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一戸転売しただけで利益5億円…日本の"外資系高級ホテルコンドミニアム"を買い漁る富裕層の底なし"錬金欲"

プレジデントオンライン / 2022年9月5日 11時15分

「フォーシーズンズホテルレジデンス京都」のHPより

フォーシーズンズ系やパークハイアット系などの「ホテルコンドミニアム」が富裕層に人気だ。ホテル客室が分譲マンションと同様に部屋ごとに販売され、部屋の所有権を購入する。金融アナリストの高橋克英さんは「自ら住む人や、人に貸して客室レンタル収入を得る人もいるが、目立つのは値上がりを期待して購入し転売するケース。10億円台の物件が15億円で販売されることもある」という――。

■流通市場で15億円の物件が売買される

ホテルの客室を所有し、自身が利用しない時は貸し出す「ホテルコンドミニアム」。コロナ禍にもかかわらず、国内でも続々登場しており、海外だけでなく国内の富裕層を惹きつけている。

ホテルコンドミニアムとはどのような仕組みで、なぜ富裕層を魅了しているのだろうか。

例えば、2016年に開業した「フォーシーズンズホテルアンドホテルレジデンス京都」。ホテル棟とレジデンス棟(ホテルコンドミニアム)からなり、レジデンス棟の総戸数は57戸。リビングやダイニングに加え、キッチンや洗濯機が備えてあり、当時4億円台~10億円台で販売されたが、今では世界的な高級不動産仲介会社であるサザビーズのサイトで、2ベットルーム151平方メートル超の部屋が15億円で売り出されるケースもある。

京都だけではない。北海道のニセコでは、香港のPCCWグループが手掛け2020年1月に開業した「パークハイアット ニセコHANAZONO」もホテル棟とレジデンス棟からなり、レジデンス棟の分譲戸数は113室。

「パークハイアット ニセコHANAZONO」のHPより
「パークハイアット ニセコHANAZONO」のHPより

所有者は、オーナー専用のロッカーやプライベートラウンジなども利用できる。約1億8000万円で販売された約72平米の半露天風呂付の部屋の場合、東京都心部にある最高級マンションと遜色ない価格帯だ。メゾネットタイプでは10億円以上、ゲレンデに面した部屋では14億円を超える超高額物件も完売している。ほとんど富裕層限定のため滅多に売却物件が「表」に出てくることはないものの、当初販売価格以上の高値で売買されているという。

このニセコでは、ホテルコンドミニアムは約380棟(倶知安町)にまで増えており、この先も続々と高級ホテルコンドミニアムが誕生する予定だ。

例えば、韓国の大手デベロッパー「ハンファホテルズアンドリゾート」が手掛ける高級ホテルコンドミニアム「マティエニセコ」は、スキーイン・スキーアウトが可能な客室は35室。羊蹄山を一望できる5ベッドルーム約400平方メートルのペントハウスの販売価格は14億円を超える。2023年末には入居可能予定だという。

ニセコでの興隆を受けて、北海道ではルスツや富良野、本州では白馬や箱根仙石原、沖縄では、本島だけでなく、石垣島や宮古島などでも、ホテルコンドミニアムが誕生したり、新たに開発が計画されたりしているのだ。

■ホテルコンドミニアムとは

ホテルコンドミニアムは、分譲マンションのように完成前からホテル客室が部屋ごとに販売され、不動産開発会社または不動産仲介会社などから、一部屋の所有権を購入しオーナーとなる。その際、別途、ホテル運営会社と管理契約を結び、オーナー自身が利用しないときは、一般客にホテルの一室として貸し出し、経費を差し引いた宿泊料金を客室レンタル収入(インカムゲイン)として得ることができる。

客室レンタル金額が100%とすると、レンタル促進費用とレンタルプログラム管理費用などが管理会社から差し引かれ80%となり、80%のうち諸経費を引いた30~40%程度が、オーナー側の実質宿泊レンタル収入となる契約が一般的である。一泊10万円の宿泊料金であれば、約4万円がオーナーの手元に入ることになる。

当然ながら、宿泊料金の単価が高ければ高いほど(その分、不動産販売価格も高いのだが)また、一般客による宿泊利用期間が長ければ長いほど、オーナーの実質宿泊レンタル収入は増え、インカムゲインを得ることができる。

ラグジュアリー モダン ベッドルーム
写真=iStock.com/imaginima
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imaginima

■自己利用だけでなく貸し出しが可能だが……

なお、所有者であるオーナーももちろん自己保有する部屋を利用することができる。通常はホテルとして運用されているため、ホテルとしての快適なサービスを享受できる。

もっとも、オーナーが私物を退避させる鍵付きのオーナー専用ロッカーなどはあるものの、オーナーの私物を置けない(置いても盗難や損傷リスクあり)、ベットルームやバスルームを他人に使われる、という点で抵抗感があるオーナーも多いい。

このため、自己利用を基本的に想定せず、貸し出しのみの純粋な投資商品として割り切るか、または逆に、貸し出しによるインカムゲインを求めずに、自身の別荘としてのみ利用する、という選択をする日本人の所有者も多い。

ところで、ホテルコンドミニアムを不動産投資商品としてみた場合、インカムゲインはどれくらい得られるのだろうか。例えば、ニセコの高級ホテルコンドミニアムの場合、インカムゲインは、インバウンドが押し寄せ稼働率が高かったコロナ禍前でも、実質1~3%程度だ。

オーナー自身が利用できるメリットはあるものの、東京など首都圏などでのレジデンス向け不動産投資では概ね実質3~5%程度の利回りが期待できることと比べれば、インカムゲインそのものにそれ程魅力があるようにはみえない。ましてや、為替リスクや地政学リスクなど条件はあるものの、アジアなど海外不動産の投資利回りからみれば雀の涙のようにもみえる。

■キャピタルゲインが狙える

では、何が儲かるのか。

それは、物件によっては、キャピタルゲインが狙えるのだ。

冒頭の京都やニセコの事例でみるように、その圧倒的な外資系のブランド力と希少性と利便性から、一部のホテルコンドミニアムは流通市場において販売当初の価格よりも高値で取引されているのだ。

とりわけ、海外富裕層・投資家の目線は、インカムゲインではなく、あくまでキャピタルゲインだ。単純な話、1室1億円の物件が、倍の値段で売れれば税引き後でも相応のキャピタルゲインを得ることができるのだ。

■海外富裕層にはなじみ深い仕組み

もともと、ホテルコンドミニアムは、海外から導入された仕組みであり、海外富裕層には一般的でなじみ深い投資手法のひとつである。英国の高級経済紙Financial TimesのWeekend版のHouse&Homeには、英国、フランス、イタリア、モナコをはじめ、欧州や地中海やカリブ海、米国を含め世界中の高級ホテルコンドミニアムの広告が、サザビーズやクリスティーズ、バークシャーハサウェイといった高級不動産仲介会社によって掲載されており、世界の高級不動産物件のトレンドや水準を感じることができる。

インフィニティ プール (夕暮れ時)
写真=iStock.com/imaginima
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imaginima

なお、日本の別荘やマンション、邸宅の物件が掲載されることもあり、Web版では、東京や軽井沢や伊豆の高級マンションや別荘物件だけでなく、高級ホテルコンドミニアムや町家、古民家などの物件も紹介されている。

こうしたなか、ハワイや東南アジアなどでは日本人富裕層もホテルコンドミニアム投資の実績があるものの、国内での新規物件が増加するなか、華僑など海外富裕層に交じって、法人名義による福利厚生利用を含む、首都圏や一部関西圏の日本人富裕層による、国内のホテルコンドミニアムの購入が増えてきているのだ。

ハワイや欧州など海外のホテルコンドミニアムと比べて割安、東京都心の不動産よりも成長性がある、キャピタルゲインが期待できる、外資系ブランドホテルのステータスや話題性といった点が投資のポイントとなっているようだ。

■ホテルコンドミニアム専用ローンも登場

こうしたなか、東急リゾートが購入を斡旋する沖縄県内ホテルコンドミニアム(新築物件・仲介物件)の購入資金限定ながら、個人向けのホテルコンドミニアムローンが登場しており、すでに多くの顧客が利用しているという。融資限度額最大1億円(販売価格の70%を上限)、借入年数は最長35年 融資金利は1.98%~2.45%であり、西京銀行が融資実行し、日本保証が保証するスキームだ。

■ゴーストタウン化するリスクもあるものの

無論、ホテルコンドミニアムもいいこと尽くしではない。日本の場合、コロナ禍でインバウンドも限りなくゼロだ。国内需要はあるものの、ホテル宿泊需要が低迷したままでは、インカムゲインは十分に見込めないことになる。

休日にワインを飲みながらリラックスしている女性
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

インカムゲインの減少が続けば、管理費や積立金が持ち出しになったり、資産価値の下落により、含み損や売却損が発生するリスクもでてくる。投資が投資を呼ぶサイクルが逆回転し、ホテルコンドミニアムのビジネスモデルは崩壊し、バブル崩壊後の越後湯沢など全国各地のリゾートマンション街のように、資産価格が暴落し、維持管理さえも出来なくなり、一部がゴーストタウン化するといったワーストケースも想定されよう。

■外資系企業と海外富裕層の存在

とはいえ、こうした過去に何度もあったリゾートブームやバブル状況とは、決定的な相違点がある。それは、①外資系企業と②海外富裕層の存在だ。

ホテルの屋上でくつろぐカップル
写真=iStock.com/Orbon Alija
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Orbon Alija

過去のリゾートブーム終焉やバブル崩壊時のように、国内企業による開発や国内富裕層・投資家だけの市場になると、景気や不動産価格が上向きなときにはいいものの、ひとたび、不景気や不動産価格が下落に転じると、日本の場合、皆同じような投資行動をとることになる。国内企業は事業からの撤退や切り売り、国内富裕層も損失覚悟の物件の売却となり、それが更に事業の悪化や不動産価格の下落を招くという負のスパイラルが何度も何度も繰り返されてきた。

しかし、外資系企業や海外富裕層が加わり、円安・円高の捉え方が真逆であることが象徴するように、国内企業や国内富裕層とは違う動きをとることで、不動産価格の過度の変動を抑えることになるのだ。もっとも、ホテルコンドミニアムをすでに所有する国内外の富裕層の多くは、耐久力があり、長期・安定保有が目的であるため、売り急ぐことがない点も大きい。

■生き残るリゾート地はどこか

冒頭に紹介した「フォーシーズンズホテルアンドホテルレジデンス京都」や「パークハイアット ニセコHANAZONO」のような、外資系ラグジュアリーブランドホテルや高級ホテルコンドミニアムは、自社投資かフランチャイズ契約かに関係なく、しがらみや先入観なく、単純にビジネスとして採算がとれるのか、成長性はあるのか、自社ブランドに貢献するのか、といった合理的な観点から立地や投資先が選ばれている。このため、こうした外資系最高級ホテルや高級ホテルコンドミニアムの開業を、一つの判断材料として、特に、海外の富裕層や投資家は、安心して、中長期的視点で不動産投資を行うことができるのだ。

外資系ラグジュアリーブランドホテルや外資系の高級ホテルコンドミニアムがある国内の観光地・リゾート地は、この先も資産運用先としても生き残る可能性が高そうだ。

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高橋 克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン 代表取締役
三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にて富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『いまさら始める?個人不動産投資』、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』など。

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(株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英)

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