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「なんで卵は火にかけると固まるんだろう」理科が強い子の親は料理中の"ひとりごと"がすごい

プレジデントオンライン / 2022年8月10日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ruiruito

医師、エンジニア、AI技術者……理系人材へのニーズは高い。わが子を理系に強くするには算数強化だけでは足りない。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「理科が強い子は中学入試でアドバンテージになる。理科力のある子の親は、日常生活の中で自然に動植物への興味や化学、物理などへの関心を高めるような働きかけをしている」という――。

■ダンゴムシ、クモの糸…、子どもの観察を邪魔しない

中学入試において、思考力が必要な算数や国語と比べて、理科は暗記科目と軽視されがちだ。

しかし、近年の理科入試の傾向を見ると、単に知識を問うだけの問題は消え、初めて見る現象の原因をその場で考えさせる問題が急増している。それも日常生活での経験が材料に使われることが多い。

こうした問題を前にしたときにアドバンテージになるのが、幼い頃からの理科への興味・関心だ。

ひとくちに理科といっても、理科で扱う内容は幅が広い。植物や動物に興味を持つ子もいれば、ものの仕組みといった物理分野や、性質の変化といった化学分野に興味を持つ子もいる。動植物に興味を持つ子は、観察が好きだ。

アリの行列や、クモの糸にかかった虫などを飽きずにずっと見ている。「なぜ、そんなことを?」と親は思うかもしれないが、答えはシンプル。見ているのが楽しくて仕方がないからだ。ところが、多くの親は「そんなのいつまでも見ていないの! 早く行くわよ!」と中断させてしまう。そうやって親から邪魔された子供たちは、次第に興味を失っていく。

わが子を理科好きにしたければ、親は我慢が必要だ。仕事をして、家のことをやって、と忙しいのはわかる。これらをスムーズに進めていくには、「待っていられない」という気持ちも理解できる。

だが、大人の都合で、子供の興味を中断させてしまうと、理科好きには育たない。幼い子供は好奇心の塊だ。見るもの、触れるもの何にでも興味を持ち、「なぜ?」と知りたがる。子供が「なぜ?」と聞いてきたら、親はできるだけその「なぜ」に付き合ってあげてほしい。

子供の観察力は侮れない。なかには親でも答えられないこともあるだろう。そんなときは親子で一緒に調べてみる。それでも分からないときは「よくそんな違いに気づけたね! 将来、虫博士になれるかもしれないね!」と大いにほめてあげよう。必ずしも正しい答えを教えてあげる必要はない。子供の興味を妨げず、肯定的に受け止めてあげれば、それでいい。

■物理好きな子の第一歩はボールペンを壊す

子供がものを組み立てるのを好んだり、分解するのを面白がったりしたら、チャンスと捉えよう。わが子を物理に強くしたければ、ものを壊されるのは覚悟して、どんどんやらせてみることだ。

物理好きになる第一歩は、ボールペンを壊すこと。理系に強い人なら、子供の頃に一度はやったことがあるのではないだろうか。ここでも「そんなことをしちゃダメよ!」と、親は遮ってはいけない。子供がどうやって組み立てるのか、少し離れたところで見守ってあげてほしい。この時間こそが、頭をフルに働かせている状態だからだ。

なかなかうまくいかずに困っていたら、少しだけ手助けをしてあげ、最終的には自分でやり遂げたと思えるように体験させる。すると、ものづくりの楽しさを知り、「これってどういう仕組みになっているのだろう?」と構造にも関心を持つようになる。「この小さなバネはなぜあるんだろうね?」といった問いかけが大切なのだ。

ものづくりに失敗はつきものだ。今の時代の子育ては、「失敗させてはいけない」「危ない目に遭わせてはいけない」と親が何でも先回りしてしまうため、子供は失敗を経験する機会が少ない。

3年生の理科で「電流のはたらき」を学習する。乾電池と豆電球のキットを持ち帰り、「家で実験してみよう」と宿題に出されることも多い。そのとき、多くの家庭では、「乾電池を1個つないだら灯りが点いたね。2個つないだらもっと明るくなったね」で終わってしまう。

フィラメント電球が光っている
写真=iStock.com/choness
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/choness

「それなら、3個つないでみたらどうなるのだろう?」と子供がやりたがったら、「危険だから」と言って止めないでほしい。直列に乾電池を3個つなげてみると、一瞬ピカッとものすごく明るくなって、パッと消える。明るさは電流の二乗に比例するため、乾電池を3個つなげると9倍の明るさになる。

しかし、電球のフィラメントはそこまでの耐久がなく、壊れてしまう。そんなときは、「だから言ったでしょ!」と子供を責めるのではなく、「次の日曜日に豆電球を買って来て、またいろいろやってみようよ!」と面白がってあげてほしい。すると、「失敗することはいけないことではないんだ」と肯定的に受け止められるようになり、「あれこれ試してみるのは面白いな」と思えるようになる。

わが子を物理好きにしたければ、親も安全に注意しながら試行錯誤する姿勢を見せてあげよう。一緒にロボットを作ってみるのもいいし、ラジオや時計を分解して組み立ててみるのもいい。組み立て家具の説明書を見ながら一緒に完成させるのもいいだろう。

家具やテレビなどの電化製品を買うと、業者に組み立てや設置まで頼むことができる。「面倒くさいから全部お願いしちゃおう」という家庭と、「一緒に組み立ててみようよ」という家庭では、どちらが理科好きになるかは一目瞭然。わが子を物理好きにしたければ、親自身も試行錯誤を楽しむことだ。

■料理をするときはひとりごとを言う

「うちの子は、理科にまったく興味がなくて……」という声を聞く。特に女の子の親に多い。しかし、女の子だからといって理科に興味がないわけではない。きっかけをつかめずにいるだけのように感じる。

理科に興味を示さない女の子におすすめしたいのが料理だ。ただ、そのときも勉強っぽい雰囲気にしてはいけない。卵焼きを作りながら、「なんで卵は火にかけると固まるんだろうね」と、親がひとりごとを言うようにつぶやく程度でいい。そして、子供が関心を示したら、「一緒に調べてみようか」と誘ってみる。

固ゆで卵の断面
写真=iStock.com/fordeno
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fordeno

料理は化学そのものだ。パンを作るときはベーキングパウダーを加えると膨らみ、保存食を作るときは塩が欠かせない。虫や動物、ものづくりには興味がない子でも、料理から理科好きになる子もいる。つまり、どの分野から入ってもいいのだ。何かをじっと観察したり、物事をじっくり取り組めたりする子は、共通性や違いに気づくことができる。実は、これが理科に強くなる大事な力。理科の知識を覚えるのに欠かせないのが「分類」だからだ。

■低学年までに理科を楽しんできた子は、受験勉強でも困らない

中学受験における理科の知識量は膨大だ。だが、幼少期や低学年の頃に、楽しく理科に触れてきた子は覚えるのに苦労しない。小さい時に体験したことが、「あ、あれはこういうことだったんだな」と授業の内容につながり、さらに楽しくなる。

ところが、受験勉強が始まる4年生以前に、まったく理科分野に触れてこなかった子は、「なぜそうなるのか?」という関係性が分からないまま、なじみのない言葉をただ覚えようとする。

知識だけを確認する一問一答の入試であれば、なんとか乗り切れるだろう。しかし、近年の入試は、名前や公式などの知識だけを問う問題はほぼ出題されず、「なぜそうなるのか?」と理由を書かせたり、実体験に基づいて考えされたりする問題が多い。

こうした問題に挑むときに、生きてくるのが幼少期からの経験だ。幼少期の興味が理科を好きになるきっかけとなり、幼少期に夢中になって取り組んだことが理科の問題を解くときのヒントになる。

近年、低学年からの塾通いが増加傾向にある。少しでも早く受験勉強に触れておくことで、受験に有利になると考える親は少なくない。しかし、私は低学年からの受験勉強の先取りには懐疑的だ。その時間をぜひ子供の興味の時間に充ててほしい。机上の勉強よりも、経験に勝るものはない。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)

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