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小学校高学年からジワジワと進んでいる…40歳以上のほとんどの人が「心筋梗塞」に気をつけるべき理由

プレジデントオンライン / 2022年9月12日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peterschreiber.media

40歳以上のほとんどの人には「心筋梗塞」のリスクがある。循環器内科医の池谷敏郎さんは「心筋梗塞の原因である動脈硬化は10代から始まっており、10~20年かけてリスクが高まっていく。とくに、少しの運動で息切れする人や、慢性的にふくらはぎがむくみやすい人は注意したほうがいい」という――。(第1回)

※本稿は、池谷敏郎『若い体、いつまでも! 心臓セルフメンテ』(工パブリック)の一部を再編集したものです。

■生活習慣の積み重ねによって発症する心臓病

心臓の病気も、生活習慣病です。食の不摂生をはじめとした、不健康な生活習慣の積み重ねによって発症します。近年、動脈硬化を原因にした、狭心症や心筋梗塞などの「虚血性心疾患」が増えています。虚血性とは血液の量が不足することで、どちらも心臓病の代表的な病気です。

とくに、心筋梗塞の場合は「突然死」をともないます。動脈硬化は、動脈の血管壁が硬く厚くなって、弾力性を失った状態。血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪の過剰、加齢にともなう生理的な要因のほか、ないしはHDL(善玉)コレステロールの減少による脂質異常症、高血圧、糖尿病(高血糖)、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどさまざまな危険因子が重なることでその進行が早まります。

厚くなった血管の内腔(ないくう)は狭くなるので、血流の通りが悪くなります。その部分にはもっと強い圧力(血圧)が加わり、血管壁は傷つきやすい状態になり、さらに硬く厚くなっていきます。

動脈硬化にはいくつかの種類があり、心臓や脳などの太い動脈で起こりやすく、血管事故につながるのが粥状(じゅくじょう)動脈硬化(アテローム性動脈硬化)で、いわゆる動脈硬化はこの病態を表します。粥状動脈硬化が冠動脈に発生すると、心筋に十分な血液量を送れなくなり、心筋が酸欠状態におちいります。

内腔が狭くなった冠動脈の内膜に、LDLコレステロールなどが沈着して粥状の瘤(こぶ)(プラーク)をつくり、血管をさらに狭くしたり詰まらせたりします。

■自覚症状なくいきなり発症することが多い

血液の供給量が減った心筋は、酸素不足を招きます。狭心症は、酸欠によって胸が痛くなる病気ですが、胸痛以外にも背部痛や圧迫感、さらに歯痛、上腕の痛み、などさまざまな症状が生じます。酸素の需要と供給のバランスが改善されれば症状は消え、心筋の働きは回復します。一時的に痛みなどの症状があっても、心不全にまではなりません。

ただし、冠動脈の狭窄(きょうさく)が進み、心筋の酸素不足が慢性化すると心不全になる可能性があります。とくに、プラークが傷つき、血栓によって冠動脈が閉塞(へいそく)してしまうと、心筋は大きなダメージを受けて心不全を発症してしまうのです。これが、心筋梗塞です。

心筋梗塞は冠動脈が詰まって、心筋にまったく血液が届かなくなる病気。心筋は酸欠におちいり、壊死(えし)してしまいます。多くの場合、自覚症状がなく冠動脈硬化は進行し、ある日突然に心臓発作に襲われて命を奪われます。栄養素と酸素の欠乏で、心筋が急速に壊死を起こしてしまうのです。

発作時の胸の痛みや息苦しさは、迅速な治療により改善しますが、たとえ命が助かったとしても、壊死した心筋は元に戻らず、脳卒中と同じで寝たきりにつながる大きな後遺症が残ることもあります。心筋梗塞は狭心症が悪化して生じると考える人が多いようですが、実際は、狭心症の自覚症状を感じないで、いきなり発症することが多いのです。

■40歳を超えると大半の人が動脈硬化状態になっている

一般的に、狭心症は冠動脈に80%以上の狭窄が生じる場合に発症します。ところが、プラークは傷つきやすいため、たとえ冠動脈の内腔を占めるプラークが小さく、狭窄が軽度であったとしても血栓を生じる原因となってしまうのです。悪しき生活習慣や生活習慣病が改まらなければ、たとえ小さなプラークでも、とても傷つきやすく不安定な状態になります。

動脈硬化のイメージイラスト
写真=iStock.com/Rasi Bhadramani
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rasi Bhadramani

動脈硬化は、10~20年もの期間をかけて進行します。早い人で、小学校高学年から始まっています。40歳を超えると、大半の人の血管が動脈硬化状態にある、といわれています。20代、30代のころから生活習慣が乱れていれば、動脈硬化は自覚症状がないままに進行の速度を上げ、老化の分かれ道にたたずむころになると、いつ血管事故や突然死に襲われてもおかしくない、「完成された動脈硬化」が現れるようになるのです。

狭心症も心筋梗塞も、30代から加齢とともに増加し、好発年齢(発症しやすい年齢層)は男性では60代、女性は70代。狭心症の発症数は、男女間に違いはありませんが、心筋梗塞は男性で多く発症します。40歳になったら、動脈硬化はすでに始まっているとみて、積極的に生活習慣の改善をしたり、医療機関での検査を受けたりしましょう。

■息切れや動悸を「歳のせい」にしてはいけない

階段や坂道で息が荒くなったり、息が切れたりする──少し前までは呼吸を乱さずにできた行動で、息切れがするようになったら、「心臓不安」のサインである可能性が高い、とみてよいでしょう。

息切れや動悸(どうき)などは、加齢にともなう生理的な心肺機能や筋力の低下でも起こります。これをただただ「歳のせい」と思って放置すると、心臓の病気を見逃してしまうことになります。老化による息切れは、運動不足によるものも少なくありません。

階段や坂道を上がるなど少しきつい動きをするとき、体は多くの筋肉を瞬時に動かすために、大量のエネルギーを消費します。呼吸で酸素を取り入れるのですが、激しい運動ほど酸素を多く必要とします。そのために、呼吸が荒くなります。日ごろから運動不足だと、血液を送り出す心筋の力が弱くなっているので、息切れを起こしやすくなるのです。

何もしていないときに、呼吸が速くなり息が切れることがあります。これは不安やストレスに起因していることも考えられます。こうした息切れが加齢などの生理的なものなのか、あるいは心臓不安を示すものなのかを見分けることが大切です。「息切れがひどくなってきた」「ちょっと歩いただけで息苦しくなってきた」など、息切れの症状の悪化がみられる場合、心不全などの心臓病の可能性が高くなります。

胸に手を当てる男性
写真=iStock.com/Staras
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Staras

■体が発している「心臓不安のSOS」

症状の悪化は、多くの場合、心臓や肺の病気が原因で、血液中の酸素が不足して引き起こされています。心臓は呼吸の乱れだけでなく、体の各部位の痛みや変調などで心臓不安のSOSを出しています。

●痛み

狭心症の場合、左側の胸部に締めつけられる痛みや圧迫感があります。階段や坂道を上がるときや、重いものを持ち運んだりするときに生じます。心筋梗塞でも前兆として胸痛や背部痛、歯痛が起こることがありますが、大半の人は自覚症状も前兆もなく突然、発作に襲われます。

●むくみ(浮腫)

血管やリンパ管(静脈につながる)を通して全身をめぐる水分がそこから漏れ出して、皮膚の下に溜まることで起こります。

下肢をめぐる血流は、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用で押し上げられ、心臓に戻ってきます。デスクワークが多い人だと、ふくらはぎの筋肉を動かすことがあまりないので、血流は重力の影響を受けて下肢で滞ってしまいます。そのために、血管から漏れる水分も下肢に溜まってしまい、脚がむくみます。夕方になると脚がパンパンになるのは、水分が下半身にどんどん溜まってしまうからなのです。

むくみは、塩分や糖分の過剰摂取にともなう水分の摂りすぎが原因となって生じることがほとんどです。とくに、塩分の摂りすぎは、むくみに直結します。体には塩分濃度を一定に保つ働きがあり、塩分を摂りすぎると、それを薄めるために水分を溜め込んでしまうからです。

■慢性のむくみはすぐに医師に相談したほうがいい

池谷敏郎『若い体、いつまでも! 心臓セルフメンテ』(工パブリック)
池谷敏郎『若い体、いつまでも! 心臓セルフメンテ』(工パブリック)

さらに、運動不足は、第2の心臓といわれるふくらはぎの筋力低下を招き、太もものむくみの原因となります。これらを原因とするむくみは一過性で、生活習慣を見直せば比較的すみやかに改善することができます。

心臓の病気が疑われるのは、原因となる食生活や運動習慣を改善してもなかなか治らない慢性のむくみです。下腿(かたい)の前面(向こう脛(ずね))や足首、足の甲を指で押すと、指の跡ができるようなむくみが慢性的に続きます。むくみは心不全の特徴的な症状で、全身に水分が溜まっている状態を示しています。

1週間で2キロ以上の体重増加がみられることもあります。むくみに加えて、横になると咳が出たり息苦しくなったりもします。この場合にはできるだけ早く、循環器内科に相談することをすすめます。

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池谷 敏郎(いけたに・としろう)
池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。

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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)

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