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「問題:費用2000万円、100人に1人が死亡…エベレストに21歳学生が登る方法は」大成功した東大生の超突破力

プレジデントオンライン / 2022年8月31日 11時15分

出典=『実践型クリティカルシンキング 特装版』

大きな夢を持っている若者が時間をかけずにそれを叶えるにはどうしたらいいのか。課題のひとつは費用の捻出法だ。戦略コンサルタントの佐々木裕子さんがお金のない大学生が2000万円の費用がかかるエベレスト登頂を目指すという想定を立て講義形式で解決策を探っていく――。

※本稿は、佐々木裕子『実践型クリティカルシンキング 特装版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■21歳の大学生がエベレストに登るには?

あなたは21歳、大学生です。山登りが大好きで、中学から大学まで山岳部に入っています。どうしても若いうちに早くエベレストに登頂したい。

でも、エベレストに登るには、

・2000万円の登山費
・高所登山の豊富な経験~8000メートル級の山に登る=低酸素で登山できる体~

が必要です。あなたなら、どうする?

まず、2000万円かかる。これはどうやらほんとうのようです。まず、登山料やルート使用料、ベースキャンプの使用料などがかなり高額です。さらに、シェルパ(ヒマラヤ登山の案内人)を雇う必要があるので、彼らの人件費。

実は、エベレスト登山って登っている期間がすごく長い。一気に8000メートルまで行くと肺が爆発してしまうので、ちょっと登って下りて、またちょっと登って下りてというのを繰り返して体を慣らしていくのです。

ちなみに、徹底して体を鍛え、高所トレーニングをしてエベレストにチャレンジしても、成功率は2割なんだそうです。かつ100人にひとりは死亡している。山が高すぎてヘリコプターも飛べないので、遺体はずっとそこに凍結。そういう厳しさもある。

さて、どうしましょう? というのが質問です。

まず2000万円の費用はどうしますか。学生です。お金持ちじゃありません。

じゃ、今回は少し丁寧に、手順を踏んでやっていきましょう。

■2000万円をどのように捻出すればいいのか

1 まず、当たり前の答えを考える

2000万円が必要。まず、当たり前の問題解決策とは?

——なんとかして自分で稼ぐ。

はい。普通はそう考えますよね。

2 当たり前の答えの対極を考える

では、次に、「自分で稼ぐ」の反対を考えてみましょう。

——自分で稼がない。

3 アイデアの深掘りをする(ズームイン)

じゃ、この2つを深掘りしてみましょう。

【図表2】当たり前の答えの対極を考える
出典=『実践型クリティカルシンキング 特装版』

——稼がないほう、スポンサー。

スポンサーをつける。どうやって?

——何か宣伝になるような。

スポンサーをしてくれる企業の名前や、個人だったらその人の名前の入った上着を着ながら登るのをライブ中継するとか。

なぜ、それが投資するほどの価値になるんですか?

——エベレストに登る人があまりいないという希少性と、そこで話題性もつくし、今クラウドファンディング(※1)とかで個人が少額からでも集められるじゃないですか。ちょっとお金払えば登る人に自分の名前入れてもらえるんだったら、けっこう集まると思う。

【図表3】アイデアの深掘りをする(ズームイン)
出典=『実践型クリティカルシンキング 特装版』

なるほどね。クラウドファンディングで集める。

ほかには?

——いちばん手っ取り早いのは、テレビのバラエティ番組とタイアップ。

なるほど。バラエティ番組。イモトアヤコさん(※2)みたいなパターンですね。ほかには?

※1 クラウドファンディング:不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。
※2 イモトアヤコさん:日本テレビ系「世界の果てまでイッテQ!」で珍獣ハンターとして活躍。2014年にはエベレストへの登頂に挑戦したが、雪崩などの悪条件により断念。

■親や銀行に借りる? 株で儲ける? シェルパになる?

——2000万円の費用を借りる。

借りる。どこから借りますか?

——資産状況によりけりですけど、学生なので親を説得して(笑)、たとえば将来にわたって返すということを前提で、家を抵当に入れてですね。

抵当に入れる(笑)。

——金融機関から借ります。

なるほど。今、自力で稼がないほうで、借りる、借りないが出ました。借りない人は、スポンサーということですね。

ほかにありますか?

——株とか投資で大儲けをする。

なるほど。「自力で稼ぐ」のほうですね。株の投資。原資はどうしますか?

——信用取引。

【図表4】発想を広げる(ズームアウト)
出典=『実践型クリティカルシンキング 特装版』

信用取引(笑)。なるほど、はい。信用取引で。

4 発想を広げる(ズームアウト)

今なんとなく構造化してるの、わかります? そうすると、もっと広がるかなぁとか、もうちょっとこっちに何かないかなぁとか。ズームアウトとかズームインって、そういう行ったり来たりすることなんですね。ほかにありますか。出てきます?

——シェルパになる。

シェルパになる。ということは、2000万円払わないということですね。いま2000万円払うところを深掘りしてましたが、「2000万円支払わない」が出てきましたね。シェルパになるってけっこうたいへんですけどね(笑)。

ほかにありますか? 「払わない」も出てきましたよ。もっと、枠の外でありますか?

——登らない。

登らない。そうです。登らないもありますね。もしくは、登る時期をもっと先にする。30年後とか。そうすると、普通にサラリーマン生活でがんばって稼いで、30年後だと51歳なんで、肉体的にちょっとがんばらないといけないかもしれないですけど。今は登らない。ありですよね、この選択肢。

■東大生が実際にエベレスト登頂成功時に使った作戦とは

5 目標設定と照らし合わせながら絞って、さらに深掘りする

つまり何を申し上げているかというと、ズームアウトしていくと、けっこういろいろな打ち手が出てきます。

で、ほんとうに何度も繰り返しになりますが、ここで、この人がいつ、なぜ、何のためにエベレストに登りたいかによって、打ち手は変わります。

実は、これ実在の人物の話を聞いてつくった演習なんです。山田淳くん。彼は、スポンサーの線を深掘りしていきました。注目度の高さが必要ですよね。どうするか? 彼は、ギネス記録をつくりました。七大陸最高峰最年少登頂記録(※)(当時)です。ギネスに載ると価値がすごい上がるので、スポンサーがつくんですね。

スポンサーをつけるためにギネス記録をつくる。ギネス記録をつくるためには、2年半以内に登らなきゃいけない。じゃあ2年半で登るためにどうしたらいいかっていうロジックで問題解決をしていくタイプの人でした。

2年半で登ろうと思うと、当時エベレスト登山に必要と言われていた、「低酸素での登山に慣れるための体づくり=豊富な高所登山経験」というのを普通に積んでいるのでは間に合わないわけです。もっと早く体をつくらなければならない。

彼は「山に登らずに低酸素トレーニングをする場所はないか」と徹底的に探し、当時できたばかりで、まだ誰にも使われていなかったオリンピック強化選手用の低酸素トレーニング室の利用を自らかけ合いました。

「安全確認のための実験台としてすべてデータ提供するので、タダで使わせてほしい」と交渉したのだそうです。

※七大陸最高峰最年少登頂記録:2002年5月17日、東京大学在学中に国際公募隊の隊員として、北東稜からエベレストに登頂。大陸の最高峰を2年半で踏破し、当時の七大陸最高峰登頂の最年少記録を更新(23歳9日)。七大陸最高峰制覇は、日本人としては6人目。大学卒業後はマッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務し、2010年にアウトドアベンチャー企業を設立。

【図表5】目標設定と照らし合わせながら絞って、さらに深掘りする
出典=『実践型クリティカルシンキング 特装版』

■「ほかには?」と「目標設定」がやっぱり大事

彼、山田くんはまさに、クリティカルシンカーです。彼も言っていました。「別に15年後とか25年後でもいいんだったら違う登り方もあったよね」と。

ちなみに、実は、日本でいちばんたくさんエベレストに登ってるのは、撮影クルーの人らしいんです(笑)。NHKとかの。カメラとかの機材を持って上がらなきゃいけないので、たいへん。で、そんなことができる人が何人もいるわけじゃないので、必ず声がかかる人がいて、その彼がいちばん登ってる。

佐々木裕子『実践型クリティカルシンキング 特装版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
佐々木裕子『実践型クリティカルシンキング 特装版』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「ほかには? ほかにはないの?」。これが大事です。意外にあるものです。当たり前ではない答え。前提条件を裏返すような答え。自分の固定観念を裏返すような答え。それがあるんじゃないかと思って、自問自答してください。そのための構造化ですから。

で、何度も繰り返しますけど、それも目標設定次第。変えられるんだったら目標設定を変えるという手もあるかもしれません。30年後に登ることにするとか。

どうしても2年以内じゃないとダメだということになると、解決策はけっこう限られてきますね。だから、解決策は、目標設定とつながる。何度も言っていることですね。

解決策が見つからないのは課題の本質をわかっていないから

打ち手を考えて、ズームイン、ズームアウトしながら、目標と照らし合わせて絞っていく。絞れたら、さらに深掘りしていく。

なんとなくわかったと思うんですが、「目指す姿とのギャップ」、つまり「本質的な課題」がクリアだったら、「解決策」って意外に出るんです。難しくない。

もちろん「リアリティはどうだ」とか「実現性はどうなの」っていうところを詰めていくのは必要。でも、「まったく解決策が見つからなくてほんとどうしよう」というのは、ない。解決策が見つからないときって、何が本当の問題かがわからないときです。問題の本質がつかめていない。

エベレスト登頂は、資金不足に課題が絞れてましたよね。これに大学の単位が足りないとか、本質的でない課題が入ってくると、解決策も出しにくくなる。

ただし、解決策を実行するのは難しいですよ、もちろん。実行するのはまた別の力なのでここでは言いませんが。

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佐々木 裕子(ささき・ひろこ)
チェンジウェ―ブ代表
東京大学法学部卒業後、日本銀行を経て、マッキンゼーアンドカンパニー入社。シカゴオフィス勤務の後、同社アソシエイトパートナー。8年強の間、金融、小売、通信、公的機関など数多くの企業の経営変革プロジェクトに従事。マッキンゼーを退職後、企業の「変革」デザイナーとしての活動を開始。ChangeWAVEを創立し、変革実現のサポートや多様性推進、経営人材育成に携わる。自身の両親の介護の始まりとともに、超高齢社会の課題解決を目指すエイジテックベンチャー、株式会社リクシスも創業。複数大手企業の社外取締役やダイバーシティ委員にも就任するなど、変革屋としての活動の幅を広げている。愛知県出身。著書に『21世紀を生き抜く3+1の力』『数字で考える力』(以上、ディスカヴァー)がある。

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(チェンジウェ―ブ代表 佐々木 裕子)

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