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"洗脳"してママ友の5歳児を餓死させる…「凶悪な女子ボス」は会社にもウヨウヨいる

プレジデントオンライン / 2022年9月6日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

ママ友から精神的な支配を受け、母親が5歳のわが子を餓死させた事件。実刑判決を受けた母に続き、ママ友の裁判が8月に始まった。多くの人間関係の悩み相談などを受けている産業カウンセラーの川村佳子さんは「職場でも友人間でも1対1の関係がこうした異常な支配・服従関係になることはありえない話ではない」という――。

■ママ友に“洗脳”され、5歳児を餓死させた40歳母親

母親が当時5歳の息子を餓死させた――。

2020年、福岡県篠栗町で起こった「福岡・5歳児餓死事件」。母親がママ友から精神的支配を受けた犯行として、日本社会に大きな衝撃を与えた。

母親の碇利恵被告(40)は、今年6月に行われた第一審で、保護責任者遺棄致死の罪に問われ、懲役5年の実刑判決を言い渡された(控訴中)。

一方、母親を精神的に支配していたとされるママ友・赤堀恵美子被告(49)は8月下旬から裁判員裁判が始まり、「指示していません」と法廷で発言。碇被告とその家族の生活全般を支配し、5歳の男の子を餓死させたなどとする起訴内容を全面的に否定、無罪を主張した(審理継続中)。

事件の詳細は、これからの公判で明らかになっていくことになると思うが、この事件が報道された当時から、産業カウンセラーとしてこの2人の被告の異常な関係に注目していた。

「なぜ一人のママ友の言いなりになって、大切なわが子を餓死させるまでに至ってしまったのか?」
「わが子を餓死させる前に、少しでも疑ったり、だまされたりしていることに気づけなかったのか?」
「せめてまわりの人に相談ができなかったのか?」

事件を知った人の中にはそう疑問に感じた人も多いだろう。

ただ、産業カウンセラーとして、多くの女性同士の人間関係の悩みやトラブルの相談を受けてきた身としては、ありえない話ではないと考えている。それどころか、近所付き合いや会社内など人間関係のあるところで頻発している。

■3つのハラスメント攻撃パターンに合致

今年7月、私は、『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)を上梓した。女子ボスとは簡単にいうと「深刻な劣等感を抱え、強い攻撃性で他者を支配しなければいられないほど、自己存在への揺らぎがある人々」のことで、社会に思うままにのさばっている。

川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)
川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)

母親・碇被告を精神的に支配していたとされるママ友・赤堀被告は、まさにその典型であり、今回の事件は、女子ボスハラスメントの最悪な典型事例といえる。ママ友同士であった赤堀被告と碇被告は、どのようにして支配・服従関係に陥っていったのか。ここで、ハラスメントの攻撃パターンをいくつか紹介したい。

1つ目に、「あんたの夫は浮気しているから離婚したほうがいい。ボスが証拠を集めているから、夫には問いただすな」など、嘘をつく点が挙げられる(碇被告の弁護人が、碇被告の裁判内で語った、赤堀被告が碇被告への発言事例、以下同)。

これは、ハラスメントの攻撃パターンによくあることで、人間関係を切り離していく「三角コミュニケーション」に該当する。味方を装いながら、今ここにいない第三者の名前を利用し、周囲との人間関係から孤立させるやり方だ。

今回のママ友・赤堀被告は、まずは夫との人間関係を破綻させようと思ったのだろう。でっちあげた夫の浮気話で碇被告を不安に陥れ、自分だけを頼るように徐々にコントロールしている。ちなみに、報道によると、赤堀被告が語ったという「ボス」もでっちあげた架空の人物とみられる。

2つ目に、「あんたは子供に甘い。恩を仇で返すな。何のために生まれてきたのか。死ね、海に沈める」など、精神論的なところで攻撃をしている点である。

これは、ハラスメントの攻撃パターンである「人格攻撃」に該当する。何がどう子供に甘いのかといった具体的な話し合いができないのであれば、一方的な攻撃である。

また「死ね、海に沈める」などは、人を傷つける意図がある暴言である。相手との「対話」が成立しない一方的な攻撃は、人格攻撃に該当する。人格攻撃は、相手を恐怖の底に突き落とし、委縮させていく立派な暴力である。

そして、3つ目に挙げる点は、身体的暴力である。机を蹴り飛ばす、羽交い絞めにするなど、身体的暴力はハラスメントの攻撃パターンの中で最も悪質である。

今回の事件は、子供にまで影響が及んでしまった。これは、女子ボスハラスメントのなかでも最悪の事例である。ママ友・赤堀被告は母親である碇被告に対しても叩く、土下座をさせるなどの暴力を振るっていたが、最終的に子供に向かってしまったのは、非常に残酷な出来事である。男児を投げ飛ばし、必要な食事を与えず、身体的暴力を続けた罪は、あまりに重い。そして、死に至らしめたことは、最悪の結末である。

精神・身体的暴力は、人間から判断能力を奪い、尊厳を奪い、命まで奪う犯罪である。女子ボスのターゲットになってしまうと、人間としての尊厳を失い、大切な家族や友を失い、職場を失い、命まで失いかねないことを、知っていただきたい。

■あなたのまわりに存在する女子ボスにご用心

こうした女子ボスの存在は決してひとごとではない。週刊誌やワイドショーの中にだけ存在しているわけではない。女子ボスは、ママ友だけではなく、会社内や学校の友人、遊び仲間などにも一定の割合で存在する。

例えば、会社内の事例でいえば、いつも攻撃的でマウントをとる女子、新人が入ってくるたびにいじめ続ける女子、同僚なのに上司面する女子など、といった例である。

ここで1つ、典型的な女子ボスとみられる「お局様」の実例を紹介する。

さとみさんは、せっかく就職した宿泊施設を退職しようか悩み、筆者の相談室を訪れた。20代半ばのさとみさんは、職場の配置転換に納得がいかず、思い悩んでいた。入社当初は「経験を活かして頑張ってほしい」と言われ、フロント業務を頑張っていたが、突然フロント業務から温泉の清掃部署に配置が転換された。

風呂場の掃除をする中居さん
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yamasan

英語が得意で、前職でもフロント業務の経験を積んできたさとみさんは、なぜ自分が清掃部署に変更になったのか、納得ができずにいた。自分の経験を活かせず、やりがいを失っていたさとみさんは、思い切って人事部長に相談した。

返事は、「しばらくは全く経験のない分野の仕事も頑張ってみて」という内容だった。落ち込んでいた帰り道、さとみさんは人事部長とある女性が手をつないで一緒に歩いている姿を目撃した。その女性は、同じ宿泊施設のフロントで働く30代の女性だった。その女性は、社内でもお局的存在で有名であり、職場の男性上司と不倫の噂が絶えないことでも有名で、新人のさとみさんの耳にも噂が聞こえてきていた。

「まさか人事部長と……」

さとみさんは、まるで走馬灯のようにいろいろなことを思い出した。英語で接客をするたびに聞こえてくる舌打ちの音、フロントに出ると消されてしまうエアコン、希望を出したシフトは勝手にいじられる始末。すべて、お局的女性からの陰湿な嫌がらせだった。

さとみさんは半信半疑ながらも、しかし嫌がらせを受けているという確信は持って、直属の主任に相談した。

主任からの返事は実情を明かしてくれた。

「お局の彼女、人事部長の不倫相手で、でもお互い結婚しているからダブル不倫で……。自分が気に食わない女性がいると、部長に頼んで異動させるんだよね。さとみさん、英語ができるから嫉妬されたんだと思う。前にも、それで異動させられた女性がたくさんいるから……」

もみ消されてきたさまざまな事案があることは、想像するに難くなかった。人事部長の不倫相手となって、自分の思うように職場の人事を操作する。こうした“不気味な地位”を利用して、パワーハラスメントは行われていた。

■女子ボスからの攻撃回避法

女子ボスのターゲットになったら、またはされそうになったらどうしたらいいのか。私はこれまで、女子ボスによるあらゆるハラスメントの相談に対応してきたが、ハラスメントの問題は「誠実さと正論」だけでは解決できないことを知った。

多種多様なやり口を使って攻撃をしてくるのだから、当然と言えば当然だ。そして、ハラスメントは言わば「心理戦」であることも知った。自分の心を守るための技を身に付ける、見えない「心の武器」を持つことを教えてもらった気がする。

女子ボスのターゲットになってしまった場合、女子ボスのいる環境からすぐにでも離れることが一番の解決策だが、かといってそう簡単にはいかないのが現実である。

「すぐに会社は辞められない」

きっと多くの方が、そう思うだろう。ここからお伝えしたいことは、もしあなたが女子ボスのターゲットになってしまったら、悔しさやプライド、誠実さはいったん脇に置き、自分の身を守ることに集中してほしいということだ。

まずは自分自身が落ち着くこと、そして女子ボスや組織の人間関係をよく観察してみることだ。戦うためには、何よりも相手を知ることが大事だからだ。そうすると、女子ボスの精神的弱点や、組織の人間模様がクリアに見えてくる。

女性のシルエット
写真=iStock.com/Koldunov
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Koldunov

まずは、あなたの心を守ることが一番だと考え、敵の弱点を見抜き、女子ボスより精神的に有利に立つための「心の技」を身に付けていただきたい。

① 必要以上に関わらない

女子ボスは、相手の話を「受容する」という姿勢が欠けているので、まともに会話ができないことが多いといえる。そういった人とは、必要以上に関わることを避け、会話そのものを減らしていくことが重要である。

しかしそれでも、同じ職場の場合は、毎日顔を合わせることになり、定期的にどうしても顔を合わせなければならない人もいるだろう。こういった場合は、とにかく「会話を広げない」ことである。挨拶だけはにこやかに、元気よく。2人きりになったら、とにかく仕事に集中する。もし、何かを聞かれて答えなければならない状況になったときなどは、短く穏やかに、そしてはっきりと言い切る。この「言い切る」ということが、とても大事である。

② 情報を与えすぎない

女子ボスは、自身の心の中が常に不安で揺らいでいるため、他人に対して根掘り葉掘りさまざまなことを尋ねてくる。例えば、家族構成や休日の過ごし方など、個人的なことも含めてだ。うっかり素直に何でも話してしまうと、思わぬところを狙われ付け込んでくる可能性が高まる。平気でプライバシーの侵害をしてくるため、こちらが情報を与えすぎないことだ。「情報を与えないこと=境界線を引くこと」になるので、聞かれたことに答えすぎないことが大事である。

③ 「リアクションワード」で事前準備

相手からの攻撃的な言葉や嫉妬の矢は、突然やってくることが多い。あまりにも突然のことに、とっさに言葉が出てこないこともあるだろう。また、耳を塞ぎたくなるようなひどい言葉や態度に衝撃を受けて、頭が真っ白になってしまうこともある。そして、しばらく時間が経過してから自分の気持ちに気づき、後からだんだんと腹が立ってくるということも多いのではないだろうか。

そんなときのために、「リアクション」を考え準備しておくことは、自分の身を守るための技の1つである。

人格を否定するような言葉が飛んできた時のために、重みのある「リアクションワード」を準備しておくといい。そしてあなた自身も、自己主張ができたと思える「スッキリ」できる言葉だとさらにいいだろう。

具体的には、「は?」「こわ!」という短いワンワードや、「今の言葉は少々失礼ですね」といった責め立てるわけでもない、怒りをぶつけるわけでもない、でもスカッとするあなた専用のリアクションワードを、自分のために準備しておくことを強くおすすめしたい。あなたの身を守ることが、まずは何よりも大事なのだから。

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川村 佳子(かわむら・けいこ)
産業カウンセラー
北海道生まれ。一般社団法人日本産業カウンセラー協会認定「産業カウンセラー」。日本人間性心理学会所属。上智大学グリーフケア研究所所属。防衛省、国土交通省、財務省をはじめ、国立機関や一般企業にて産業カウンセラーとして臨床経験を積み、現在航空自衛隊外部カウンセラー。死別の苦しみや痛みをケアする「グリーフケア」の普及啓発にも積極的に取り組む。心理臨床オフィス「サクラメント函館東京カウンセリングオフィス」代表。著書に『嫉妬のお作法』(フォレスト出版)がある。

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(産業カウンセラー 川村 佳子)

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