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韓国国民「日本は朝鮮半島に関わるな」…アメリカが期待する日韓軍事協力が絶対にうまくいかないワケ

プレジデントオンライン / 2022年9月9日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

中国や北朝鮮の脅威に対抗するため、日本と韓国が連携することはありえるのか。韓国人作家のシンシアリーさんは「韓国では『日本は朝鮮半島に関わるな』という世論が広まっている。こうした世論を抑えて、尹大統領が日本との軍事協力を強化する可能性は絶対にない」という――。

※本稿は、シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■日本の防衛力増強は「韓国にとって悪夢」

以前から、韓国は「米国が日本の防衛力増強を容認する」動きを、強く警戒してきました。つい最近の、まだ尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任する前のものですが、中道とされる韓国日報(4月27日)にも、こんな記事がありました。

〈……日本の普通国家化は、私たちにとっては悪夢だ。しかし、米国は気にしない可能性が大きい。すでに三回も米国は韓国を切り捨てるような決定をしたことがある(※長いので略しますが、1905年、桂・タフト協定、1943年、ヤルタ会談、1950年、アチソンラインの範囲設定のことです)

……今も、私たちは入れないでいるクアッド(QUAD)が、第2のアチソンラインになるのではないかとの懸念がある。米第7艦隊航空母艦が最近、日本海上で自衛隊駆逐艦と4年半ぶりに連合訓練を行ったのも、すっきりしない。次は私たちの国で日米軍事共助がなされる可能性も排除できないのだ……〉

■「ウクライナ侵攻で得をしたのは日本」

アチソンラインとは、ご存じ、米国の防衛ライン設定で、当時の李承晩(イ・スンマン)大統領と米国の外交・安保政策のズレにより、韓国がこのラインから外れたことが、朝鮮戦争(1950年)が始まった一因だと言われています。

そして、日米首脳会談のあとから、同じ内容の記事が急に増えました。つい最近にも、中央日報(6月17日)が、ウクライナ侵攻が日本の防衛力増強のきっかけになったとして、ロシアが戦犯国である日本にだけ得をさせてしまった、これは大きな問題だ、とする趣旨の記事を載せたりもしました。読んでみて、「いや、問題視するの、そこかよ」と思ったりしました。

責められるべきは、ロシアがウクライナを侵攻し、戦争とも呼べないほどの殺戮を繰り返していることでしょう。少なくとも自由民主主義陣営が求めているのは、日本の役割拡大であると、またもや韓国と世界の『ズレ』が明らかになったわけです。

■アメリカは日韓の軍事協力を期待している

しかし、米国は、あくまで『現在』を要求しています。日本側ではあまり話題になりませんでしたが、5月、米国はあくまで将来の話としながらも、日韓相互防衛に言及したことがあります。この件、個人的に、韓国だけでなく、日本としても頭が痛い話ではないか、と思ってはおりますが……当時の韓国側の慌てっぷりは、尋常ではありませんでした。

5月27日の京郷新聞によると、米国国防総省は、日米韓だけでなく、日韓の、さらには日韓の相互防衛オプションについて、もっと話を進めていく、と話しました。米国国防省が、「日米韓」だけでなく、「日韓」の間での軍事協力増進についてここまで公言したのも、また異例です。

まだ具体的な話が出ているわけでもないですし、安保という側面でどれだけ影響するのかも分かりません。でも、個人的に、「米国がどれだけ本気かは知らないけど、今の韓国では絶対に無理」としか思えませんでした。まずは記事を引用してみます。

〈米国国防総省は26日(現地時間)、北朝鮮の弾道ミサイル挑発と関連し、韓米日の三国軍事協力だけでなく、韓国と日本の軍事協力増進を希望するという意を明らかにした。

ジョン・カービー米国防総省スポークスマンはこの日の定例ブリーフィングで、最近、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを含めて三発の弾道ミサイルを発射したことに対する対応措置に関する質問に……「ロイド・オースティン国防長官は、韓米日間の協力増進に常に関心を傾けてきた」とし、「私たちはまた、韓日両国の間に相互防衛のためのオプションを探索してみるよう、勧告している」と話した。

彼は引き続き「24日、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対応して日本航空自衛隊だけでなく韓国軍とも訓練をした」とし「それは三国間軍事訓練だった」と話した……〉

■日米韓協力が絶対にありえない4つの理由

この「日本の防衛力増強」と「日韓相互防衛(軍事協力強化)」において、韓国が米国と足並みを揃えることは絶対にありません。

いくつか理由がありますが、まず第一に、尹政権が公開的に「日本が『正しい』歴史認識を持たないかぎり、日韓はおろか日米韓でも軍事訓練しない」と宣言しています。次に、1997年に決めた韓国政府の公式立場、「例え有事の際でも、日本自衛隊は朝鮮半島に入れない」があります。三つ目に、日本を不信する韓国の世論。最後に四つ目、レーダー照射問題など、まだ何も解決されていない懸案の存在です。

■日米韓共同軍事訓練に否定的な韓国メディア

本稿では、三つ目の「韓国世論の存在」について説明します。これはキリがないので、本書を執筆している時点では最近となる6月あたりのことを紹介したいと思います。

6月11日の日米韓防衛相会談で、北朝鮮のミサイル関連の訓練を三カ国が再開すると合意しました。具体的にいつから始めるのかは分かりませんが、前は普通にやっていたので、準備できるまでそう長くはかからないでしょう。

ですが、この件で、韓国側のメディアは、「また日本が得をした」という記事を出しました。「米国側から、日米韓の共同軍事訓練を要請し、尹政権は(文政権もそうでしたが)反対している」というニュースが何度も報じられていたためか、一部の記事には「韓国は何も得られず、譲歩してしまった」という書き方も見受けられます。

他のメディアの記事によると、今回合意したのは日米韓による北朝鮮ミサイル探知・警報訓練で、具体的な再開時期も未定のままですが(韓国の国防部長官は「具体的に話があった」としていますが、詳しい日程や内容などは分かりません)、京仁(キョンイン)放送OBSは「迎撃訓練に合意した」としながら、「日本の正しい認識が前提条件だとしておいて、日本は何もしなかったのに韓国は応じてしまった」「日本が発表したミサイル情報は間違いが多く、また日本が得をすることになった」という趣旨で記事を載せています。

同じく、「南北対立のおかげで、また日本が得をしてしまった」という趣旨です。いや、得も何も……北朝鮮平和ムードを終わりにしたのは、韓国の大統領なんですが。

韓国と北朝鮮
写真=iStock.com/Harvepino
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Harvepino

■「朝鮮半島の緊張が高くなると、日本は笑顔になる」

北朝鮮に対して路線を変えると、米韓同盟のことをもっと優先していく、と尹大統領は候補だった頃からずっと言っていました。また、それで保守支持層から票を得て、大統領になれました。なのに、今さらなんで日本に怒っているのでしょうか。

CBS(ノーカットニュース)も、「南北の対立が嬉しい日本、アジアの指導者を夢見るか」という実に分かりやすい題の記事で、同じ趣旨の話を記事にしています。

〈……(※日本の防衛力増強のことをいろいろ書いた後)ロイターは去る8日、このような日本の防衛力強化の動きに対し、米国が長らく待ち望んでいたものだと評価した。慶南大学のキム・ドンヨプ教授はこのメディアのインタビューで、「北朝鮮の行動に対する韓国側対応(※尹政権の対北路線)など、朝鮮半島の緊張が高くなると、日本は笑顔にならずにはいられないだろう」と話した。

北朝鮮の核実験準備、韓米合同軍事訓練の再開などは、日本の『普通の国』化を正当なものにする、という説明だ。この媒体は韓日関係改善も、日本には「鬼に金棒」(cherry on top)と見た。日本がより強力な防衛政策で大衆の支持を得ているが、韓国との関係改善はおまけで付いてくるというのだ……(同日、ノーカットニュース)〉

■「日本は朝鮮半島に関わるな」という韓国世論

さぁ、どうでしょうか。韓国軍側は、「域内で日本自衛隊と連合軍事訓練をする方案は検討すらしたことがない」しているし、韓国の国防部長官イ・ジョンソプ氏も「韓米日の共助は、原則としては正しい、しかし、韓米間の軍事訓練と、韓米日間の軍事訓練とは、意味が違う。アプローチの仕方もまた、違うものでなければならない」と話しています。

シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)
シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)

尹政権が「日本が、正しい認識を持つことが必要だ」と話したのと同じです。

別に心配しなくても、こんな状況で日本と韓国の軍事協力がうまくいくはずはないでしょう。困るのは、日本でも韓国でもなく、米国でしょうけど。

なにせ、韓国社会には、「日本は南北統一を望んでいない」とする主張が蔓延しています。これがまた、「日本は朝鮮半島に関わるな」という世論を後押ししています。この主張は、韓国ではほぼ定説になっており、大物政治家の公言からネットのコメントまで、幅広く同じ主張を見つけることができます。拙著でも、何度か取り上げた記憶があります。

■尹大統領が日米韓協力を強化することはない

さっそくですが、以下、サンプルとして、仁済(インジェ)大学統一学ジン・ヒグァン教授の見解(2020年11月30日、釜山日報)を紹介します。

〈……日本は、朝鮮半島問題が解決されて、南北関係が改善されることを望んでいない。日本は、北朝鮮の非核化が行われ、朝米関係が改善され、外交関係が成立したり(※南北はお互いを「国家」として認めていないため、外交関係がありません)、平和体制が樹立されることを望まないでいる。

朝鮮半島が平和になったら、もはや「サンフランシスコ講和条約」(1951年9月)によるシステムから受けていた利益を受けられなくなるからである。このような日本の立場が確認されているだけに、日本を優先するバイデン政権の時代、日米に頼ろうとせず、私たちの統一のための外交がこれまでよりも重要になると思われる……〉

バリエーションは結構ありますが、趣旨は一つ、南北が平和になると、日本は喜ばない、という内容です。

さらに、日本は大陸進出のため、朝鮮半島を狙っているという話もかなり流行っています。2022年の大統領選挙で僅差で敗れた(尹48.6%、李47.8%)共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が、竹島領有権問題を「日本が韓国との軍事衝突を狙って、わざと仕掛けた装置(トリップワイヤー)」と話したりもしました。

さて、こんな世論があるのに、大統領がキャンベル調整官のように『現在』を認め、日米韓協力を強化することができるのでしょうか。北朝鮮関連なら、保守右派が支持してくれるから、なんとかなるでしょうけど。

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シンシアリー(しんしありー)
著作家
1970年代、韓国生まれ、韓国育ち。歯科医院を休業し、2017年春より日本へ移住。アメリカの行政学者アレイン・アイルランドが1926年に発表した「The New Korea」に書かれた、韓国が声高に叫ぶ「人類史上最悪の植民地支配」とはおよそかけ離れた日韓併合の真実を世に知らしめるために始めた、韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。著書に『韓国人による恥韓論』、『なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか』、『人を楽にしてくれる国・日本』(以上、扶桑社新書)、『朴槿恵と亡国の民』、『今、韓国で起こっていること』(以上、扶桑社)など。

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(著作家 シンシアリー)

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