「勉強する=考える」は大間違い…現役東大生が効率的な学習のため最初に削った"ある時間"
プレジデントオンライン / 2022年8月25日 13時15分
※本稿は、布施川天馬『人生を切りひらく 最高の自宅勉強法』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。
■「一夜漬け」自体は悪い勉強法ではない
みなさんは「徹夜でテスト対策をしたけど間に合わなかった……」なんて経験はありませんか? 実際、僕が高校生のときなどは、周りに一夜漬けしている人がたくさんいましたが、ほとんどの人が失敗していました。
では一夜漬けが悪いかというと、そうではありません。これは、ずばり時間の「管理能力」と「使用能力」が身についていないからなんです。一夜漬けだろうがなんだろうが、点数が取れればテストは乗り越えられます。問題は「一夜漬けをしたこと」ではなく、「点数が取れなかったこと」にあります。
ですから、一夜漬け問題については、「どうして試験で力が発揮できないような一夜漬けをしてしまったのか」を考えるべきなんです。まずは、「自分は一晩という時間を計画的に使えたのだろうか」という点から検証を進めるべきでしょう。
■高得点を取る人が日常的にやっている時間管理
それでは、試験勉強や受験勉強をするとき、どのように計画を立てるか考えてみましょう。おそらく、試験対策に失敗する人の多くは「○日前から(もしくは○時間前から)準備を始めればいいや」と考えているのではないでしょうか。これでは失敗します。そうではなくて、「教科書のここからここまでが範囲で、試験まであと○日だから、1日に△ページずつ復習しないと」と考えなくてはいけません。この計画を立てる力こそが「管理能力」です。「テストで点数が取れる人」はこういうことを日常的にやっています。
定期試験対策というところから、もう少しだけ範囲を広めて、次は受験勉強について考えてみましょう。とはいえ、受験勉強でもやることはほとんど同じ。「この大学に受かるためには、これだけの参考書をいつまでに終わらせなければならない」という見通しを立てたうえで勉強します。ただし、定期試験対策よりも、こなすべき量が比べものにならないほど多くなるため、受験は大変だといわれているのです。
■期限までの日数に9掛けした値が「実際に頑張れる日」
受験に勝つためにまずやるべきことは、入試の日まで具体的に何日あるのか調べることです。具体的に何日間の猶予があるのかわからないと、計画の立てようもありません。
ただし、その日数をそのまま使ってはいけません。具合の悪い日や、サボりたくなる日が確実に出てくるからです。僕は、出てきた日にちに0.9をかけ、出てきた値が、実際に頑張れる日だと考えています。
「毎日やろう」といって本当に毎日できる人はごく少数。それなら、最初からサボるのも計算に入れて動いたほうが、後から慌てなくてすみます。
本番までに残された日は○日。この日までに終わらせなくてはいけないのは○○と△△と……とリストアップしていきます。とはいえ、入試までに終わらせることなんて、あまりに多すぎます。なので、次に「○○は夏休みまでにやりたいけど、△△は冬まででいいや」と期限を決め、それぞれについて逆算して消化する計画を立てていくのです。こうすることで、1日あたりのやるべきことや勉強量がわかります。
このように、勉強量などは逆算して考えて、それをどんどん細かく落とし込み、1日当たりの量を確定させるべきなんです。具体的に何をやるべきかは、学校の先生や先輩などに相談するようにしましょう。自分の思っていた以上の学習量が必要だったとなると悲惨なので、くれぐれも、自分ひとりで決めないように。最低でも自分と、先輩方や先生ら2名によるトリプルチェックを入れておくといいですね。
■どれだけ勉強したかと高得点を取ることは全く関係ない
さて、時間の管理能力が大切なことはこれでおわかりいただけたかと思います。ですが、管理するだけでは不十分。時間を作ったら、しっかりと計画立てて時間を運用しなければ、無駄になってしまいます。そのために、時間をどう使っていくのかという「使用能力」が必要になります。
テストで点数を取ることと、どれだけ勉強を頑張ったかは、本来全く関係がありません。どれだけ勉強をサボろうと、テストでいい点が取れれば、それでいいわけです。テストで点数を取るには、知識や考え方をどれだけ理解しているかという結果が必要なのであり、理解するまでの努力の過程は、残念ながら問題になりません。
そして、勉強には、効率の良い方法と効率の悪い方法があります。たとえば英語のテストに向けて「英単語100個覚えた!」という人がいたとして、それが1時間で覚えたのか、1日で覚えたのかでだいぶ評価が変わってきます。英単語を100個も覚えるのは立派なことですが、それに1日もかけるのは、ちょっと非効率。それなら英単語はほどほどで終わらせておいて、残りの時間で別のことを勉強したほうが、最終的な得点率は高くなります。
言いすぎかもしれませんが、効率の悪い方法で頑張るのは時間の無駄遣いになってしまうかもしれません。せっかく時間を管理して使える時間を増やしても、無駄遣いしては意味がありません。どれだけ少ない時間で、どれだけ多くの情報を取り入れることができるかに、自習能力の神髄があるのです。
■最も無駄な時間は「考える時間」
みなさんは「考える時間」は有意義だと思いますか? 僕は受験勉強を始める前はそう思っていたので、わからないことがあればなるべく自分で考えて答えを出そうとしていました。しかし、これは大間違い。実はこの「考える時間」こそ削るべき無駄な時間なのです。
誤解のないように補足しておくと、考えること自体は大変意味のある行いです。しかし、受験勉強においては、話は別。一秒を争う戦いである受験では、「考える」ことは無駄な時間になりかねないのです。
そもそも「考える」とはどのような状況を指すのでしょうか。あえて言うならば、「考えるってどういうことだろう」と思う今の行動がまさにその状況だといえますが、これだって答えになっていませんよね。
僕なりに「考える」ということを定義するなら、「知っていることや、わかっていることを組み合わせて、新しい情報にたどり着くこと」といえます。既に持っている情報や知識などを活用し、組み合わせることで、新たな地平へたどり着くための運動を「考える」というのです。
■調べれば済むことをいつまでも考えている人は意外に多い
効率よく考えるためには、「答えを出すための道具をもっているか」を確かめなくてはいけません。たとえば、2次方程式の解を求めなさいと言われても、「2次方程式の解の公式」を知らなければ、到底無理な話でしょう。「解の公式」に自力でたどり着いた過去の天才たちのように、死ぬ気で考えればなんとかなるのかもしれません。ですが、そんなことをする時間があるなら、教科書をめくって解の公式を調べたほうがよっぽど早く答えにたどり着けますよね。
調べれば済むような問題をいつまでも腕組みして考え続ける……。これは本当に時間の無駄。「まさかそんなこと」と思うかもしれませんが、僕は実際に「調べればわかること」を前にして考え続ける受験生を何人も見てきました。
これは、「自分が何につまずいているのか」が理解できていなければ誰にでも起こりうることなんです。だからこそ、考え始める前に「自分は何がわかっていないのか」をしっかり確認しなくてはいけません。
■考えることの本質は「思考を整理すること」
ところでみなさん、「わからないという前に自分で考えろ」と言われた経験はありませんか? 「わからないから聞いているのに……」と思いますよね。ですが、「わからない」とだけ言われても、聞かれたほうだって困ってしまうもの。教える側もどこがわからないのか伝えてくれないと、何をどう教えていいかわかりません。だから、僕は絶対に「どこがわかってないのかまとめてきなさい」と付け加えて「考えてきなさい」と伝えるようにしています。
受験における「効率よく考える方法」とは、目の前の情報や手がかりを「わかっていること」と「わからないこと」に振りわけ、「わからないこと」について調べるということです。そこで、調べたり、人に聞いたりしてもわからないことが出てきたときに、初めて「頭のなかで考える」という作業に入ります。
「考える」というと万能なイメージを持ってしまうかもしれませんが、そうではありません。「考える」という言葉が、具体的に何をするのか示されていないからこそ、「考える」となったときには、自ら「自分が今から何をするのか」を意識して実行していかなくてはいけないのです。
僕は、「考える」最中に手が体感で3分以上止まってしまったと感じたら、何でもいいのでわかっていることを書き出すようにしていました。考えることの本質は思考の整理なので、単純にわかっていることを書き出していくだけでも、驚くほどに思考が進むことがよくあるのです。みなさんも、「考える」の沼にハマってしまったときには、一度手を動かしたり、音読したりして、考えていることを頭の中から引っ張り出してあげると、効率がよくなりますよ。
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現役東大生ライター
世帯年収300万円台の家庭に生まれ、金銭的余裕がない中で東京大学文科三類に合格した経験を書いた『東大式節約勉強法 世帯年収300万円台で東大に合格できた理由』の著者。最新刊は『東大式時間術』。
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(現役東大生ライター 布施川 天馬)
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