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「大変だけど頑張ろう」はむしろ逆効果…チームのやる気を殺してしまう残念な上司の2つの口癖

プレジデントオンライン / 2022年8月19日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/grinvalds

チームの生産性を高めるには、どうすればいいか。プロコーチの原田将嗣さんは「『心理的安全性』を確保することが重要だ。たとえば上司の立場から『大変だけど頑張ろう』と発言するべきではない。それは安全性を脅かしてしまう」という――。

※本稿は、原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■「提案しなきゃよかった」を生み出す上司の声がけ

× じゃあ○○さん、担当よろしく

○ どう分担していこうか

改善の提案があったとき、あなたのチームはどんな反応をしていますか?

NG例
A「今までにお客さまに提案したプレゼン資料を、キーワードやポイントで検索できるようになったら、プレゼン資料をつくるときに便利になると思うのですが……」
B「たしかにいいね。じゃあ○○さん、よろしく頼むよ」
A「はい……(ただでさえ忙しいのに、余計な仕事を増やしてしまった……)」

発案者がその業務を担当し、遂行する。職場でよく見られる、ごく当たり前の風景ですが、これが続くと段々とチームの中で改善案・アイデアが出なくなってしまいます。

一体、なぜでしょう? ここでは行動分析学が参考になります。

行動分析学では、行動の直後に「Happyなみかえり」があればその行動が増え、「Unhappyなみかえり=罰」があれば、行動のリピートが減ると考えます。この場面では「改善の提案をする」という行動に対して「褒められもせず、他の仕事の調整もなく、ただ自分の仕事が増える」という「Unhappyなみかえり=罰」が与えられています。いわば「言ったもん負け」の状態です。

■「ハッピーなみかえり」を生む声のかけ方

そうすると、改善アイデアが思い浮かんでも「また仕事が増えるだけだ……やめておこう」と、提案という行動がリピートされなくなってしまいます。挙げ句、挑戦・改善などしない、現状維持を最優先する組織に。

そうではなく、メンバーのちょっとした気づきや閃き、アイデアが活発に共有され、その中から筋の良いアイデアが実際に実行に移され、実現するようなチャレンジに満ちた職場、つまり「チャレンジフルなチーム」を目指しましょう。

OK例
A「今までにお客さまに提案したプレゼン資料を、キーワードやポイントで検索できるようになったら、プレゼン資料をつくるときに便利になると思うのですが……」
B「ナイスアイデア! どう分担していこうか」
A「はい! 今度の定例でみんなに共有してみます」

■発案者任せにしない“私たち視点”という考え方

ひとりが発信したアイデアや提案に対しては「発信した個人の課題・タスク」ではなく、「みんなの課題」「チームの課題」に変えることが重要です。この視点の転換を「私たち視点を持つ」と呼びます。

次の問いを考えてみてください。あなたがメンバーの立場で、新しいアイデアや企画を発案。「こうしたらいいと思います!」と言ったら、どうなるでしょうか?

もし、この問いへの答えが「いろんな角度からアイデアをもらえたり、みんなで検討できたり、分担して形にできそう!」「アイデアを言ってよかった! また言おう!」と感じられるものであれば大丈夫。「私たち視点」が持てています。

この「私たち」には、ふたつの大切なポイントがあります。ひとつは、みんなで意見を出し合ったり、分担して遂行したりと自分事ならぬ「自分たち事・チーム事」としてアイデアを形にする点です。もうひとつ見過ごされがちなのが「発案や挑戦にHappyなみかえりを提示するのは、周囲の私たちの仕事」という点です。リーダーだけではない、周りの私たちの一つひとつの反応が、チームが挑戦する雰囲気の鍵を握っているのです。

■業務が増えてもチームを疲弊させない方法

× 大変だけど頑張ろう

○ やめたほうがいい仕事ってなんだろう

こと業務改善がテーマとなると、「これをしたほうがいい」「あれもするべき」と業務が増える方向に話が展開していくことが多いと思います。現状の業務はそのままで、そこに追加する形で手間が増え、チーム全体の仕事量が増え忙しくなったものの、目覚ましい結果にはつながらず、最後は全員が疲弊……。あなたにもそんな経験はありませんか。

何かを変えない限り、チームのリソースが自然と増えることはありませんよね。メンバー各自の能力、モチベーション、時間、予算……これらが限られている以上、業務を増やすなら、今ある業務を減らすことも併せて考える。それが、ほんらい理に適った考え方だと思います。

しかし、メンバーからやめたほうがいいことを指摘するのは難しいもの。「これはもう、やめるべきでは?」と発言したら、周囲から「やる気がない」と曲解されてしまうかもしれません。やめたときのリスクやハレーションも読み切れません。何より、そのメンバーは今日まで「やめたほうがいいこと」に取り組んできたのです。「これまで、自身や仲間が無駄なことをしていた」と思いたい人などいないでしょう。

■リーダーの役割は「やめるきっかけ」をつくること

だからこそ「やめる」は、リーダーから切り出し、きっかけをつくることが重要です。適宜リーダーから「やめたほうがいいことってなんだろう」と投げかけてみましょう。

幸せなビジネスマンは、オフィスで肩をたたく
写真=iStock.com/Viacheslav Peretiatko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Viacheslav Peretiatko
OK例
A「これから新規加盟店が1店舗増えるという連絡がありました。都内の大型店です。私も、ブランド強化という意味で、歓迎したいことだと思っています」
B「はい! われわれにとって、念願の都内初出店ですね!」
A「そこで「やめたほうがいい』タスクを洗い出したいと思います」
B「え? 『やめたほうがいい』ってどういうことですか?」
A「出店後、私たちの稼働やタスクは、今よりかなり多くなることが予想されます。連絡調整業務はもちろん、時にはあちらの店舗スタッフのトレーニングや、ヘルプでの派遣も想定されます。とはいえ、私たちチームの人員がすぐに増えるわけではありません。やめることができるタスクがないか、現在の業務フローを見直してみましょう」
B「えーと……(それでも言いづらそう)」
A「もし、何かひとつ、絶対にやめないといけないとしたら、何をやめますか?」
B「……月次の、××報告書の○○って、実は誰も見ていない数字なんじゃないかなと」

■「頑張りすぎ社員」には早めの「助け舟」を

もちろん「業務改善」や「新しい動き」を否定するわけではありません。より万全な体制で新しいことを試し、受け入れていくために「やめることを見つける」イメージです。

原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)
原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)

この言葉はメンバーを守ることが目的である点にも注目です。メンバーの負荷が過重になるのを未然に防ぐため、あえて「やめたほうがいいことを探している」わけです。倒れてしまう前に、早期に負荷を減らしておいたほうがいいでしょう。

メンバーが、せっかく頑張ってくれているからこそ、言いづらい場合もあるでしょう。そんなときは「○○さんの時間と才能を、もっと重要なところに使ってもらいたいから……」といった枕詞をつけて、声かけをしてみてもいいでしょう。

リーダーとしては、時に上司と掛け合うことも視野に入れてください。私たちのチームでも、会社の大きなイベントの際に経営陣と話し「2週間、新規の商談を止めよう!」という営業部らしからぬ意思決定をしたこともあります。それでも忙しかったイベントをなんとか成功裏に終えたあと、経営陣から「あれは英断だった」と絶賛されました。

私たちが目指す心理的安全性の高いチームは、問題やリスクに気づいたとき、メンバーが自発的に声を上げられるチームです。そこに至る過程では、リーダーが先回りして「やめたほうがいいことって、なんだろう?」と、助け船を出していきましょう。

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原田 将嗣(はらだ・まさし)
プロコーチ、ZENTech シニアコンサルタント
スターツグループで営業・人事・コンプライアンス部門での経験を経て、2020年プロフェッショナルコーチとして独立。現在はZENTechシニアコンサルタントとして心理的安全性を切り口にコンプライアンス意識の浸透・ダイバーシティの醸成や、デジタルトランスフォーメーションの土台となる組織づくりを支援。「組織・チームで使う言葉」をテーマにした研修を行っている。

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(プロコーチ、ZENTech シニアコンサルタント 原田 将嗣)

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