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意見がありそうなのに発言してくれない…そんな人からスラスラと持論を聞き出せる「3つの問いかけ」

プレジデントオンライン / 2022年9月2日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/viafilms

相手の考えをうまく引き出すには、どんな声がけをすればいいのか。東京大学大学院情報学環の安斎勇樹特任助教は「発言への心理的ハードルを下げるような『足場かけ』をするといい」という――。

※本稿は、安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■発言への心理的ハードルを下げる声かけ

質問を正しく理解し、考えるモチベーションが湧いていたとしても、質問に対する自分なりの答えを形成し、意見として発言できるとは限りません。

よくあるパターンは、答えは頭の中に思い浮かんでいるものの、プレッシャーを感じていて「発言できない」ケースが考えられます。そのようなときは、発言することへの心理的なハードルを下げるための声かけをして、プレッシャーを緩和することが有効です。

シンプルなやり方は次のように期待値を明確に下げ、頭の中に浮かんでいる意見を出しやすくする方法です。

「無理に良いアイデアを言おうとしなくてよいですよ」
「いま頭の中にパッと浮かんだことがあれば、なんでもよいので教えてくれませんか?」

もし相手が発言をすることで、組織における「自分の評価」が脅かされることを気にしているとすれば、その不安を払拭してあげることも有効でしょう。

注意を引くためのアプローチの一つである「共感」を応用して、相手の心の声を代弁して「変なことを言うと、評価が下がるかもしれないと不安に思うかもしれませんが、そんなことはないので安心してください(笑)。むしろ『変な意見』こそ、大歓迎です!」などと、場の心理的安全性を高める声かけが有効でしょう。

■仮定法を用いて、「立場の転換」を試みる

応用的な足場かけのテクニックとして、アフターフォローで「仮定法」の制約を後から追加する方法もあります。

たとえば、「『美しい広告』とはどんなものでしょうか?」というシンプルな質問を例に考えます。この質問で、相手の頭のなかにはあれこれ意見が浮かんでいるものの、価値観の根底に関わる深く複雑な質問であったために、相手はうまく答えがまとめられず、口をつぐんでいます。

そこで、仮定法を用いて、答えやすくなる「立場の転換」を試みます。

投げかけた質問

「『美しい広告』とはどんなものでしょうか?」

仮定法によるアフターフォロー

(例)「難しければ、視点をちょっと変えてみましょうか。もしあなたがユーザーだったら、なんと答えますか?」
(例)「いろいろな要素があるので、考えにくいかもしれませんね。もしあなたがデザイナーだったら、なんと答えますか?」

このように「意見を答えることが難しい」という心情に共感しつつ、仮定法の制約を加えた足場かけをすることで、発言のハードルを下げることができるでしょう。

この「ハードルを下げる」足場かけのアプローチは、アフターフォローにおいて多用することになります。ぜひ身につけておきましょう。

■「手がかりを与える」足場かけで質問に答えやすくなる

単純に手がかりが不足していて答えが出せないケースも考えられます。

たとえば、前述した商品開発のチームミーティングにおいて、「この使われていない自社技術をどう活用しますか?」という質問に対して、マーケティング部門のメンバーがどんなに自分事で頭を使っても、技術のメカニズムについてある程度わかっていなければ、具体的なアイデアは提案しにくいかもしれません。

アジアのビジネスマンが会議でプレゼンテーションを行う
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

質問の意図や背景は理解していながらも、知識・情報・技術が不足していて答えられない場合は、以下のように手がかりを与えてあげることが、一番の足場かけになります。

●他社の事例をいくつか紹介する
●考えの参考になるフレームワークを紹介する
●答えを出すために必要な技術を講習する
●参考になるデータを資料で配布する

事前に手がかりが不足する予想がついていれば、ミーティングのプロセスにあらかじめ話題提供の時間を組み込んでおくのもよいでしょう。

■ミーティングのプログラムを工夫する

また、特定のメンバーだけ手がかりが不足している場合には、個別のケアが有効です。前述した例であれば、マーケティング部門のメンバーに技術に関する補足資料を当日提供したり、事前に配布して読み込んでくることを宿題にしたりなど、手がかりを補填した上でミーティングに臨めると、スムーズです。

あるいは、研究開発部門のメンバーとマーケティング部門のメンバーとで2人1組になってもらって、お互いの視点の不足をフォローしながら検討するように進行するなど、ミーティングのプログラムの工夫でも足場かけが可能です。

■「あれ? いまの質問ってなんだったっけ……?」

相手は、答えを出すまでのあいだ、ずっと質問を覚えているとは限りません。

安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
安斎勇樹『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

事前に注意を引いたつもりでも、質問を聞き漏らした人がいるかもしれませんし、聞いていたけれど、悩んでいるうちに頭から抜けてしまった人がいるかもしれません。

アイデアを発散するタイプのミーティングで、話し合いが盛り上がっていればいるほど、話題があちこち行ったり来たりして、気がつくと質問の本筋から少しずれたところで盛り上がっていた、なんてことも少なくありません。

私自身も、質問された瞬間には耳を傾けていたのだけれど、質問について考えているうちに思考が活性化して別のことを想像してしまい、思考が脱線した結果、「あれ? いま聞かれていた質問ってなんだったっけ……?」と飛んでしまうことがたまにあります。

クエスチョンマーク
写真=iStock.com/Dzyuba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dzyuba

■相手が質問から脱線しないように支援する

これらのケースに共通して有効な解決策として、「質問をリマインドする」足場かけが有効です。要するに、投げかけた質問を改めてもう一度投げかけたり、見えるところに提示したりすることで、相手が質問から脱線しないように支援するのです。

改めてもう一度投げかけてリマインドする場合には、最初に投げかけた質問に補足を付け加えることができるため、その他の「前提を補足する」「意義を補足する」などの足場かけと併用してもよいでしょう。

質問から脱線させない一番手っ取り早い支援は、質問を見えるところに提示することです。問いかけた後に、ミーティングルームのホワイトボードに書き留めておく、スライド資料に記載して投影する、オンライン会議ツールのチャット欄に投稿しておく、など、ふとしたときに質問が視界に入るようにしておくことで、脱線を防ぐことができるでしょう。

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安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
MIMIGURI代表Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教
1985年生まれ。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。企業経営と研究活動を往復しながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について探究している。主な著書に『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』、『問いかけの作法 チームの魅力と才能を引き出す技術』、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』、『ワークショップデザイン論』などがある。

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(MIMIGURI代表Co-CEO、東京大学大学院情報学環特任助教 安斎 勇樹)

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