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「子供のストレス原因の半分は親」夏休み明けの不登校に親ができるたった一つのこと

プレジデントオンライン / 2022年9月1日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

夏休み明けに子供が「学校に行きたくない」と言い出した時、親にできることはあるのだろうか。外資系企業で産業医を務める武神健之さんは「夏休み明けの学校はストレスを感じやすい。ストレスや疲れを感じたなら、まずは休ませることが基本だ」という――。

■夏休み明けは不登校児童が増える時期

コロナ禍3回目の夏休みが終わりました。皆様はどのような夏休みをお過ごしでしたか。まとまった休みで心身ともにリフレッシュしたはずなのに、久しぶりの出社日こそ気持ち的につらいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は長期の休み明けは自殺者が増える、産業医としては気が抜けない時期になります。

長期休み明けの自殺者増加は、大人だけでなく、子供にもその傾向があります。自殺対策白書(H27)によると、春休み明け(4月上旬)・5月連休明け・夏休み明け(9月1日前後)の⾧期休業明けに、18才以下の子供の自殺者数が増加していることがわかっています。この中で特に、夏休み明けは、最多です。

自殺まではいかなくても、夏休み明けに不登校に陥るケースは多くあります。

■2学期を頑張るにはエネルギーが必要

1学期に頑張ってきた子供は、夏休みにようやくリラックスできます。しかし、2学期頑張るためには、そこから再度、学校に通うエネルギーが必要となります。特に、学期初めは、決してポジティブに感じない学校環境に戻ることや、生活習慣を規則正しくすることにストレスを感じやすくなってしまいます。それにより大きなエネルギーを消費してしまうと不登校に陥ってしまうのです。

では、コロナ禍の夏休み明けに子供のストレスを察知したとき、大人たちはどのように対処すればよいのでしょうか? コロナ禍に限らず、子供はどのようなストレスを抱えていて、それがどのような形で現れるのか知っておくことで、親子ともにストレスへうまく対処する方法が見つかるかもしれません。今日は働く人ではなく、子供のストレスについてお話しさせていただきます。

■子供のストレスは年齢によって違う

子供のストレスを考えるときは、まずは子供の年代別にとらえることが大切です。それは、子供のストレスは、その子供の年齢(実年齢と精神年齢)や育成環境によりさまざまだからです。原因もさまざまですし、その現れ方(症状)もさまざまです。

女の子の成長のイラスト
イラスト=iStock.com/studiolaut
※イラストはイメージです - イラスト=iStock.com/studiolaut

たとえば、「幼稚園・保育園から小学校低学年まで」と、「小学校高学年から中高生まで」の年代では、子供にとっての日常生活圏や接する人などが異なるため、原因も異なる場合が多いです。そして、ストレスの現れ方もまた、異なります。

幼稚園・保育園から小学校低学年くらいまでは、世界の中心は自分と親です。そのため、友だちとの関係性よりも、いつものルーチンや親との関係性が特に重要になります。コロナ禍になって、急に保育園や幼稚園が閉園してしまい、いつものように遊べなくなったことなど、この年代の子供たちがコロナ禍で感じたストレスは、「日常生活の急な変化に適応できないこと」や「いつもできていた行動ができなくなったこと」などでした。一方で、小学校高学年くらいから上の子供たちは、親よりも友だちとの関係性の方が心地いいと感じるようになっていきます。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大初期には、全国で一斉休校の措置が取られた時期もあり、友だちと会えなかったり、登校しても友だちとの距離を取ることを強いられたりストレスになってしまったようでした。

もう少し上の中学高学年から高校生くらいになり、LINEやその他のSNSで友達たちと繋がることができる子供は、このようなストレスは少なかったようですが、承認欲求が満たされないなど、LINEやその他のSNSに起因するストレスがあるようです。

■子供のストレスは「疲れやすさ」に出る

子供のストレスは、「疲れやすさ」として現れることが多いです。特に幼い子供の場合は、「ストレス」が何かをまだ理解していません。「つらい」「しんどい」と思っても、その正体が何であるのかを理解できないのです。そのため、表現できないストレスは「疲れ」という形で現れます。

また、中学生くらいになって反抗期に入ると、何か不安やストレスを抱えていたとしても、それを必ずしも親に相談するとは限りません。カッコ悪い、恥ずかしいなどの気持ちが先行してしまい、相談できないのです。この段階で表現できなくなったストレスは、人間関係やコミュニケーションに見られることが多いです。

たとえば、友だちに対して乱暴な態度を取ったり、親との会話で口数が少なくなったり、あるいはいつも遊んでいた友だちと急に遊ばなくなったり……。今までと違う行動を取るようになったら、注意深く見守ってみてください。コミュニケーションの中にストレスの兆候が見つかることもあります。

いずれの年代の子供たちも、共通して夏休み明けに気づかれるパターンの1つが、不登校という形です。大人の場合、ストレスでいっぱいいっぱいになってくると、出社に際し遅刻が増えたり、欠勤が増えます。子供の場合、学校への登校時間になると腹痛などの体調不良を訴えたり、それが度重なり不登校になる場合もあります。

■子供が不登校になった時に親が最初にやるべきこと

もしも子供が夏休み明けに突然「学校に行きたくない」と言い出したら、まずはゆっくり休ませてあげてください。

犬を抱きしめる子供
写真=iStock.com/michellegibson
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/michellegibson

朝にひどい腹痛などを訴えるならば、試しにその日を休ませてみてはいかがでしょうか。休んでいいことがわかると症状が緩和し、お昼前には元気になり、ちゃんとお昼ご飯を食べるようになるのが数回続くようならば、それはストレス反応としての症状、登校に対する心身の拒絶反応、と考えられます。信頼できる学校の先生に相談してみてはいかがでしょうか。

塾や習い事で忙しくしているのなら、それを思い切って休ませる。あるいは、夜遅くまでスマホをいじっているのなら、一定のルールを設け、夜はゆっくり眠れる環境を整えてみてください。大人も子供も、ストレスを感じたり疲れたりしたときは、何よりも横になってゆっくり休むことが基本だからです。

子供の不登校が続くと、親のメンタルも悪化してくることがしばしばあります。余裕のなくなった親は、子供にとっては余計にストレスになってしまいます。そうならないためにも早めに対処してください。

■一緒にできることで気分転換を

次に大切なのは、好きなことをして気分転換させてあげることです。大人もそうですが、好きなことや趣味に没頭すると気分がスッキリします。絵を描いたり、ブロックで遊んだり、何でもかまいません。好きなことに集中することで、嫌なことを忘れて気分転換することができます。

子供が小さいのであれば、親も一緒になって子供の好きなことを楽しむのがいいでしょう。一緒にお出かけしたり、料理をしたりするのも効果的です。

しかし子供が成長してくると、親と一緒に何かをやることが少なくなります。そのときは、帰宅時間などルールを決めたうえで、自由に友だちと遊びに行かせてあげるのも一つの方法です。成長と共に子供は、親よりも友だちと話すことで、自然にストレス解消できるからです。また、親と一緒でなければできないことを体験させてあげるのもおすすめです。ちょっとした遠出や、大人がつき添う必要のあるアクティビティーなど、非日常的な体験もいい気分転換になります。

■子供が求めているのは「解決策」ではない

子供のストレスと向き合うときに大切なのは、大人が「必ず解決しなければならない」と思わないことです。子供が悩みを相談してきたときは、必ずしも解決策を求めているとは限りません。これは、会社における部下の相談と同じです。多くの場合、解決方法ではなく、辛い状況をわかってほしいのです。

大事なのは、子供がストレスを抱えている事実に気づくことです。そして「気がついているよ」と伝えてあげることです。子供が話したそうであれば、何にどのようなストレスを感じているのか聞いてあげましょう。ストレスの原因を解決できなくても、話を聞いて問題を知ってあげることで、相手を承認することになり、それで子供のストレスは大幅に軽減されるはずです。

■子供のストレスの原因は、半分は「親」である

年齢にかかわらず共通していえるのは、子供が抱えるストレスの半分は、実は親のストレスが原因になっているということです。親がストレスを抱えて余裕がなくなってくると、そのこと自体が子供にとっても大きなストレスになるのです。

今は少しずつ慣れてきたとはいえ、コロナ禍では親自身がさまざまなストレスを感じていました。新型コロナウイルス感染症という未知のウイルスそのものはもちろん、慣れない在宅勤務や、新たな生活様式など、その原因はさまざま。そして、たとえ子供に対する言動には表れていなくても、親のストレスは知らず知らずのうちに子供に伝染します。親がピリピリしているだけで、子供にも伝わってしまうことを忘れてはいけません。

親に叱られて耳をふさぐ子供
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■親自身のストレスケアこそ子供のストレスケアになる

子供のストレスケアで忘れてはいけないのは、親自身が自分のストレスケアをしっかりすることです。これは、コロナ禍に限ったことではありません。親自身のストレスケアは、そのまま子供のストレスケアにつながるからです。

子供を保育園や学童に預けて働く親は、毎日がとても忙しいと思います。急いで仕事から帰ってお迎えに行って、帰ったらすぐに夕飯の支度やお風呂、宿題の面倒など、分刻みでやるべきことが待っています。しかし、家事や育児に追われて、いつの間にか自分を追い詰めてしまっている人がいます。自分に余裕がないと、そんなつもりはないのに、必要以上に子供を叱ってしまうという方も少なくないでしょう。真面目で家族愛に溢れる人ほどそうなってしまいますので、どうぞご注意ください。

簡単に始められる親自身のストレスケアは、30分でも1時間でもいいので延長保育などを活用し、その分の時間を自分のために使ってみることです。カフェでお茶を飲んでひと息ついたり、マッサージをしてリラックスしたり。それで少しくらいお迎えが遅くなったとしても、子供にとっては親がしかめっ面をしているよりはずっといいはずです。親自身にゆとりがあるかないかで、子供が感じるストレスには大きな差が生まれます。

親子に限らず、誰だって自分に余裕がなければ人に優しくなどできません。そう考えると、親はもっと自分自身を大切にして、自分のストレスマネジメントを優先していいのです。

2学期が始まりました。子供の様子に気を配ることはもちろん大切ですが、自身のストレスケアも意識的に行ってみてください。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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