1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

我慢しすぎないことのほうが重要…和田秀樹が「60歳からはタバコを我慢するな」と断言する理由

プレジデントオンライン / 2022年9月13日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mariusFM77

健康で長生きするにはどうしたらいいか。老年医学の専門家である和田秀樹さんは「健康のためにタバコやお酒を控える人がいるが、我慢をしすぎないことが一番重要だ。60歳を過ぎたら無理してやめる必要はない」という――。

※本稿は、和田秀樹『60歳からはやりたい放題』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■60代以降の人はタバコをやめる必要はない

やめたい人が一定数いるのに、なかなかやめられない二大嗜好品といえば、タバコとお酒です。歳を重ねると、健康のために嗜好品を諦める道を選ぶという話を聞きます。タバコやお酒はその最たるものですが、タバコは基本的に「60代以降の人はやめる必要はない」と考えています。

タバコにはガン以外に大きな2つのリスクがあります。

一つは動脈硬化です。喫煙者は非喫煙者に比べると、明らかに心筋梗塞や脳梗塞になりやすい傾向があります。

もう一つのリスクは、肺気腫です。これは、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という機能が破壊される病気です。肺気腫になると呼吸が非常に苦しくなるので、「ガンになってもタバコはやめない」という重度のタバコ好きな人でも禁煙されるケースが多々あります。

60代未満の人であれば、タバコはやめたほうが人生におけるその後のQOLは上がるので、「やめたほうがいいのでは」とアドバイスしたいと思います。しかし、60代以上であれば、話は別です。

■喫煙者と非喫煙者の生存率はほぼ変わらなくなる

過去に浴風会の老人ホームで、喫煙者と非喫煙者の生存曲線を調べたところ、65歳を超えると生存率はほぼ変わらないことが明らかになりました。

なぜこんな現象が起こるのかというと、喫煙によってガンや心筋梗塞になる人は、老人ホームに入る前にすでに亡くなっている可能性が高いからです。ホームに入る時点ですでに何十年もタバコを吸っているのに、肺ガンにも心筋梗塞にもなっていない人は、タバコに強い何らかの因子を持っている可能性が高いです。

60代になって何の病気にもなっていないのであれば、その人自身が喫煙に強い何らかの遺伝子を持っている可能性が高い。ならば、今から節制するよりは、ご自身の体の強さを信じ、他人に迷惑をかけない程度に喫煙したほうが楽しく人生を生きられるのではないかと思います。

■“迫害”を受けている喫煙者の心の支え

そのほかにも、タバコを吸うメリットはあります。タバコを吸うことによる精神安定効果も高いし、昔よりも吸っている者同士で強い連帯感が生まれているという側面もあります。

私はタバコを吸わないのですが、昨今の喫煙者への風当たりは、明らかに強いと感じます。差別といってもいいほどです。そのようなある種の“迫害”を受けている人たちが、喫煙所で日々、連帯感やコミュニケーションを分かち合っています。高齢になってからでも、このメリットは享受できると考えていいでしょう。

健康が気になるが、タバコを吸いたいという人は、最近では電子タバコやシーシャ(水タバコ)といった、新しい喫煙習慣を選ぶこともできます。そのなかにはニコチン・タールが含まれないフレーバーのみを楽しむものや、ビタミンを摂取できるものもあります。過度な期待はできませんが、健康被害のリスクを限りなく抑えた上で、喫煙習慣を続けることもできるでしょう。

我慢しすぎない生き方をしたほうが、人生は健康で長生きできます。「人に迷惑をかけない」範囲であれば、喫煙を無理してやめる必要はないと思います。

■お酒も楽しみにつながる大事な娯楽

嗜好品をたしなむ人々の間にある種の連帯感が生まれるのは、お酒も同様です。そこにはカルチャーがあり、コミュニケーションが存在します。だから私は、お酒も基本的にやめる必要はないと考えています。人とのつながりが薄れていく60代以降、楽しみにつながる娯楽をみすみす手放すことはありません。

もちろん、アルコールには、タバコに含まれるニコチン同様に依存性があり、やめたくてもなかなかやめられません。そして量も増えやすく、肝機能の障害を引き起こす原因になるほか、深刻な“アルコール依存症”のリスクもあります。

タバコもお酒も楽しく適量を守れている範囲で楽しむのがよいでしょう。

■老化に直結するビール、老化防止になるワイン

ドクターの視点から、医学的におすすめなお酒の飲み方をお伝えします。

お酒は、なるべくGI値(グリセミックインデックス)の低いものを選ぶのがコツです。GI値とは、食後血糖値の上昇度を示す指数で、この指数が高いほど、体の老化の大きな原因である「糖化」が高まります。

糖化というのは体の「焦げ」ともいわれ、動脈硬化や肌質に影響があるなど、いわゆる身体的な「老化」に直結するものです。パンをトーストすると、焦げ茶色になりますが、あれはパンが糖化しているからこそ。人体でも同じ現象が起こっており、糖化が進むほど体内の老化は進んでいきます。

お酒についても、体を糖化させる度合いが低いものを選んだほうが、老化防止になります。様々なアルコールのなかで、体を糖化させるGI値が低いのはワインで、一番高いのはビール。私も日ごろから自宅ではワインを飲み、ビールを飲むことはなくなりました。ワインがないお店では、焼酎のソーダ割りやロック、そしてウイスキーのような蒸留酒を飲むことをおすすめします。

グラスにワインを注ぐ
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■ワインは体の酸化=老化を抑える効果もある

また、人間の体の老化には、糖化に加えて「酸化」という現象が大きくかかわっています。人が生きる上で、呼吸して酸素を取り入れることが不可欠です。

少し専門的な話になりますが、酸素が体内で別の分子と結びつくことで、活性酸素を発生させます。活性酸素は体になくてはならないのですが、過剰に増えると細胞を傷つけ老化を促進します。

この活性酸素を抑えるために「抗酸化」という働きが体に起こりますが、年齢とともに抗酸化作用は弱まっていきます。そのため、老化を抑えるには抗酸化作用のある食べ物を積極的に摂取することが効果的です。

ワインには抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれているため、体の酸化を防ぎ、老化を抑える上でも優秀です。

■「一人酒」の機会はなるべく抑えてほしい

昭和を代表する大スター・美空ひばりは晩年、「一人酒」を毎晩の日課にしていたといわれています。彼女はまさに「悲しい酒」を地でいく私生活でした。

お酒はやめなくていいとお伝えしましたが、飲み方に関して、一つだけ気を付けたいことがあります。それは一人酒の機会をなるべく抑えてほしいのです。

和田秀樹『60歳からはやりたい放題』(扶桑社)
和田秀樹『60歳からはやりたい放題』(扶桑社)

年齢を重ねるほど、一般的にはお酒に弱くなります。年齢とともに内臓の機能が衰えるのは、アルコールを代謝する肝臓も同じです。

つまり、歳を取るほど、以前ほどの量を飲めなくなるわけです。若い頃と同じくらいの量を継続して飲んでいるだけならば、それほど大きな問題になることはないと思いますが、飲めなくなるはずの年齢でも酒量が増えているということは、やはり依存症傾向が自分にあることを自覚するべきです。

誰かと飲む分には酒の量が多少増えてもかまいません。仲間と騒ぐとか愚痴をこぼすとかというような「楽しい酒」である場合は、さほど問題を感じません。

問題は、一人酒です。一人酒が多い人ほど、うつ傾向やアルコール依存症の傾向が強いです。「一人で毎日飲まないと眠れない」という理由から大量にお酒を飲むのであれば、お酒に頼るのではなく、病院にかかって眠るための適切な投薬を受けることをおすすめします。

----------

和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授
1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院・浴風会病院の精神科医師を経て、現在、国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、川崎幸病院顧問、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

----------

(精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授 和田 秀樹)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください