれば少量の摂取でも冷却効果が期待できます。

暑さの中でスポーツ活動を行う際の水分補給と身体冷却の双方の利点があるアイススラリーに注目です。

アイススラリー(厳密に言えばクラッシュアイスに近い)は自宅でも簡単に作れます。ミキサーや、かき氷機などでも作れます。

材料(500ml分)
●スポーツドリンク200ml
●氷(水もしくはスポーツドリンクを製氷皿で凍らせたもの)300g
必要な道具
●ミキサーまたはかき氷機
●魔法瓶
●はかり
●小さい氷が作れる製氷皿(100均で買える)があると便利
出所=『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』
出所=自宅で簡単に作れるアイススラリーのレシピ『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』

氷の粒子は小さいほど冷却効果が高くなるので、小さな氷を作れる製氷皿を使い、それをミキサーやかき氷機で細かくするのもよいでしょう。出来上がったアイススラリーは、普通のボトルではすぐに解けてしまうので、保冷性のある魔法瓶に入れましょう。数時間経ってもスラリー状(半液体状)をキープできます。

※1 中村大輔、田名辺陽子、髙橋英幸:日本人トップアスリートにおける暑熱対策に関するアンケート調査。Sports Science in Elite Athlete Support, 3: 39-51, 2019.
※2 Siegel R, Mate J, Brearley MB, et al.: Ice slurry ingestion increases core temperature capacity and running time in the heat. Med Sci Sports Exerc, 42: 717-725, 2010.

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中村 大輔(なかむら・だいすけ)
博士(スポーツ医学)
筑波大学で学位を取得後、国立スポーツ科学センター、立教大学、株式会社ウェザーニューズを経て、現公益財団法人日本サッカー協会、フィジカルフィットネステストプロジェクトメンバー。専門はトップアスリートのコンディショニングおよび運動生理学。国立スポーツ科学センター在籍時には東京五輪に向けた暑熱対策プロジェクトを立ち上げ、多くの競技団体やトップアスリートに対し、暑熱対策に関する医化学的なサポートを行った。日本サッカー協会公認A級コーチ、アジアサッカー連盟公認フィットネスコーチレベル2、CSCS(NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)。著書に『暑さを味方につける[HEAT]トレーニング』(扶桑社)がある。

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(博士(スポーツ医学) 中村 大輔)

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