バカにはバカな検索結果しか表示されない…ネットの情報にダマされる人が後を絶たない根本原因
プレジデントオンライン / 2022年9月4日 12時15分
※本稿は、山田竜也『神速で稼ぐ独学術』(技術評論社)の一部を再編集したものです。
■ヤフーもグーグルの検索アルゴリズムを借りている
インターネットの使い勝手が飛躍的によくなった歴史の中で、検索エンジンの果たした役割は計り知れません。無限とも言えるインターネット(ワールドワイドウェブ)の情報の中で、適切な情報をかんたんに引っ張ってこられるようになった背景は、検索エンジンの検索アルゴリズムの発展なくして語れません。もし、検索エンジンが存在しなければ、私たちは目的の情報を調べようとしても、そこに行き着くことができないでしょう。
検索エンジンの基礎知識として知っておきたいのが、日本国内における検索エンジンのシェアです。国内の場合は、GoogleとYahoo! JAPANの検索エンジンが二強となっており、2つ合わせて90%以上のシェアを持っています。その中で、Yahoo! JAPANの検索エンジンはGoogleの検索アルゴリズムを借りたもので、そのうえでYahoo!が各種情報をフィルターしたり載せたりしているという状況です。
つまり、日本国内では実質Googleの検索エンジンのアルゴリズムが90%以上のシェアを持っている(仕組みとしては実質上の独占)ということです。検索エンジンを活用するということは、Googleの検索エンジンの仕組みを活用することになります。
■ネットリテラシーは情報を引き出す上で重要
今やインターネットにさえつながっていれば、だれもがGoogleの検索エンジンを使って情報を調べることができるようになっています。特にスマートフォンが普及した現代において、情報自体はだれにでも開かれています。一方で、検索エンジンの特性を理解して、仕事やキャリア、学習に有効に活用できている人もいれば、まったく活かせていない人もいます。
インターネットリテラシーの有無の筆頭は、検索エンジンの利用スキルと、SNSの利用スキルの2つと言っても過言ではないでしょう。特に、意図した情報、時にはそれ以上の情報を引き出せるかどうかという点において、検索エンジンを使いこなすリテラシーは最重要と言えます。
■「検索エンジンの情報は信頼できない」は的外れ
「どんなことでもまず検索してみる(ググる)」という昨今の状況について、私は好ましいものだと思っています。
「検索エンジンに頼っていると思考力が身につかない」
「検索エンジンで調べた情報は玉石混交で不確かなので信頼できない」
そういった言葉が検索エンジンに頼ることへの批判としてよく聞かれますが、個人的には的外れだと思っています。
![検索バーの複数のグラフィック](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/c/1200wm/img_7c703dd5798620adf941894f4fafbc60101466.jpg)
たとえば、有志によってまとめられ、だれでも自由に読めるWikipedia(ウィキペディア)という百科事典サイトが存在します。このサイトは検索エンジンにも強く、さまざまな情報を調べるとよく上位に表示されてきます。有志が作ったコンテンツということで正確性に劣ると思われるかもしれませんが、Nature誌のおこなった調査では、専門家が編纂した代表的な百科事典であるBritannicaと情報源としての正確性が同レベルにあるとされています(注)。
注:「Wikipediaの情報はブリタニカと同じくらい正確」――Nature誌が調査結果を公表
少なくとも、従来型の百科事典に比するほどの情報量と正確性のあるコンテンツは、すでにWeb上に存在しています。
■知らないことを放置しているほうがよほど問題
検索エンジンも、使い方次第では深い思考にも結びつきますし、正確性についてもその正誤を判断するリテラシーが重要であって、検索エンジンを利用することが即座にまちがった情報に惑わされることにつながるわけではありません。むしろ、正確性が劣るからといって、検索エンジンを使わずに、知らないことを知らないままで放置しているほうがよほど問題でしょう。
「検索エンジンを使っても稼ぎにつながらない、有益にならない」ならば、理由は検索のリテラシーが低く、浅くて表面をなぞったような情報にしか行き着かないから。それが問題なのです。後にくわしくふれますが、Googleの検索エンジンはレベルの低い検索をおこなえばレベルの低い情報しか出てこない傾向があります。また、検索結果にはコンテンツの発信者によるさまざま意図やバイアスがあります。そういった特性を理解して、自分の目的にあった検索スキルを身につける必要があるのです。
■検索エンジンは個別の戦術や特定の回答を得るのに効果的
検索エンジンの用途は、特定の目的(調べたい事象)に対して答えを求めることにあります。稼ぐための全体的な見取り図や考え方を得るのには向いておらず、どちらかというと個別の戦術や、特定の回答を得るために効果的と考えるべきです。
自分自身の思想を深めたり、モチベーションを上げたり、特定のテーマを概括的に学ぼうとする場合は、本やオンラインコミュニティ、場合によってはSNSなどのほうが有効なケースが多いです。大まかな方向性や行動を決めていくのには、万人に当てはまる正しい回答はありません。自分自身の今まで身につけてきたスキルや経験、現在の興味関心やモチベーションなど、さまざまな要素の掛け合わせの中で選択していく必要があります。
このような、答えのない大局的な部分の学習には、特定のテーマについて深く多面的に論じられている書籍のほうが向いています。また、特定の人の考え方に触れたりやりとりするという点では、SNSやオンラインコミュニティなども効果的でしょう。
検索エンジンの本領発揮は、大まかな方向性が見えた段階で、個別の詳細な手段や情報を調べていく部分にあります。
■検索エンジンが表示順位を決定する仕組み
検索エンジンをより有効に活用するために、少し回り道になりますが、検索エンジンがどのような仕組みで検索結果を表示しているのかを考察してみます。
私たちがGoogleやYahoo! JAPANの検索窓に調べたいキーワードを入力すると、ほんの一瞬で検索結果(回答となるWebサイトの候補)が表示されるようになっています。なぜ一瞬で結果が表示されるかというと、Googleのクローラーと言われる検索ロボットが、世界中のWebサイトを事前にスキャンし、Googleの膨大なデータベースに情報を登録しているからです。その大量のデータベースの中から、検索されたキーワードごとに適切な順位をつけて、検索結果が表示されます。
検索結果のランキングはどのようになっているのでしょうか。Googleの検索アルゴリズムは完全にブラックボックスになっており外部には公表されていませんが、おもに次の3つの要素が上位表示に影響すると言われています。これを知ることで、私たちが検索結果経由で見つけてくるWebサイトに「どのような傾向のバイアスがあるのか」が理解できます。
①外部サイトからの参照
②サイト内部の構造
③Webサイトのコンテンツの良し悪し
1つずつ見てみましょう。
■リンクの数が多く、構造がわかりやすいサイトは信頼性が高い
①外部サイトからの参照
Googleの検索エンジンでは、「外部の信頼性の高いWebサイトから多くリンクされているWebサイトは信頼がおけるコンテンツ」ということで、上位に表示されやすくなると言われています。ただし近年、特定のWebサービスや商品、企業がSNSなどで話題になったときなどにわざわざリンクを掲載しないことも多く、Webサイト上で話題になっているWebサービス、商品、ブランドなどはリンクされていなくても上位表示に影響されるようになっている(専門用語で「サイテーション」)と言われています。これは、端的に次のことを指します。
・知名度が高い企業やWebサービスは比較的上位表示されやすい
・信頼されるWebサイトからリンクされる機会が大きい大型Webサイトも上位表示されやすく、私たちの目に留まりやすい
![パソコンで不動産サイトを閲覧する女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/9/1200wm/img_b9446416eb87894b550853d2df679208400158.jpg)
②サイト内部の構造
サイトのページ構造(HTMLの記述の仕方や、Webサイトの階層構造など)がわかりやすいか。
ページ内の適切なところに上位表示したいキーワードが含まれているか。
そういった要素も考慮に入れられるようになっています。
ただし、こちらについては年々全体における影響度は小さくなっています。
■「質の高いコンテンツ」は上位に表示される
③Webサイトのコンテンツの良し悪し
Google(Yahoo! JAPAN)の検索エンジンでは、中身の質の高いコンテンツを優先して上位表示するようになっています。ここで問題なのが、「“質の高いコンテンツ”とはいったい何なのか?」ということです。
たとえば、「インフルエンザ 症状」というキーワードで検索をおこなったとします。その時に検索エンジンに表示される2種類のコンテンツがあったとして、どちらのほうが質が高いコンテンツと言えるでしょうか。
②専門用語などを多用しながら、インフルエンザの症状について医学的な裏づけも参照しながら書かれた、極めて正確な記事。ただし、文章も長大で、一定の知識がないと読み手が理解できない、論文に近い内容。
①の記事は、読みやすく多くの人が理解できる代わりに、厳密性や詳細に欠けます。一方で、②の記事は正確ではありますが、知的水準がかなり高い人でないと理解できないし、読解にも時間がかかります。
そう考えると、答えは一長一短で、「客観的な質の高いコンテンツ」を判定するのは難しくなります。
■ユーザー一人ひとりの反応が検索順位に反映されている
では、Googleの検索エンジンはどのようにしてコンテンツを判別しているのでしょうか。アルゴリズム自体はブラックボックスではあるのですが、近年のGoogleのアルゴリズムでは、「質の高いコンテンツ」を判断するために、コンテンツの文言や文章構造を解析するだけでなく、検索エンジンを閲覧したユーザーの動き、つまり私たち読者1人1人の反応を機械学習により分析して、検索順位に反映するようになっているようです。
たとえば、先ほどの「インフルエンザ 症状」というキーワードだと、その検索キーワードで検索された結果のうち、どのようなWebサイトを私たちがクリックしたのかを見ているでしょう。また、もし検索結果の内容が不十分であれば、私たちは再度検索結果のページに戻って、ほかのページに遷移したり、検索し直すという行動に出ます。そういった結果の積み重ねから、最終的に支持されていると思われる行動が多いWebページを上位に表示していくイメージです。
もちろん、実際には先述したような他サイトからの参照や言及、サイト構造などさまざまな要素が加味されるのですが、一般論としては、検索キーワードごとに「私たちの閲覧の結果の多数決」に近い判断がなされていると考えてもいいと思います。
では、先ほどの2つのパターンでは、一般的にどのようなサイトが上位表示されるのでしょうか。
「インフルエンザ 症状」というキーワードで検索するのは、もともとインフルエンザや医学的知識が少ない、一般の人がほとんどです。そうなると、当然のごとく、一番わかりやすいWebコンテンツが相対的に上位表示されやすい傾向になります。
■わかりやすい情報ばかりが上位に表示される弊害
さてそうなると、検索結果は、検索する人にとって最大公約数的に役に立つ「お客様目線」のコンテンツになります。言い換えれば、「検索者のリテラシーが高くなければ、とにかくわかりやすく、底の浅い情報ばかりが上位表示される」ことになってしまいそうです。
そんな検索結果だと、弊害は発生しないのでしょうか? 実際に、弊害が発生しました。2016年末、株式会社ディー・エヌ・エーが運営していた「WELQ」という医療系の情報サイトが存在していました。当時膨大な情報量を誇ったこのサイトは、多くの医療系の検索キーワードで上位表示されていました。
ただ、WELQはコンテンツの内容に問題がありました。明らかにほかのライバルサイトから持ってきた情報をつなぎ合わせたものであったり、科学的に不適切と思われるような記事が存在していたり(「肩こりの原因が背後霊」などというコンテンツもありました……)、違和感を感じる状況だったのです。
■お金や生活分野の検索には特別なフィルターがかかっている
身も蓋もない話ですが、もしユーザーの動きをメインにGoogleが検索順位を決めているのであれば、ライバルからパクってつなぎ合わせたコンテンツであれ、さらに読みやすいものになっていれば、ユーザーにとっては「役に立つコンテンツ」になってしまいます。また、検索ユーザーの大半が医療情報に関する素人であれば、内容の真偽など判断できません。結局、WELQは多くの批判を浴びることになり、運営元が自主的にWebサイトを閉鎖する形で決着しました。
このようなさまざまな問題が大きく影響して、Googleは「YMYL(Your Money or Your Life)」というジャンルについては特別なアルゴリズムを導入するようになりました。これは文字どおり、お金や生活(医療、健康、人生)に大きく影響を与える分野については特別なフィルターを通すというものです。具体的には、先ほどの医療分野であれば、公的な機関や、信頼に足る組織のWebサイトでないと上位表示が難しいといったものです。
一方で、未だに多くのジャンルにおいては、一時ほどではないものの、ユーザーによる行動を重視している傾向が堅持されています。つまり、検索ユーザーの多くが手短にわかりやすいWebコンテンツを求めれば、そのような結果が返ってくるということです。これは、視聴率の影響を受けながら番組を作るテレビの構造と一部似ていることがあり、私は「検索エンジンのワイドショー化」と呼んでいます。
■インターネットは一部の人のものから皆のものになった
ユーザーの検索行動によって検索結果の傾向が決まってくるという話をしましたが、検索エンジンの結果やWebコンテンツについてはアルゴリズムだけでなく、ユーザー層の変化も大きな影響を与えています。
ひと昔前まで、インターネットはパソコンから接続するもので、一定のリテラシーを持った利用者が中心でした。本当に昔「インターネット通信」と呼ばれていた時代は、いわばオタクやギークのものだったと言えます。
![山田竜也『神速で稼ぐ独学術』(技術評論社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/8/1200wm/img_186411858cc6d069dfcdf351c24e3810251953.jpg)
しかし、スマートフォンの普及や、3G、4Gという回線速度の向上によって、パソコン以外の端末からインターネットを利用するのがあたりまえになり、もはやインターネットを利用しない人がいないといってもいいほどの普及率になっています。スマートフォンでインターネットを利用する層は、ほぼ100%、検索エンジンの利用者でもあります。つまり、インターネットの大衆化とともに、幅広い年齢やリテラシーの層が検索エンジンを利用するようになっているのです。
一部でネットユーザーの「検索エンジン離れ」が起きている(SNSなどに移動している)という情報もありますが、現実にはその逆です。ニールセンの2021年7月のデジタルコンテンツ視聴率調査では、PCとモバイルの重複を除いたトータルで最も視聴者数が多かったのはYahoo! JAPANのポータルサイトですが、18~34歳の若い年齢層ではGoogleのリーチが95.5%でトップかつ圧倒的な利用率となっています(注)。
注:1カ月間で最も視聴者数が多かったデジタルコンテンツは?【ニールセン調査】
■リテラシーの低い検索には質の低い検索結果しか表示されない
そこで、先述の問題になります。リテラシーの低い層が多くなればなるほど、検索結果はどうなっていくでしょうか。そうです。一般的な検索キーワードの検索結果はリテラシーが低い層が満足するような検索結果に偏りがちということになります。このことが、Googleをして「YMYL(Your Money or Your Life)」というアルゴリズムを導入せざるを得なくなった理由でもあります。
ベストセラーになった『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社)という本で中川淳一郎氏が書いていますが、現在のWebは大衆化したものになっています。検索エンジンも、リテラシーが低い検索にはリテラシーが低い検索結果(ユーザーの求める内容)を返すようになっているのです。
恐ろしい話ですが、あなたがもし検索ユーザーとしてリテラシーが低いのであれば、その検索結果もリテラシーが低いものしか表示されないということになります。あなたの検索結果はいかがでしょうか。
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ウェブマーケター
同志社大学哲学科卒業後、3年半の会社員生活を経て独学でWebマーケティングを学び、2007年にフリーランスとしてWebマーケティング専門会社パワービジョンを立ち上げ。中小企業から東証プライム上場企業まで幅広くWeb事業のコンサルティングを手掛ける。著書に『すぐに使えてガンガン集客!WEBマーケティング123の技』(技術評論社)、『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』『小さな会社のWeb担当者になったら読む本』(日本実業出版社)などがある。
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(ウェブマーケター 山田 竜也)
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