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「現代人は食後すぐに運動したほうがいい」循環器内科医がそう断言するワケ

プレジデントオンライン / 2022年8月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nd3000

血糖値を下げ、痩せやすい体をつくるにはどうすればいいのか。循環器内科医の池谷敏郎さんは「食後に運動を取り入れるのがお勧め。ダラダラと汗を流しながら行うような運動は必要ない。食後30分から1時間くらいの間に、1分程度、軽く体を動かすだけでいい」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

■ツラい運動は必要ない

血糖値を下げるためには、「食べ方」が重要ですが、もうひとつ、やっぱり大事なのが、運動です。

でも安心してください。ダラダラと汗を流しながら行うような運動ではありませんから。

血糖値を下げるための運動は、家の中で、イスに座ったままできる、ゆるいエクササイズで十分です。

ダイエットをしよう、健康のために運動しようと思い立って、ハァハァ言いながらランニングマシンの上を必死に走っている方、いますよね。

楽しんでやっているのであればいいのですが、健康のためにイヤイヤやっているのであれば、必要ありません。ツラい運動は続きませんから。

運動を始めようと思い立って、スポーツジムに入会したのに、「今日は疲れてる」「ちょっと忙しい」「天気が悪い」などと多彩な理由をつけてだんだん足が遠のき退会したこと、ありませんか? あるいは、ウォーキングを習慣にしようとシューズを買ったのに三日坊主で終わった、とか。患者さんのお話を聞いていても、そういう方がほとんどです。

重い腰を上げなくても気軽にできるエクササイズでなければ意味がありません。

それに、高血糖をはじめ生活習慣病を抱えて、血管や心臓にすでに問題が起きかかっている場合、ハードな運動はかえって体に負担をかけてしまいます。

■「食後に動くと消化に悪い」は大間違い

常識というのは時代とともに変わっていくものです。健康に関する常識も同じです。

「食後に動くと消化に悪い」

これも、過ぎ去りし時代の常識です。

食後は、消化のために胃腸まわりに血流が集まります。ところが、体を動かすと、筋肉にも血流がいき、胃腸まわりの血流が落ちるので、消化機能が落ちます。つまり、消化の邪魔をしてしまう。

だから、「食後は運動をしてはいけない」と、かつては言われていました。

でも、それは過食がなかった時代の作法なのです。

糖質をとりすぎて、血糖値も上がりやすくなっている現代人は、食後こそ、こまめに体を動かしたほうがいい。糖の吸収をちょっと邪魔するぐらいがちょうどいいのです。

なおかつ、体を動かすには、エネルギー源が必要です。そのエネルギー源として使われるのが糖です。筋肉を動かせば、余った糖が使われ、血糖値が下がります。

■おおげさな運動でなくてもいい

では、糖の吸収を邪魔したり糖を消費したりして血糖値の上昇をゆるやかにするには、どんな運動が効果的なのでしょうか。

それは、有酸素運動です。

「ジョギング? 水泳? ウォーキング?」などと思うかもしれませんが、そんな大げさな運動でなくても大丈夫です。その場でただウロウロするだけでもかまいません。昔は「消化に悪いからやめなさい」と言われていたことをやるわけです。

■「インスリンが効きやすい体」をつくる

食後に体を動かすことは、食後高血糖を防ぐ“特効薬”のようなものです。

さらに、運動には「インスリンが効きにくい」という体質を改善する効果もあります。

インスリンは出ているのに糖が細胞に取り込まれていかない、インスリンの効きが悪い状態を「インスリン抵抗性」と言います。

そのインスリン抵抗性の原因となるのが、内臓脂肪です。

食後に体を動かして血糖値の急上昇を抑えれば、インスリンの分泌も少なくてすみます。

インスリンは肥満ホルモンでもあり、余った糖を中性脂肪に替えて脂肪細胞にも蓄積させます。ということは、インスリンの分泌が減れば、脂肪の蓄積も減るということです。

結果、インスリン抵抗性が改善され、インスリンが効きやすい体になるのです。

また、インスリンが効きやすい体をつくるには、筋肉をつけることも大切です。

血糖値が上がってインスリンが「糖を取り込め!」と働きかけたときに、一番多く糖を取り込んでくれるのが全身の筋肉なので、筋肉が多いとインスリンが効きやすく、血糖値が下がりやすいのです。

ちなみに、筋肉をつけるのに必要な運動は、無酸素運動のほうです。

筋肉がつけば、基礎代謝も上がります。そうすると、同じ生活をしていてもエネルギーをより使うようになるので、やせやすくなります。

結局、血糖値を下げる努力は、やせる努力と同じなのです。

■運動で「貯める脂肪」を「燃やす脂肪」に変える

運動を行うことで、脂肪の性質も変わります。“太る脂肪”から、“やせる脂肪”に変わるのです。

池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)
池谷敏郎『血糖値はたった1分の習慣で下がる!』(秀和システム)

「え? やせる脂肪ってどういうこと?」と思いますよね。

脂肪には、「白色脂肪細胞」と「褐色(かっしょく)脂肪細胞」という性質の違う2種類があります。

白色脂肪は、中性脂肪を貯め込んでどんどん膨れていく脂肪です。脂肪と聞いて一般的にイメージされる、エネルギーの貯蔵庫が白色脂肪です。

一方、褐色脂肪は中性脂肪を燃焼して熱をつくります。

白色脂肪と褐色脂肪は、正反対の働きをするのです。

つまり、白色脂肪が増えれば太り、褐色脂肪が増えるとやせやすくなります。

ただ、褐色脂肪は大人になるにつれて少なくなり、40歳頃から急激に減り、60歳頃にはほとんどなくなってしまいます。これが、中高年になると太りやすい原因のひとつと言われています。

ところが、ここで朗報です。

効率よく有酸素運動を行うと、白色脂肪が褐色化することが分かってきました。

「ベージュ脂肪」といって、エネルギーを貯め込む貯蔵庫だった脂肪が、エネルギーを燃やし熱を作りだす脂肪に変化し、褐色脂肪と同じような働きをするようになるのです。そうすると内臓脂肪が減ってインスリン抵抗性が改善され、血糖値も下がりやすくなる。

運動で脂肪の性質が変わると聞くと、なんだかやる気になりませんか?

リモコンを手に家でテレビ鑑賞中
写真=iStock.com/StudioMikara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/StudioMikara

■ベストは「食後30分~1時間」

食べた後、イスに座ってじっとしていませんか?

あるいは、寝転がってテレビを見たり……。

テレビを見ながらでもいいので、体を動かせば、食後の糖の吸収がゆるやかになり、高血糖を防ぐことができます。

食べた糖質が体内でブドウ糖にまで分解されて、小腸から吸収されていくと、血管に入って血糖値が上がる。そのピークが、だいたい食後30分から1時間ぐらいです。

だから、食後30分から1時間は、食べすぎちゃった分を帳消しにできる、私たちに与えられたチャンスなのです。

血糖値の急上昇を防いで血管を守ることができれば、全身のコンディションの改善が期待できます。肌のコンディションも良くなります。

たった1分のエクササイズで、血管年齢も肌の若返りも期待できるのです。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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