グーグルは「圧倒的に重要」と重視…心理的安全性のある組織が自然と交わしている「あいさつ」の条件
プレジデントオンライン / 2022年8月18日 13時15分
※本稿は、原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■「5個以上で黄色信号」職場あるある10項目
突然ですが、チェックです!
あなたの職場で、次のような言葉が使われてはいませんか?
2.新しいアイデアが出てきたら、考えてくれた人にやってもらうのが一番なので「じゃあ、担当としてやっておいてね」と任せるようにしている
3.一度教えたことをまた聞かれたら「前にも言ったよね」と厳しく指導している
4.注意するとき「こんなこと言いたくないんだけど」と言うようにしている
5.自分の担当する仕事でトラブルがあっても、周りには迷惑をかけないよう「大丈夫です」と言い、まずは自分でなんとかできないかを考える
6.できなかったことに対して原因を究明し、理由を明確にするために「なんでできなかったの?」と聞くようにしている
7.チームで失敗が明らかになると、まず「誰の責任?」と責任の所在を明確にしている
8.後輩や部下から仕事の目的や、やる理由について質問されたら、チームワークを乱さないためにも「仕事なんだからそんなこと考えないでやるんだよ」と伝えている
9.新しく入ったメンバーには、まずは「会社のルールはこれだ」と、マニュアルや規程類をしっかり覚えるよう伝えている
10.途中から参加したプロジェクトの会議で上司に「何か意見ある?」と聞かれたが、まとはずれになってはいけないので「特にありません」「いいと思います」と答えた
実はこれら、日常的に使っていると心理的安全性を下げる言葉たちです。普段無意識に使っていたり、そんなつもりはなく使っていたりする言葉が、心理的安全性を下げているかもしれません。
5個以上該当する場合は黄色信号。本稿でお伝えする言葉に言い換えていきましょう!
■ただの「仲良し集団」を指す言葉ではない
心理的安全性という言葉が登場したのは、半世紀以上も前の1965年のこと。もとは組織に使われる言葉でした。その後、現在ハーバード大学の教授を務めるエドモンドソンがチームに応用し「対人関係のリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」と定義しています。さらに、米グーグル社が「プロジェクト・アリストテレス」の中で再発見。チームにとって「圧倒的に重要」と結論づけ、注目を集めました。
心理的安全性が確保されていると、ミスの報告のように話しにくいことでも素早く情報共有ができたり、新しいことへの挑戦が増えたり、働くことで満足感や充足感に満たされるようになります。すると個々人の仕事の質は上がり、チームとしての学習が促進され、結果的にチーム全体の成果も向上していく、というわけです。
この、成果や生産性につながるという心理的安全性。よく「仲が良いってこと?」と捉えられがちですが、その本当のところはどうなのでしょうか? もちろん、仲が悪いことが生産性に悪影響を及ぼすことは明らかでしょう。けれども、心理的安全性は、単にチームメンバーの仲が良いということでもありません。仲が良すぎる状態で、現状の人間関係を維持することが優先され、言うべきことが言えない場合も成果は上がりません。
心理的安全性が高いチームとは、仲が「悪すぎる」でも「良すぎる」でもなく、目指すゴールや成果のために「健全な意見の衝突」が起こせるチームです。
■心理的安全性の高い組織の共通点とは…
「心理的安全性が大事なのはわかりました。でも、何から手をつければいいのでしょう?」
最近はそんな声を数多くいただくのですが、まずは、職場で使う言葉から変えましょうというのが、一番シンプルで効果的な始め方です。本稿では、日本の職場でよくある場面を厳選し、「言葉」という媒体を通して心理的安全性を高めていく手法をお伝えします。
そのとき鍵になるのが「心理的安全性をつくる4つの因子」です。
私がシニアコンサルタントを務めるZENTechは、日本の組織文化・働き方・職場環境に合わせた「日本版・心理的安全性」づくりに取り組んできました。独自のサーベイシステムSAFETYZONEを開発し、日本の組織を6000チーム以上も計測。検証を重ねたところ、心理的安全性を高めるために重要な因子(要素)を見出しました。
■組織力を向上させる「声がけ」の4つのポイント
それが「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子です。それぞれについてご説明します。
●「話しやすさ」因子…私は違う意見があるのですが!
雑談を含め、情報共有が頻繁に行われる環境はもちろん大切です。「話しやすさ」因子では、そのような情報共有の「量」に加えて「質」も大切です。
例えばあえての反対意見や、従来のサービスがうまくいっていない兆候など、あなたのチームは、「言いにくいけれど、仕事を前に進めるうえで大切なこと」「不都合だけど、しかし必要な真実」が発言され、共有され、それが歓迎される環境でしょうか?
●「助け合い」因子…困ったことが起きました! 教えてくれてありがとう!
チームワークの根本となる因子で、お互いに助け合える環境のことです。日常的にリーダーや同僚と相談ができ、ミスやトラブルがあったとき、失敗した個人を責めるのではなく、解決・改善に向けて建設的な対話ができる状態です。
特に、あなたがリーダーや先輩の立場であれば、「知らないことをメンバー・後輩に率直に聞いたり、フラットに助けを求めることができるか?」をふりかえってみてください。
●「挑戦」因子…ナイストライ! 試したこと自体が素晴らしい!
「挑戦」を掲げる組織で、実際に歓迎されているのは多くの場合、挑戦ではなく成功です。けれども成功が保証されていないものに取り組むのが挑戦であって、失敗はつきものです。挑戦の結果が判明する前に、まずは「挑戦したこと、そのもの」を歓迎できる周囲の環境が重要です。この挑戦因子が高いと、アイデアや企画が出やすくなり、挑戦そのものの数、いわばチームの挑戦の総量を増やすことができるでしょう。
●「新奇歓迎」因子…ダイバーシティ&インクルージョン。その視点はなかったよ!
「人」にフォーカスした因子です。その組織やチーム、時に社会や業界の「常識」にとらわれず、メンバー一人ひとりの強みや個性、新しい視点や発想を受け入れ、「まとはずれ」をむしろ歓迎する環境です。多様性が、早期に包摂され、うまく活用することに優れた組織・チームです。
![心理的安全性をつくる「4つの因子」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/8/1200wm/img_48bc6ecd5a4d3b79bb8fd720d6c30610600477.jpg)
これら心理的安全性4つの因子「話助挑新(わじょちょうしん)」を意識しながら、職場で使う言葉を変えていきましょう。
■「おはよう」に添えるだけで効果が上がる一言がある
↓
○ ○○さん、おはようございます
では、実際に心理的安全性をつくるための「言い換え」の例を紹介していきます。
1日の仕事の始まりは、挨拶から。多くの職場で当たり前に実践されていると思いますが、そこにひと工夫加えることで、心理的安全性を高めるシンプルな方法があります。
それが、「挨拶時に、相手の名前を添える」ことです。たったひと言、名前をつけ足すだけで「誰か来たからみんなに挨拶」ではなく、「他でもない自分に話しかけられている」と感じられ、チーム全員から自然と話が出やすくなります。
実際、上司からの「名前つきの言葉がけ」によって、「挨拶をきっかけに部下の側から発言や相談をされることが増えた」という多くの報告があります。
A「○○さん、おはようございます」
B「課長、おはようございます。そうだ、ちょっと聞いてくださいよ……」
挨拶だけではなく、会議などの場でも「誰か意見ある?」という投げかけの代わりに「○○さんは、どう思いますか?」と、部下の発言の「きっかけを促す言葉」として使うことも効果的でしょう。積み重ねていけば報告や相談が増え、トラブルの予防や早期発見、燃え広がる前の解決もしやすくなります。
■挨拶は「若者から、目上にするもの」ではない
意外に思われるかもしれませんが、重要なのは挨拶を上司やリーダーから率先してすることです。もともと「挨拶」という言葉は禅の言葉「一挨一拶」に由来します。「挨」と「拶」にはどちらも「押す・迫る」という意味があり、師匠が弟子の修行の進み具合や状態を確認するための「問答」をすることを意味しています。
![原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/1200wm/img_2d82f49c6b1325a87d0f9cf58180af9c294473.jpg)
挨拶というと「目下や若者から、目上の人に挨拶する」というイメージがありますが、語源からすれば、上司・リーダーから、部下・メンバーの状態を知るために挨拶すること、そして相手の返事のトーンや反応を見て、状態を理解しようとすることが重要なんですね。目上の方から進んで挨拶できるチームこそ、「話しやすさ」が高いチームです。
皆さんも右も左もわからない新人や若手だった頃、先輩やベテランの方から「○○さん、おはよう!」とにこやかに声をかけられて、ホッとした経験はないでしょうか。もしなかったとしても、そうしてもらえていたらもっと早くチームの一員になれたのに、と思えるのではないでしょうか。
心理的安全性の4つの因子「話助挑新」のうち、土台となるのが「話しやすさ」因子です。その「話しやすさ」因子を高めるため、一番カンタンですぐに始められ、効果が大きいのが、ここで紹介した「名前をつけて挨拶」です。さっそく今日の会議や、明日の朝から、試してみましょう。
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プロコーチ、ZENTech シニアコンサルタント
スターツグループで営業・人事・コンプライアンス部門での経験を経て、2020年プロフェッショナルコーチとして独立。現在はZENTechシニアコンサルタントとして心理的安全性を切り口にコンプライアンス意識の浸透・ダイバーシティの醸成や、デジタルトランスフォーメーションの土台となる組織づくりを支援。「組織・チームで使う言葉」をテーマにした研修を行っている。
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(プロコーチ、ZENTech シニアコンサルタント 原田 将嗣)
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