声に出して読めば頭に入るわけではない…読書が苦手な子供に共通する"ある読み方"
プレジデントオンライン / 2022年9月6日 15時15分
※本稿は、加藤俊徳監修、北川チハル著『1話5分 おんどく名作』(世界文化社)の一部を再編集したものです。
■スラスラ読書ができる子供と苦手な子供
子供のお友達はスラスラ本を読んでいるのに、それに比べると、どうもわが子は文章を読むのが苦手のようだ……。
そう感じることはありませんか?
お子さんが本を読んでいるときに、“つっかえる”“文字を読みとばす”あるいは“読み間違える”そんな様子は見られないでしょうか。
絵本でも教科書でも、幼児から小学校低学年向けの文章はひらがなが多いため、単語の区切りがわかりづらい傾向があります。また、ひらがなを覚えたての子供は、一文字一文字を拾うように読むため、単語のまとまりとして理解できないこともしばしばです。
成長に伴いスラスラ読めるようになることもありますが、なかなか上達しないケースもあります。うまく読めないことが続くと、内容が頭に入らず、子供は「読むのがつまらない、きらい、苦手」となってしまいがちです。周りのお友達が普通にできていることが自分はできないと感じると、自信や意欲を失ってしまうこともあるでしょう。
心配だけど、いったいどうやって練習すればいいの?――そのような悩みを持つ方におすすめしたいのが、脳を活性化する「おんどく(音読)」です。
文章を読むのが苦手な子供がおんどくに取り組むのは、ハードルが高く感じるかもしれませんね。ですがおんどくは、「文を見る・口やのどを動かす・声を出す・声を聞く・話を理解する・記憶する・考える・感じる」など一連の動作によって脳をまんべんなく活性化し、読む力が身につきやすいのです。
■おんどくのカギは「自分の声を聞く」こと
おんどくは学校の宿題でも定番ですが、お子さんの取り組み方はいかがでしょうか? ただ目で文字を追って声に出しているだけ、あるいは、ぼそぼそと小さな声で済ませるおんどくになっていませんか?
実は、おんどくで一番カギになるのは、「声を出す」ことより、「自分の声を聞く」こと。自分の声を耳で聞くことで、脳は聴覚に届いた刺激を記憶につなげていくからです。言葉が記憶に定着しないと、内容の理解も進みません。おんどくで、まずは目で見た文字を声に出し、それを耳で聞く、という作業を繰り返すことで、「読む」ための脳の仕組みがつくられていきます。
脳は、機能別に8つの「脳番地」に分類できます。読む力の土台は「聞く力」で、これが弱いと、ひらがなおんどくが苦手になりやすいのです。だから特に小学1年生は「聞く力」を育てることが大切です。
![注意深く耳を傾ける様子](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/1200wm/img_dac270db190e360f3ab0d0fce6be8d4a371860.jpg)
読むのが苦手なお子さんのおんどくを聞いていると、たいてい、語尾が聞こえてこないことが多いです。そうした子は、自分の声が聞こえておらず、内容も頭に入っていない傾向があります。
おんどくで、まずは目で見た文字を声に出し、それを耳で聞く、という作業を繰り返すことで、脳内のネットワークがつながります。「読んで、理解して、自分なりの考えを持つ」読書のための、脳の仕組みが作られていきます。
■助詞を強調して読むことで単語のまとまりを把握する
それでは、「自分の声を聞くおんどく」は、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。読むのが苦手なお子さんに特におすすめなのが、言葉と言葉の区切りにある助詞などを強調して読むおんどく法です。
たとえば、「頭は使えば使うほどよくなる」という一文があるとします。
この文章をおんどくするとき「頭は」の「は」、「使えば」の「ば」、「使うほど」の「ほど」を強く、大きな声で読むのです。
例)あたまはつかえばつかうほどよくなる!
黄色い箇所を強調して読む
言葉と言葉をつなぐ助詞をあえて強調することで、単語の区切りが明確になり、前後の名詞や動詞が脳に残って記憶しやすくなります。また、助詞に意識を向けて助詞の意味を理解することは、読解力を高めることにもつながります。
『1話5分 おんどく名作』では、助詞などに独自の「おんどくサポートマーク」を付けることで、読むのが苦手なお子さんでもおんどくしやすい誌面になっています。マークがあることで単語をまとまりとしてとらえやすくなり、「スラスラ読めた」という達成感にもつながりやすくなります。
![【図表1】「おんどくサポートマーク」の例](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/1200wm/img_8515e189ad773a00a886bf9c7857ea5b389959.jpg)
■おんどくをマスターしたら黙読にチャレンジ
助詞を強調するおんどくは、少し難しく感じるかもしれませんが、大人がお手本を見せると、お子さんもスムーズにできるようになります。最初はぜひ親御さんがサポートしてあげてください。
「読みにくい」「読むのが疲れる」と感じるお子さんもいるかもしれませんが、脳が刺激を受けている証しです。続けることで、声も大きく、言葉のひとつひとつが明瞭になり、内容の理解が進むおんどくが身につきます。
![【図表2】「マッチ売りの少女」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/6/1200wm/img_a6ed6e0405a3551dc76498e59ed7fe12383190.jpg)
単語の区切りがはっきり読める、語尾まではっきり読めるおんどくができるようになったら、黙読にステップアップ。黙読は「声に出さずに自分の声を脳内で聞く」ことなので、実は子供にとって、とてもハードルが高いものですが、それができるようになればぐんと読解力が身につきます。
■短い一文を暗唱させて自分の声を聞くことを意識させる
スラスラおんどくできているけれど、どうやら内容が頭に入っていないようだ……そのようなお子さんもいるかもしれませんね。
これは、声を出すことに意識が向きすぎていて、自分の声を聞いて記憶する脳の働きが弱いことが原因です。おんどくしながら自分の声を聞くことを意識するよう、お子さんに促しましょう。
とはいっても、「自分の声を自分で聞く」というのは、子供にはイメージしづらいかもしれません。そのようなときは、暗唱を目標にしてみてください。暗唱することで、脳の聴覚と記憶の働きを活性化させるのです。
![北川チハル著、加藤俊徳監修『1話5分 おんどく名作』(世界文化社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/4/1200wm/img_246122874591253ca4305799aa87ad38283693.jpg)
文章は、ごく短い一文で良いので、好きなものを選んでください。大人と子供のどちらが早く暗唱できるか、ゲーム感覚で競争してみるのもよいですね。
脳を活性化するおんどくのカギとなる「聞く力」を日常生活でも育てるには、寝る前の読み聞かせや、大人が読む一文をお子さんが聞いてそれをノートに書き写す「一文聞き書き」も有効です。「一文聞き書き」がしっかりできるようになると、授業で先生の話を集中して聞けるようにもなります。
脳は、達成感を味わったり、楽しいことをやっているときが最も成長します。お子さんが「スラスラ読めた!」「覚えられた!」という達成感を得られると、苦手だった読書が「できる・楽しい!」に変わっていきます。
読むのが苦手なお子さんは、日常生活の中で短時間でも、脳を活性化するおんどくの習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。
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脳内科医
医学博士。加藤プラチナクリニック院長、「脳の学校」代表、昭和大学客員教授。『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き 「選ばれた才能」を120%生かす方法』など著書多数。
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(脳内科医 加藤 俊徳)
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