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「サッカーを続けながら難関中学合格」と聞いて"ウチの子もやればできる"と二兎を追う家庭を待ち受ける悲劇

プレジデントオンライン / 2022年9月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

中学受験と習い事・スポーツの両立は可能なのか。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「サッカーや野球など団体スポーツを続けながら、塾に通って難関中学に合格する子供もいますが、それはもともと特別に地頭の良い子であることが多く、あまり参考にならない。どちらもやらせたがる親がいるが、結末はイマイチとなるケースが目立つ」という――。

■中学受験に挑む子が続けてもいい習い事、ダメな習い事

近ごろの小学生は、本当に忙しい。低学年、あるいは未就学児のときから水泳、体操、ピアノ、英語、公文、そろばん、プログラミング……と、さまざまな習い事をかけ持ちしている。そこへ「大手塾の人気校舎は低学年から入れておかないと、4年生からでは入塾できないらしい」とどこからか噂が広まり、低学年からの塾通いが急増している。

子供の可能性を信じて、いろいろなことを経験させること自体はいいことだ。しかし、1週間がすべて塾や習い事でスケジュールがぎっしり詰まってしまっている状態は、さすがにやらせ過ぎ。そういう状態になってしまうと、子供は習い事を楽しむどころか、決められたスケジュールをこなすだけになってしまう。

小学生の子供には、何もしないぼーっとした時間が必要だ。その時間にこそが、想像力が育まれる。また、自然の中で遊ぶことも大切だ。これらの身体を使った経験が考えを巡らせるベースとなる。近年、思考力を求める入試問題が増えている中学受験において、この“子供なりの経験”がとても重要になる。思考力とは、「あ、あのときにやったことと似ているな」「前に見たことがあるな」と自分の経験と今ある知識を使って考えを広げ、深めていくことだからだ。

■受験と団体スポーツの両立は非現実的

一般的に中学受験の勉強は、小3の2月から始まる。大手進学塾の受験コースがその時期からスタートするからだ。ただ、先にも述べた通り、近ごろは低学年から塾に通っている子も多い。1週間すべてが塾と習い事で埋まってしまっているのは論外だが、小4のうちは塾も週2~3日なので、習い事1つか2つを並行して続けている子は少なくない。実際、その程度であれば受験勉強にも差し障りはない。

ところが、小5になると状況は変わってくる。塾に行く日が週3~4日になって学習量が増えることに加え、学習内容に抽象的な概念の理解が盛り込まれ一気に難しくなる。そこで家庭でしっかり振り返りをする時間が必要になる。

感覚としては、小4のときよりも学習量が1.5倍に増える。そうなると途端に習い事との両立が難しくなる。ひとくちに習い事といっても、いろいろなものがあるが、特に両立が難しいのがサッカーや野球、チアリーディングなどの団体スポーツだ。団体スポーツは学年が上がるほど試合数が増え、忙しくなる。一方、受験勉強も学年が上がるほど、授業コマや模試の数が増える。

「うちは受験勉強だけでなく、本人の好きなこともやらせたい」
「うちの子は体力があるから大丈夫」
「○○くんは6年生の終わりまでサッカーを続けながら、難関校に合格した」

スポーツジャージを着てサッカーボールを蹴る少年
写真=iStock.com/Ljupco
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ljupco

よくそう言って、どちらもやらせたがる親がいるが、私は勧めない。それができた子もごく少数いるが、それはもともと地頭の良い子であったりして、あまり参考にならない。現実は、毎日のやりくりが大変になり、スポーツを頑張れば、疲れて勉強ができなくなり、勉強を頑張れば、集中力が切れて競技のパフォーマンスがうまく発揮できなくなり、どっちつかずになる。

子供の体力にも限界がある。「頑張ればなんとかなる」「やればできる」といった精神論は通用しないのだ。両方をつぶす恐れもあり、子供の自己肯定感は崩壊する。

私は、もし中学受験をする覚悟を固めたのであれば、こうした団体スポーツは小5の夏が終わったら、一度休むか辞めること勧めている。なかにはその時期に休むのは、チームに迷惑がかかるなど難しいという場合もあるだろう。それでも、どんなに遅くても小6になったら一度離れるべきだと思う。

ただし、それは受験の成功を第一に考えた場合だ。「わが家は何がなんでも○○中(御三家といった難関校など)に入れたい」と高い目標があるのなら、受験勉強に専念したほうが賢明だ。

そうではなく、子供が一生懸命に打ち込んでいることを応援したい。でも、中学は公立ではなく、高校受験がない私立中高一貫校に通わせて、その後も好きなことが伸び伸びできる環境を手に入れたいというスタンスなら、志望校のレベルを下げて無理のない中学受験をすることも可能だ。

つまり、志望校のレベルによって、続けるかどうかの判断が分かれるということだ。どちらを選ぶかは、親が決めるのではなく、必ず子供の気持ちを聞き、親子でしっかり話し合う必要がある。

■ピアノや水泳は気分転換になるならOK

一方、ピアノや水泳といった個人の習い事は、その子にとって気分転換になるのであれば続けさせてもいいだろう。例えば、ピアノなら15~30分くらい無心に弾かせてあげて、メリハリをつけて勉強に取り組ませたほうが効果は高い場合もある。

ただし、レッスン日が多かったり、発表会などで時間を取られてしまったりするのであれば、一時期は休んだほうがいい。水泳も週に1~2回の短時間、体を動かす程度ならリフレッシュになるが、選手コースなどバリバリに練習させる場合は、受験との両立は難しい。

プールで泳ぐ女の子
写真=iStock.com/hanapon1002
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hanapon1002

では、何を基準に判断をすればよいか。小5で次のような状態になったら、無理がたたっていると判断し、習い事を休むかやめるか選択を急いだほうがいい。

① 宿題が終わらない(忙しすぎる)
② すぐに眠くなる(体力の限界)
③ 成績が下がり続ける(勉強量の不足)

■中学受験に英語はいらない

学習系の習い事は、中学受験にも生きると考え、ズルズルと続ける家庭も多い。しかし、同じ勉強でも、公文やそろばんといった習い事と中学受験の勉強は中身が異なる。子供が好きで通っていて、なおかつ受験勉強も無理なくできているというのであれば続けてもいいが、そうでない場合は、ある程度のレベルまで達したらやめるという選択を勧める。

例えば公文ならFレベル(小6レベル)、そろばんなら5年生までに1級までとれそうなら続け、とれそうもなければやめる、といった具合だ。

英会話は中学受験の入試科目にないので(一部の英語入試は除く)、必ずしも続ける必要はない。本人が好きで、週1回の英会話教室に通うのを楽しみにしているというのなら話は別だが、たいていは「今の時代は英語が必要だから」と親の思惑で習わせているのではないだろうか。

十分な国語力があって、なおかつ時間にも余裕があるというのなら続けてもいいが、母語があやふやな時期に英語学習に多くの時間を使うと母語の伸びが阻害される。中学受験に限らず、勉強をする上で一番大切な教科は国語だ。わが子の力を伸ばしたいのなら、まずは国語力を鍛えることが最優先だ。

■中学受験をするのなら親も子も覚悟が必要

近年、中学受験に対する考え方も多様化し、「何がなんでも偏差値の高い学校を目指す」という家庭から、「うちの子の学力レベルでいい学校があれば」という家庭まで幅広く存在するようになった。

しかし一方で、中学受験をするなら大手進学塾へという流れは変わらず、「ウチはこんなにガリ勉強をさせるつもりはなかった」「こんなに大変になるとは思わなかった」といったミスマッチが生じている。

そうならないためには、習い事を続けるかどうかも含め、「うちはどういう中学受験をするか」受験勉強が始まる前の段階で、家族でしっかり話し合っておくことだ。塾に入ってからぼちぼち決めようか、という家庭もあるが、それでは遅いケースも少なくない。

「正解」は家庭ごとにあり答えはひとつではない。それだけに「ウチ(わが子)は何に重きを置くか」という価値観を常に明確にすることが重要だ。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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