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だから「会議はムダ」と思ってしまう…日本全国で発生している「残念な話し合い」5つのパターン

プレジデントオンライン / 2022年9月13日 14時15分

イラスト=『話し合いの作法』より

なぜ「話し合いは苦手」と感じる人が多いのか。立教大学の中原淳教授は「それは『残念な話し合い』をイメージしているからだろう。日本全国では5つの『話し合いに関する病』が発生している」という――。

※本稿は、中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■「残念な話し合い」5つの病

我々が「話し合いとはどういうものか」をイメージする際、それらは「残念な話し合い」ばかりというのが、多くの人々の印象ではないでしょうか。特に、次の5つの「話し合いに関する病」が、日本全国で発生しているように感じます。

①とりあえず、かみついちゃう病
②対話ロマンティシズム病
③みんな違ってみんないい病
④アンケートフォームで意見すいあげちゃう病
⑤誰もついてこない病

以下では、これらの詳細をそれぞれ見ていくことにしましょう。

■論破が止まらない「とりあえず、かみついちゃう病」

「とりあえず、かみついちゃう病」というのは「対話のフェイズで、いったん、相手の意見を受容すること」ができず、ただちに「否定」したり、反論したり、最悪の場合には「論破」してしまう症状です。

相手がどんな意見を言っても、「いや、そうじゃなくない?」とか、「ていうかさ、それ、おかしくない?」と否定や反論を繰り返します。相手の意見をいったん飲み込むこと、受容すること、解釈することが、できません。

この病にかかっている人には、3つのケースがあります。1つめのケースは、自分自身にあまり自信がないため、否定を繰り返すことで自分を保とうとするケースです。2つめのケースは、常に自分自身が相手よりも優位に立たなければならない、と思い込んでいるケースです。

3つめのケースは「よかれと思って、否定や反論」を繰り返しているケースです。「話し合いとは、議論を戦わせること」なのだから、自分の意見をただちに表明することは「相手への貢献」だと思っているのです。

話し合いで最も大切なことは、まずは、お互いの意見を表出させ、いったんは受容することです。それを行わないため、この病に罹患(りかん)している人が多い話し合いでは、雰囲気が悪くなります。

あなたの周りには「すぐに相手を否定したり、論破したりする人」はいませんか?

■話すこと自体が目的「対話ロマンティシズム病」

一言で言うと、「対話」に一種のロマンティシズム(あこがれ)を抱いている人に起こる病です。その症状は、「対話が大切だ」と言って、ひたすら対話だけを行い、そこから議論や決断に向かわないことです。

【図表2】「対話ロマンティシズム病」
イラスト=『話し合いの作法』より

対話をすることが「自己目的化」してしまっている、と言ってもいいかもしれません。あるいは、対話をしている自分たちに陶酔してしまう。話し合いにおける「対話」のフェイズは、あくまで、その先に「議論」や「決断」、そして「物事を実行」していくことが含まれなければならないのに、そこには、なかなか目が届きません。

実際、対話をしているだけでは、意見のズレがずっと表出しているだけで、いつまで経ってもわかり合えません。もちろん、結論にたどり着くこともできなければ、そこから物事が前に進むこともありません。何かを決めるためには、必ず「議論する」「決断する」というプロセスが必要なのです。

あなたの周りには「対話ロマンティシズム病」に罹患している人はいませんか?

■選択肢が増えるだけ「みんな違ってみんないい病」

これは、対話で表出するさまざまな意見の違いを、いったん自分の中で咀嚼して、その意味を考えることをせずに、「みんな違って、みんないい」を決め込んでしまう病的状態です。

【図表3】「みんな違ってみんないい病」
イラスト=『話し合いの作法』より

ライトな症状に「いいね、いいね病」「それな!病」という「亜種」があります。ソーシャルメディアの「いいね!」をつけるがごとく、若者の流行語である「それな!(相手の言ったことに同意・共感を示す用語)」を連発するがごとく、「みんな違って、みんないい」を決め込みます。

しかし、「みんな違って、みんないい」では、どれだけ対話をしても「相対主義(物事の価値は、それぞれ違うと考える考え方で、1つの結論には至らない)」に陥るだけです。いつまで経っても何も決まらなければ、どれだけ待っても、物事が先に進むことはありません。

話し合いとは、対話の後に、「決断(議論)する」フェイズに入らなければいけません。でなければ、いつまで経っても決まらないからです。「いつまで経っても決まらない病」と言ってもいいかもしれません。

あなたの周りには「みんな違ってみんないい病」に罹患している人はいませんか?

■民主的なふり「アンケートフォームで意見すいあげちゃう病」

グループで物事を決めるときに、しっかりと「対話」をしないで、強引にアンケートフォームなどを用いて意見をすいあげてしまう症状です。経験の浅いリーダーなどが罹患しやすい傾向があります。

【図表4】「アンケートフォームで意見すいあげちゃう病」
イラスト=『話し合いの作法』より

まず「アンケートフォームで意見すいあげちゃう病」は「独裁」ではありません。この病に罹っているリーダーは「話し合うのは面倒くさい」と思っているものの、しかしながら同時に、「独断と偏見で物事を決めてはいけない」ことは、頭ではわかっています。ですので「民主的だと思われる手段」を「形式的」に用いて意見をすいあげてしまうのです。

その結果、そうした人たちが好んで使うのが、グーグルフォームなどの無料アンケートフォーム(ツール)です。「アンケートをつくったので、そこに意見を書いてください」「ここに、はい、いいえを回答してください。理由も入れておいてください」として、URLを共有します。締切が来たら、「こんな意見が出ていましたので、こうすることにします」と、それだけで話し合ったことにしてしまいます。

アンケートフォームはすぐつくれるし、集計も早くて、集計した結果がグラフにもできるので、見栄えもいいところがあります。あたかも「きれいな結論」が出たかのように思えます。

しかし、この決め方はあまりにも「形式的」です。AとBという選択肢があったら、当然両方にメリット・デメリットがあり、AとBそれぞれに、主張した人の思いがあります。しかし、この症状のもとでは、そうしたものが共有されておらず、結果だけがグラフで出力されます。そこに腹落ち感や納得感が得られないケースが多々あります。

結局、物事は決まったけれど、誰も従わない。決まったことをフォローするモチベーションがわかない、といった事例が生まれます。

あなたの周りには「アンケートフォームで意見すいあげちゃう病」の人はいませんか?

■話し合いが無駄になる「誰もついてこない病」

議論を通じて、「これから何をするか」「どんなルールにするか」などを決断した後には、必ず「自発的フォロー」が必要です。

自発的フォローとは、自分と違う意見が結論になったとしても、納得して、自発的に決まったことに貢献することです。それがなければ、民主的なプロセスを経て決まったとしても、物事はいっさい前に進みません。話し合ったこと自体が無駄になります。

【図表5】「誰もついてこない病」
イラスト=『話し合いの作法』より

決まったはいいけど、誰も決定に従わないという「自発的フォロー」の欠如が散見されます。「これで行こう!」といざ決めても、振り返ったら誰もいない……。そんな病が、特に若い人の集まりで非常によく起こります。

私のゼミでも、こうした事態は頻発します。だから物事を決めるときには、「決めたことは必ず自発的にフォローしてくださいね」と、しつこく言うようにしています。

あなたの周りには「どんなに決めても、自発的にフォローしない人」はいませんか?

■5パターンが悪化した「対話ゼロで、ただちに多数決病」

以上で見てきた病が進行すると、「究極の病」にかかってしまいます。それが、「対話ゼロで、ただちに多数決病」です。あなたのチームが、次のようなプロセスにはまっていたら、注意が必要です。

①「個人で考えをまとめること」をせず、意見をお互いに言わない
②意見を言ったとしても、誰かがすぐに全否定して立ち消えてしまう
③「たまたまふってわいた意見」に、皆で形式的に同調して、集団で「いいね、いいね!」と騒ぎ出す
④「とりあえず、多数決取ろう!」と誰かが言い出す。「決め方」について考えることなく、安易にアンケートフォームを使って意見を集める
⑤しかし、結果には、あまり納得感がない。方向性が決まった後で、具体的に物事を実行していく段階になると、不平や不満がプスプス生じる
⑥最終的に「私は知らない、関係ない」と言い出すメンバーが出てくる

中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)
中原淳『話し合いの作法』(PHPビジネス新書)

これでは「物事が決まっているようで、決まっていない」「決まってはいるんだけど、動かない」という状態になり、手に負えません。メンバーからは愚痴がでます。話し合いなんか無駄だ。決まっても、動かない。だから「話し合いなんか、意味がない!」……。

相当な重症ですが、少なくない人々が、この「対話ゼロで、ただちに多数決病」に罹患している気もします。誰かが「とりま、多数決でしょ」と言いはじめたら、危険な兆候です。

しかし、こういうさまざまな病、症状に罹患しているからといってあきらめてはいけません。これから話し合いの作法を学び直していけばいいのですから。

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中原 淳(なかはら・じゅん)
立教大学経営学部教授
東京大学教育学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター、米MIT客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。『職場学習論』(東京大学出版会)など著書多数。

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(立教大学経営学部教授 中原 淳)

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