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サムスンの半導体は中国の工場で生産されている…韓国が「中国なしでは生きていけない国」になったワケ

プレジデントオンライン / 2022年9月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sunshine Seeds

米中対立が強まるなか、「経済安全保障」に注目が集まっている。韓国人作家のシンシアリーさんは「韓国では半導体やバッテリーをはじめ、あらゆる産業分野で中国に依存している。尹政権はこのチャイナリスクに一刻も早く対応したほうがいい」という――。

※本稿は、シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

■韓国は中国抜きに「経済安保」はできない

端的に、韓国は中国抜きに「経済安保」ができるのか。個人的に、現状ではできないと思っています。韓国では未だ「経済」と「安保」をそれぞれ別のものとして考える人が多く、例えば米韓首脳会談で「安保」について半導体やバッテリー関連の話が出てくると、「それは経済なのに、なんで安保云々の話をするのか」と反感を示す人もいます。

これは中国に経済を依存し、米国に安保を依存するという、いわゆる「戦略的曖昧さ(どちら側なのかはっきりせず、両方から得をする)」に慣れているからです。

しかし、すでに世界のサプライ・チェーンは再編されつつあるし、特に半導体やバッテリーのように、韓国が世界市場でシェアを取っている分野においては、もはや経済と安保は一つになっています。

■中国の工場と「分業」している半導体生産

この点、韓国は中国への依存が深すぎて、経済安保が語れる状態ではありません。「大きい」や「広い」ではなく「深い」と書いたのは、単に「売る、買う」を語るレベルを超えているからです。中国と韓国は、「分業」が固着しています。

韓国は経済安保の話が出ると、とりあえず半導体とバッテリーの話をしますが、調べてみると、サムスンなども含めて韓国半導体企業は、中国の工場である程度作ってから韓国に送って(これも韓国からすると「輸入」にカウントされます)、そこに相応の工程を加えて完成させるシステムになっています。

半導体生産においても、サムスン電子、SKハイニックスなど韓国企業は、ほとんどを中国の工場でウェハ加工段階まで生産し、それから韓国に輸入してその後の工程(ウェハ切断、包装)を行っています。これは、材料輸入だけでなく完成品輸出の面においても中国市場への依存度が高いという意味です。

■バッテリー生産も中国の工場に頼り切り

関連データがいろんな形で手に入りますが、もっとも分かりやすく書いてあるのは、2022年1月12日の京郷新聞の記事です。記事によると、韓国の中国からの半導体関連輸入は、金額基準で半導体関連輸入全体の39.5%におよびます。

バッテリー分野では、なんと99.3%。これは、そもそも中国で完成させる工程になっており、完成品を韓国が輸入してくるからです。もし何かの理由で、中国がこれらの輸送を遮断すると、韓国の半導体・バッテリー生産プロセスは致命的なダメージを受けるわけです。

週刊韓国(韓国日報の週刊紙、ネット公開2022年5月30日)の記事からもう少しデータを引用しますと、韓国の半導体輸入額(2020年)570億3000万ドルのうち、中国が177億9139万ドル(31.2%)、台湾(20.4%)、日本(13.6%)の順でした。半導体輸出額も、954億6000万ドルのうち、中国が412億ドルで43.2%、続いて香港(18.3%)、ベトナム(9.6%)の順でした。特に、香港の場合は中国と合算してもいいと思われます。

■相手国に完全に依存している「核心輸入品目」

他の分野も含め、韓国が中国に完全に依存しているもの、韓国側の報告書やメディアは「核心輸入品目」と言いますが、これはどれぐらいあるのでしょうか。どこからどこまでを核心とするか、データ集計方式をどうするのかで異なるとは思いますし、代替が効くのか、無形のもの(技術とか)をどうするか、などなどによって見方も変わるとは思います。

ですが、2022年5月時点、日本でいうと日経連にあたる韓国の「全国経済人連合会(全経連、チョンギョンリョン)」が公式に出したレポートなら、ある程度は現状を垣間見ることもできるでしょう。

中国依存が深すぎて「経済安保」を正面から語ることができない レポートは、韓国が、日本から、米国から、そして中国から輸入する「核心品目」はそれぞれ、どれぐらいあるのかを分析したものです。ネットメディア、ヘッドラインニュース(2022年5月30日)の記事がうまくまとめているので、引用してみます。米韓首脳会談の10日後、本当に良いタイミングで良いところを指摘する記事だと言えるでしょう。

■228品目中、172品目を占める中国産

先に結論から書きますと、日本産32品目(14.0%)、米国産24品目(10.5%)、そして中国産172品目(75.5%)でした。

〈ウクライナ事態の長期化と中国上海封鎖(※記事当時、新型コロナにより封鎖状態でした)などにより、グローバル・サプライチェーンの混乱が激化している。この中、韓国にとって重点的に管理が必要な輸入品目の多くが中国産であり、こうした中国偏重現象を解決する案の用意が緊急だとの研究結果が出た。

30日、全国経済人連合会が出した「韓国経済産業の核心物質の現状および示唆点」報告書によると、ここでいう「管理が必要な核心輸入品目」とは、「輸入依存度が90%以上」で、「輸入競争力において絶対的に不利な品目」のうち、「輸入金額規模が最上位30%に相当する」、228品目である。全228品目のうち、中国産品目が172品目で75.5%の比重を占め、日本産品目は32品目で14.0%の割合を見せ、米国産品目は24品目と10.5%の割合を示した。

相手国に対するグローバル・サプライチェーンの安全性が脆弱であると判断される133品目も別途提示されたが、その133品目は中国産品目がほとんど、95.4%で、日本産品目と米国産品目はそれぞれ2.3%水準だった。これらの結果は、昨年の尿素水事態で経験したように、核心輸入品目が中国に集中し過ぎで、韓国全体のサプライチェーンが脆弱になった現実を表してくれる……〉

■韓国では話題にならない「チャイナリスク」

もちろん韓国が中国に依存しているというのもありますが、供給安全性に問題があるとされる133品目の中で、中国は95.4%で、日米の比率は2.3%。韓国にとって、これこそ「チャイナリスク」であるはずですが……不思議なほど話題にならない、誰もこの問題を指摘しない現実のほうが、もっとリスキーに思えます。

この記事も、大手にも紹介するところがあるにはありましたが、うまくまとめてあるのはネットメディアのほうでした。指摘しないというより、指摘してはならない何かの理由でもあるのでしょうか。

明洞
写真=iStock.com/pius99
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pius99

同レポートが分類した日米中それぞれからの核心輸入品目のうち、「中国産」は、電気製品、機械・コンピュータ、鉄鋼、有・無機化合物、ガラス、医療用品、非鉄金属など産業用原材料、マンガン(鋼鉄製造に必要)、黒鉛(電気自動車バッテリーに必要)、マグネシウム(自動車軽量化に必要)などなど、です。品目が多いこともあって、記事は「韓国産業の全ての分野に影響を及ぼすと見ていい」としています。

■韓国の中国依存はあまりに深すぎる

日本産の品目は、電気製品、機械・コンピュータ、石油・石炭、プラスチック、電気製品有機化合物などで、ポリイミドフィルム、半導体ウェハを加工する機械または噴射器。米国産の品目は、石油・石炭、航空機、電気製品、果物、機械・コンピュータなどで、日本と重複する部分もありますが、エネルギー産業への影響がより大きいことが特徴です。

この状態で、半導体やバッテリーなどにおいて、本当に韓国は「自由民主主義陣営においての、経済安保」たるサプライ・チェーンを築くことができるのでしょうか。

確かに、中国抜きで完全にそれができる国があるとは思えません。ただ、韓国の場合、それが深すぎます。広いや大きいなら直せるかもしれませんが、深いとなると、そう簡単には直せないでしょう。

■致命的な遅れを尹政権は取り戻せるか

シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)
シンシアリー『尹錫悦大統領の仮面』(扶桑社)

日本はすでに半導体関連のパートナーとして台湾を選びました。世界的な半導体メーカーTSMCの工場が日本に建てられることが、その代表格でもありましょう。この枠組の中に入る準備をすべき時に、韓国は文在寅政権という大きな停滞に見舞われました。他のことは後回しにして、北朝鮮と仲良くすることだけ話していました。日本も、米国も、誰も、仲良くするなとは言いませんでした。

ただ、「今、それどころじゃないだろう」と、文政権に呆れました。尹錫悦政権は、この致命的な遅れに気づいているのかいないのか、今のところ、他は後回しにして、北朝鮮と仲悪くすることだけ話しています。仲悪くするなとは誰も言っていません。ただ、他にやることがあるだろうと、呆れている雰囲気です。

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シンシアリー(しんしありー)
著作家
1970年代、韓国生まれ、韓国育ち。歯科医院を休業し、2017年春より日本へ移住。アメリカの行政学者アレイン・アイルランドが1926年に発表した「The New Korea」に書かれた、韓国が声高に叫ぶ「人類史上最悪の植民地支配」とはおよそかけ離れた日韓併合の真実を世に知らしめるために始めた、韓国の反日思想への皮肉を綴った日記「シンシアリーのブログ」は1日10万PVを超え、日本人に愛読されている。著書に『韓国人による恥韓論』、『なぜ日本の「ご飯」は美味しいのか』、『人を楽にしてくれる国・日本』(以上、扶桑社新書)、『朴槿恵と亡国の民』、『今、韓国で起こっていること』(以上、扶桑社)など。

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(著作家 シンシアリー)

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