餃子の王将、サイゼリヤ、マック…灘・開成・桜蔭・筑駒・渋幕の受験生の親が試験前夜に食べさせたもの調査
プレジデントオンライン / 2022年8月13日 11時15分
※本稿は、『プレジデントFamily 中学受験大百科2022』の一部を再編集したものです。
■計200組の合格家族に聞いた「合格メシ」の意外な共通点
灘、開成、桜蔭、筑駒、渋幕――。首都圏の超難関中学に合格した子供たちは、試験本番の前日に何を食べたのか。“合格メシ”はいったいどんなメニューなのか。
雑誌「プレジデントFamily」編集部では、長年、合否発表会場などで合格した家族に「どう勉強したか?」「親ががんばったことは?」といったアンケート取材をしてきた。2020年から2022年までの3年間はそれらの定番の質問のほかに、「前日には何を食べたか?」という項目も追加(本誌には家族写真とともにすべての回答を掲載)。集計してみると各校ごとの受験者家族に意外な共通点があることがわかった。
「プレジデントFamily」編集部で、この合格家族取材企画を担当した編集者は言う。
「ここ2年(2022、21年)は掲示板発表がありませんが、掲示板発表があったころは、掲示板の幕を外す瞬間に異様な緊張感が会場にみなぎっていました。また、塾と親御さんの親密感も独特で、長時間合格発表会場で話し合う姿を見ました。合否発表の瞬間はいつ見てもインパクトがあります。男泣きをしながらわが子を抱きしめる父親、うれしい悲鳴とともにわが子を抱きしめる母親、『これでパパの後輩になれた』と喜びを爆発させる子供……。合格家族の特徴を一言でいえば、その“親子仲の良さ”にあります」
では、仲の良い家族ではいったいどんな食事をしているのか。各校ごとの「合格メシ」の特徴を発表しよう。
■外食・弁当・テイクアウト率が高い灘
まず、関西の最難関男子校・灘中学校(以下、灘)から見ていこう。兵庫県神戸市にある同校は県外からの受験者が例年多いことで知られている。
まだコロナ禍が本格化する前の2020年(1月)はホテルに前泊して臨んだ受験生が多かったからか、外食やテイクアウトらしきメニューが目立った。内容は、「ホテルの洋食」と答えた人もいたが、多かったのは「餃子の王将」や「サイゼリヤ」などのお手頃価格のチェーン店。内容は、「蕎麦と牛丼のセット」「カツとじ膳」など男子ならではの肉系のメニューがズラリ。
一方、コロナ禍の2021、2022年は、県外受験者が減少。その影響か「ホテルの○○」といったホテル食を答えた人はいなかったが、弁当や外食、テイクアウト率は依然高かった。具体的には、「マクドナルドの○○」や「ホットドッグ」などのファストフード、「ハンバーグ定食」などの定食、「ピザ」「コンビニ弁当」など。やはり、「から揚げ弁当」「カツサンド」「カツ丼」「カツカレー」といった肉系、特にゲン担ぎの「カツ」メニューが目立った。
そのほか、家庭料理としてはシンプルに「納豆ご飯」「味噌汁」もあったが、「肉じゃが」や「ステーキ」「豚の生姜焼き」などの肉料理をメインにした夕飯も。
総じて、凝った手料理が少ない印象だ。親が夕飯づくりも惜しんで最後の受験準備にエネルギーを割いたことがうかがわれる。
■開成と筑駒、桜蔭は鍋が豪華
ところ変わって関東。男子御三家のひとつ・開成中学校(以下、開成)と、国立の最難関・筑波大学付属駒場中学校(以下、筑駒)はどうか。
こちらは灘に比べてホテル食は少なく、3年間通してホテル食を挙げたのは、筑駒の「ホテルのルームサービスのビーフカレー」のみ。「モスバーガー」や「コンビニのカツサンドとおにぎり」といったリーズナルブな外食や、受験生定番の「カツ」系の弁当など、テイクアウトも少なくなかった。中には、寸暇を惜しんでか「カップラーメン」で済ませた受験生も。
ただし、この二校に関しては全体的に多かったのが鍋ものやうどん、普段通りの和食、カレーなど。鍋ものの内容が、すき焼き、しゃぶしゃぶなど、水炊き、魚の鍋、ほうとうと、バラエティーに富んでいた。特に、すき焼きやしゃぶしゃぶは、開成、筑駒、後述する桜蔭に共通して多かった。
なお、前出の灘の受験生は、同じ鍋でもすき焼きやしゃぶしゃぶは見られず、地域柄か味噌鍋、そしてちゃんこ鍋、豆乳鍋が挙がっていた。また後述する渋幕に関しては、鍋料理が「ほうとう」のみ。関東のトップ高は男子校、女子校問わず、肉をふんだんに使う鍋がお好みなのだろうか。
いずれにせよ、開成も筑駒も、それほど凝った手料理が見られないのは灘と同じ。子供の人生に大きな影響を与える中学受験で、親はほどよく手間を省きながらも、肉で精をつけ、身体を温めて翌日最大のパフォーマンスを発揮させたいと願っているようだ。そして鍋を囲んで緊張する心をほぐしたい……。そんな親心が垣間見られる。
■洋食が目立つ桜蔭
続いて、女子の最難関である桜蔭中学校はどうか。まず、男子校や共学校にあったファストフードは皆無。また、ボリュームのある肉料理も男子校に比べて少なく、あったとしても、ゲン担ぎと思しき「カツ」系やステーキなどがちらほらみられる程度だ。
洋食の多さも、男子校には見られない特徴だ。「カルパッチョ」「ミネストローネ」「鮭のムニエル」「ロールキャベツ」「クリームシチュー」などなどバラエティーに富んでいた。また、「ケーキ」や「いちご」といった甘いものを挙げていたのも男子校にはない点。これまでがんばったご褒美か、好きな物を食べて本番に臨んでほしいという親心だろうか。
■「おうちごはん」が中心の渋幕
最後に紹介するのは、共学校の最難関である渋谷教育学園幕張中学校こと、渋幕だ。インタビューは他校より1年分少なく、コロナ以降の2021年、2022年の合格発表に実施。
前述の通り、2021年は新型コロナの影響で都道府県をまたぐ受験者が大きく減少した。親が在宅でテレワークをしている中、子供が1時間以上かけて満員電車に乗って通学することに違和感を覚える家庭が多かったからだと言われている。
その影響からか、千葉にある渋幕は、特に灘中学で多く見られたホテル食や外食にありがちなメニューがほとんどなかった。もちろん、うなぎやカツなど、テイクアウトらしいメニューも多かったが、基本的には家庭内で食べたことがうかがわれる食事内容だった。例えば、「カツ」系を含む肉料理、「カレー」「うどん」「普段通りの和食」などだ。
■なぜ「合格家族」の親は料理の手間を省くのか
総括すると、最難関中学5校の受験者が前日に食べた食事は、特段凝った手料理がほとんど見られなかった。それも、渋幕以外の男子校はファストフード含め肉系の外食やテイクアウト率が高く、一部の「寿司」「ステーキ」を除くと大半は大衆的なチェーン店やコンビニ弁当で安価に済ませていた。
ただ、手間を省きながらも、「エビフライ」「カレー」「ハンバーグ」など子供が好きそうなメニューをしっかり押さえている。そして「いつも通りの和食」や「鍋料理」など、栄養バランスを意識している様子も見逃せない。
要するに、親は手間を省くところはしっかり抜き、翌日の本番に向けた準備やメンタル面での支援に注力する。一方で、受験前日には子供が食べたいものを食べさせる。どこに軸足を置くかがしっかり分かっている親こそ、子を合格に導くことができるのかもしれない。
(プレジデントFamily編集部)
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