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「よくぞ、聞いてくれた!」会議でメンバーから絶賛される最強の"素人質問"

プレジデントオンライン / 2022年8月25日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SB

チームが当たり前だと思っている前提や価値基準、暗黙のルールなどに違和感や疑問を持ったらどうすればよいのだろうか。東京大学大学院情報学環特任助教である安斎勇樹さんは「まるで素人かのような、素朴な疑問をぶつけることでチームの認識をすり合わせることができる」という――。

※本稿は、安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■チームの認識をすり合わせる「素人質問」

素人質問とは、チームにおいて前提となっている知識や情報に対して、まるで素人かのような、素朴な疑問をぶつけることです。

チームのみんなが当たり前だと思っている前提、価値基準、暗黙のルール、業界の常識、専門用語などに対して、ちょっとでも疑問を感じたら、その意味について確認をするのです。「これ、本当にみんなわかっているのかな?」と違和感を感じたら、そこにツッコミをいれていくイメージです。定型文としては、以下のような例が挙げられます。

素人質問の質問パターン

「すみません、これどういう意味ですか?」
「初歩的な質問なのですが、これはどういうことですか?」
「理解不足で申し訳ないのですが、このプロジェクトの目的はなんですか?」

たとえば、リニューアルプロジェクトを進めているヘルスケア領域の消費財メーカーでは、以下のような質問が考えられます。

「すみません、一応確認なのですが、なんでリニューアルが必要なんでしたっけ?」
「初歩的な質問なのですが、そもそも「健康的な美しさ」ってどういうことですか?」
「ところで、どうして研究開発部門とマーケティング部門で協力するんでしたっけ?」
「このプロジェクトって、とにかく目新しいアイデアがでればOKなんですか?」

これらの質問は、下手をすると「お前、話を聞いていたのか」と思われかねない、大前提の確認です。しかしチームに問題が起きているとき、このような「初歩的な大前提」のところで、認識がすり合わされていない場合があります。こうした前提に実は深く納得していないまま「正直、まだ腑に落ちないところがあるけど、誰も質問しないし、きっとみんなわかっているんだろうな……」と、惰性で仕事が進行していくことは、少なくないはずです。この状態を放置すると、チームの現代病をじわじわ引き起こしていきます。

このような暗黙の前提を、率先して確認する。これが、素人質問です。

■立場と言い訳を利用して、「AKY」に問いかける

少し前に「AKY」という言葉が流行りました。「空気・読めない」の頭文字を取った「KY」の派生語で、「あえて・空気・読まない」態度を表した俗語です。集団において、周囲の雰囲気や文脈に流されずに逸脱したふるまいをする態度を指しています。「素人質問」という質問のパターンは、AKYを活用した問いかけの戦略と言えるでしょう。

直球で投げると顰蹙(ひんしゅく)を買いそうな場合は、枕詞に付け加えるお詫びが重要です。

「すみません、一応確認なのですが~」
「当たり前のことを聞くかもしれないのですが~」
「理解不足で、間抜けな質問をするのですが~」

素人質問は、上司や先輩に「そんなことも知らないのか」と諭されて終了、というリスクもあります。けれども、うまく曖昧だった前提を指摘できれば、同じことで内心モヤモヤしていたチームメイトからは「よくぞ質問してくれた!」と、絶賛されることでしょう。リスクをうまく取るためにも「もし、どうしようもないことを聞いていたら、すみません」という言い訳をうまく使うのが賢いやり方です。

■素人質問は「自分なりの意見を添える」ことで角が立たない

私自身、クライアントチームのミーティングをファシリテートする場合は、素人質問を多用します。前回の記事で紹介した、「人工知能(AI)を活用した未来のカーナビ」にとらわれていた自動車の周辺機器メーカーのプロジェクトの事例を思い出してください。このときも、勇気を出して「みなさんは、なぜカーナビを作るのですか?」というAKYの素人質問をぶつけたことが、チームの衝動に火をつけるトリガーとなりました。

自分に話している男性
写真=iStock.com/Minerva Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Minerva Studio

これは、私自身が運転免許すら持っていない、自動車に関する本当の「素人」で、かつチームの「第三者」であるからやりやすかった問いかけでもあります。

しかし内部メンバーでも、十分に素人質問を使いこなすことが可能です。

特にチームの若手メンバーや、在籍歴が浅い新参に近いメンバーは、その立場を利用して「素人質問」を投げかけるとよいでしょう。

ただし、わからないことを、自分で考えずになんでもかんでも他人に質問する態度は、人によっては「怠惰なふるまいだ」と捉える人もいます。そこで、以下のように自分なりの意見を添えておくと、角が立たないように素人質問を投げかけられます。

「すみません、一応前提の確認なのですが、このプロジェクトの目標は『とにかく目新しいリニューアルアイデアを出す』という理解であっていますか? いただいた資料を読み込んだのですが、よくわからなくて……」

■マネジメント層が素人質問をするときは「枕詞」に注意

若手でなく、シニアメンバーやマネジメント層であったとしても、枕詞に注意すれば十分に「素人」に戻ることができます。

コミュニケーションビジネスパーソン
写真=iStock.com/emma
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/emma

「ごめん、前提がわからなくなっちゃったのだけど、これってどういうことでしたっけ?」
「古参の自分が言うのもなんなのだけれど、この会社ってどうして『健康的な美しさ』にこだわってきたのでしょうね?」

安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

マネージャーとしての説明責任を果たせなくなってしまっては本末転倒ですが、むしろ立場が上の人が率先して疑問を呈してくれることで、「実はよくわからなかったけど、聞きにくかった」という空気を一気に打破できるかもしれません。

立場が上だからといって、正解を知っているわけではないということを場に共有することで、チームの心理的安全性を高められるのです。チームにおいては誰もが「素人」として、前提に疑問を投げかける権利を持っていることを、覚えておいてください。

余談ですが、「素人質問で恐縮ですが」という枕詞は、学会発表でもよく耳にするフレーズでもあります。この場合、教授などの専門家が、相手の初歩的な不備を指摘するときに使われます。くれぐれも、相手を攻撃する嫌味な使い方にならないように、ご注意を。

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安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
MIMIGURI代表Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教
1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。

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(MIMIGURI代表Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教 安斎 勇樹)

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